第3話
昼休み。
いつも通りグループと一緒にお昼に誘われ、ついて行こうとする背中に声がかかる。
「私も混ぜてもらえませんか。」
眼鏡の子が膝を笑わせながら話しかけてくる。
この人数にほぼ話したこと無い人達に向かってなんて勇気なんだろう。
素直に尊敬する。
「え、いや、うちらこの子とご飯食べるから……。」
グループのリーダーがそう答える。
でも私はこの子と食べたい。
初めてと言っていいかもしれないわがまま。
「うん、いいよ。気まずいなら私と2人で食べよっか。」
えっという声と表情になるグループ。
お昼を眼鏡の子込でも一緒に食べるかどうか。
そう悩む表情が数多く見受けられたが、1人がそれなら私はいいやと去っていくのを皮切りに次々と散らばっていく。
そんな中、1人だけはその場を去ろうとしなかった。
「3人で食べましょう。」
最初に否定したいたはずのリーダーが参加することになった。
3人で人目の少ない食堂ではなく、木の机が置いてある中庭で食べることにした。
この組み合わせは気まずいんじゃ無いかなぁ……。
露骨に眼鏡の子を嫌っているグループのリーダーとその本人。
間に挟まれた私。
「ほんとグループって疲れる。」
思いがけない発言に、私と眼鏡の子はぽかんとしてしまう。
説明が必要なことを理解したリーダーは色々と話し始める。
「あぁ、いやね?最初はただ楽しければいいって思ってたの。そしたらいつのまにかグループになってて暗黙の了解で私がリーダーになってしまっていたの。でも本当はリーダー素質なんて無いから無理やり合わせていただけ。貴女も私は別になんとも思ってない。というか話してみたかったのだけれどそれを周りが許してくれる感じじゃなかったのよ……ごめんなさいね……。」
眼鏡の子に謝罪する。
眼鏡の子はどうしていいかわからず、助けるように私を見てくる。
許してあげていいんじゃないかなと笑顔を見せる。
それを見て安心したのか、おどおどと話し出す。
「あ、あの…貴女がそんな周りに気を遣っていたなんて知りませんでした…。お優しいんですね…。」
「優しい…というよりもそうせざるを得なかったからしてただけよ。役者と一緒ね。役を演じてただけ。だからグループにいる時の私を本当の私だと思って欲しくないの。」
「それでも、役を演じてたのは周りの人を傷付けないためですよね?私なんて過去にイジメを受けたせいであまり他人と積極的に話せなくなって、自分のことしか考えられなくなって…。そしていつの間にか1人になってたんです。高校に行けば少し変わるかもと思ってましたが…これからは少し変われそうです。貴女たちのおかげで…。」
少し恥ずかしくなる。
「あ、ありがとう…。ところで貴女はなんかそういう悩みとかないわけ?」
自分に振られうーんと考える。
確かに2人とも胸の内をあけてくれた。
グループのリーダーの子に至っては自分の認識を改めなければならないと感じた。
人は見た目ではない。
世間に溢れてる言葉を理解できた気がする。
「私は感情があんまりないことかな。いつも自分が何か思うとか考える前にあーしろ、こーしろって周りが決めてきたから。いつも人に囲まれてると合わせるだけでなんとなく生きていけてしまうからね。だから、帰ろうって誘ってくれたり、こうしてご飯に誘ってくれたりしてくれるのが嬉しいんだ。本当の友達…って言えばいいのかな?」
「ならこれからはできる限りこの3人で動きましょうよ!!絶対楽しいわ!!」
リーダーの子が嬉しそうに言う。
ただ、眼鏡の子が不安なのか顔を青白くしている。
「グループの子たちはいいの…?」
最もな質問だ。
グループのリーダーともなると今まで築き上げてきた関係性を壊すのは難しいはずだ。
しかも今まで敬遠されてきた子がいるのも大きい。
そんなことは気にしないかのように箸を一旦置き、どんと胸に手をやる。
「今までは怖くて流されてた部分もあるけどこれは自分のため。自分の友達は自分で選ばないとね!!」
「「友達……。」」
眼鏡の子と同じことを考えていたらしい。
そっか、友達か。
「な、何よ!!変なこと言った!?!?」
慌てるリーダーの子。
「そっか、友達か…。うん、2人ともこれから改めてよろしく。友達としてね。」
私はそう発言し手を伸ばし、握手を求める。
「当たり前じゃない!!」
握手を返してくれ、手をぶんぶんと振られる。
「貴女も友達だよ。」
眼鏡の子にそう伝え、空いている手で握手を求める。
「私で良ければ……。」
恥ずかしそうにゆっくり恐る恐る手を伸ばし、握手してくれる。
「貴女もよろしくね?」
リーダーの子が眼鏡の子に手を伸ばす。
は、はいと握手を返す。
輪っかになるようにお互いの手が握手される。
なんだかおかしくなり、笑いが出てくる。
それに釣られ2人も笑う。
笑ったのなんていつぶりだろうか。
幸せな気分に包まれる。
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