第1187話 対戦の再開
全員分の刻印系スキルのセットは完了! という事で目的の1つが終わったから、もう1つの目的に移っていこう。即ち、みんなの熟練度稼ぎ! あ、その前に言っておく事があるんだった。
「俺は土の操作Lv7にするのは終わったから、他のみんなを優先してやっていいぞー。ロブスターのスキルは適当に素振りでもしとくし」
「え、いつの間にかな!?」
「さっき、アルに勝った時の操作でだなー」
「目的が既に達成されてたのさー!?」
「……随分……早い」
「元々、上がる直前だったっぽいからなー!」
「あはは、まぁそういう事もあるよね。それじゃケイさんの言葉に甘えさせてもらって……って、アルさん? 妙に静かだけど、どうかしたの?」
そういやアルもツッコミを入れてきそうな内容だったけど、何も言ってこないな? からかう程度の事はあると思ってたんだけど……って、まさか!?
「あー、いや、そのだな?」
「アルも旋回がLv6になって、目標達成済みだったりする……?」
「……そうなる。というか、途中からはその状態で試しに使っていた」
「上がったのはともかく、使ってたんかい!」
「えっと、それって木を薙ぎ倒して、吹っ飛ばし始めた辺りかな?」
「……正解だ」
「あの時かよ!」
くっ、色々と予想外の事をしてきてたタイミングだったから気付かなかった。あの時って確か何回も旋回を使ってたけど、それぞれのタイミングで速度が違ってたもんな。ドサクサに紛れて、サラッと混ぜてきてたのかー。
「……流石に外から見てたサヤは誤魔化せないか」
「あの辺りは妙に速かった気がしたけど、速度に落差があったしそのせいかと思ったよ。直接対峙してたら、簡単には見抜かれないんじゃないかな?」
「私もそれは思ったのです! 変だなーとは思ったけど、気のせいで済ませてたのさー!」
「……それが……狙い?」
「まぁ言わずに試してみたのは、それが理由だな。ケイ相手に騙せられるなら、十分なほど実用範囲だ」
「俺は実験台かよ!?」
「否定はしない。特訓も兼ねてるんだし、問題ないだろ?」
「そりゃそうだけど……まぁいいか」
その辺を言い出せば、俺だってアル相手に天然産と魔法産を混ぜた操作で出し抜けるかどうかを試したんだしなー。お互い様ではあるし、意表を突く特訓と、それを凌ぐ特訓と考えたらいいか。
敵を騙すにはまず味方から……って、騙す敵はどこだよ! あ、この場合は赤の群集と青の群集か。
「……ともかくアルと俺は目標達成って事で、次は誰と誰がやる?」
「はい! 風音さんとやってみたいです!」
「……受けて……立つ」
「おし、それならハーレさんと風音さんでやるとして、ルール設定はどうする? 何か鍛えたいスキルは?」
「えーと、具体的にはありません!」
「ないんかい!」
あー、でもそうか。ハーレさんのリスは徹底的に投擲に特化してるし、ピンポイントでこれを上げたいってのは無いのかも。鍛えるなら全体的に鍛えたいだろうし、具体的に絞れとなると微妙になるのか。クラゲの方は特にそれほど育てようって気分でもないんだな。
「風音さんの方はどうですか!?」
「……この龍なら……土魔法を……上げたい。……でも……ジェイを相手に……土はダメ」
「まぁ確かにそうだけど……別にジェイさんをピンポイントで狙わなくてもいいぞ?」
「……邪魔したのは……許さない!」
「あー、まぁそういう事なら了解っと」
うん、もう水に流したものかと思ってたけど、まだ思いっきり根に持ってた。ジェイさん、すごく悪いタイミングで攻めてきたもんだね。
その結果が未だに対戦になってない状況なんだから、運が悪いもんだよなー。まぁあの強襲作戦をぶっ潰した俺が言うのもあれだけど……。
「風音さんはジェイさん対策をしたいって事か。……龍をメインにするか、トカゲをメインにするか、悩ましいところだな」
「……うん。……アルマースさんは……どっちがいいと……思う?」
「ジェイさんはコケがメインで土属性の魔法型だし、火魔法が使える龍の方だろうが、メイン属性の土に対抗して風を使えるトカゲもありだな。いや、コケでログインしてくるとも限らないし、共生進化を引き剥がせるブラックホールは使えた方がいいのか」
「……それは……確かに?」
「あー、ちょい待った! アルも風音さんも、気持ちは分かるけど今の目的から脱線しまくってるぞ」
「あ、すまん。今はハーレさんとの対決だったな」
「……ごめん」
「ジェイさん対策は対戦の時間が正確に決まってからで! 別に俺らだけでやらなきゃいけない訳じゃないし」
「そりゃそうだ。風音さん、それで大丈夫か?」
「……うん! ……でも……どうハーレさんと……対戦?」
「問題はそこなんだよな……」
熟練度稼ぎを目的にした対戦形式の特訓だけど、この組み合わせだと完全に模擬戦機能で対戦をした方がいい内容な気がする。でもそれじゃ熟練度は稼げないし……。ハーレさんと風音さんの熟練度稼ぎになって、特訓にもなるルール設定はないもんか?
