第6話 異世界と案内人 その2
クロムが言うにはこの世界は 魔族、妖精族、そして人族に大きくわかれているらしい
バサっ
クロムはどこからともなく取り出した大きく薄汚れた地図をダイニングテーブルに広げた
僕たちの世界の世界地図みたいだが、当たり前に地形は全然違う。
「いいか?我々が今いるのはここ、迷いの森というところだ。」
「だいぶ広い森だね、迷いそうだ」
「あぁ、普通の人間族はまず来ないな」
「どうして?」
「魔物が出るからさ」
クロムの言葉に背筋が寒くなった。
ま、魔物って・・・
そこに彩菜がひょいと会話にはいってきた
「ま、魔物って・・・どんなの?」
「うーーん。人のような奴もいるし、動物の形をしているものが多いな、禍々しい空気を纏いとにかく凶暴で、よく食うな。人でも妖精でも魔族でも・・・」
よく食べる・・・人を・・・?なんて恐ろしい・・・
僕は顔が青くなった
「・・・怖い森にいるんだね・・・僕たち 」
クロムは地図をみながら「ふむ・・・」となにやら考え込んだ
「偶然か・・・?この家の周りは大丈夫そうだな、お前たち、本当に運がいい。丁度このあたりだけは聖域といって女神の加護で守られてるからな」
父さんが顎を擦りながら訪ねた。
「女神の加護?」
「あぁ、姿を見たものは誰もいないが言い伝えには女神が降り立った場所は聖域となって魔物は入ってこれなくなっているらしいぞ。それにしても聖域の中にお前たちの家が転移されたのは偶然なのだろうか?」
クロムは頭を捻ってる
おじいちゃんが「して、お前さん、協力してくれると言っていたが・・・」
「あぁ、それなんだが、とりあえず情報を集めようと思うのだ。手始めにこの森を抜けて南にある妖精族の村に行こうと思う、妖精は魔族同様に長生きだから何か知っているやもしれん」
「地図上では結構遠そうだけど・・・歩いて行ったら何日かかるかな・・・これじゃあみんなでは無理だよね。」
おじいちゃんがそれを聞いてポンっと手を打った
「おい、斗真、ガレージにある移動販売車、無事だったか?」
「あぁ、確認済みだよ。考えてみれば電気自動車で良かったよな~、家で充電できるから。」
「クロムさん、ここからその村までどのくらいの距離かね」
「うーん、人族の足で歩いて2日ってところだ」
「ふむ、2日か、まぁ、いいとこ60キロほどとして、車だと約2、3時間ってところかのぉ?」
クロムははて?といった顔「クルマとはなんだ?馬車のことか?」
「そうじゃのぅ、馬の要らぬ馬車というところかの?」
「え?おじいちゃん、移動販売の車使うの?なんかかっこ悪いなぁ、僕、馬車がいいなぁ」
おじいちゃんの目がきらりと光る。
「馬車なぞもっとるわけないじゃろ、我が家の看板をかっこ悪いなぞという奴は飯抜きのけいじゃ!」
「はい。かっこいいです。上月家の移動販売車はうちの誇りです。」
「そうじゃろぅ、そうじゃろう」
「ふむ、馬の引かぬ馬車とな、楽しみだ」
クロムは輝くような笑顔でいった
「そういえば、そんな森でクロムは何をしていたの?」
誰も入りたくないような危険な森になんのようだったのか?
「あぁ、珍しい薬草や毒草、魔草のここは宝庫でな、高く売れるので取りにきていたのだ」
「毒草なんて買う人いるの?」
「そのまま毒として使う輩もいるが、毒も使い方によっては薬にもなるからな」
そのまま毒としてって・・・まさかね・・・
話し込んでいるといつの間にか窓の外は夕暮れ色に染まっていた。
少し開けたリビングの窓からは心地よい風にのって木々のざわめきが聞こえてくる。
いつもならこの時間、外からは騒がしい車の音や人の話し声、食事の支度をしているどこかの家から美味しそうな匂いがしてくるのに・・・
本当なら本の新刊をベットの上で読んでいる土曜日だったはず
「どうした?」
クロムが黙って窓をみてる僕に尋ねた。
「いや、人の人生ってわからないもんだなって思って」
僕が言った一言に周りの大人たちは目を丸くした
「ぶわははははは!」おじいちゃんと父さん大笑い、母さんとおばあちゃんも笑ってる。彩菜はいつもの通りシラっとしてる。
「おいおい、その年で人生かたるなよ~」
父さんが笑いながら僕のかたにそっと手を置いた。
「まぁ、こんな特殊な事どのくらいの確率で起こるんだって話だけどさ、だからこそ、楽しまなくちゃそんだろ?」
父さんは僕を見てとびきりご機嫌な笑顔をみせた
ほんと、基本お気楽な家族。でも僕はなんだかんだそんな家族で良かったって思ってるけど。
「ふむ、確かに人生はわからん。我も自分の思い描いていた通りになど今までなったことがないわ。だが斗真が言ったようにだからこそ面白いのよ、お前がこの世界をつまらなく元の世界に戻れぬと弱音を吐きながら生きる一日もせっかくこの世界に来たのだからと楽しみ、希望をもつ一日も同じ一日。どちらを選んでもお前の自由。ちなみに我も後者の考え方だ」
そういい微笑むクロムに僕は親しみを覚えた
おじいちゃんがクロムを見つめてつぶやく
「250歳であの見た目って反則じゃろ・・・」
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