第1201話 実験台のゾンビな大蛇
苦手生物フィルターの設定を緩和させて、ヘビの見た目を他のものに置き換えるレベルからデフォルメまで下げる事は出来た。苦手意識が消え去った訳じゃないけど、フラムが余計な事ををしたせいでの一時的な気分の問題だったかー。
まぁその辺はどうにかなったからいいとして、まだ少し集合までには待ち時間がある。ベスタも今日は都合が悪いみたいで、結構ギリギリになりそうだって言ってたもんな。
まぁその辺は仕方ないし、今はとりあえずゾンビな大蛇の討伐開始! ヨッシさんの『強化統率』の効果も知りたいし、根本的にゾンビの敵の共通点も調べておきたいしね。
「さてと、まずは識別からなー。俺がやるのでいい?」
「そりゃ別に構わんが……峡谷エリアのトカゲと耐性は同じだと聞いたぞ? 違う特性は『突撃』が『牙撃』になってる程度だって話だが……」
「あのトカゲと殆ど同じなんかい!? あー、今回の移動妨害のボスってどこも極端な差がないタイプ?」
「あー、海とサバンナの方はスケルトンの方らしいけどな。2パターンあって、どっちかみたいだな」
「なるほど、そういうパターンか!」
ふむふむ、ゾンビかスケルトンの2択なのか。そうだとするとゾンビが『刺突耐性』『氷属性耐性』『毒属性耐性』を持っていて、スケルトンが『斬撃耐性』『火属性耐性』『雷属性耐性』を持ってる? 確か耐性関係の特性はこうだったはず。
というか、それが分かってるのなら……無理に今から倒す必要もない気がしてきた? いや、でももう目の前まで来ちゃってるし、ヨッシさんの『強化統率』を見ておきたいって目的はあるんだから、無意味ではない!
「なんだか、私はとことんゾンビもスケルトンも相性が悪いよね……」
「まぁヨッシさんはそうなるよな。1体で全部を兼ね備えてないだけマシだけど……」
「あはは、確かにそれはそうかも」
でもまぁ氷属性は冷気としてではなく、質量のある物体として使うのならダメージは与えられるから、氷塊の操作を使えばどうとでもなる。毒にしても敵によっては元々効かないのもいるから、そこは絶望的な内容ではないか。
「まぁ峡谷エリアの安全圏にいるゾンビなトカゲと対して変わらないなら、色々試しながら倒してみるか。ヨッシさんの『強化統率』を見ておきたいしなー」
「実戦ではまだ見てないのさー!」
「どの程度、使えるものかな?」
「……そこは……大事」
「サヤとアルさんと風音さんには一応スキルの発動自体は見せてはいるけど、まだ実戦で使った事が無いしね。その辺、試させてもらうよ」
「ま、誰も使い勝手を把握してない状況だしな。ケイ、どう運用するかには重要な部分だぞ」
「それは分かってるって。状況的にヨッシさんメインになるけど……それで問題ない?」
「元々そのつもりだし、問題ないよ」
「それじゃ任せた!」
「了解!」
さーて、ヨッシさんの得た新スキルとなる『強化統率』の効果はどの程度のものか? これまでの通常スキルの『同族統率』だと下位の進化階位でしか生成出来なかったけど、『強化統率』なら本体の7割程度の強さとはいえ同じ進化階位で生成出来るようになる。どれだけの戦力になるか、ここで見極める!
「えっと、属性はどれがいい? 基本的には今までと同じで直前に使った魔法の属性が反映されるけど、違う部分もあって属性無しも選択出来るようになってるんだけど」
「あ、そうなるのか。それなら属性無しで!」
「あはは、まぁこの場合はそうなるよね。それじゃ属性無しで『強化統率』!」
わざわざ耐性を持ってるのが分かってる属性を持たせる必要はないし、ここはこれでいいはず。おー、ヨッシさんのハチと同じくらいのサイズでスズメバチっぽい感じの統率個体が生成された。
普通のハチとは違うのは、イカの触腕の先に小さなウニがある事か。うん、氷で出来てる様子がないと違和感が凄い。これまでの見た目、氷属性の影響が大きかったんだな。
一応、これまでの『同族統率』の生成個体と一緒で灰色のカーソルは出るんだな。でもそれ以上の詳細情報は特になしか。
今までと違うのは、意図的に属性無しの状態でも生成出来る部分。少しとはいえ魔法を使えば消耗はするし、意図的にそれを省けるのはありがたい。
「この統率個体のLvは、私と同じLv8ね。そこからステータスを3割減らして、操作精度を大幅に下げたものって考えてくれるといいよ」
「ほいよっと。それで、どの程度の操作が出来るんだ?」
「これ、ほぼ自動なんだよね。『近距離攻撃』『遠距離攻撃』『防衛行動』『妨害行動』って、戦闘モードの切り替えをする感じ。使うスキルは私の持ってるもので、個別のスキル仕様の指定までは出来ないよ」
「あー、そんな感じなのか。物理と魔法の使い分けは?」
「そこは属性を持たせるかどうかで使い分けるみたいだね。毒属性を持たせなければ、物理毒を使うみたいだよ」
「……なるほど、魔法毒と物理毒の使い分けもそこか」
持たせられる属性が1つだけで、物理と魔法も排他利用。4つの戦闘モードを切り替えて、持ってるスキルに応じて自動で動くのか。んー、面白い性能はしてるけど……これでプレイヤーを倒すのは期待しない方が良さそうだ。
「……行動値や……魔力値の……消費は?」
「そこは再使用時間になるみたいだね。同じスキル連発は出来そうにないよ」
「……地味に……厄介」
「あー、それは痛い仕様だな」
「うん、それは私も思ったとこ」
あくまで補助的に使うスキルであって、攻撃メインに使うものではなさそう。こりゃ、ヨッシさんが抗毒魔法を展開している間の防衛用に使うのがいいんじゃないか?
