第1186話 刻印のセット 後編


 ちょっと必要以上に考え過ぎてた気もするから、白の刻印についてはもっと気楽に考えていこう! もしダメそうなら書き換えればいいんだし、今後は刻印石の入手のどんどんしやすくなっていくはず!


「白の刻印なら、俺はもう決めてるぞ」

「お、マジか、アル!? 具体的にはどうすんの?」

「ケイとの連携を考えて『増幅』だな。水の付与魔法に使って、ケイの水魔法の威力を更に上げようかと思ってな?」

「おぉ!? それは良さそうなのです!」

「そうきたか! それは俺としてはありがたいけど、アルはそれでいいのか? 『守護』とかでチャージを妨害されないようにって方向もあるけど……」

「別に水魔法だけじゃなくて、樹木魔法や海水魔法でも使うつもりだし問題ねぇよ。あくまで、現状で1番強化に向いてそうってだけだ。ま、変えたくなった時は変えるけどな」

「まぁ確かになー。なら、アルの木の白の刻印は『増幅』で!」

「おうよ!」


 全然悩む事なくアルの白の刻印は決定になった。明確に狙いがあるのなら、あっさりと決まるよなー! さて、俺は既に埋まってるから、後はサヤとヨッシさんとハーレさんか。


「そういや、共生進化だとお互いに刻印は刻めないんだったよな?」

「うん、確かそうだったはず」

「その仕様があるから、クラゲと竜で使う事を考えなきゃいけないのさー!」

「どうせなら竜でクマの強化をしたかったけど、そこは仕方ないかな……」

「……そこは仕様の問題だからな」

「……仕様は……どうしようもない」

「うん、それは分かってるかな!」


 支配進化やその派生の同調になってしまえば、その制限は無くなるみたいだけどなー。この辺はそれぞれの進化の特徴になる部分っぽいし、全部一律に同じ仕様にしろとも言えないところ。同じだと進化種類が違う意味がないもんな。


「ヨッシは支配進化になってるから、ハチの強化用にウニ側の白の刻印が使えるのです!」

「今の状況なら、魔法毒の毒性を強める為に『増幅』がいいかも? 折角、毒魔法をLv10まで上げたんだしね」

「アルと同じでも、運用方法は別物になりそうだなー。でも、『増幅』で毒性も上がるのか?」

「それは問題ないんじゃねぇか? 仮に毒性が上がらなくても、何かは確実に強化されるだろ」

「毒性が上がらなくても、毒への耐性の突破とか、効果時間の延長とか、そういう強化もありそうかな!」

「あ、そういう可能性もありそう! そっか、何も毒性だけとは限らないよね」

「……どのLvの魔法に……使うかで……変化もありそう?」

「『トキシシティ・ブースト』なら自分に使えば毒性強化、敵に使えば耐性減少とか、そういう風に強化されそうなのです!」

「それなら『トキシシティ・エクステンション』だと、効果時間が更に伸びそうかな!」

「あはは、確かにその辺はありそうな話だね。うん、それじゃ私のウニの白の刻印は『増幅』で決定ね!」

「なんかヨッシさんの毒が更に凶悪になっていくなー」

「まぁそういう風に育ててるしね」

「……そりゃそうだ」


 毒を強める方向に育てていってるんだから、これで強くなってなければ困るよなー。でも、一切毒を受け付けない敵も存在するだろうから、過信は禁物。雑魚敵の場合は結構効くけど、ボスの類はどうしてもなー。

 何もかもが効かないって事はないだろうけど、弱点として設定されている状態異常以外は効かない事はよくあるしね。この辺の弱点を判別する手段ってあったりしないもんか? 可能性としては、識別のLvが上がって分かる内容が増える事くらい?


