第4話 The Vengeance(復讐)
幼いころの経験とは非常に重要である。その後の人格形成に多大な影響を及ぼす。小学生の時点でその人の性格、そして人生までもが決定づけられるとする見方もある。
そんな中で他者に悪影響を及ぼした子供はどう責任をとるのだろうか。互いに子供のうちであれば「ごめん」の一言で済むだろう。「ごめんで済んだら警察は要らない」というが、最早警察ですら力不足となればどうなるか……
鬱屈した心の中で煮え滾った怒りの感情はおぞましいものを生み出す。
時刻は夜9時を回った頃。路肩に停めた車内から目的の家を窺う。動きは無い。日曜の夜だという事もあってこの辺りの人通りは無に等しい。私は運転席からフロントミラー越しに後部座席の知立、白山、大野木に目を配る。助手席の田原を含め皆の表情に明らかな緊張感を感じる。
「もう一度確認しておく。目標となる家族は3名。鈴木康太、鈴木静香そして娘の鈴
木美穂。2Fの明かりがついている。恐らくは娘の美穂が2Fにいるだろう。残りの
二人はリビングとキッチンだ。
鈴木康太本人と、その妻か娘のどちらかは可能な限り生きたまま拘束しろ。そこか
らは彼に地獄を味わってもらおう」
ミラー越しに皆の鋭い目が窺える。
「配置はさっき言った通り。田原は1Fリビングに面した庭で突入の待機」
田原が無言で頷く。
「大野木は梯子で屋根に上って待機、いつでも2Fのベランダから突入できるよう頼
む」
「OK」
「知立は私の合図でガレージのコンセントを利用してブレーカーを落とせ」
「えぇ、わかったわ」
「私と白山は正面玄関から行く。あいつらがドアを開けたら端末に合図を送る。合図
でブレーカーを落としてから突入だ。こちらはナイフなどで武装してるとはいえ向
こうも必死の抵抗をするだろう。覚悟は決めておいてくれ」
田原と大野木はバールを、私と白山はサバイバルナイフ、知立は使い慣れているという理由で包丁を持っている。
「では、そろそろ始めようか」
帽子を深く被り、配達業者の制服に袖を通す。こんな物が簡単に手に入るとは良い時代になったものだ。各員からは位置に付いたと連絡を受けた。あとは私が始めるだけだ。
「白山、インターフォンの死角で待っててくれ。ブレーカーが落ちて私が突入したら
ついてこい」
「わかった」
か細い手でナイフを握りしめた白山が位置に着く。私は意を決してインターフォンを押した。呼び出し音が妙に滑稽に感じられた。
「はーい」
鈴木康太の妻である鈴木静香らしき声が返ってきた。
「お届けに上がりました」
片手でポケット内の端末で合図を送る準備をする。彼女の足音が聞こえる。あと少し、あと数秒――今だ。
錠の動く音と共にドアが僅かに開いた瞬間、合図を知立に送信した。
「えーっと――」
鈴木静香が扉を開けたその刹那、電気が消え、闇が広がった。
と、同時に2F、続けてリビング方面からガラスの割れる音と短い悲鳴。
上手くいくことを祈ろう。我が同志たちよ。
「わっ――」
突然の出来事に鈴木静香は呆気に取られているようだった。すらりとした上品そうな出で立ちの婦人。幸せな家庭の良妻だったのだろうか……
私は右手に強く握りしめたナイフを鈴木静香の腹部めがけて突き刺した。左手を添え、体重を掛けるように深く抉るように切り込んでいく。肉を抉る感覚と共に傷口がより広くなるように切り開く様にしてナイフを引き抜く。
鈴木静香は血を口から吐きながら、そのまま呆気なく床に崩れ落ちた。まだ微かに意識があるようだが声を上げることすらできないようだ。傷口からは絶え間なく血潮が流れ出している。そう長くはないだろう。
