第6話

 下着一枚の沙也加に対して、琢磨はまだワイシャツに綿パンという姿である。

 沙也加は琢磨の前にひざまずき、後輩のベルトに手を掛けた。そして、慣れた手付きであっという間に琢磨の綿パンを脱がせてしまう。

「……結構大きいな」

 ワイシャツにボクサーブリーフという扇情的な姿に心が高鳴ってきた沙也加であるが、男性用下着の中で期待に膨らんでいるモノを見て思わず呟いてしまった。

「そう……なんですか? やっぱり沙也加さんって経験豊富なんですね」

「コラ。今のは減点だぞ」

「は、え? な、なんでです?」

 沙也加は琢磨のモノをさすりながら立ち上がり、形の良い乳房を押し付けて睨み上げた。口元だけは笑いの形になっているが、それだけに妖艶な迫力が半端無い。

「男はやった女の数を勲章みたいに自慢するみたいだがな、女は逆だ。好きな男の前では純情ぶりたいものなんだよ。だから、女の異性経験は聞かないのがマナーというものだ」

「……聞かれたく無いことなんですね」

「ああ、そうだ」

 それっきり、琢磨は黙ってしまった。

 沈黙を少し訝しんだ沙也加であったが、それは琢磨がいまだに緊張しているせいだと思った。リードを続けようと、ブリーフ越しに見える大きな肉棒に手を触れ、後輩の耳へ囁きかける。

「ふ……あ……」

「セックスはな、二人で楽しむものなんだ。お前が意外と可愛い声を出すのは中々いいが、何もしないでいるんじゃなく、自分も動け。私も楽しませろ。着ているものを脱いだり、脱がしたりな」

 言われた琢磨は、少し慌てた風で残ったボタンを外し、ワイシャツを脱いで半裸になった。琢磨の身体に残っているのは、男性自身を覆うボクサーブリーフのみである。

 お互いに下着一枚の姿になった沙也加は、後輩の胸と股間に手を触れながら、さっきの会話を思い返した。

 ――純情か……。男を取っ替え引っ替えしてるような女には無縁な話だな。それでも、好きな男の前では見栄を張りたいという気になるのは、女なら仕方のないことだ。好きな……。

「……!」

「どうしたんです?」

 艶っぽい仕草で琢磨の身体に触れていた沙也加は、思わず目を見開いて固まってしまった。

 驚いた半裸の後輩が、沙也加をじっと見つめている。

 さっきの物言いに琢磨は気付いただろうか。気付いてなかったのに否定しては藪蛇だし、気付いていたとしても言い訳をして誤魔化すのにはタイミングを逃している。

 仕方無く、沙也加はなんでもないことのようにスルーした。琢磨には、有無を言わせぬためにキスをする。

「ん……。私のも、触って欲しいな」

 そう言って、沙也加は琢磨の手を取り、自分の豊かな胸に導いた。

「う、わ……」

「どうだ? 初めて触れた女の身体は?」

「すごい、不思議な感じです。柔らかいのに、硬くって……」

「これと、手触りは似てるのかもな」

 言いながら、沙也加は琢磨の肉棒の根元を、人差し指と親指で摘んだ。

「ふ……む……」

「硬くて、柔らかい……。ふ……ふふ……ふふふふ…………」

 少し俯いて変な笑いを漏らした沙也加は、琢磨から手を離した。と、半裸のOLは後輩にいきなり抱き付き、押し倒すようにベッドに倒れ込んだ。

「う、わっ!」

 高級なベッドは二人の身体を難なく受け止め、羽毛の中へ飲み込むように一時的なカップルを沈ませる。

「きゃっふう! あははっ! あっははははっ!」

「さ、沙也加さん?」

「あはははははっ!」

 半裸で絡み合いながら、沙也加は後輩の身体を抱き締めてベッドを転がった。沙也加の突然の行動に、一日だけの恋人が驚いた顔をしている。

 童貞な後輩の前で余裕の態度でいた沙也加であるが、いつの間にかプレッシャーのようなものを感じていたのかもしれない。それが、下手なジョークを聞いた時のように気が抜けてしまった。矛盾した物言いが可笑しくて不意に笑いを漏らしたのであるが、この瞬間、沙也加の中で何かが弾けたのである。