「誰か、識別Lv6の効果とか知らない?」

「……なんで……識別?」

「何がどうして、識別の話に繋がった? いや、その内容は確かに知らないが……」

「あー、どうしても効かない状態異常とかってあるじゃん? それが一目で分からないもんかなーと思ってさ?」

「……なるほど、そういう流れか」

「そこが分かれば、私としては楽になるかも? でも、楽になり過ぎるから、そう簡単に教えてくれそうにない気もするよ?」

「まとめで確認してみますか!?」

「その辺なら情報がありそうな気はするかな!」

「それもそうだなー。今回は確認してみるか」


 どうにも識別は、使用頻度に対してLvの上がり方は決して良いとは言えないしね。どのくらいの熟練度でスキルLvが上がるかは伏せられてる情報だし、スキルそのものやスキルLvによって必要量も変わってるみたいだから、自力でやってたらいつになるか分からないもんな。

 特に俺らみたいにPTでやってる場合なら、誰が識別をするかで使用回数が減ることもある。逆に言えば、ソロで動く事が多い人で頻繁に識別を使う人なら既に自力で識別Lv6に到達している可能性はある! ベスタとか十六夜さんとか、なってそうだしね。


 という事で、今回はまとめの情報に頼らせてもらおう! 少し白の刻印の内容決めからは脱線するけど、ここの情報は大事なはず!

 えーと、スキル情報のまとめがあるから、多分この中に『識別』の項目が……あぁ、あった、あった! おぉ、しかも『New』って表示があるから更新されたばっかだな! どんな新情報になって……。


「って、マジか!? Lv6で敵が持ってる刻印系スキルの種類の表示になるんかい!? Lv7で無効な状態異常の表示かー!」

「……まさかLv7まであるとは、驚きかな」

「あはは、確かにそうかも。でも、これってかなり便利だよね?」

「……どっちも……凄い有効」

「これは、すぐにでも欲しいのです!」

「ますます選択肢が増えてくるじゃねぇか……!?」

「あー、確かにアルはそうなるよなー」


 というか、俺でも欲しいわ、これ! Lv7の無効な状態異常が分かるのも大きいけど、Lv6でも地味に何の刻印を使ってくるかが予め分かるってのはかなり影響は大きいぞ。何に警戒すれば良いのかが一目瞭然になるんだしなー!

 でも、対人戦だと識別出来る内容は相当制限されるし、根本的に識別に回す行動値の余裕自体がないんだよなー。識別をLv7まで上げて、知りたい内容ではあるけど、今すぐ必要かといえばそうでもない。


 仮に必要になるとしたら、ボス戦の時か? まぁここに情報が上がってるって事は誰かが識別をLv7まで上げているのは確実……って、ちょい待った。


「雑魚敵では刻印系スキルは持っている個体は未確認……Lv7の方も雑魚敵だと完全に無効なものは少ないって、どっちもボス専用みたいな性能かい!」

「ま、その辺はそんなもんだろ。むしろ、ボスにこそ必要な内容だしな」

「……それもそうだなー。まぁ残ってる競争クエストでボスが出てくるのは霧の森だけだから、急いで取る必要もないか」

「識別Lv7はともかく、多分だけどLv6なら灰のサファリ同盟の人が持ってる可能性が高いのです! そっちに期待なのさー!」

「だなー」


 識別はサファリ系プレイヤーの人の方がよく使いそう……オフライン版なら図鑑埋めに必要だったけど、オンライン版だと使うのか? そういや図鑑はこっちには特に無かったような?

 いやいや、色々と調査していくのに必要だし、まとめには特性の一覧なんて情報もあるんだから、その手の確認の際に使ってるんだよな? 多分だけど。毎回、必ず識別するなんて事は俺らはやってないから、その辺はなんとも言えない!?