そこに知立が駆け付けてきた。
「やったの?」
「あぁ」
――軽く知立の方向を見た時、違和感を感じた。目に入ってきたのは2足の学生靴。
「――知立、2階へ行け!私はリビングで田原の援護をする!」
「えっ?!」
知立は突然の指示に驚いた様子だったが、2Fからの異様な物音の大きさと悲鳴を聞いて察したのか急いで階段を駆け上がっていった。
リビングのドアを勢いよく開けると田原と鈴木康太が揉み合いになっていた。
私は素早く駆け寄り、ナイフの柄で強く頭を殴打した。
だが、鈴木康太も不意の一撃で体勢を崩しながらも必死に距離を取って体勢を立て直そうとする。
「――そうはさせん」
体勢の低くなった鈴木康太の顎先に思い切り蹴りの一撃を食らわせる。
「うぐっ!」
嫌な手ごたえと同時に血しぶきが飛び散り彼の歯が2,3本床に散った。
仰向けに倒れた鈴木にすかさず馬乗りになり、右肩目掛けてナイフを振り下ろした。
「うあぁぁぁ!」
ナイフは深く突き刺さり、鈴木は堪らず叫び声をあげる。
「――抑えろっ!」
狼狽えている田原に鈴木を拘束するように指示を飛ばす。
抵抗する鈴木を何とか2人がかりで押さえつけ、椅子に縛り付けることが出来た。拘束し終わる頃には失血のためか、鈴木の抵抗も弱くなっていた。鈴木の口にガムテープを貼り付け、一息ついているとリビングのドアが開き、大野木と知立、白山がやってきた。
知立が鈴木美穂と思われる女性を歩かせ、大野木は”もう一人”の女性を連れてきた。鈴木美穂は少し気の強そうな高校生くらいの娘だ。時折抵抗するような身動きをするが知立がしっかりと押さえつけている。叫び声をあげられても困る為、口にはガムテープが張られている。
「冗談キツイぜ」
額から血を流しながら大野木が苦笑した。大野木の額の傷は軽いようだった。原因はおそらく”もう一人”の女。年は高校生くらい、鈴木美穂の学友か。昼頃から見張っていたが気付けなかったとは。
“もう1人”の女は口から血を流し大野木に支えられて立っているのがやっとな状態だ。左腕は肘あたりで不自然に折れ曲がり、力なく垂れさがっている。骨が折れてしまっているようだ。大よそ大野木が激しい抵抗にあってバールで大人しくさせた際に負った怪我だろう。
「ンーーーーッ!」
鈴木美穂がガムテープ越しに何かを叫んでいる。
「た、助け……て……」
か細い声で”もう1人”の女が命乞いをする。
「念のため生かしておいたが、この出血じゃもうダメだろうな」
“もう一人”の女性を壁にもたれ掛けさせながら大野木が言った。
「この子は関係なかったのに……」
田原の横顔がひどく悲し気に見えた。
「生きて返すわけにはいかん。これぐらいのイレギュラーは覚悟の上だろう」
私の言葉に“もう1人”の女性の目に恐怖の色が濃くなった。藁にも縋る表情で見てくる。
私はナイフを握り直し、ゆっくりと女性に近づいた。背後では鈴木康太と娘の鈴木美穂のくぐもった呻き声が聞こえる。
「君に恨みはない。これも世の不条理と思ってくれ」
刃物が喉元を貫き骨に当たる感覚が伝わってくる。女性は声も出せずにただ多量の血を口と喉から垂れ流す。ゆっくりと刃を引き抜くとせき止められていた大量の血液が噴き出してきた。女性の目は見開かれ、その瞳には私の姿がはっきりと映っていた。
「ンンーーーー!!」
鈴木美穂が一層激しく抵抗を見せはじめた。
「鈴木美穂を鈴木康太の向かいの椅子に縛り付けるぞ。手伝ってくれ」
父親と向い合せるように椅子に拘束された鈴木美穂。彼女を照らす蛍光ランプ、机に無造作に並べられた工具類らが手術台を想起させる。
