会社員の三日目は異世界で

慣れ始めてきた起床時間。

慣れ始めてきた満員電車。

いや、ウソ言ったわ。電車慣れないなこれは。


慣れ始めてきた、地下に下りていく俺を遠巻きに見ている社員。

俺と目が合いそうになると、首が折れるんじゃないかと思うほどに顔を逸らされるのも、慣れてきたぜ。

ちくせぅ。


そして、慣れ…たくないVR課。

ドアはすでに開いていた。


「おはようございます!」


「レイっち、おは。」


「0.1ミリメガネさんおはようございます。」


「…おぅ。」


「レイ君おはよう。」


やっぱりあだ名で呼ぶんだな。


「何で皆さんあだ名で呼ぶんですか?」


「何でって…。そっちの方が呼びやすいからさ。」


何でそんな質問するんだって顔しないでよ。

会社なのに、あだ名で呼ぶ方が珍しいですよ!


「そっか、レイ君はまだVRを体験してなかったね。VRを体験すれば、すぐに分かると思うよ。じゃあ、早速VRを使っていこうか。」


「はい。お願いします。」


「レイ君は身体を使うVRってやったことある?」


「そうですね。ゲームセンターに置いてある機械なら何度かプレイしたことがあります。」


「なるほど。実はそれの基になったのは、ここのVR機なんだよ。」


「え!?そうなんですか!?」


それはすごい。あのVRはかなりリアルでゲームセンターでも行列が出来る人気だったぞ。


「お?興味を持ってくれた?しかも、ここに置いてあるのはさらに改良が進んだ最新鋭のVR機なんだよ!」


「へぇ!それはすごく楽しみです。」


「だろう?それがこの機械さ。ちょっと中を覗いてみてくれるかい?」


「はい。わぁ…。中は真っ暗ですね。この中にはいって…」



…パタン。


………………。

遠くの方でガヤガヤと騒がしい。

頭が起きてきたのか、酒場のような

大勢の賑やかな声が聞こえてきた。


(…やかましいなぁ…寝てるのに…

静かにしろよ…)


………



あれ?何で寝てたんだ?


出勤して…地下に下りて…


そうだ!VR機を見ていたはずだぞ。


ガバッ!!


…何か体験したことのある気がするな。


「あ、レイっちが目を覚ましたみたいだよ。」


「やっとか…」


「やぁ、レイ君。」


「0.1ミリメガネさん、おはようございます。」


……?

…?


目の前にいるのは人じゃない化け物だ。

でも、声はVR課の人の声がする。


「あの、VR課の皆さんですか?」


「そうだよ。レイ君改めて、ようこそVR課へ。

そして、私達のパーティー『ハーベスト』へ。」


「『ハーベスト』ですか?」


「そうだよ。私達は未知の世界から、実りあるものを収穫するって役割だからね。パイオニアと悩んだんだけどね。けど、1番いいのは『マッパと血の仲間達』だと思っているけどね。」


「そんなん、別にどうでもいいから。とりあえず、レイっちこっちこっち。行こう行こう。」


話しは終わりとばかりに腕を引っ張ってくれるのは、セーラー服を着た女の子みたいな人形?

全身がクリスタル?のようなもので出来ていて、何て滑らかに動くのか気になってしまう。


「何?ジロジロ見て?もしかレイっちって変態?」


「何でそうなるんですか!それよりもプリンちゃんさんのその容姿に驚いてるんです。」


「プリンちゃんさんって…ウケるわ。長いしプリンで。レイっちやっぱり私の身体を見てるって変態じゃん。」


透き通るような肌…いや、透き通る鉱石?みたいなプリンは笑って話している。


「…プリン。先ずは0.1ミリメガネが何が出来るのか確認が必要よ。」


うぉっ!?急に耳元で声が聞こえるって思ったら、

隣に人影が…この人も透き通ってるし…


「あの…」


「何かしら?」


「メイさん…ですよね?」


「そうよ。当たり前じゃない。分からなかったの?」


…あの、貞子みたいな風貌だと誰も分かりませんから!どこで判断したらいいの?


…!その胸元か!


「…レイっち、やっぱし変態。」


「ふふふ。」


笑いながら寄せて上げてくれるメイさん。

あざーっす!


「メイさんは…何か全身が透けて宙に浮かんでいるような…気がしますが?」


「ええ、私の種族はレイスだから。残念だけど触れられないのよね。私と同じ種族になれば触れられるようになるわ。」


顔が見えないから貞子のようだけど、顔を出せば男達がこぞってレイスになるんじゃないか…


「ちなみに、プリンは硬そうに見えるけど、柔らかいところは柔らかいから。」


そう言われて、ついプリンちゃんを見てしまった。


「どこ見てんだよ、変態」


ドスッ!


グーが飛んで来ました。みぞおちに。

ヤバい、息が…苦しい。


「へっ、ざまぁ。」


「ふふふ…仲良しね。」


…メイさんやっぱりキャラが変わってますよね?

のほほんとしたメイさんは何処にいったんですか?

今のメイさんが本当のメイさん何ですか?


「おい、そろそろ茶番は終わったか?」


身体が光に包まれたかと思うと、徐々に痛みが引いてきた。なんだこれ?魔法?回復魔法?


「さっさと依頼をこなしてぇんだが。」


杖をこちらへ向けながらトカゲのような顔をした人?が話している。消去法でリッちゃんか。


「おい、1ミリ。回復してやったが異常ねえか?」


「…あ、この光ってるのがそうなんですか?」


「痛みがなくなっただろが。」


いや、なんで杖を向けただけで回復するんだよ。


「痛みはなくなりました。ありがとうございます。」


「ったく。おいプリン、お前も加減して殴れ。1ミリが瀕死になってたぞ。」


え?俺、死にかけてたの?


「えー?変態が変態な視線で見てきたのが悪いと思いまーす。」


「雑魚は生かさず殺さずの手加減で殴れって言ってんだろ。」


「はいはーい。気をつけまーす。」


「…ったく。」


…雑魚ですいませんね雑魚で。今日、始めたばかりなんで。


「ハハハ。やっぱり皆でやると楽しいね。」


…マッパさん。笑ってるけど、貴方の顔。


ブタさんだからですか?


『ハハハ』のところが『ブヒブヒブヒ』って鳴ってますよ。


…さすV。

カオスすぎてVRで、まだ何にもやれてないや。


俺、VR課で、やってけるんだろうか…

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