会社員の五日目は続きから

「…う…うぅ……ハッ!」


目が覚めた。


「…うん?…たしか…ダンジョンの中にいたはず…」


周りを見渡す。さっきまでいたはずのダンジョンではない。


「お、目が覚めたかい?」


声が聞こえたので、後ろを振り返ると、焚き火を囲んでおじさん達が切り株や地面に座っている。


「あ、こんにちは…ここは何処ですか?」


「おいおい、大丈夫か?ここは街から少し離れた休憩所だ。あっちの方に歩いて行けば、今日中には街に着くぞ。」


さっきから話してくれているおじさんが、手に持っていた枝で伸びている街道を指す。


「街に行くのはいいが、何か身分証明できるの持ってるか?」


別のおじさんが、聞いてくれる。


「身分…これでどうですか?」


俺はギルド登録証(紙切れ)を見せる。


「何だお前、新人か!てぇことは…川の調査をやってたんか?」


「そうだ!川にダンジョンが出たんだった!」


俺が立ち上がる。


「「何!ダンジョンだと!?」」


おじさん達が立ち上がる。


「何処だ!?」


「この川に出来たんです!」


「…この川…だと?」


「はい!」


おじさん達は顔を見合せる。


「…俺たち、さっきこの川で水を汲んでいたんだが、そんなダンジョンは見当たらなかったぞ?」


「そんな!僕はたしかにダンジョンを見ました!ダンジョンに入って途中で意識が無くなって…気がついたら此処にいたんです。」


「…本当か?」

(…ウソ言ってる顔つきでもなさそうだな…)


「たしかにダンジョンを見ました!」


「…なら、一度見に行くか?」


俺とおじさんの2人(残りのおじさん達はお酒が入っていて面倒とのこと。)で、川に向かう。


川岸に着いたが、あの時見た黒い渦はなく、太陽でキラキラと輝く清流で、特に変化は感じられない。


「そんな…」


「まぁ、夢でも見たか、何かと間違えたんだろ。」


おじさんはそう言って、俺を置いて戻っていく。


何故?…あの時は…黒い渦が発生していた…


間違いない…間違いないが…


今は無い…


…俺が場所を勘違いしているのか?


…たしかに、ここがダンジョンがあった場所なのか、確証は何もない。


…ここで考えても何も分からない。


とりあえず、街へ向かおう。


さっきの休憩所まで戻るが、おじさん達は出発していた。


少し離れたところで、おじさん達が歩いているのが分かる。


俺が向かう方向とは逆だ。


あっちの道も何処かに通じているのだろう。


「とりあえず、ハーベストの皆と合流だな。もしかしたら、ダンジョンについて分かるかも知れない。」


俺は街へと向かって歩いていく。


「お!そうだ。」


俺はまた休憩所へと戻った。


消されるかも分からないが、ここに来たという証拠を残そう。


「もしかしたら、ハーベストの皆と入れ違いになるかも知れない。そして、検証の為にも印をつけておくか。」


切り株と地面に印をつける。


メガネのマークを書いて、マークの上に『0.1ミリ』と書く。マークの下には『川 → 街へ』と書く。


暗号みたいだが、これで分かるだろう。


「良し!」「良し!」


指差し確認をして、間違いがないかチェックする。

うん、大丈夫だ。


俺は確認が終わり次第、また街へと向かって歩いていくのだった。

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