2人に徐に近寄った田原は鈴木康太の口のガムテープを静かに剥がした。
「――何なんだお前たちは!?美穂に触れるな!」
途端、鈴木康太は案の定喚き出す。
「――黙れっ!僕が誰か分かるか?!」
鈴木康太の言葉を田原が遮る。鈴木康太は一瞬田原を睨みつけた。
「なに?知らない!お前なんか知らない!」
「くそ……」
田原の顔に苛立ちが見て取れる。
「あぁ、それじゃあこいつ等はどうだ?」
田原は2枚の写真を鈴木康太の目の前に見せた。中学生の男女一人ずつ、聞けば当時の虐めの標的にされた子らしい。
「はぁ?こいつらがどうした?」
鈴木康太はまだ状況を理解できずにいる。写真の子供が誰なのかどうか察しているのかも怪しい。
「じゃあ美穂さんに聞こうか」
田原は静かにテーブルから釘数本とハンマーを手に取り、鈴木美穂の傍らに歩み寄った。
「ン゛ンー!!」
まだ口にテープを張られたままの鈴木美穂が呻き出す。
「何をする気だ?やめろ、やめろ!」
「おっさんは静かに見てりゃいいんだよ」
大野木が鈴木康太の無防備な腹部にバールで一撃を食らわせる。
「うぐぅ……」
大野木が項垂れる鈴木康太の髪を掴み上げ娘の姿が嫌でも見えるようにした。
田原は一旦深呼吸をした後、釘を彼女の左手の人差し指第三関節に当て、一気にハンマーを振り下ろした。
「ン゛ン゛ン゛ーーーーーーーーー!!」
鈴木美穂が体を大きく跳ねさせ悶絶する。釘は関節部を砕き貫通。椅子の手すりまで貫き通し、血の雫が先端から垂れている。
「美穂――!!!」
「名前を呼んだところで何も変わらない」
田原が冷たい口調で告げる。
「お前がもっと良い人間であったなら……」
「何を言っている?!誰なんだお前は?!なぜこんなことをする?!」
まだ状況を理解できない鈴木を横目に、田原は2本目の釘を中指の第二関節に当て、ハンマーを振り上げた。
鈴木美穂が激しく首を振る。恐怖の色が見える。身体を大きく抵抗させ、椅子を揺らすが大野木ががっちりと押さえつけ意味を成さない。
「や゛めろぉぉ―――!」
鈴木康太の声を無視して田原が再びハンマーを釘目掛けて振り下ろした。金属同士の激しい衝突音と共に鈴木美穂のくぐもった叫び声が響き渡る。彼女の身体は激しく跳ね、大野木と知立が二人掛かりで椅子ごと押さえつけている。
「君が小学校、そして中学校でやっていたことを思い出せ」
「――え?お前……田原か?」
田原のヒントにようやく状況を理解したように見えた。
「なぜ、なぜお前が?!俺が”お前に”何をした?」
「”なぜ”、よくもそんな惚けることができるね」
田原はまたも釘を手に取ると今度は鈴木美穂の右手の甲に打ち込んだ。
「クソッ!!美穂!なんなんだよ!」
「確かに君はワイドショーで取り上げられるような”酷い苛め”はやってない」
「あぁ!そうだろう!じゃあなんなんだ?!」
「だた、僕にはあれは”いじめ”に見えた。さっきの2人、もう思い出したとよね。彼
らがなんで成人式、同窓会に現れなかったのか。考えたことはあるかい?」
「そ、そんなのは子供の時によくあるやつじゃないか。悪かったと思ってるよ」
「もう遅い。僕も君を殺したいほど憎んでるわけじゃない。でも、死ぬ前に誰か殺す
って考えた時、君が思い浮かんだ」
「は?なんだよそれは!意味が分からない!理不尽だろう!」
「――あぁ、”理不尽”だよ。君のような人間がのうのうとこんな家に住んで、家族を
作って幸せに暮らしてる。実に理不尽だよ。だから君にも僕の気持ちを少しは味わ
ってもらおうかと思ってね」
