第1話
目が覚めた私は
傍らで言い合う声を聞いた。
内海屋「お前いい加減にしろよ、いつまでも甘ったれてんじゃねぇよカス」
鳥遊里「貴方こそ自分の意見を押し付けることしかしないじゃないですか、少しは人の意見を取り入れたらどうですか?朴念仁」
…いつもの事か。
私はもう一度眠りにつこうと体制を整え
頭まで布団を被った。
ガチャリ
とドアノブが下がる音
入ってきたのは紫香楽だ。
紫香楽「また言い合いしてるのか、本当にくだらないし低俗なことしか出来ないの?楽しい??」
煽るような口調。いつも通り腹のたつやつだ。
内海屋「お前にだけは言われたくねぇよこのドグサレゲス野郎が」
鳥遊里「貴方にだけは言われたくないですね、白黒カビ饅頭さん」
酷い言われようだ、と思う人もいるかもしれないが
紫香楽は1ミリもその言葉を気にしちゃいないし
なんなら彼にはこんな言葉すら生ぬるいのだからなんの問題もない。
紫香楽「そこで布団を被っているバカはまだ寝ているのか?」
俺「刺すぞ」
紫香楽「おうおうおう威勢がいいじゃないか」
他愛もないいつものやり取り
彼らは
きっと今だって
私の事を憎んでいるのだろうが。
切り離してしまったアレを
今受け止めているのは彼らなのだから。
覚束無い足取りとぼやけた視界に
飛び交う暴言。
今日も私は行かなくてはならない。
足が重い。
どうせ
全部
彼らに回るのだから
私は今この瞬間だけ
頑張ればいい。
全て
彼らが受け止めてくれる
酷なことを強いているのだろうか。
知っているのだ、本当は
内海屋が
鳥遊里に
こんなことをしたくないのも
紫香楽がそれをニタニタ笑ってみているのも
俺が不甲斐ないから、
全て捨ててしまったから
全てから逃げてしまったから。
傷だらけの腕には包帯を巻き
錠剤の無くなった小瓶を処分する。
食事はとらずに今日も生き地獄へと向かう。
まぁしかし
気がついた時にはきっと
私ではない誰かが
私の代わりに事を済ませて来てくれるのだろう。
頭が上がらないよ。全く。
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