第3話 天使との出会い?
家の中のスイッチというスイッチをいれて確認していく。
何と電気はやっぱり通ってるみたいだ
次はキッチンの蛇口を捻る。
じゃーーー。
普通に出ますけど・・・どういうこと?
「ス、スマホはどうだろう?」
恐る恐るつけてみる。
うん、電源入ることは入るね。圏外だけど・・・はい・・・通話もネットもできません。
「フフフ、お兄ちゃんの大部分を締めていたものは使えなくなっちゃったね。お気の毒さま」
彩菜が僕の背後で可愛らしい笑みを浮かべながら嫌味を言う。くっそー!かわいい顔したかわいげのないやつめ!もはやこれは悪口なのかな・・・
さて、彩菜と僕の部屋は確認終了
リビングに戻る前におじいちゃんとおばあちゃんの和室に顔を出す。
「おじいちゃん、どう?」
ふすまを開けると小さなテーブルを囲み、おじいちゃんとおばあちゃんはお茶をしながら窓の外をほっこり眺めている。
「おお、海斗。いやなに・・・こんな訳が分からない状態なのだけどな・・・景色があまりにも綺麗で、な」
「何言って・・・」
確かに・・・なにこの別荘間・・・窓から差し込む柔らかい日差し、窓の外に広がる緑の絶景。
うーん、贅沢。
「今まで自営業だったし、あなたと旅行なんてゆっくり行けなかったから、もしかしたら神様からのおくりものかしらね」おばあちゃんは幸せそうな顔してる。
「耳が痛いのぉ、無事、元にもどれたら温泉にでも行くとするかぁ」
こんな時でも和室は平和!
はい、和室も確認完了!
えーっと、飲み水OK、電気OK、通信系はダメ、生活するにはあとは食料ってところかな。
ぐるっと家の中を確認してリビングに戻ってきた僕。
「困ったわね~、こんなことなら昨日のうちに冷蔵庫いっぱいに食材を買っておいたのに~」
「母さん・・・普通はこんなことあるわけないから」
はぁ、この家族の中で頼りになる大人って父さんだけか・・・。
その横を父さんが通り過ぎようとしている。「海斗、父さん、も一回寝てくるわ。夢から覚めるかもしれないから」
ダメだ・・・冷静だと思ってたけど現実逃避だったのね。
「お兄ちゃん、ここにいてもこの状況が変わるとは思えないんだけど。外を見に行ってみない?もしかしたら日本のどこかかもしれないよ?」
「おー彩菜、お前がいてくれて今なんだか心強いわ」
頼りになる12歳。
「とはいえ・・・俺たちだけじゃ心細いな・・・、やっぱり父さんを起こすか」
「おーい、海斗、おじいちゃんが一緒に行こう。奈々さん、水筒用意してくれるかの?」
いつの間にかおじいちゃんが僕の後ろにたっていた。
「でもお義父さん、大丈夫ですか?斗真さんも一緒の方が・・・」
「なぁに、散歩は日課じゃから問題ないさ。とりあえずこの周りだけでも見てみるとしよう」
僕らはまた恐る恐る外に出てみた。
森の木々は手付かずの様でもあり、まるで計算されて植えてでもあるかのようにとっても綺麗だ。
高い木の枝は空を覆ってしまっても不思議ではなくらい伸びているのに誰かが間引いているようにちゃんと陽の光が地面に降り注ぐようになっている。だからか地面には色とりどりの草花が咲いている。
綺麗だ。
「これは・・・まるで彼岸のようじゃな・・・」ちーん。おじいちゃん合掌。
「おじいちゃん!不吉な事いわないでくれよ!」
「でもお兄ちゃん、本当にきれいなところだね、あ、あれ」
彩菜が指を指した方向に赤い実がなっている木が見えた
何の実かな・・・、何気なくそちらの方に歩き出そうとした瞬間僕の体はその場から消えた
少なくともおじいちゃんと彩菜の目にはそう映ったはず
正確には崖になっていることに気づかないで進み無様に落ちていっただけだけど。
「海斗ーーーー!!!」「おにいちゃーーーん!!」
遠くなる二人の声
・・・真っ逆さまに落ちていく・・・
やばい・・・やばい・・・し・・・死ぬ・・・
結構な高さを落ちていく そこで僕は意識を失ってしまった。
気が付くと僕は真っ暗な場所にいた。
暗い・・・何にも見えない。そうだ・・・僕、崖から落ちたんだった。
死んだの?え、僕どうなっちゃったの?こんな訳の分からない世界で僕の人生終わっちゃうの?