「さてと、いつまでも脱線してられないから話は戻すかな」

「それもそだね。サヤとハーレは、白の刻印はどうするか決めた?」

「あぅ……私はまだなのです……」

「私は決めたよ」

「おっ、サヤは決めたのか! 何にするんだ?」

「竜の白の刻印は『障壁』にするかな!」

「……なんで……『障壁』?」


 ふむ、竜で魔法ダメージの大幅軽減になる『障壁』を選ぶのか。てっきり竜の魔法の威力を上げる為に『増幅』を選ぶもんかと思ってたんだけど、ちょっと意外な選択だね。


「サヤ、なんで竜で『障壁』なのー? 竜なら元々、苦手な属性以外の魔法には強めだよー?」

「だからこそかな! クマの方が魔法に弱いんだから、それの対策としてね?」

「……なるほど、サヤの狙いは竜をクマの盾として使う事か」

「アル、当たりかな!」

「あ、そういう使い方もありなんだ!」

「おぉ!? それは確かにありなのです!」


 サヤって割と回避とか相殺で攻撃を防ぐから、そういう風に盾にするってイメージはなかったよ。いや、でも本当に危険な時は竜を盾にして凌いでる事も何度かあったっけ? それを考えたら、割と意外でもないのか。


「竜からクマに強化が出来るならそれが良かったんだけど、竜に対してしか刻印が刻めないのならこれが最適だと思ったかな!」

「共生進化だからこそ出来る事か。それなら『堅守』……いや、それは竜で受けるより、クマで受けた方がマシだな……」

「うん、そういう事かな!」


 サヤの竜は魔法型に進化させてるんだから、緊急手段的として竜を物理攻撃の防御には使うべきじゃない。可能なら相殺するか避ける方が良いんだろうけど、それが出来ない時の魔法の防御手段だしなー。

 そういう攻撃を防ぐ手段を使わないといけない状況となると……あぁ、あれか。多分、サヤもこれを想定してるな?


「魔法砲撃にしたクラスター系の魔法を耐える為だったりする?」

「ケイ、正解かな! 流石に全弾で狙い撃たれるなんて状況になったら、対処し切れるか怪しいから……ほら、電気魔法だと性質がね?」

「あー、まぁ確かにそうなるか」

「……電気魔法の防御は……攻勢防御……だもんね」


 ガッツリと魔法を鍛えてる俺やアルやヨッシさんなら、防壁魔法を複合魔法にして使うか、大量に生成して操作で防ぐ手はある。水、海水、根、土、氷とか、属性は状況に応じて使い分ければいい。

 でも、サヤの竜は雷属性という事もあって、そういう訳にもいかないもんな。風音さんも言ってるけど、攻勢防御になってるから相殺の方向性になって物理的に止められる訳じゃないし……。


「サヤ、ナイス判断だな! 多分、現状では最適な選択肢だと思うぞー!」

「ケイからのお墨付きが出たかな!」


 いや、俺のお墨付きってそんなに喜ぶような事か? うーん、まぁそれだけ信頼してくれているって事な気もするし、ここは素直に受け取っておこうっと。


「サヤ! 私も真似して良いですか!?」

「ハーレも? でも、クラゲの風魔法なら大丈夫じゃないかな?」

「正直、他に選ぶものが無いのです! 魔法なら、魔法弾でみんなに貰った方が強いのさー!」

「あはは、確かにハーレの場合はそうかも?」

「まぁ俺かケイかヨッシさんから魔法を貰えば済む話だしな。今なら風音さんもいる訳だし」

「……魔法は……任せて!」

「そういう事なのです!」

「だったら、問題はないかな!」

「やったー! それじゃ私も白の刻印は『障壁』に決定なのさー!」


 ぶっちゃけ、ハーレさんは俺やヨッシさんがまとめて一緒に防御する事になりそうだけど、まぁそこは言わないでもいい事か。実際、確実に守りきれる状況ばっかりになるとも限らないしなー。