「こういうのはどう? 私は同族統率を鍛えたいから、私の生成した統率個体のハチを早撃ちで仕留めるの。まぁ実際に仕留められる訳じゃないから、サヤに判定をお願いする感じで?」
「あ、それは問題ないかな!」
「おぉ! 早撃ち対決なのさー!」
「……速さと……精度の……勝負?」
「うん、そういう感じ。どちらかというと私の熟練度稼ぎになっちゃうけど、どう?」
「私はそれでいいのさー!」
「……問題ない」
「おし、それじゃヨッシさんの発案ルールで決定で! えーと、スキルの使用制限は?」
「何も無しでいいのです!」
「……いいの?」
「もちろんなのさー!」
ん? ハーレさんも風音さんも、本当にどっちも制限無しでいいのか? お互いに広範囲攻撃の手段があるけど、その辺は……流石に使わないか。狙いが雑でいいその辺のスキルを使ったんじゃ、今回の勝負が成り立たないしなー。
「ヨッシさんが生成する個体数はどうする? 毎回、3体に固定しとく?」
「んー、そこはあえて私の独断でのランダムにするよ。その方が特訓にはなるでしょ?」
「そりゃそうだなー。おし、それじゃそのルールで――」
「ケイ、ちょっと悪い。少しヨッシさんに確認だ」
「……アル、早めによろしくなー」
「アルさん、どうしたの?」
「ヨッシさんの同族統率はLvはいくつだったかと思ってな? 確かLv5だったと思うけど、合ってるか?」
「それは合ってるけど……何か問題でもあった?」
「いや、ただ単にLvがいくつだったか自信がなかっただけだ。いつの間にか予想以上に育ってたって事もあるし、確認しときたかった程度だな」
「あー、サヤの爪刃乱舞がLv7になってたりしたもんなー」
「うん、そういう理由なら納得」
「……あはは、少し耳が痛いかな」
サヤで前例があったんだし、アルがヨッシさんに今のスキルLvを確認しようとしたのには納得。というか、全員分のスキルのスキルLvは流石に把握し切れてないもんなー。なんなら、普段使わない自分のスキルも少し怪しい。
育てたいと思いつつも放置になってるスキルも結構あるし、その辺も育てていきたいもんだねー。でも、今はロブスターのスキルが先。……スキルの熟練度稼ぎはいくら時間があっても足りないもんだね。
「早めにLv6に上がってくれればいいんだけど……どれくらいかかるか、予想が出来ないね」
「アルさんやケイさんみたいに、あっという間に終わる可能性もあるのさー!」
「すぐには終わらない可能性もあるけどなー。ヨッシさん、その辺は気にし過ぎても仕方ないから、気楽にやるぞー!」
「それもそうだね。それじゃ始めよっか!」
「これ、開始の合図は必要かな?」
「無しでいいのです! ヨッシ、思考操作でいきなり出してー!」
「え、ハーレ、それでいいの? 風音さんは?」
「……問題ない!」
おー、発声なしで全くの事前兆候なしでの対決か。しかも何体出てくるか分からない状態での早撃ち勝負。これは面白くなってきた!
「風音さん、好きな位置に陣取っていくのです!」
「……分かった。……ヨッシさんは?」
「私は流石に動かずにいるよ。2人共が見えないと意味ないし、ちゃんと見える辺りにしてね?」
「はーい! よいしょ! 私はこの木の枝の上からやるのです!」
「……上空から……狙う」
「えっと、生成する範囲内を飛んでみるから、見えないようだったら言ってね? その場所は避けるから」
「了解なのさー!」
「……うん」
ハーレさんと風音さんがお互いに狙いをつける位置を決めて、その中間辺りでヨッシさんが飛んでいく。なんだか敵との急な遭遇戦というか、罠を張って待ち構えているような気分になってきたなー。というか、そういう想定で設定してるよな、今回のルール。
「それじゃ用意はいいね? いつ始めるかは、私の独断でやるよ」
「はーい! 負けないのです!」
「……望む……ところ!」
さーて、今回の対決形式での熟練度稼ぎは風音さんはどの魔法を使う? ハーレさんもどういう風に狙ってくる気なんだろう? その辺、楽しみなところだね。
◇ ◇ ◇
準備がヨッシさんがすぐに統率個体を生成するかと思ったけど、いきなりかなり焦らしてきた。……ロブスターで色々と素振りをしようと思ってたけど、やったら邪魔じゃね?
「なぁ、ケイ」
「どした、アル?」
「ロブスターで素振りをするんじゃなかったのか?」
「……出来る雰囲気じゃなくね?」
「それを気にしてたら、いつまで経っても鍛えられんぞ?」
「うぐっ!? そりゃそうだけど……そういうアルこそ、何かしないのか?」
「……クジラの巨体で出来るとでも?」
「小型化しとけば?」
「……それでもケイよりデカいんだが?」
「あー、まぁそりゃそうか」
誰も動かない状況だから、本当にする事がない! サヤは審判役だから変に声をかける訳にもいかないし、ヨッシさんは意図的にこの妙な緊迫状態を作ってるよなー!? ただ単純にスキルの熟練度を稼ぐ以外にも、こういう緊迫感のある下手に身動きが取れない状況を想定して用意してるんだろうけど……長い!