「ヒック・・・うぅ・・」
?誰かの泣き声が暗闇から聞こえてくる。
「誰かいるの?」
恐る恐る声をかけてみるけど返事はない
どこを歩けばいいのかわからない、けど、泣き声のする方へ歩きだそうと一歩踏み出す。
カシャリ・・・
ん?何か固いものを踏んだような・・・
しゃがんで確認してみる・・・ん?・・・これって鎖かな・・・
「うぅぅ・・・ヒック・・・」
声のする方から伸びているようだ。
もう一歩踏み出そうとしたとき、背後で別の誰かの声が・・・
「・・・い・・・お・・」
「え?」
次第に泣き声が遠ざかり明るくなっていく・・・
「おーい」
ぱち!目を開けるとまぶしい光とともに誰か覗き込んでいる。
「え?何?ここどこ?僕、どうなったの?」
横になっていた体を勢い良く起こしたものだから”ガッツーーーーン”
「いってーーーーー!!」 「つ・・・・・」
覗いていた誰かの額に僕の額が勢いよくぶつかった
「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
目の前がやっとクリアになり、ようやく周りの様子が目に入ってきた。
僕の前の人物は額に手をあてて痛みに耐えているご様子。
黒い艶のあるローブに身を包んだ線の細い・・・女の子?
「お前・・・随分と頭が固いな。それでも人間なのか?」
赤くなった額から手をどけてこちらを見るその顔はまるで人形のように綺麗だった。
小さな整った顔、陶器のようになめらかで白い肌、長いグレーのまつ毛、ローブのフードから覗く髪の色は綺麗な銀髪、瞳は深い海を思わせるようなブルー・・・美少女・・・ん?・・・声・・・低くない?
「ぽかんと口を開けて動かないとは、どうやら頭をうったらしいな」
やっぱりひくい~、何?このギャップ、顔と声が一致しないんですけど??
「あの、僕、崖から落っこちましたよね、それも結構高さのある」
「あぁ、落ちてきたな、お前の後ろの崖から」
後ろを振り向くと崖は結構な高さがある
「死んでない・・・なんで?」あんなところから落ちたのにかすり傷ひとつないなんて
「ふむ。私が助けてやったからな。」
「え?どうやって?君の細い腕じゃなくてもここから受け止めるなんて芸当できるはずないよ」
「お前、私を何だと思っているんだ?この格好をみれば私が何者なのかわかりそうなものだが?」
「?」
「はぁ~、まだ混乱しているようだな。まあよい、崖の上でお前を呼んでいるものがいるようだし、そこまで連れってってやろう。それにしてもお前は本当に運の良い子だ」
運の良い子って、そんなに年変わらないと思うけどな。
「階段でもあるの?」
「もうよい、黙っておれ」
ローブの子は僕の側によると僕の手をとった
う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ、女の子と手を繋ぐなんて、しかもこんな可愛い子と!天にも昇る気持ちだ・・・あれ?俺・・・本当に昇ってない?てか浮いてるよね?!
僕の体はローブの子とともに浮かんでいる
「なんだ?こういう魔法は初めてなのか?珍しいやつだな、しっかりつかまっているのだぞ」
すごい速さで崖を昇っていく
きゃあぁああああ~!
僕はまるでお化け屋敷で彼氏にくっつく女の子のような体制になってしまっている。
ローブの美少女は「情けないやつよ」と笑っている。
崖の上まで飛び上がったとき、ボロボロ涙を流している妹と必死に僕を呼んでいるおじいちゃんと目が合った。二人はあんぐり口をあけている。
陽の光にローブから出てる銀色の美しい髪がキラキラと反射する
白い美しい顔が照らされる
それはまるで天使だった
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