はじめまして、から。

初詣とその爪の形について。

はじめまして、と顔を合わせてから４日後。

私たちは地下鉄改札、午前11時に待ち合わせをした。

「次、会いませんか？」

この言葉を掛けられる予測はしていなかった。

社交辞令で

「じゃあまた、」と去っていく人を数人と見送ってきたから。

改札前で落ち合った私たち。

5分程遅れてきた（まだ親しくもない）彼を見つけて、

なんとなくほっとして、またすぐ緊張が始まる。

その足でバスに乗り、初詣を目指し、大吉をひく。

お腹空いたね、お正月だからお店空いてるかな、

なんて喋りながら、私の大好きな川の散歩道を歩く。

三が日で混雑する飲食店、向かい合ってランチを頂く。

彼はジンジャエールを注文した。

私が一番好きだった、そして忘れられない人が

映画を観る時に注文した、ジンジャエール。

これから「ジンジャエール」と接する時、

いちいち思い出すのだろう、どちらか、若しくは両方のこと。

それから。

約4時間ほど、本を選び、街を歩き、静かな茶店でお茶をした。

あぁ今日も素直になれなかった。

いつの時点で恋は発生するのだろう、目に見えないと不便なことがある。

彼を改札まで見送り、ほっとして、心が "しゅん" とした。

もう一度会える確約がないまま見送る背中、

もう会わないほうがいいと思った背中、

今まで会った多くの人々の、しかも性別を問わず、

誰よりも綺麗な手を（爪の形も）していた。

次、会えないのであれば

私は今日の素直じゃない自分を悔やむんだろうと思って

だけど、素直になれなかった理由をわかってもらいたくて。

私が聞ききれない過去を包んできたのだろうか、

その綺麗な手で。

今日の初詣と、その爪の形について、

初夢にしてもいいかな。