あ、でもようやく動いた! 生成されたハチは……1体か! 完全に早撃ち勝負――
「『狙撃』!」
「『アースインパクト』」
おー、どっちも当たったように見えたけど、これはどっちだ? ハーレさんの狙撃は相当早くなってるし、風音さんのアースインパクトの狙いも正確だった。というか、狙撃Lv10でこの距離くらいなら衝撃魔法が当たるのと同じくらいに着弾するのか。衝撃魔法、発動としてはかなり早いんだけどな。
そしてヨッシさんの生成したハチはノーダメージ。アースインパクトで叩き落とされてはいるけど、味方の攻撃じゃダメージは与えられないから当然な話。
「2人とも、狙いが早いね。サヤ、どうだった?」
「少しだけど、ハーレの方が早かったかな! 風音さんがハチが叩き落とす前には当たってたよ」
「勝ったのさー! やったー!」
「……負けた。……あの狙撃……早い!」
今のを見て確信したけど、俺が弥生さんを追い込めたのはハーレさんのこの狙撃があってこそだな。初見でこの速度は簡単に躱せるようなものじゃない。魔法での防御ですら、思考操作でも発動位置の指定に迷いがあれば間に合わないか。近接でも人によっては弾けるだろうけど……意図しない速度だったら、対処が遅れるし、それが致命的な隙になるか。
まぁその辺の脅威が実感出来たのはいいんだけど、根本的な問題が1つ。ハーレさん、勝負にだけこだわってて、大事な事が抜け落ちてるな。
「ハーレさん、ちょっと言わせてもらおうか」
「ケイさん、何ですかー!?」
「スキルの熟練度稼ぎって目的なのに、上限になってる狙撃を使ってどうすんだ!?」
「あっ!? あぅ……それは確かにそうだったのさー!?」
「そこ、1番忘れたら駄目なとこだぞ……」
「風音さん、もう1回! やり直しでやるのです! 狙撃は封印で!」
「……当然!」
「あはは、まぁそうなるよね。それじゃこのハチは一旦消すよ」
「はーい!」
「……次は……勝つ!」
おー、風音さんがやる気に燃えている! こういう対戦形式でやるとちょっと疲れはするけど、やる気は出るもんなー。風音さんはソロが長かっただろうし、こういう鍛え方も新鮮でいいだろ。
「あ、ケイさん! 素振りをしててもいいよー!」
「……そのくらいで……乱れる……集中じゃ……ダメ」
「あ、いいんだ? それじゃ遠慮なく! アルは?」
「俺はこうしとくわ。『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「なるほど、静止させる方向で鍛える感じか。てか、元々それでよかったんじゃ?」
「よく考えたら、別に鍛えるのはクジラである必要もなかったしな」
「木の方の育成が抜けてただけかよ!」
まぁ俺もあの緊張感の中でパッと木の魔法の方が出てこなかったから、人の事は言えないかー。てか、アルのスキル強化の実の使用先はどのスキルになるんだろう? うーん、実際になってみるまで分からん!
「さーて、俺は何から鍛えていくのがいいもんか?」
「ケイが取りたいスキルは何になるのかな?」
「んー、連撃とチャージが同時に出来る応用連携スキルってとこだなー。1つくらいは持っておきたいし」
「それなら富岳さんが使ってた『双打・重撃衝』かな?」
「あれ、扱いにくくない!?」
あれの元になってるスキルの片方って『双打連破』だろうし、吹っ飛ばし効果があり過ぎてクセが強いやつ!? いや、使い所を用意さえすれば切り札にもなり得るか?
「だったら、『殴打重衝撃』と『連強衝打』の組み合わせ? えっと、まとめで見た覚えがあるけど……確か『連打・重撃衝』だったかな?」
「あー、そういう組み合わせでもいける……というか、そっちの方が一般的な感じだな」
「あはは、確かにそうかも! 私も、ハーレと風音さんの一区切りがついたら鍛えておくかな!」
そういやサヤも狙える組み合わせではあるもんな。俺はあえて変わったのを狙ってみたいような気もするけど、この手の応用スキルには再使用に時間がかかるんだし、その様子を見ながら色々と使っていけばいいか。
確かスキルLvのハードルの低い取得条件は『連携させたい応用スキルをそれぞれ2回ずつ発動してダメージを与える』と『魔力集中の使用時に、Lv2以上での発動が必須』を称号取得と重ねる事だったはず。まぁすぐにとはいかないから、長い目で見てやっていきますか!
というか、いつの間にかハーレさんと風音さんの勝負はまた始まってるんだな。って、サヤはこっちで話してて……あ、別にヨッシさんが開始のタイミングを決めるんだから、その辺はどうとでもなるのか。ある意味、これも不意打ち狙いなのかもね。
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