よし、その方向で出来るのかを試してみるか。その為にこのゾンビな大蛇と戦闘を……って、まだ戦闘にはなってないけど!
「ヨッシさん、その戦闘モードは個体ごとに個別設定は可能?」
「あ、うん。それは問題なく出来るみたい」
「おし、それじゃ氷属性を持たせた統率個体をもう1体生成して、そっちを『防衛行動』にして……今の個体も『防衛行動』にして違いを見てみるのもありか?」
「えっと、私の防衛用に使う感じ?」
「抗毒魔法の解除防止用になー。どの程度の防衛性能があるのか、その辺を確認しときたい」
「……確かにそれはそうかも。うん、それじゃその方向でやってみるね。『アイスクリエイト』『強化統率』!」
今回生成された統率個体は、普段のヨッシさんの姿に近い氷で出来たような姿。まぁ毒属性と雷属性の分のエフェクトや模様が無いけど、無属性の個体より遥かに違和感はないな。
「それから……ハチ1号、2号、『防衛行動』!」
「おー!? ヨッシの周りを飛び始めたのさー!?」
「今まで囮に使う事が多かったから、これはなんだか不思議な感じかな?」
「あはは、確かにそうかも?」
ふむふむ、軽く見た感じでは付与魔法での守勢付与をかけたのに近い? いや、それよりも能動的に動くはずだから、スキルでの自動カウンターくらいの効果は狙えそう。
確か1体生成する毎に行動値10を消費するはずだから、40まで消費して4体までは用意出来るんだよな。とはいえ、統率個体同士の防御行動がどう動くか次第か。
「ヨッシさん、その状態でゾンビな大蛇を攻撃してみてくれ。ハーレさん、危機察知の反応の確認は任せるぞ!」
「了解! それじゃこれで! 『エレクトロボム』!」
「はーい!」
さて、これであのゾンビな大蛇からの攻撃をヨッシさんに向けさせて、どの程度の防御行動を取るのかを確認していこう。峡谷エリアにいたゾンビなトカゲとほぼ同じなら、みんなで倒すの自体は楽勝な相手だしなー。試すにはうってつけの相手だよね。
「ヨッシに狙いが行ったのさー! 多分噛みつき攻撃なのです!」
「みたいだね。これでどうなるんだろ?」
「あ、無属性のハチが大蛇に突っ込んでいったかな!?」
「逆に氷属性の方は動いてねぇな?」
「明確に動きに差が出てきたなー。あ、魔力集中を発動して針を刺してるのか!」
「……無属性は……標的を……自分に……移させてる?」
「どうもそうみたいだなー」
なるほど、物理主体の個体と魔法主体の個体では、同じ『防衛行動』でもこうも行動的に違いが出てくるとはね。この感じだと持ってるスキルで、どう行動するかが変化するっぽいなー。
でもゾンビな大蛇にひたすら攻撃はしてるけど……全然ダメージは入ってない。まぁ刺突耐性の特性を持ってるの相手に、刺突攻撃をしても意味はないよなー。あ、攻撃をやめてヨッシさんの周りに戻っていった?
「ハーレさん、危機察知の反応は?」
「えっと、一応今は消えてるのさー!」
「あー、ダメージこそ入ってはいないけど、攻撃自体は相殺はしてたんだな」
ふむふむ、刺突耐性が効果を発揮するのはダメージを軽減する時のみか? 統率個体のハチは明確に攻撃してきている部位に対して攻撃を仕掛けてたし、攻撃自体の相殺は可能?
