閑話 現実と非現実

「「「「………。」」」」


この日、VR課は重苦しい空気が充満していた。


課長、VR課の職員達。


静けさの中で、機械の電子音だけが小さく細く、時間が進んでいることを告げていた。


「それで、原因は判ったの?」


「正式な回答は、まだ…」


「…他に出来ることはある?」


「防犯カメラ等を調べましたが、不審な者は検出出来ませんでした。」


「彼が消えた理由は謎のままか…」


打つ手がない状況とは、この静けさを言うのだろうか、ただ徒に時間だけが過ぎていく。


ガチャ。


「VRの運営会社UNWより、回答が来ました。」


「何て言ってたの?」


「『我々は知らない。日本では神隠しという言葉がある。貴社の社員は神隠しにあったのではないだろうか。』以上です。」


「…ログはどうだった?」


「ログですが、消えています。」


「…消えている?」


「はい。ログを追っていくと、冒険者ギルドで消えています。」


「冒険者ギルドで…何か事件があったのか?」


「いえ、ログでは何も…ギルドに入り、受付で話しかけた後、ログが消えています。」


「…消えているというのは?」


「はい…『彼のログは消えた』というメッセージのみが表示されています。」


「…ふ~ん…それについて運営会社は?」


「はい。『消えた理由等は知らない』との回答以外はありません。」


ふぅ…


誰のため息だろうか…軽くなった空気が再度、ズシンと肩にのし掛かるような重さを感じた。


「…レイっち…グスッ」


「プリンちゃん…」


空気に堪えかねたのか、涙が溢れたようだ。


パン、パン。


「今から3時間。VR課の皆は向こうで彼を探してくれ。僕はこっちで再度、運営会社に問い合わせるよ。」


課長が声を張る。


「さっきの回答が馬鹿にしているのか真面目なのか。ログが消えた理由も確認する。皆、やれることをやろう!」


「「「「はい。」」」」


VR課の皆がVRの世界へと行く準備をする。


「無事に戻ってきてくれ…」


皆の安全を願い、課長は呟く。


「彼はどこに消えたのかな…」

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