会社員は二日目が長い(説明回 1)

乾いた音が響いた。


その後


「「就職おめでとうー!!」」


「え?」


俺は…ポカンとしている。


「あはは。なにその顔!?ヤバい。受けるんだけど。」


部屋の中にはケーキが用意されていて、垂れ幕には

『!!山田さん就職おめでとう!!』の文字が。

乾いた音は大量のクラッカーだ。


先ほどの金髪さんと、

机に座り、笑っている女性?セーラー服みたいなのを着ていて若く見えるけど女の子?と、

服の上からでも分かるほどの物をお持ちの、ワンピースがとても似合う清楚な女性だ。笑顔も癒される。

もう一人、金髪の人が…でも、顔をよく見るとアイドルか!って言いたくなるほどのイケメンが。

よくよく見るとハーフ?っぽいな。

くそっ!リア充め!


でも、この部屋にいるのは俺を入れると5人だけだ。


え?この5人がVR課の全員じゃないよね?新人担当が5人ってことかな?


「…ちょ~っ、聞いてる?山田君?」


「あ、はい、すいません。」


「ヤバい。マジメ過ぎて笑える。」


…誰か助けて。会話にならないんだけど…


「ほらほら。プリンちゃん。話が進んでないよ。

せっかくのケーキが不味くなるとダメだから、食べながら話をしようよ。彼も緊張してるだろうし。」


さすイケ。

良いタイミングで助け船を出してくれる。


もう一人の金髪なんかはソファーで寝転がってるよ。


いいの!?会社だよねここ?

大学のサークルじゃないよね?


でも…プリンちゃんって…


「ぷっ…」


「…おい。今、笑っただろ?」


「え?」


「プリンちゃんって名前で笑っただろって言ってんだよ!テメー殺すぞ!」


ガン! ガシャン。


…おいおい、何だよこれ。この豹変ぶり…さっきまで笑ってたのに、急に椅子を蹴って怒りだすなんて…


「もぅ。ダメッですよ?」


「え?」


のんびりとした声が聞こえてきたかと思うと、

いつの間にか隣にワンピースの似合う女性がいる。

ほっぺたを膨らまし、俺のおでこを指でついてきた。


「え?いや、あの、ちょっと…」


「プリンちゃんはプリンちゃんなんです。謝ってあげてください。」


ほっぺたを膨らまし、私は怒ってますって顔をしている。


「はぁ、あの…すいません。」


「ほら、プリンちゃん。謝ってもらったので、そんなに怒ってあげないでもらえますか?」


「はぁ~…」


「プリンちゃん!」


「はいは~い。オケだよ、メイさん。」


「良かった。これで仲直りですね。」


笑顔で元の位置に戻るメイさん?


俺はまだ、ここのノリについていけてないですよ、メイさん。


「さて、じゃあケーキを切るから皆座ってね。

山田君もとりあえず鞄をそこの机にでも置いて食べよう。」


イケメンさん、マイペース!

空気が変わったからありがたいけど。

ここって変わった人しかいないの!?

さすがVR課!

さすV。 


「あ、あの、プリンさん。ごめんなさい。悪気があった訳ではないんです。すいません。」


「…プハハッ。ヤバい、マ…ジ…マジメ……い、息…

息できない。殺す気?」


…アカン、何がツボなのか分からない。


「そうそう!自己紹介がまだだったね。じゃあ、新人君から挨拶してもらおうか。」


ケーキを配りながら仕切り出したイケメンさん。

何事もなかったかのように進めるなぁ。


「えっと…VR課に配属になりました、山田俊輔と言います。大学では「はいストップ!」…え?」


急に話を遮られる。

「ごめんね。大学とか、高校とかの話はいらないよ。これからここで何をしていきたいかを聞きたいんだ。」


しまった。そういった意図だったのか。


「すいません。VR課に配属となり、正直申し上げまして、何が会社の為になるのかまだ理解していない部分が多く、先輩方を見習い、早く仕事を覚えて会社に貢献できるように勤めていきたいと思います。」


「要するに…何をしたらいいのか、何をするところなのか分からないってことだね?」


「はい。すいません。」


調べても分からないものを知ってるフリをするよりかは、知らないって言った方がいい。これで怒られるなら仕方ない。そんな上司だったと思おう。


「よし!決まった。君の名前は0.1ミリメガネ君だ!」


「は?」


「いやぁ~、メガネしか出てこなかったから困ったよ。マジメ過ぎる感じを0.1ミリで表現してみたよ」


「マッパさすが。ナイス~。」


「これから0.1ミリメガネさんって呼びますね?」


何だよそのあだ名は!?

「いや、あの私は山田ですが…」


「いいじゃん、レイっちで。マッパ、パネェ。」


メガネどこ行ったの!?

ならもういっそのことさ、レイさんとかでよくない?

それにイケメンさん、貴方はマッパさんなの?


「あの…このあだ名というか、名前って何なんですか?」


「そうだそうだ。VR課の説明がまだだったね。説明は…リッちゃんやる?」


「やらん…」


お前がリッちゃんなのか!?

ウソだろ…ヤンキーがリッちゃんて…


「もぅ、リッちゃんは仕方ないなぁ。」

イケメンマッパさんは笑っている。

俺は笑うのを必死で堪えている。


ここVR課、カオス過ぎるだろ。

そりゃ誰も近づかないわ。


「じゃあ、説明するね。」


いつの間にかケーキが切り分けられて、紅茶だろうか、良い香りのする飲み物まで準備されている。


プリンちゃんやメイさんが静かだと思ったら黙々とケーキ食べてるし。

こっちにはすでに興味がないようだ。


「レイ君。…VR課は、世界平和を目指しているんだ。」


…さすVでーす!


…俺、人生どこで間違ったんだろう……


誰かー!!


助けて下さい!


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