会社員は四日目の朝を異世界で目覚める

ベットの上で目が覚める。


「…」


あの有名なセリフを言うべきか否か…


天井を眺めながら悩んでいると、

お腹がグゥーとなる。


「…とりあえず腹ごしらえだな。」


ベットから起き上がり、

朝ごはんを食べに食堂へと向かう。


あの後は、門の外に出ることなく、門番をしていた冒険者から教えてもらった宿屋へと直行。


薬草で得たお金で泊まることができた。

薬草のクエストで100ジェもらえたから、チュートリアルクエストは全て100ジェなんだろうか。


宿屋で全額は使わなかったが、お金にゆとりはない。


「ハーベストの皆もまだ戻って来てないし…食べ終わったら外に出るか。」


パンとスープを平らげ、宿屋をあとにする。


門番にも爽やかに挨拶をして、街の外に出た。


矢印は街道を少し外れた草原を指している。


…魔物だもんな…夜の狼みたいなのは勘弁してくれよ…


矢印の示す方角に歩いていく。


街道を外れ、少しずつ草が生い茂って来た。膝ぐらいの高さまで育った草が目の前に広がっている。


「ん?」


さっきから気のせいかと思っていたが、

そうでもなさそうだ。


矢印の先が段々と下がってきている。


「足元か?」


最初の魔物は地面に近い場所にいるようだ。草で魔物の位置が分からない。急に飛び出す魔物だと怖いな…


ガサガサ…ガサガサ…


音を立てて歩いていく。魔物に気づかれるが、魔物が動けば矢印も動くだろう。不意討ちされないためには仕方ない。


矢印の先がだいぶ傾いてきた。近くの地面に魔物がいるようだ…まだ姿は見えない。


ガサガサ…音を出して歩いているが、動く様子はない。待ち構えるタイプの魔物か?近づくと飛びついては来ないか?


…慎重に歩く。…もぅ目と鼻の先だ…矢印は剣の届く範囲の地面を指している。


矢印が示す草を剣でかき分けるが…地面しか見えない。何かいるのか?もう少し剣を伸ばす。


ブニュッ


!!何かおる!


「おりゃぇぁ!」


ビックリしてかけ声が変になったが、剣を振りかぶって、勢いよく振り下ろす。


バシュ!


…切れ味の良い剣ではないので、実際にはドスか、ザクッという土にスコップやシャベルを突き刺した音なんだろうが、


魔物を攻撃した高揚感と倒せたことによる驚きがあいまって、とても気持ちのいい感触と音だった。


・近くの魔物を倒してこい、成功。(2/3)


よしよし、あとひとつだな。


剣が刺さった場所を見る。


さっきまで何もないと思っていたが、よく見ると土色?草色?のブヨブヨがある。


「…これスライムか?」


周りと同化してて分かりにくいぞ、スライム!


倒したが何もアイテムが出ない。経験値?も入っているのか分からない。


「…これ、お金になるの?」


剣でツンツンしたが、動かない。倒せたんだから触っても大丈夫だよな?


グニュニュ


触るとテニスで使うソフトボールのようだ。分かりにくい人はゴムボールと思ってくれ。


触り心地は悪くない。しばらく待ったが、手が荒れるようなこともないので、とりあえず持って帰るか。


他の魔物を倒しても良いのだが、スライムは自力では見つけられないだろう。周囲を見渡しても冒険者は見つかるが、魔物の姿は見えない。


それに、スライムを持って歩くのも嫌だしな。


街の門番に聞いてみるか。


「あの、これって売れますか?」


「ん?スライムだろ?ギルドで買い取りしてるぞ。草原を歩いてて踏んだのか?ラッキーだな。」


「いや、剣でやっつけましたよ。」


「剣で?よくスライムを見つけられたな。大体は歩いている時に踏みつけて倒すもんだぞ。」


「そうなんですか?」


「あぁ、スライムは見つけにくいだろ?


草原を歩いていて蹴り飛ばすことなんてしょっちゅうあるが、倒した後に見つけることが難しいんだ。


何処にいるのか分からなくなるしな。


だから冒険者に成り立ての頃は、草原を1日歩いてはスライムを踏んで、探して、金を稼ぐもんよ。


俺も若い頃は1日中草原を歩いたもんだ。」


やっぱり踏むって言ってる!

足を上げて踏む動作までしてるじゃん!


俺、格好つけて剣で倒したよ!大声あげて倒したよ!


危険な魔物を倒した気になってたのに…


踏まれて死ぬってスライム不憫すぎる!


「…ありがとうございます。」


お礼を言って門から離れ、ギルドへ向かう。


ギルドではスライムを渡し、102ジェをもらう。


チュートリアル成功報酬が100ジェで、

スライムの殻?皮?が2ジェだった。


…スライム…強く生きろ…


さぁ、気を取り直して、最後のクエストを受けるか。


『川を掃除しろ』を受注しました。

川が汚れている。何か原因があるはずだ。川へと行き、原因となるものを調査せよ。


…なるほど、調査をするクエストか…


ん?矢印が2つ出たぞ?

これは…1つは街の中で、もう1つは…街の外だな…


街の中から確認するか…


矢印に従って歩いていると、どうやら井戸に向かっている。井戸の中か?


…いや、違うな。どうやら、側にいる人物を矢印が示してるな。何か情報を持ってるのか?というか、頭を抱えてるな。完全に何かのイベントだなこれ。


「あの…」


「はい?」


「頭を抱えて、どうされました?」


「実は…井戸の水が不味くなってしまって。」


「井戸の水が?」


「はい。この水を使ってパンを作ってるんですが…これじゃあ、パンが作れない…川にスライムでも出たんじゃないかと思うんです…」


「え?スライムが?」


スライムって踏んで死ぬスライムですよね?


「えぇ…草原で生まれたスライムは、川にたどり着いたら、今まで蓄えてた土や草を捨てて、水を吸い込むので、川が汚れるって言われてるんです。」


「なるほど、スライムが原因なんですね。」


「おそらく…でも、スライムがいるとなると、危険なので川に行けないんです。」


危険?スライムが危険?


「え?スライムですよね?」


「えぇ。あ、ご存じないですか?スライムは水を吸い込むと進化するんです。水スライムは水魔法を使うようになるんです。」


な、なんだと!

あの残念スライムは進化するのか!


「スライムが川の中から、水魔法を使ってくるので、川のそばにいく時は気をつけてください。」


「それは恐ろしいですね…」


先に話が聞けて良かった!これ、知らずに行くと水魔法で殺されてたかも知れないな!


「貴重な情報ありがとうごさいます。川の調査に行く予定でしたので、水スライムには気をつけます。」


「おぉ!本当ですか!助かります。是非とも原因を突き止めて早く水を元の水に戻してください。」


『川を掃除しろ』調査が進みました。

難易度が変更となります。

難易度

 普通 → 易しい


!!!

何と!マジか…

薬草の時でもそうだが、情報って大事なんだな。


チュートリアルで学べたのは良かったぜ。


よし早速、川の調査に向かうか!

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