第2話
放課後になり、また囲まれてしまう。
あの眼鏡の子はと見つけようとするがもういない。
帰るのも早いなぁ…。
ため息が漏れる。
「なんか今日ぼーっとしてるけど大丈夫?」
女の子達の群れの中でリーダー的な存在であり、声をかける順列で1番偉い子。
「うん、大丈夫だよ。それより皆こそいつもより元気じゃない?」
「そりゃそうだよ!!だって貴女の踊ってる姿が見れたんだよ!?!?あの姿を見て皆興奮冷めやらぬって感じなのよ!!」
「あー、そうなんだね。」
あははと苦笑いで返すと、しっかりしてよと背中を小突かれる。
この子も顔は悪くないんだけどなぁ……。
どうにも馬が合いそうに無い。
やっと部活なりなんなりでバラバラと集団が散っていく。
そして、リーダーの子と2人きりになるとその子がぽつりと呟くのが聞こえた。
「ほんと疲れた……。」
「今、なんて?」
「あ、ううん?なんでもないの!!それじゃまた明日ね!!」
そそくさとその場から逃げるように帰っていってしまった。
疲れた…?
どいうことなんだろう。
引っかかるものはあるが、あまり気にしちゃいけないことなのかな…。
帰り支度を済まし、正門まで行くと眼鏡の子がそこにいた。
誰かを待っているのかなぁ。
待つ人がいるのもいいなぁ。
自分には関係ないと思い、そのまま帰ろうとすると袖を誰かに掴まれた。
「どうしたの?」
そう聞くと、意を決した表情で緊張のせいか大きすぎる声で
「私と一緒に帰ってください!!」
と発していた。
自分を待ってた?
この私を?
今まで待たれたことはあるが大抵は合コンやカラオケなど出汁にされる場合が殆どで自分だけのために待ってくれていたのは初めてだった。
「いいよ。」
気分が良くなる。
そのせいで声が上擦ったが、恥ずかしさより嬉しさが勝る。
「あ、あ、ありがとう……。」
うーん、まだ私と話すのは慣れてないのか……。
同じクラスで同じ年齢なのになんでこんなに固くなっているのだろうか……。
「んじゃ、帰ろっか。」
「う、うん!!」
「そう言えば貴女とちゃんと話すのって無かったよね。声かけてくれて嬉しかった。」
歩きながら他愛もない会話をする。
「そ、そんなでも貴女っていつも引っ張りだこなイメージあるけど……違うの?」
ガラスが割れないようにという慎重さで聞いてくる。
「うーん、皆確かに私の事しか見てないけど、それは男子をあんまり見たことないからじゃないかな?実際、世間体を守るための付き合いにしか過ぎないと思うよ。」
自分の客観的な意見を述べる。
「じゃぁ、貴女は自分を犠牲にして他人に合わせてるってことになるよね…?疲れない…?」
優しいんだな、この子は。
「疲れる疲れないよりも慣れちゃったからね。慣れちゃうと疲れって感じなくなるし、感情も無くなっちゃうけどね。」
「そんなものなのね……悩みとかあったら私で良かったら相談してね?私は他の子と違うって証明してあげたいけど今は難しそうだから……その……snsとか交換してくれると嬉しいなって……。それなら気兼ねなくお互い誰にも邪魔されずお話できるよね…?」
「あぁ、そうだね。交換しよっか。頼りにさせてもらうよ。」
お互いスマホの連絡先を交換する。
分かれ道に突き当たり、あ、私こっちだからまた明日ね。と眼鏡の子は帰っていった。
うん、また明日。と返し、明日もあの子と帰れるのかと少し嬉しくなったのだった。
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