第7話 出発
朝焼けの中、上月家自慢のキッチンカーは妖精族の村に向かって進んでいく
僕は後ろのキッチンになっている部分で椅子に座りながらうとうとしていた
昨日から驚いた事が続いたせいで夜よく眠れなかったから・・・昨日の夜も最後にまた驚かされたなぁ・・・
それはお風呂の時間の話だ
「海斗、クロムさんにお風呂案内して、使い方を教えてあげてね」と母さんから言われ、お風呂場に案内するとクロムは「な、これは・・・凄いな、この湯はどこから汲んできたんだ?」
「え?あぁ、・・・沸いたお湯がね、出る仕組みになってるんだよ」
「なんと?沸いた湯がでるとは・・・魔石が使われているのか?それにしても素晴らしい」
まじまじと蛇口をながめるクロム
「魔石・・・は使ってないとおもうけど・・・あ、あとね、ここから体を洗うのにシャワーが出るから」
「シャワー・・・とは?ここからも湯が?」
「うん、ここを捻るとお湯が出るから」
「ほうほう」
「おにいちゃーん、クロムさんの着替え。私の新しいパジャマおいておくね、クロムさん、よかったら使ってね」
彩菜が顔を出す。
クロムが「・・・?」はて?という顔をする
「パジャマ・・・とは眠るときに着る服・・・ということであっているか?」
「そうだよ。彩菜は背が高い方だけど・・・サイズ、少し小さいかなぁ?」
「いや・・・そうではなくて・・・一つ聞きたいのだが・・・お前たちの世界では男も女も着る服は・・・その…同じなのか?」
「?え?同じじゃないけど?」
クロムは彩菜のめちゃくちゃガーリーなルームウェアをじっと見つめて一言。
「・・・それでは・・・なぜ我は女の服をきるのかね?」
「・・・え?」
彩菜と僕が固まった・・・小さな顔すべすべの白い肌。細長い手足・・・え?・・・
まじまじとクロムを見つめる。
「・・・我は・・・男だぞ。」
「えーーーーーーー?!」
僕らの声はお風呂に響き渡った
今思い出しても衝撃だった~・・・もしかしてこっちの世界ではあんまり男女の見分けがつかないのかな?
うーーんとうなっていると隣に座っている彩菜が「お兄ちゃんさ、クロムさんが男って知ってショック受けてたね」ウシシといじわるそうに笑う
「別にそんな事ないよ、ただ見かけじゃわからなかったからびっくりしただけ」
「ふーん」
窓の外は僕らの世界と似ているようだがやっぱりどこかが違ってる広い草原が続いている
コンコン
窓を叩く音がしてハッとする
窓の外には艶のある真っ黒い馬を操るクロムがいた
「海斗、もうすぐ着くぞ」
「了解!」
それにしても、美しい銀色の髪を風になびかせ漆黒の馬を操るクロム・・・王子的な感じ
彩菜なんかうっとりしてるよ・・・
僕はというと・・・さっそうとキッチンカーに乗り込む地味な中学生・・・もう比べるのやめよう、うん。
いつの間にか窓の外に畑らしいものや果樹園と思われる場所が広がっている
クロムの指示で僕らは小さな木でできた家の前に止まった
「村に入る前に友人を訪ねようと思ってな、紹介しよう、ついてきなさい」
クロムはそういうと庭の柵をあけて中に入っていった。
庭には沢山のハーブが植えてありいい匂いがする
「ライラ、いるかい?」
クロムの呼びかけに中から誰か出てきた
「クロム様、ようこそお越しくださいました」
そう丁寧に挨拶するのは黒い猫の耳をした小さな女の子だった
体つきは人間の女の子のようだけど耳としっぽが黒い猫のものだ、瞳の色はブルーとレッドのオッドアイ。
「か・・・かわいい・・・」母さんと彩菜がその可愛さに悶えてる・・・あ、この人たち猫が大好きなんだよね、でもこの子は猫ではないんじゃ・・・
女の子は僕らにもスカートの裾をつまんで丁寧にお辞儀をした
「私はお告げの魔女ライラ様の使い魔、ノーチェでございます」
魔女・・・?ここは魔女の家なの?
彼女はその美しい笑みで僕たちを見て「お待ちしておりました」と笑った
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