 柔らかいベッドに飛び込むなど、子供みたいなはしゃぎようだ。しかし、沙也加は今、とても気分が良かった。文字通り、童心に返ったような気分である。いい歳をした半裸の男女が肌を合わせているのだから、とても子供らしいとは言い難いが、沙也加の心は、何か解放されたような気分になっていた。

 会社でも、ベッドでも、沙也加は良い男を探そうとして自分も佳い女であろうとしていたのだが、今はそんな必要は無い。琢磨の童貞丸出しなセリフを聞いて、沙也加は吹っ切れたような気がしたのだ。

 琢磨は初めてのセックスで緊張しているみたいだが、どうやら沙也加も緊張していたようである。後輩の初めてを最高のものにしてあげようと、いつの間にか気負っていたらしい。後輩に対して、先輩らしく振舞おうと固くなっていたらしい。

 しかし、そんな必要は無かった。お互いに楽しめばいいのだ。したいことを聞いて、してあげる。されたいことを伝えて、身を任せる。さっき、自分で言ったばかりではないか。セックスは、二人でするものだと。

「あー、すまん。私も、ちょっと固くなってたみたいだ」

 沙也加は半身を起こして、隣で横たわっている琢磨を見下ろした。

「えと、なんだかよく分からないんですけど……、すみません」

「コラ、よく分からないのに、お前が謝ってどうする。悪いのは……、いや、悪いわけじゃないか」

 ベッドで二人並んで横になりながら、沙也加は琢磨の頬に手を当てた。

「とりあえず、私の身体を好きにしろ」

「は……え……?」

「女の身体は初めてなんだろう? お前の好きなようにしていいぞ。ただし……」

 沙也加は琢磨の耳元に口を寄せ、媚薬を注ぎ込むように囁いた。

「痛くしちゃ、ダメよ……。ふふ、ほら、どうぞ」

 そう言って、沙也加は仰向けになって身体を開いた。腕を頭の方へ投げ出し、乳房も脇も男の視線に開放する。

「じゃあ……、触ります」

「一々断る必要はないぞ。好きにしろと言ったろ?」

 はた目にも、後輩が唾を飲み込んだのが分かる。

 琢磨は、仰向けに横たわる先輩OLに覆いかぶさり、乳房に手を触れた。そして、ゆっくりと柔らかく揉み始める。

 ふんわりとした快感が、琢磨の手から沙也加の身体に広がっていく。沙也加は遠慮することなく、気持ち良さげに声を漏らした。

「ん……、あ……はあ……ん」

「沙也加さん……、なんか、エロいです」

「エロいのは……、んふ……、お前の触り方だ。そう、そうやって先っぽを弄られると……、気持ち良い……。それ、好き……」

 琢磨に乳房を揉まれ、乳首をいじくられながら、沙也加はふと後輩の態勢を見た。沙也加の胸を夢中で揉んでいるが、琢磨の態勢はきつそうだ。

「ちょっとストップ。琢磨、そっちの床頭台にもたれろ」

 沙也加はクッションのように大きな枕を床頭台に寄せると、後輩をそこへ座らせた。そして、自分は琢磨に寄り掛かるように背中を預ける。琢磨が沙也加を後ろから抱く格好だ。

「どうだ? この方が揉みやすいだろう」

「ええ」

 琢磨は沙也加の腋の下から手を伸ばし、ボリュームのある乳房を背後から鷲掴みにする。

「この態勢、いいですね。なんか、すごくオッパイを揉んでるって感じがします」

「感じってなんだ。今、お前は実際に私のオッパイを揉んでるんだ」

「ええ。なんか、感動します」

「そうか。好きなだけ揉め。なんなら、朝まで揉み続けてもいいぞ」

「いいですね、それ……」

 それからしばらく、琢磨は本当に沙也加の乳房を揉み続けた。

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