田原はおもむろにドライバーを手に掴み、鈴木美穂の右目へと近づけていく。
鈴木美穂は泣きながら激しく抵抗を見せる。
「――おい、まってくれ、やめてくれ!」
「やるなら俺にしろ!美穂は関係ないだろ!」
「君だって同じことをしたろう?暴力とかの直接的なやつじゃなくて、筆箱を投げて
壊したり、弁当を捨てたり、そういうのと同じさ。僕も間接的にやってあげるだ
け」
田原はゆっくりと鈴木美穂の眼球にドライバーを差し込んでいく。
「ンンーーーーーーッ!!!!!」
足を大きくバタつかせる鈴木美穂。
田原はある程度突き刺した後、小さく円を描く様にして眼球を掻き混ぜ出した。田原の目には狂気が見える。時折、かつて眼球だった肉片がボタボタと眼孔から零れ落ちる。
しばらくすると鈴木美穂の身体は小さな痙攣を時々見せるだけで抵抗をしなくなった。気でも失ったのだろうか。ぐったりとした鈴木美穂を見て田原はスタンガンを手に取る。
「まだ終わりじゃない!この程度で許されるとでも?!」
田原がスタンガンを鈴木美穂の胸に押し当てる。
「ン゛ン゛ン゛ーーーーーー!!」
激しい電撃の炸裂音と共に鈴木美穂の身体が大きく反り返る。
鈴木康太は涙を流し唖然としている。田原の狂気がこの場を支配していた。
「まだ、夜は長い……」
田原のつぶやきと共に、部屋に電動ドリルの駆動音が恐ろしい旋律を奏で始めた。
骨が砕ける音。血が噴き出し、肉が崩れ落ちる音。
「まだ終わりじゃないぞ!」
田原の怒号と共にハンマーが鈴木美穂の”顔だった”場所に振り下ろされる。
「――もう、死んだよ」
大野木が少し寂しそうに田原に声を掛ける。田原は手に持っていたハンマーを床に放り投げた。
田原が息を切らしながら鈴木康太に向き直る。鈴木康太は床の一点を見て何かを呟いていた。
「やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ……」
「ハハハ……、ハハハハ……」
田原の乾いた笑い声だけが部屋に響き渡る。
「これが僕の怒りの形か……」
そう呟くと田原はバールを大きく振り上げ、鈴木康太の頭に振り下ろした。
鈴木康太は抵抗する様子もなく、バールの先端が頭蓋骨を貫き、一撃で絶命した。呆気ない最期だった。
まだ鮮血の滴るバールを床に投げ捨て、田原は呆然と立ち尽くしていた。
しばらくすると田原が徐に口を開いた。
「名塚君、いま僕の心はぐちゃぐちゃだ。怒りや悲しみ、罪悪感と達成感。人を殺す
ということがどういうことか。覚悟もしていたし、理解していたはずだった。でも
僕は甘かった。
混沌を常に見続けているような。地獄とも天国ともつかない場所に今、僕は居る。
この混沌から僕を救い出してくれるものこそ死だと理解した。名塚君、宜しく頼
む」
田原の目はぼんやりと遠くを眺めていた。
「分かった。とりあえず床に座ってくれ」
田原を壁際の床に座らせた。ペントバルタビールの液瓶と注射器を取り出し、田原を彼の言う”混沌”とやらから解放する準備をする。田原の表情には安堵が見られる。
「いいか?」
「あぁ、最後に、いろいろとありがとう。みんなも、それと名塚君」
私は田原の腕に注射をした。
徐々に田原の意識は朦朧としてきた。あと数分もすれば死に至る。私は彼に対する最後の仕事として内ポケットから彼の遺書を取り出し、そっと彼のそばに置いた。
それを見て田原は微笑を浮かべると深い眠りの中に消えていった。
「逝っちまったか……」
大野木が田原の死を確認して静かに言った。
「田原さん。最期はどんな気持ちだったのかしらね……」
荷物を片付けながら知立が誰ともなく問いかけた。
