第1288話 群集支援種の確保
スミからの危機察知回避の攻撃皮切りに俺らへ青の群集からの攻撃がはじまり、それを止める形でオオカミ組と未成体以下の妨害組が動き出した。元々この動きを狙ってたな、ベスタ!
それにしても、ここで水月さんが指揮を取っていて、ここでは手を出さないって方針だとは思わなかった。そりゃまぁ、放置しておいても確実に戦闘になるんだから、そういう手段も確かにありだけど――
「スリム! ケイさん達の方へ回って下さい!」
「ホホウ! 了解なので!」
「ふん、行かせると思うのか!」
「ホホウ!? ベスタさんの攻撃は危険過ぎるので! 『アースクリエイト』『土の操作』!」
「僕らがいるのを忘れてもらったら困るよ? 『アブソーブ・アース』!」
「あははははははは! 無駄、無駄、無駄! 全員、ここで安全圏送りにしてあげる!」
「ホホウ!? ジェイさん、これは突破は無理なので!」
「くっ! 属性の相性が厄介過ぎますね!」
下は下で物騒な会話が聞こえてるけど……あの一画には戻りたくないな! あそこからよく少しでも離れられたもんだな!?
あー、その辺は時間稼ぎをしてくれたみんなに感謝だけど……上にはどうやって抜けたものか。オオカミ組が主体で抑えてくれてるとはいえ、青の群集が明確に狙ってきている状況では動きにくいにも程がある。
「ケイさん、今のうちに手早く伝えとくね。上に海エリアの人達と、灰のサファリ同盟の人達が集まってきてるから――」
「これでは埒があかん! 行くぞ、疾風の! 『自己強化』『高速飛翔』!」
「ちょっと早いが、かき乱してくるぜ! 行くぞ、迅雷の! 『自己強化』『高速飛翔』!」
「あ、風雷コンビ、ちょっと待って!? あー! みんな、もう作戦実行! 大急ぎで!」
「「「「「おー!」」」」」
なんか上から聞き覚えのある声が多数聞こえてきたけど、これって……おわっ!? 風雷コンビの2体の龍が下に向けて急降下してきてる!? その背に何か岩での固定がされて……あ、なんか小動物系の種族や昆虫系の種族がいっぱい?
「わっ!? 思った以上に速い!?」
「あっ、ラックなのさー!?」
「降りてきてるの、灰のサファリ同盟の人達かな!?」
「ハーレ、みんなも、ここまでご苦労様! でも、この後ももうひと仕事お願いね!」
「……はい!?」
下に向かっていくすれ違い様に、そんな事を言って……って、一体何をする気だ、これ!? ん? なんか見えた範囲で知ってる人は土の操作か岩の操作を使ってるのを見た事がある人ばっかなような……?
「風雷コンビに遮られたけど、アルさん、ミズキをしっかり根で受け止めてね! ラックさん達がアップリフトで吹っ飛ばしてくる予定だから! 私達、ミズキの回収係!」
「そういう手段か!? 無茶な事を考えるもんだな!?」
「あー、土の昇華持ちばっかが降りていったのか!」
「うん、そういう事! その上で乱戦の中で、正確にミズキとサツキを見つけて届けられる人達が向かったから!」
「風雷コンビなのは、あの乱戦を避け切れるって判断ですか!?」
「うん、そういう事!」
なるほど、風雷コンビの連携はあのレナさんですら手を焼く程のものだし、龍の方なら自由自在に飛べもする。その上、背中には他の大量のプレイヤー達が乗っているのなら、多少の攻撃程度では攻撃自体が届かないか。
「ここであの暴走コンビですか!? 斬り落としますよ、斬雨!」
「待て待て! 今の状況でそっちにばっかり意識を割けるか!」
「そりゃ、そうだよねー! 『連脚撃』!」
「くっ!?」
「この動き……狙いはミズキとサツキだね?」
「ふん、今狙うのにそれ以外の何がある? 言っとくが、ここから先へは行かせねぇぞ」
「あはははははは! 止められるものならね!」
「全滅したとしても、意地でも止めるだけだっての! 『ファイアクラスター』!」
あの乱戦の中を風雷コンビは上手く掻い潜っていくもんだな!? ベスタ達が危なそうな攻撃を妨害してるとはいえ、あの速度でよく突っ込めるわ!