7割まで性能は下がっててもLv自体に差があるから、意外と通用するのかも? これは攻撃のパターンも見ておきたいとこだなー。よし、その辺もちょっとやってみて――
「あ、またヨッシに狙いが行ったのです!」
「今度は一気に突撃かな!?」
「わっ!? あ、氷の防壁魔法で防ぐんだ?」
「おー、やっぱりそんな感じで防御になるんだなー! こりゃいいや!」
「へぇ、防壁魔法での自動防御か。でもすぐに壊れたな」
「……便利……そう? ……でも……連発は……出来ない?」
「あはは、まぁそこは連発出来ると強過ぎるもんね。これ、防壁魔法の耐久値が残ってても、問答無用で解除みたい?」
「色々と自分で発動する時とは仕様が違ってくるのか。まぁそりゃそうだよなー」
防壁魔法が残ったままや発動の連発が出来たら、下手すれば付与魔法での守勢付与よりも便利な内容になるからなー。再使用時間が発生するのは、その辺に制限をかける為か……。
いや、それなら再使用時間が経つまで行動モードを変えて攻撃的にして……って、そもそもこれでの再使用時間の仕様はどうなってる? その辺、確認しないとこの運用が出来るか分からないな。
「ヨッシさん、再使用時間はどういう仕様になってる? 使ったスキルごとに個別判定か?」
「ううん、統率個体がスキルそのものを使う事に対しての判定みたい」
「……やっぱりそっちで制限をかけてきたか!? 行動モードの切り替えに回数制限は?」
「そっちは無いみたいだね。……ケイさん、もしかしてスキルごとの再使用時間なら、行動モードを切り替えて運用しようとしてた?」
「狙い自体は当たりだけど、そうはさせてくれない仕様っぽいな!」
ちっ、思った以上に使えそうに見えて、それ以上に制約が多いな。これ、スキルLvが上がれば制約が緩和されていくタイプか? うーん、その可能性はありそうだけど……って、ちょい待った。
「今のヨッシさんで生成出来る個体の最大Lvっていくつになるんだ?」
「それならスキルLv1なら、Lv10の個体までだね。本体のLv以上にはならないみたいだよ」
「……とりあえずLv10までは、今のままでも問題はないんだな」
「うん。でも本体がLv11以上になってきたら、スキルLvを上げないとダメになってくるね」
「そうなるよなー」
まぁでも現状では問題ないのは分かったし、スキルLvについては今は考えなくても大丈夫そうだな。さて、それじゃ次はどういう風に攻撃を――
「はっ!? また攻撃が来るのです!」
「今度は銀光を放ってるかな!?」
「でも、どっちの個体もヨッシさんを庇いに動いたな!?」
「なるほど。スキルが使えない時は身を挺して守りに行くのか」
「……そう……みたい?」
「でも、一気に今のでHPが減っちゃったね……」
「まぁ応用スキルを防いでくれるだけでも、良かったと思うしかないな」
大蛇の連続突撃を本体のヨッシさんの代わりに受けに行ったんだから、そりゃHPも減るよなー。再使用時間が過ぎるまでの行動パターンはよく分かったし、どっちの統率個体のHPの減り方も極端な差はなくて、残り3割程度か。
思ったよりもHPが残ったのはLv差もありそうだけど、ヨッシさんが支配進化で、全体的にステータスが高水準だからこそか? うーん、でもプレイヤー相手には心許ないし、場合によっては連撃数を稼ぐのに使われそうだな……。
「ケイさん、ここからどうする? 無属性の統率個体は再使用時間は過ぎたけど……」
「んー、まぁある程度の防御性能は見れたし、次は2体生成して『近距離攻撃』と『遠距離攻撃』で試してみてくれ」
「了解。属性はどうするの?」
「無属性だと刺突攻撃になってダメージが与えられそうにないから、どっちも『雷属性』で!」
「雷属性だね。『エレクトロクリエイト』『強化統率』『強化統率』! ハチ3号、『近距離攻撃』! ハチ4号、『遠距離攻撃』!」
「あ、ついでの1号も『近距離攻撃』にしてみてくれ」
「了解! ハチ1号、『近距離攻撃』!」
さて、魔法での遠距離攻撃は想像出来るんだけど、近距離攻撃だとどうなるのやら。一応は試すだけは試してみるとして、ハチ1号も刺突以外の攻撃……例えばウニ側のスキルを使ってくれればいいんだけどな。
「おぉ!? ハチ4号がエレクトロインパクトを放ったのさー!?」
「ハチ1号は毒を生成しての毒針かな?」
「ん? ハチ3号は攻撃する気配がない……って、そうくるか!?」
「あー、電気を生成しての雷の操作での落雷攻撃か!」
「それって、近距離なのかな……?」
「……それは……よく分からない?」
「操作系は遠距離でも近距離でも使えるからなー。てか、指示を出した俺が言うのもなんだけど……近距離の魔法って何だって話だし?」
「……Lv8の……拡散魔法?」
「あー、確かにあれは近距離ではあるか」
言われてみれば確かにそうだよなー。まぁヨッシさんの電気魔法はLv6だから、対応する魔法が無いのかも。だから魔法で生成した電気なら一応は魔法だし、操作系スキルとして発動する事もあるんだろうね。操作系スキルに関しては生成魔法とセットで運用されるのかも。
とりあえず『強化統率』の何となくの仕様は把握出来た。再使用時間の都合で連発は出来ないから、統率個体だけで倒すのは流石に無理そうだな。
「さてと、後は普通にぶっ倒すか!」
「「「「おー!」」」」
「……うん!」
周囲にチラホラと人が集まってき始めてるし、実戦でのお試しはここまでで! プレイヤー相手には自動操作は心許ないとこではあるけど、それでも相手が多い時なら有効に使えるはず。少なくとも、全然使えない性能ではないのは確実だな。
まぁ今はともかく、まだ半分以上HPが残っているゾンビな大蛇を仕留めてしまおう!
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