会社員は七日目に改名する

「デコト・ボーコさん、大丈夫ですか?」


「…へ?」


「急に目をつぶっておられましたが?」


「いや、すごく光り出したんで、ビックリして。」


「光った?何がです?」


「何がって…ギルドカードがですよ。」


「…?光っていませんが?」


「いや、今は光ってませんが、さっきすごく光りましたよね?」


「いいえ。そんなこと今まで1度もないですよ?」


「えぇっ…」


「変更の手続きは終わりましたので、またクエストを受注したら来てください。次の方~!」


…腑に落ちないが、仕方ない。俺にウソをつく必要もないはずだしな。


さて、クエストを見に行ったアスカと合流するか。


何かいいクエストあったかな?


…お、いたいた。


「アスカ。」


「なぁに?カードの書き換え終わったの?」


「あぁ、終わったよ。」


俺はギルドカードをアスカに見せた。


名前の欄が『デコト・ボーコ』に変わっている。


「変な名前じゃないか?」


「別に変じゃないと思うけど…これから何て呼ぼうかな…よし!ディー君って呼ぶよ!」


「…名前さ、デコト・ボーコじゃなくて、ディーって名前で良かったんじゃない?」


「…そうかも。」


「デコト・ボーコって、何だかカッコ悪い気がしてきた…」


「え…いまさら…?」


「えっ…カッコ悪いって思ってたの!?」


「ウソ!カッコ良いって思ってたの!?」


アスカが口を両手で覆い、信じられないといった表情をする。


それ、こっちの台詞だわ。


「アスカ、人の名前だと思って適当につけただろ!?」


「ディー君が自分で考えないからでしょ。」


だからって…


『緊急クエストの発動条件が整いました!』


アスカと言い争いをしてると、緊急クエストの告知が届く


「…緊急クエストの条件?整う?」


アナウンスに疑問を感じていると


「た、た、助けてくれ~!」


ギルドに血だらけの男性が、駆け込んできた。


「どうされました!?」


ギルドの受付嬢がカウンターを飛び出て、血だらけの男性に駆け寄る。


「森の、奥から、モンスターの群れが、出た。」


「ひぅ…」


誰かが息をのむ音が聞こえた。ギルドの受付嬢は男性にガラス瓶に入った飲み物を与えている。


…ポーションと言われるものだろうか。男性が落ち着いてきたようだ。


「…ング、ぷはっ。助かった。詳しいことは分からない。今はハーベストの連中が調査している。人員が欲しい。」


ハーベスト!?


VR課の皆だ!やっと、やっと会える!


「アスカ、僕たちも向かおう!」


「えっ、私たちが?新人だよ私達、役に立つかな?」


「大丈夫です。」


ギルドの受付嬢が俺たちの会話に入ってくる。


「どれくらいの規模かも分かりません。新人の方達でも、戦闘ではなく調査で役に立つことはできます。それに…」


「それに?」


「緊急の依頼はお金になりますよ?」


「よし!ディー君、行こう!すぐに行くよ!」


「分かった。じゃあ、行ってきます。」


「はい。お気をつけて。」


「坊主、頼んだ。死ぬなよ。」


受付嬢と駆け込んだ男性の声援を受け、俺たちはモンスターの群れが現れた森へと向かうのであった。





・緊急クエスト『森の異変』

  森にたくさんのモンスターが現れた理由を探れ

   成功報酬:魔力の素

   難易度 難しい


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