第2話 切り取られた総菜屋

前書き


家族の紹介をさせて頂きます。


僕➡上月 海斗(14歳)中学2年生


妹➡上月 彩菜(12歳)小学6年生


父➡上月 斗真(40歳)


母➡上月 菜々(38歳)


祖父➡上月 真一(70歳)


祖母➡上月 春子(65歳)


上月家はお総菜屋さんをしていました。






僕の家は、商店街にある「手作りお総菜屋 上月」という小さなお総菜屋さんだ。


右隣は八百屋、左隣は小さな路地を挟んで花屋がある。


昨日までは間違いなく家はそこにあった。


僕はもう一度玄関を開けてみる・・・うーん・・・森・・・。


念のためお店側の勝手口も開けてみる。・・・はい。森林。



僕は顎に手を当てて考える。


(これって、これって・・・今アニメや漫画で流行りの異世界召喚・・・とか転移とか・・・そ…そういう系なのでは?)


僕の大声でやってきた母さんと妹も信じられないといった様子だ。


ちなみに母さんは僕の頬っぺたを捻り夢じゃないかと確認していた。


ひどい・・・




「海斗、何だかわからないけど取りあえずお父さん起こしてくるわね!」


普段恐ろしいほどの天然キャラの母さんも慌てている。


妹の彩菜は窓の外を食い入るように見ている。


「おいおい、もう少し寝かしてくれてもいいんじゃない?」


スウェット姿の父さんがボサボサの寝癖頭に眼鏡をかけて起きてきた。


「斗真さん!それどころじゃないの!ドアがおかしいの、開けてみて?」


いや、母さんドアがおかしいんじゃないと思う。


「え~?朝からドアの修理しなくちゃいけないのかよぉ」


ガチャ。


・・・・・・・・・・。


「え?」


・・・・バタン・・・


そしてまた・・・ガチャ・・・


「おーい・誰か俺を脳ドックに連れてってくれーい」


父さん。


「ね?変でしょぉ?私が変なのかって思っちゃったわぁ」


母さん・・・。


それからしばらくドアが壊れますよーってくらい開けたり閉めたりを繰り返してみんな静かになったところだ。


そこに茶の間からようやくおじいちゃんたちがやってきた。


「斗真・・・見たか?外?」



「おやじ・・・血圧大丈夫か?」



「ん、多分大丈夫じゃ。斗真お前・・・なんかしたんか?」



「おやじ・・・残念だけど俺のできることの範囲ではねーわ」



まぁ、こうなるよね・・・。



「とりあえず、家の周りを見てみるか」



父さんはため息をつきながら玄関を開けた。



「僕も」


玄関の外は見たこともない森のなかだった。



周りにある木々は幹がすごく太くてきっと長い年月をこの森が生きている事がわかる


空を覆うように伸びている枝から覗く青空と降り注ぐ暖かな日差し・・・こんな非常事態なのになんて気持ちのいい空気なんだ。サンキューマイナスイオン!!


はっ!いけない、いけない。



周りをぐるっと見渡してみる、うーん、この辺り人がいる感じしないんですけど。


草は伸び放題だし・・・道らしい道はここからは見えない。



まじまじと家を観察するけど、そのままそっくり切り取られてここに持ってこられたみたいだな・・・



「海斗、斗真さぁーん!お茶にしましょーう」



母さん、マイペースだなぁ。



「そうだな、海斗、一度中に入ろう」



「う、うん。」



その時、何者かがシャツを引っ張った



「うぉおお!」な、なに?



振り返ると彩菜が無表情のまま僕を見つめていた。



「お兄ちゃん、そんなに驚くなんて本当にヘタレね」



「お前が驚かすからだろ!」



「可愛い妹になんなの?さっきからここにいたじゃない?」



彩菜は小さい頃からこんな感じだ。ホント可愛くないやつ。


いや、見た目は兄の僕が言うのもなんだけどかなり可愛い方だと思う。



長いサラサラの黒髪に小さな顔は人形みたい・・・が・・・性格が・・・ね・・・。



リビングのソファーにみんなで腰かけて温かいお茶を飲んで一息・・・。



ん?温かいお茶?



「母さん、これどうしたの?」



僕らは・・・世界から家ごと切り離されたはずだよな・・・



「ん?何が?」



「いや、だから何で沸かしたの?」



「キッチンのコンロにきまっているじゃない?」


キョトンとしている母さん・・・




うち・・・オール電化じゃなかったっけ?




父さんが勢いよくソファーから立ち上がりリビングのシーリングライトのスイッチをいれると・・・



「点いた・・・どうゆうことだ?」



父さんは目を丸くして呟くように言った。



「家の周りには電線なんてなかった・・・まだ・・・全部を切り離された訳じゃないって事か?」




こうして僕らの謎だらけの新しい世界での一日が始まろうとしていた。


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