第8話 異世界と魔女

ノーチェに案内されて家の中に入ると壁には天井まで続く大きな本棚、至る所にハーブがつるされていた


「素敵ね」母さんがつぶやいた



奥から声が聞こえてきた


「ノーチェ、こちらにご案内して」


若い女の人の声だ



「かしこまりました、皆さん、こちらにどうぞ」



大きな窓のある明るくて気持ちの良い部屋には一人の少女が座っていた


真っ黒い艶のある長い髪、青白い肌、背中には綺麗な色の蝶のような羽根が生えている



「きれい・・・・」



彩菜からほぅ・・・とため息が漏れた



深いエメラルドの瞳は吸い込まれそう、だけど僕たちを見ている感じがしないのはなぜだろう?



「クロム、久しぶりね。お元気そうで良かったわ」



「あぁ、ライラも変わらないな」


クロムが優しい口調で言った



少女は椅子から優雅に立ち上がるとグレーの品のあるドレスの裾を持ち上げて美しいお辞儀をみせた



「皆さん、わたくしの名はライラ・ルイーズと申します。あなた方がここにやってくることをお待ちしておりました」



「やはり、分かっていたのだな」


クロムがため息を吐く



「わかっていたとはどういうことかな?」


ここにきてからずっと黙っていた父さんが聞いた



「はい、わたくし達この世界の者たちは稀に特殊な力をもって生まれてくることがあります。


わたくしは少し先の未来が見えることがあるのです。」




「す、すごい能力だね!僕もそんな能力があればなぁ」


僕が能天気な事をいうと、ライラさんは困ったように笑った




「そんなに良いものではありませんよ?それに・・・わたくしはその代償として目が見えません、なんでもその力に見合った対価がいるのです」




あ、やっぱり・・・その宝石のような瞳は誰も映してはいなかったんだ


「ご、ごめんなさい」僕の馬鹿!




ライラさんはにっこりとほほ笑むと「優しい子ですね、いいのですよ。私は何にも不自由はしていませんし、ここでの暮らしは幸せですから」そして静かに話し出した




「先日、あなた方が来る事がみえたのです。他の全く違う世界からくること、クロムと会うこと、そして今日、ここに来る事。わたくしが見たのはここまで。帰り方が知りたいのですよね?お役にたつかわかりませんが・・・これは、わたくしの家に伝わる逸話ですが・・・嘘か本当か、なんでも他の世界に続く扉があると聞いたことがあります。そしてその扉の鍵を守っている者がいると。この話を聞いたのがまだ幼い頃でしたのでおとぎ話かと思っていたのですが、実際にあなた方とお会いして本当の事なのかもしれないと・・・ただ、今わたくしが覚えている事はここまでです、申し訳ありません」




「その、今は未来が見えないんですか?鍵がどこの誰が今もっているとか?」


父さんが聞くとライラさんはフルフルと頭をふり、「すみません、見たいときに見えるものではないのです。急に目の前に現れるものなので、もし何か見えたらお知らせしますから」といった




「そうか・・・先は長そうだな・・・」父さんがちょっとがっかりした声を出した




「あら?斗真さん、ちょっと希望がみえてきたじゃない?その逸話が本当なら、私達元の世界に帰れるかもでしょ?ライラさん、見ず知らずの私たちに教えてくれてありがとう、クロムさんもありがとう」


母さんは二人の手をとってお礼を言った




ここにきてまた一歩前進だ!


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