答えを考えていると、
――突如インターホンの音が室内に鳴り響く。
慌ててモニターを確認すると、
――警察だ。
さすがに音を立てすぎたか。
「大野木、知立と白山を連れて庭から逃げる機会を待て」
慌てて大野木に指示を出した。
「あんたは?!」
大野木が問う。
「私が出てチャンスを作る」
「プランは有るの?」
知立が不安そうに聞く。
「相手は二人。問題無い」
――恐らくな。大野木らが庭へ出ていくのを確認し、正面玄関へと向かう。
鈴木静香の血が扉ギリギリまで流れていた。
「ごめんくださーい、どなたかいませんかー?」
呑気な警察共が……
「今行きます」
ナイフを抜き、左手でドアをゆっくりと開ける。心臓の鼓動がひどく激しく感じた。
――瞬間、地面を蹴ってナイフを片方の警官の首目掛けて突き刺す。骨を掠めて深く切り込んだ感覚がナイフ越しに伝わってくる。致命傷を与えた。まず一人ダウンだ。
「――クソッ!!!」
もう1人の警官が咄嗟に銃を引き抜く。
構えられる寸でのところで私が体勢立て直し、銃を持つ手を弾く様にして相手の体勢を崩しに行く。
――銃声。
弾かれた衝撃で弾が暴発し夜の住宅街に響き渡る。大野木達にも良い合図になっただろう。
未だしっかりと握られている銃に気を払いつつ敵の顔を狙って打撃を出すが、
――かわされた。これはマズイな。
やはりそれなりの経験と技術がある相手は違うか……
仕留めるのを諦め、相手の体勢を崩したところで一気に近くの路地に滑り込む。
――又も銃声。
すぐ近くのブロック塀に当たった音がした。威嚇射撃ではない。完全に狙っている射線だ。
「止まれ!!」
後方から走りながら叫んでくる。
出来る限り角を多く曲がり射線を通さない様にしなければ。恐らく今頃応援の連絡も無線機で行っているだろう。何としても生きて帰らなければ。
いくつかの路地を曲がり、後方の警官の気配も消えた。巻いたのか。
丁度目の前に大通りが見えた。姿を隠すのにちょうどいい。
そう思い、足を速めた。――が、甘かった。
路地を横切ろうとしたとき右側にヘッドライトの光が急に目に留まった。
――ブレーキ音。そして衝撃。私の身体に瞬間的に激痛が走った。
次の瞬間、衝撃と共に私は2mほど跳ね飛ばされていた。
「うぅ……な、なんだ……?」
車の方を見ると赤のパトランプ。あの警官、先回りしてやがったのか!
撥ねたのは誤算だろうが、小賢しい。
激痛で立ち上がって逃げるのは絶望的だ。
「あー、こちら220。今犯人を見つけた。」
警官が無線通信をしながら車から降りてくる。
どう報告するつもりなんだ、此奴は……
警官が駆け寄ってくる。
相手が警官たった1人だというのに手も足も出ないとはな。
私の人生は、所詮はこの程度か……
――私が諦めかけたその刹那、銃声が響く。
見ると、警官の胸元からは血が滲み出している。
「あ……な、なんで……」
警官が状況を理解する間もなく地面に倒れこむ。
「はじめてにしちゃ悪くない射撃だろ?」
警官の背後から銃を持った大野木が軽口を叩きながら現れた。恐らく私が最初に殺した警官から盗んだ物だろう。
「車はすぐそこにある。肩を貸すぜ」
痛みは酷いが幸い歩けない程ではない。
「助かった」
私たちは車に乗り、その場を後にした。警官2人にナンバーを確認されていないのが功を奏し、無事にアパートまで帰ることが出来た。
知立と白山が傷の手当てをしてくれた後、皆疲れたのかすぐに寝入ってしまった。
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