みんなの王子様

ネルシア

第1話

いわゆるお嬢様学校のダンスの授業中、一人だけまるで別世界に居るかのような立ち振舞を見せる少女。

少女というより好青年と言ったほうがいいくらいな人。

他の人もその人に釘付けになる。

それを見兼ねて先生が時折生徒に授業に取り組むようにと声をかけるがそれでもチラチラと盗み見る生徒がほとんどだった。


「はい、ではここまで来週はテストあるからみんなちゃんと練習してきてね」


はーいと声を揃えて更衣室へと向かう。

更衣室に戻るとまるで人気アイドルのように騒ぎ立てる女の子たち。

中心にいるのはもちろんボーイッシュな女の子。


「やっぱりすごく上手よね!!」


「踊ってるところなんてすごく絵になっちゃう!!」


「私もうサインもらっちゃおうかしら!!」


好き勝手キャーキャー黄色い声をあげる取り巻きの女子たち。

はは、と苦笑いしながら頭1つ抜き出ている彼女が目にしたのは奥の方にいる近付きたくても近付かないでいる眼鏡をかけて、自信なさそうにこちらを伺っている女の子。


あの子も混ざりたいのかなぁ……。


黄色い歓声を無視し、そちらの方ばかりを見つめてしまう。


「あ、疲れてた?ごめんね、騒がしくしちゃって……。」


露骨に顔に出てたのか気を遣ってくれる。


姿形に似合う女の子の中では低めの声で返答する。


「大丈夫だよ、考え事してただけ。ほら次の授業もう始まっちゃうよ。」


「あ!!ほんとだ!!」


とまだ着替えていない女の子達が急いで着替える。

その着替える途中下着姿になっている他の女の子達を眺めてしまう。


私と違って胸があんなにある……。

下着も可愛い……。


いけないいけないと頭を振り、すでに着替え終わっていたため、そそくさと立ち去る。

女の子が好きなのだ。

ずっと男として扱われたりからかわれたりしたせいか、女の子を異性として認識してしまう。

教室に戻ると誰一人次の授業の準備が終わっていない中でさっきの眼鏡の子がすでに教科書とノートを用意していた。


「用意いいんだね。」


自分には声なんてかけられないと思っていたのかビクッと肩を震わせ恐る恐る振り返る眼鏡の子。

どぎまぎしながら声を出していた。


「え……と……その…みんな…貴女に……夢中で…その隙にって……。」


「ふーん、そうなんだ。」


私の場合、取り巻きがいるせいで話しながらの着替えになってしまうが、1人だとそういうのも楽なんだ……。


そんな中、女の子達がぞろぞろと教室に戻ってくるなり、輪の中心に物理的にも引っ張られる。

眼鏡の子から遠ざかり、内緒話を始める。


「あの子と関わるのやめなよ。あんな暗くて地味でもっと相応しい人がいるって。」


好き勝手に口を開く。

じゃぁ、私の相手は誰かときゃーきゃー騒ぎ始める。


1人だと静かでいいなぁ。


騒がしい集団を他所に現実逃避をする。

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