 ともかく、これで空いていた部分があった全員分の刻印系スキルのセットが完了! ちゃんと覚えておいて指示出しをしないといけないから、決まった内容を改めて確認しとこ。


 俺の白の刻印は、コケが『増幅』で魔法ダメージ強化、ロブスターが『守護』でスキルのキャンセル防止。

 黒の刻印は、コケが『非力』で物理ダメージ低下、ロブスターが『減衰』で魔法ダメージ低下。


 サヤの白の刻印は、クマが『剛力』で物理ダメージ強化、竜が『障壁』で魔法ダメージ軽減。

 黒の刻印は、クマが『脆弱』で物理防御低下、竜が『低下』魔法防御低下。


 アルの白の刻印は、木が『増幅』で魔法ダメージ強化、クジラが『剛力』で物理ダメージ強化。

 黒の刻印は、木が『消去』で敵の刻印の無効化、クジラが『剥奪』で操作系スキルの強制キャンセル。


 ヨッシさんの白の刻印は、ハチが『守護』でスキルのキャンセル防止、ウニが『増幅』で魔法ダメージ強化。

 黒の刻印は、ハチが『消去』で敵の刻印の無効化、ウニが『剥奪』で操作系スキルの強制キャンセル。


 ハーレさんの白の刻印は、リスが『増加』で連撃数の自動カウント、クラゲが『障壁』で魔法ダメージ軽減。

 黒の刻印は、リスが『消去』で敵の刻印の無効化、クラゲが『剥奪』で操作系スキルの強制キャンセル。


 うん、これで全員分は把握した! 同じ部分もそこそこあるけど、それでも結構バラけた……って、あれ? これって……。


「地味に白の刻印の『堅守』以外は、俺ら全員であるのか!」

「……あー、確かにそうなるな」

「はっ!? それならコンプリートを目指して『障壁』じゃなくて『堅守』にすれば良かったのです!?」

「それに何の意味があるのかな!?」

「あはは、意味はないよね、それ」

「……確かに……意味はない?」

「意味がないどころか、物理攻撃に弱いクラゲで物理防御を上げてどうするんだよ……。サヤの狙いが台無しじゃん、それ」

「あぅ……そうでした」


 もう完全に今のハーレさんは、コンプリートと言いたいだけだったな。うん、言い出したのは俺だけど、それについては本気で何の意味もないからなー!

 他人に掛けられるバフなら全種類あったら意味はあるけど、白の刻印は自己バフだしね。まぁ一部は使い方次第で他人に掛けられるバフみたいにもなるけど、『堅守』はどうやっても自己バフにしかならないし! 物理ダメージ軽減の『堅守』にも使い方次第では使い道はあるだろうけど、枠が足らない以上はどうにもならないよなー。


「あー、刻印系スキルがセット制なのが地味に面倒だ……。もっと制約なく使いたい……」

「ケイの気持ちも分からんでもないが、効果が強力な分だけ仕方ない制約だろうよ」

「まぁそりゃそうなんだけどなー。どっかで枠が増える可能性は……ないとは言えないか?」

「それはまだ分かりません!」

「でも、可能性自体はありそうかな!」

「まだまだ成熟体の序盤だしね」

「……これからの……可能性に……期待」

「それもそだなー」


 オフライン版での基準のままなら成熟体はLv60まで上がる。それを考えたら、今のLv8なんてまだまだだよな。上限Lvが変わっている可能性も否定は出来ないけど、それでも成長の余地があるのは確実だ。

 色んなスキルでの強化要素が判明してきてるんだし、刻印系スキルだって強化される可能性は否定出来ないもんな。てか、応用スキルの中でも上位版が出てきてるし、強化の果てはまだまだ先か。


 さてと、いつ到達するか分からない部分の事を考えてても仕方ない! 今は、今出来る範囲での強化の範囲で頑張っていこう! スキル強化の種でのスキルLv上げは凄いけど、最終的には自力での強化が勝敗を分けるだろうしね。


「おし、それじゃ本題に戻って熟練度稼ぎをやっていくぞー!」

「「「「おー!」」」」

「……うん!」


 俺とアルが1戦やっただけで中断になったけど、そこが本題だからなー! さーて、土の操作は狙い通りにLv7に上がったし、俺はロブスターのスキルLvを上げていきますか!

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