会社員の五日目は街で散策

見えた。街だ。


俺が出発した街へと戻って来たぞ。


ならば、やはりさっきの辺りが、ダンジョンを見つけた場所だな。


とりあえず、ハーベストの皆に会ってステータスのバグを直してもらおう。


さっさとギルドへと向かうか。


…ん?あれ?


…何だろう…何か違う…


俺は街中で立ち止まる。


何か…違和感みたいなものを感じる。


…?街の雰囲気も…特に変わった様子はないしな。


…思い過ごしか…


そのまま歩きだし、ギルドへと向かう。


ギルドの中は空いているようだ。


「こんにちは」


「はい、こんにちは。どうされました?」


空いているので、受付嬢もすぐに対応してくれた。


「クエストを終えて戻って来ました。」


「お疲れ様です。ギルド証を提示してください。」


俺は紙切れを渡す。


「はい…無事にチュートリアル終了ですね。…ようこそ冒険者。貴方のこれからの活躍を期待している。」


…どうしたんだ?


優しそうな顔が急にキリッ!とした顔になったと思ったら、いきなり何を言い出すんだ?


「…チュートリアルをクリアした皆さんにお伝えしている言葉ですので、気にしないで下さい。そして、こちらが新しいギルドの証です。紛失すると再発行に時間と費用がかかります。ご注意ください。」


また優しい顔に戻って話を始める。


なるほど。対応してくれた受付嬢は、業務に忠実な方で、新人にも丁寧に話してくれる人なんだな。


「ありがとうございます。」


お礼は基本。感謝を伝えとこう。


新しいギルドの証は何か分からない金属のリングだ。


リングはとても優秀で身分証、銀行口座、キャッシュレス支払いも出来る。


そのため、落とさないようにチェーンか革ひもで首から下げるのが一般的らしい。


「ところで、川にダンジョンが出来たりすることはありますか?」


「川に?ダンジョンですか?…聞いたことがありません。見られたのですか?」


「私は見た気がしますし、中に入った気もするんですが、他の方に確認してもらったら無かったんです。」


「…無かったんですか?…ダンジョンが消えたと言うことですか?」


「はい。そんなことってあるんですか?」


「…私は聞いたことがありません。」


「そうですか…分かりました。知り合いの人達にも聞いてみます。あの、ハーベストの方々が何処にいるか分かりますか?」


「ハーベストですか?…ちょっと分かりません。」


「そうですか…」


「何か伝言でもあればお伝えしますよ?」


「…しばらくは街にいるので、自分で探してみます。」


「了解しました。」


ギルドの受付から離れる。


う~ん、やれることが済んでしまった。


ハーベストの皆もまだいないから、街の外に出てしまって、すれ違いになるのも嫌だしなぁ…


ギルドを出て街で散策がてら、ハーベストの皆を知らないか聞き込みでもするか…


『緊急クエスト ダンジョン調査』 成功

無事に生きてダンジョンを出ろ  成功


『道程』スキルがレベルアップします。


※『道程』スキルのレベルアップには時間がかかります。自宅や宿屋等で休憩を取っているタイミングでのレベルアップとなります。


おっ!緊急クエストがクリアになったぞ。


やはり、ダンジョンはあったんだな。


『道程』スキルがレベルアップか…クエスト中に矢印が出るから頼りにしているスキルだ。どうなるのか…楽しみだ。


それからしばらく、街中を散策したが、目新しい情報は何もなかった。


ハーベストの名前は聞いたことがあるが、今は何処にいるのか知っている人は誰もいなかった。


…と言うことは、まだ現実の世界で調整してくれているんだろう。


思ったより時間がかかるようだ。仕方ない。


空も暗くなりだした。屋台やお店も閉め出した。


俺もそろそろ宿屋に行くか…


前も泊まった宿屋に行く。問題なく泊まれた。


「さてと…」


『道程』スキルのレベルアップだ。


『スキルのレベルアップ条件が整いました。翌朝にレベルアップが完了します。』


な~んだ。時間がかかるのか。


すぐかと思っていたが、時間がかかるから自宅や宿屋で休憩となっているんだろう。


「楽しみだ…」


遠足の前の幼稚園児ではないが、なかなか寝付けない。


「こんなにワクワクするなんて…VRも捨てたもんじゃないな。」


後は早くステータスのバグさえ直れば完璧だ。


ハーベストの皆とVRの中で何をするのか…考えている間に気がついたら夢の中へと落ちていった。

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