「わははは! 誰も我らを止められぬぞ、疾風の!」
「わははは! そうみたいだな、迅雷の!」
「あ、どっちかを見つけた! 迅雷さん、あそこ!」
「あれか! 了解した! 先に行くぞ、疾風の!」
「おうともよ! 分けて隠してる可能性があるって話だし、もう片方もサクッと見つけてくれや!」
「うん、そのつもり!」
ラックさんが乗っていたのが、まだ飛んでいる疾風さんの方か。……今見つけたのはラックさんみたいだけど、迅雷さんが地面に降り立っていった?
どこにミズキやサツキがいるかが分からないけど、場合によっては俺らがこれを回収しないといけないのか。
「やってくれたね、弥生さん! レナさんの読み通り、やっぱりどさくさに紛れて闇の操作で隠してた! 『黒の刻印:剥奪』! わっ!? 岩で囲まれてる! みんな、大急ぎで除去をお願い!」
「みんな、やっていくよー! 『岩の操作』!」
「うげっ!? すげぇ岩の量だけど、これ、ちゃんと生きてるよな!? 『岩の操作』!」
「生きてなきゃ、もうネコ夫婦がここに留まってる訳がないって話だったよね! 『岩の操作』!」
なんか岩を積み上げられて埋められてたっぽいけど、その中に黒く染まった状態のサツキがいたようである。位置が分からなくなってたと思えば、そんな状況になってたんかい! 完全に黒く染まってないのは、その前に阻止したからか。
こんな仕込み、一体いつ……って、俺らが突入した時からか! いや、その前か……? 実行したタイミングは分からないけど、この仕込みが終わったからこそ、こっちの戦闘に参加したのかも!?
「あ、こっちはサツキだけだ! 完全に黒く染まってはいないが、かなり弱ってるが、なんとか生きてるぜ!」
「それじゃ染めていくよ! 『纏属進化・纏瘴』『瘴気収束』!」
「「「「『纏属進化・纏瘴』『瘴気収束』!」」」」
「ここは意地でも守り切るぞ! 『纏属進化・纏瘴』!」
「「「「「おー! 『纏属進化・纏瘴』!」」」」」
迅雷さん以外の全員が染める目的以外でも纏瘴を使ったって事は、状況次第では瘴気魔法をぶっ放すつもりか! 確かに継戦能力は潰せるから、この状況としてはありな手段だな。……自分達は戦線離脱の覚悟がいるけどさ。
「あらら、バレちゃった。ドサクサに紛れて、トンネルの方に吹き飛ばそうと思ってたのに……」
「あ、やっぱりそんな狙いだったんだ? まぁ、阻止しには行かせないけどねー?」
「ふん、易々と突破させる気はないからな」
「死んでも、ここで死守するまでだぜ!」
赤の群集がサツキを奪還しに行くのは、ベスタ達を筆頭に抑えはいるし、染めている人達の周りにも瘴気魔法での迎撃体制を用意したから迂闊には動けないはず。
「……これは染められるのを阻止するよりも先に、ミズキをここで異形化させた方が早そうだね。ウィルさん、頼んだよ」
「あぁ、その準備は終えている!」
「ミズキはそこか!」
「そうかも! 近くを探すね、疾風さん!」
ちょ、ウィルさんが湖の壁面に埋まってた!? え、いつからそんな隠れ方をしてた!? いや、気にするのはそこじゃない! ちっ、そりゃ弥生さんとシュウさんが隠してたんなら、赤の群集は場所は分かってるよな!?
