第4話

それからというもの、3人で動くようになった。

ただ、1つ問題が起きてしまった。


リーダーの子がいじめられてしまったのだ。

理由は私の独占と眼鏡の子と一緒にいることだろう。

だが、私はからかわれたことはあるもののイジメられたことはない。

そのため、どう対処するか、言葉をかけるか分からずじまいだった。


「まったく、幼稚な人達だこと。」


放課後、3人で出かけていると憤りを感じているのか、声に漏れるリーダーの子。


「なんでそんな何でも無いようにいられるの?」


と眼鏡の子が聞く。


「いじめるというのは優越感を得たい、異物を排除したい。又は家庭内の環境が良くないから起こることなのよ。そんなのにいちいち構っていたらきりがなくてよ?」


「大人……なんだね……。」


「でも辛くない?」


私が尋ねる。


「何を言ってるの?貴女達がいるから大丈夫よ。私は一人じゃないもの!!それよりも、今日は貴女のイメチェンするわよ!!」


ふぇぇと眼鏡の子が恐怖を感じ、背中に隠れるように私に抱きついてくる。


「隠れたってダメですからね!!貴女、髪とか眼鏡で顔隠れてるけど良く見るとかなり可愛らしい顔立ちしてるのに気付いてる?しかも私より……あるし……。」


とリーダーの子は自分の胸と眼鏡の子の胸を見比べる。

確かに、眼鏡の子は周りの子と比べると大きい。


「それ、私に対しての嫌味?」


「貴女は私達の王子様だからあってもなくてもいいのよ!!」


と何故か自信満々にきっぱりと発言する。


「えぇぇ…。」


納得できないつつも、まず訪れたのは眼鏡屋。


「コンタクトレンズは使ったことあるのよね?」


「1回だけ…。違和感とかも無かったけどやっぱり似合わないと思って辞めちゃったんだ…。」


お店の中に入っても未だに背中に隠れながら受け答えする眼鏡の子。

姉と妹がいたらこんな感じなんだろうかと思ってしまう。


「それなら、さっそくお願いしましょう!!」


最初は乗り気じゃなかった眼鏡の子も話をしていくに連れ、段々とあーでもないこーでもないと意見を出すようになった。


1人置いてかれてるなぁと思った私は暇つぶしするようにメガネを眺めることにした。


しばらくして、コンタクトをした元眼鏡の子、現コンタクトの子と元リーダーの子、現いじめられっ子が帰ってきた。


コンタクトの子を見てびっくりしてしまった。

別人かと思うくらいに可愛いのだ。

こんなに目がぱっちりしていたのかというのとまつ毛が長いのなんの。


「やっぱり私の思った通り!!」


「こんなにも印象変わるんだね。可愛いよ。」


「そそそそんなことないよ」


と照れてあわあわしている。


「次は美容院ね!!」


とウキウキしながら向かう一行。

少し自信が着いたのか、コンタクトの子は前よりも背筋が伸びているように見える。


「ここよ!!私がいつもお世話になっているの!!」


予約までしてあり、コンタクトの子を半ば強引に座らせる。

店員にこんなふうにしてくださいとコンタクトの子の髪を勝手に決めていく。

何か言いたげなコンタクトの子を無視し、ここはどうしますかと聞かれると、こうしてくださいと細かい指示までこなしてしまう。

いつも通り助けを求めるように私を見てくるが、苦笑いで返すことしかできない。


「それじゃぁ、私達は別のところにいるから終わったら連絡してね!!完成楽しみにしてるわ!!」


とコンタクトの子を置き去りにし、私の手を引いて美容院を出る。


「お茶しましょう。」


ぶっきらぼうに呟くいじめられっ子。


「だったら、私あそこのお店がいいな。」


と1つの喫茶店を指す。

前見かけたときに行ってみたいと思っていたのだが、その時はグループだったため、行くに行けなかったのだ。


「行きましょう。」


と何やら慎重な顔になるいじめられっ子。


コーヒーの香りに包まれたお店に入ると、暗めの照明にウッド調に揃えられた家具。

安心感をもたらしてくれる感覚。


「オリジナルホットコーヒーブラックで。」


と私がオーダーを取りに来てくれた初老の男性に言うといじめられっ子も同じのをと頼む。

かしこまりましたと丁寧に答え、男性は戻っていく。


「どうしたの?」


お店に入る前といい、態度が急に変わったことに心配になり、聞く。


「コーヒーが来てから話すわ。」


と暗く返される。

どうしたものかと気まずい雰囲気が流れる。

コーヒーを待っている時間は5分と無かっただろう。

しかし、その時間が嫌に長く感じられた。


「お待たせしました、ホットコーヒー2つです。ごゆっくりおくつろぎ下さい。」


と薫り高いコーヒーが机の上に置かれる。

待ってましたと言わんばかりに、コーヒーを口に含む。


「私、貴女に言うべきことがあるの。」


切り出してきたいじめられっ子。


「何?」


「私…ずっと貴女をお慕い申しておりましたの。付き合って。」


はい?

イジメのことについて何かあったのかと思っていた私にとって頭を揺さぶられるような問いかけだった。

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