会社員の七日目にやっとギルドへ

怒られた。


キレイな人が隣にいるんだ。仕方ない。


「へへっ。」


さっきはあんなに雰囲気が良かったんだ。


こ、これから…あ、あんなことや…こ、こんなことを…


「…でっへへ。」


「キモいんだけど。」


隣を歩いているアスカが、スス…と距離を開けて、

しかめっ面で話してくる。


「べ、別になんでもないよ。うん。」


「0.1ミリメガネって普段からそんなにニタニタしながら歩いてるの?」


おっと、だらしない顔をしていたな。気を付けないと。


キリッ。


「そんなことないよ。アスカ。」


「いや、普通にしてなよ。キリッとした顔も変な顔だし。」


「ぐっ…は。」


俺のキメ顔を否定してくるとは…


「とりあえず、0.1ミリメガネ。ギルドに行くよ。」


「なぁ、呼び方変えてくれない?俺0.1ミリメガネって名前が本名じゃないんだけど…」


「え?何で?」


「何でって…アスカには、ちゃんとした名前で呼んで欲しいじゃん?」


「0.1ミリメガネ…」


「アスカ…」


こ、これは…牢屋の続きか?…


パチン!


「いたぁ!」


「アハハ…0.1ミリメガネ、ウケるんだけど。」


「え?」


「牢屋の時は演技してあげたけど、街中でやるわけないじゃん。0.1ミリメガネ浮かれすぎ。」


「そんな…」


あれは演技だったのか…そんなぁ…


・エクストラスキル『道程』が発動しました。


…ん?スキルの発動?


・アスカの好感度 10 / 100

・現在の好感度は同じ村出身程度です。

(※発動のタイミングや内容は、アスカに掲示されないこととなりました。)


好感度だと!?


ア、アスカとの好感度…これは…好感度を上げられるチャンスがあるってこと!?


な、仲良くなりたいぞ。頑張ろう!


「急にやる気のある顔して、どうしたの?」


アスカが尋ねてくるが、言う訳には行かない。


これは、このスキルは、俺が頑張ってアスカを彼女にする為に神様がくれたスキルだ。絶対に好感度をMAXまで上げてやるぞ!


「ねぇ、どうしたの?」


「な、何でもないよ。」


「ふーん…あ、そうだ!0.1ミリメガネって名前が長いから、デコハチって呼ぶね。」


「何で?何でそんな名前なの?嫌だよ。」


「え~…なら、デコメガネ。」


「デコは変わらないの?デコは?そんなに目立ってないよデコ。」


「う~ん…なら、ボコハチ。」


アスカは腕を胸の前で組みながら、頭を悩ませている。


「それって凸凹から来てるよね。何で?凸凹なんて何処から出てくる要素感じたの?」


「もぅいいや。デコト・ボーコで。」


「投げやり過ぎない!?何その聞いたことあるようでないような名前は!?なら、お、俺もアスカのこと、違う呼び方するぞ?」


・エクストラスキル『道程』が発動しました。


えっ…このタイミング?


・アスカを愛称で呼ぶには好感度が足りません。好感度が足りない状態で勝手に愛称をつけて呼ぶと、好感度が下がります。ご注意ください。


な、なんて優しいシステム…分かりました神様。


仲良くなるまでガマンします。


「勝手に変な名前つけたら怒るよ?」


怒ってますよって、プンとした顔をしてくる。


「あっ、あぁ、分かった分かった。アスカはアスカだよね。」


「わかればよろしい。さぁ、ギルドに行って、クエスト選ぼ?」


すぐに笑顔に戻って、アスカはギルドへと走っていく。俺も遅れないようにそのすぐ後を追いかける。


「やっと着いたわねギルドに。」


「名前を考えてたら時間が経ったからな。」


ギルドが混んでいる朝の時間帯は過ぎており、見かける冒険者はまばらだ。


「さて、先ずは名前の変更ね。」


「え?本当に変更するの?」


「当たり前じゃない。せっかくこれから旅が始まるのよ?新しいスタートじゃない。」


…まぁ、自分で決めた名前じゃないから、そこまで未練はないけど…


まぁ、名前が変わっても人が変わる訳じゃないし、またハーベストの皆さんにあったら、事情を説明したらいいか。


「分かった。名前を変えてくるよ。」


「お!いいね。じゃあ、受付行ってきてね。私はその間に、いいクエストが無いか見てくるわ。」


そう言って、アスカはクエストが掲示されているところへと向かう。


俺はアスカを見送った後、受付に向かい名前の変更を申し出る。


「どういったご用件ですか?…はい。登録名の変更ですね。宜しければギルドカードを渡してください。」


「はい。」


ギルドカードを持って受付嬢に渡した瞬間、ギルドカードが強い光りを放った。


「なっ!?」


辺り一面が光りで何も見えなくなり、


俺は光りに包まれた。



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