「はっ!? ラック、それはフェイクなのさー! 本命は、反対側のライさんがいる方! 『看破』!」
「相変わらずどうやって見つけてんの!?」
ちょ、ウィルさんが出てきた方向に意識が逸れてたけど、対岸側で瘴気を纏ってるカメレオンがチラッと見えてるじゃん!? くっ、既に纏瘴済みで、なんかツタの未成体を咥えてるし、ミズキの元に辿り着いたらアウトじゃん!?
「ハーレさん、俺と2人で下を支援する! 他のみんなは、周囲の警戒を頼んだ!」
「おうよ!」
「了解! 防御用に出しとくね。『アイスクリエイト』『強化統率』『強化統率』! ハチ1号、2号、『防衛行動』!」
「任せてかな!」
「……頑張る!」
「『狙撃』! ミズキはどこだー!? 『狙撃』!」
ハーレさんも探してるけど、マジでミズキはどこだ!? えぇい、どこにいるかが分からないけど、このままライさんを進めさせてたまるか! 周囲の警戒はみんなに任せて、俺もライさんの行動阻止に回る!
<行動値10と魔力値90消費して『半自動制御Lv1:登録枠2』を発動します> 行動値 112/122(上限値使用:1): 魔力値 216/306 再使用時間 90秒
アクアクラスターを使いたいとこだけど、あれを使って魔法砲撃で狙っても効果が出るのは最後の1撃を放った後。だから、今はアクアボールの15連で登録しているこれで、60連発を撃ち込んでやる! 照準、見えるようになったライさんの進行方向の少し前!
「ぎゃー!? ちょ、狙撃にアクアボールの連射!? 誰かヘルプー!?」
「ちっ! 俺が気を引く予定が、気付くのが早過ぎるだろ!」
「ウィルさんの文句なんか知るか! ラックさん、疾風さん、今のうちに――」
「青の群集を無視し過ぎじゃねぇか、おい! 『ウィンドクリエイト』『強風の操作』! ライさん、行け!」
「おぉ!? まさかの助っ人! 助かった!」
「邪魔すんな、ジャックさん!」
「ボスへの誘導役はどうしても必要なんでな。ここは利害の一致って事だ」
「目の前の戦闘を放棄してってのは随分と余裕があるじゃねぇか! 『爪刃乱舞』!」
「おっと、余裕があるって訳でもないんだが……な! 傭兵組も随分と数が減ったが、生き残ってたか、羅刹さん」
「まだ死んじゃいねぇ以上は、灰の群集の利益で動くだけだっての!」
ナイス、羅刹! 傭兵の状況は全然確認出来てなかったけど、普通に生き残ってたっぽいね。あ、北斗さんも生き残って戦ってる最中だな。時雨さんは見当たらないけど……って、その確認をしてる場合か!
羅刹がジャックさんの強風を乱してくれているうちに、ライさんへの攻撃を再開! ともかく連発でぶっ放せ! 獲物察知で探しても、完全に染まり切ってたら分からないし、ミズキを探すのはラックさん達に任せる!
「あ、見つけた! ミズキは多分あの岩の中! 疾風さん、急いで!」
「あれか! だー、くそったれ! 急がねぇと!」
「何をやっている、疾風の!?」
「うっせーよ! 迅雷の!」
「何を!?」
「何だよ!?」
「風雷コンビ! 喧嘩してる場合じゃないだろ!」
「「ふん!」」
思わず声が出たけど、この土壇場で喧嘩を始めるか!? あーもう、これだから風雷コンビは! いや、状況の推移を確認しない訳にはいかないけど、俺らもそっちばっかりに集中してる訳にも――
「……アルマースさん……上!」
「ちっ、また攻撃か! 全員、落ちるなよ! 『旋回』!」
「おわっ! ちょ、今の瘴気を纏った風属性の龍ってイブキか!?」
「この土壇場で、また突っ込んできたのかな!?」
思いっきり風の衝撃魔法を叩きつけて……いや、違う? それだとアルが避けた時で効果は切れるはず。これは……下に向けて叩きつけている強風の操作か!
あ、迅雷さんの方へ突っ込んでいくイブキっぽい龍に向かって、羅刹のティラノが跳び上がって迎撃しようとしてる。
「おい、羅刹さん!? 戦闘を放棄云々は自分で言ったばかりだろうが!?」
「はっ、そんなもん状況次第だ、ジャック! おい、イブキ! このタイミングで乱入とは上等じゃ……っ!? てめぇ……イブキじゃねぇな?」
え? 羅刹へ攻撃が当たって、そのまま交戦状態に入りそうだったのに、風が消えて、羅刹も攻撃を止めていた? なんでそんな事に――
「ちょ!? ウィル! その龍、ツタを持ってんぞ!」
「なんだと!? いや、それはいい! ライ、早くしろ!」
「見ての通り、必死で走ってますけどー!? げっ、先回りされた!?」
「疾風さん、足止めをお願い! これ、多分だけど生成してる誰かがいる岩だね! 剥奪するから、終わったらすぐにアップリフトをいくよ!」
「「了解!」」
「近付けさせねぇよ! 頼むぜ、迅雷の! 『エレクトロクリエイト』!」
「ふん、任せておけ、疾風の! 『エレクトロクリエイト』!」
「「くたばれ! 【サンダーボルト】!」」
あれ? いつの間にか迅雷さんもこっちに向かってきてる……って、さっきのイブキっぽい黒の統率種の龍は!? 羅刹もスルーしてたし、なんでそんな状況になってんの!?
あ、いや、こうなる状況は1つだけ考えられるのか! イブキと同じ構成の黒の統率種は途中で見かけたし……今の灰の群集には、この状態に合致する傭兵が1人いる!
「この2人、さっきまで喧嘩してなかったっけ!? あ、ツタが死んだ!? ぎゃー!?」
よし、ライさんは死んでこそいないけど、持っていた未成体のツタの撃破は出来た! ナイス、風雷コンビ! ついさっきまで喧嘩しかけていたとは思えない連携!
「ちっ、相変わらずこの暴走コンビは!」
「ジャック、その乱入した龍は放置で構いません! 止めるべきは、シュウさんと弥生さん――ぐっ!」
「あはははははははははは! 黒の統率種に進化している灰の群集の傭兵さんは、仕留めなきゃねぇー!」
「最悪進化してもいいとは思っていたけど、流石にそういう形で異形に進化させる訳にはいかないね。『並列制御』『ウィンドクリエイト』『ウィンドクリエイト』!」
げっ!? 流石に消耗はしてるのか、威力も範囲も控え気味だけどストームで吹っ飛ばしてきた!? この荒れ狂う状況だと、飛びにくいのか黒の統率種の龍が……いや、ツタを抱え込んでわざと吹っ飛ばされた!?
「いい混乱具合だ! やれ、ラック! アルマース、しくじるなよ!」
「いっくよー! 『黒の刻印:剥奪』!」
「「『アースクリエイト』!」」
ちょ、どこを見たらいいのか訳が分からなくなってるような状況で、それを実行する!? あー、でも混乱しているからこそ、一瞬の隙が重要になるのか!
「アル、受け止め損なうなよ!」
「分かってるっての! 『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」
ははっ、完全に黒く染まり切ってしまっているけど、俺らの方へ吹っ飛んできたミズキのキャッチは成功! ……地味にアルが軽度の方の瘴気汚染になったけど、今は気にしてられるか!
「この状況で強行されましたか!? スミ、上で阻止をお願いします!」
「んな事は分かってるが、もっと増援を寄越せ! カズキの捜索に人員を割き過ぎだ! 灰の群集、雑魚が多くて邪魔過ぎるんだよ!」
「くっ! 嫌な手段を何度も!」
そんな声が聞こえてきてるけど、どうもアイルさん発案の妨害作戦が思った以上に効いているっぽい! さーて、それじゃ俺らは一旦ここを完全に離れますか! ……無事に離れられるといいんだけどな。
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