第1177話 毒魔法の強化 その1


 群雄の密林で空いている場所を探していれば、俺の弟子のフーリエさんを筆頭に、幼馴染のシリウスさんがいた。そしてフーリエさんと一緒のPTで動いてたっぽい、久しぶりにフェルスさん、レインさん、ミドリさんとも会ったね。

 単なる偶然だけど、同じゲームをやってるんだからこういう事もあるもんだ! フーリエさん達が見学していく事にもなったしなー!


「それじゃ始めよっか。あ、Lv1ずつ上げて、その度に効果を確認しようかと思ってるんだけど、それでもいい?」

「そこはヨッシに任せるのです!」

「順番は特に決まってないから、問題ないかな!」

「なら、そうさせてもらうね。まずは毒魔法Lv8からで!」


 そう言って、ヨッシさんはスキル強化の種を使っていく。どんな魔法になるのかが気になるとこだけど、そういやヨッシさんは魔法砲撃は使わないんだよな。

 そっちの検証までは特にしない感じか? 別に魔法砲撃の使用は必須じゃないし、あれは強化はされるけど狙いがバレバレって欠点もあるからなー。まぁその辺も含めて確認しとこ。


「ヨッシさん、ちょっといいか?」

「どうしたの、ケイさん?」

「いや、魔法砲撃の方はどうするんだろうって思ってさ。まぁ無いなら無いで別にいいけど」

「あ、そういやそれもあったっけ。うーん、それをするなら、まず魔法砲撃から取らないと駄目なんだよね」


 そうか、そもそもヨッシさんは魔法砲撃そのものを持ってなかったか! あー、そりゃ普段から使うところを見る事が無くて当然だよ。むしろ、持ってないのに見た事がある方が異常だ。


「あの、僕は魔法砲撃を使う事はありますけど……正直、毒魔法では微妙ですよ?」

「え、フーリエさん、そうなの? 使った事がないから、使用感が分からなくてね……」

「僕の狙いが下手なだけかもしれないんですけど、人が相手だと警戒されてまず当てられないです。魔法砲撃にしても特に毒性は変わらないので、普通の発動で当てられるのならそっちの方がいいと思います」

「そっか、毒性が変わらないならそうだよね。フーリエさん、参考になったよ。ありがと」

「いえいえ、どういたしまして!」


 ほうほう、フーリエさんなりに毒の使い方ってのは色々やってみてはいるんだな。その経験則から考えて、毒はあまり魔法砲撃とは相性が良くないのか。

 毒魔法については、当てた上で各種の毒の効果が出てこそだもんな。当たらない毒は、何の役にも立ちはしない。まぁそれはなんでもそうだけど、魔法砲撃での強化が利点として働かないのなら使う意味も薄いか。


「ケイさん、魔法砲撃は無しでいくけど問題ないよね?」

「だなー。それでいきますか!」


 魔法砲撃にした内容が気になるのであれば、自分達で調べてもらうか、改めてその時に追加の検証を頼まれたりした時にすればいい。

 毒魔法自体の検証はするし、その結果の情報は上げるけど、それをして当然って事でもないしね。変にヨッシさんに負担をかけるのは無しな方向で!


「それじゃ毒魔法Lv8の結果からね。称号については……先に抗毒魔法を取った時に『毒魔法に長けしモノ』は取ってるから、特に何も無しだよ」

「そこはまぁそうなるかな?」

「手に入るとしても同じ称号になりそうだしな。これは抗毒魔法を持ってない他の人に確かめてもらうしかない部分か」

「既に持ってた私じゃどうしようもないし、それしかないね」


 こうして考えてみると、スキル強化の種で上げる予定のある魔法と同じ属性の応用魔法スキルの取得は、称号取得から狙うのは避けた方が無駄は少ないって感じになりそうだね。使える称号の節約という形にもなりそうだしさ。

 ただ、この辺は取得の順番の問題だから、色々と情報が出揃ってきてからじゃないと無駄を省くのは難しいもんなー。まぁ誰かに任せるんじゃなくて、自分達で試行錯誤をするなら無駄が出るのを気にしても仕方ない。


「ヨッシ、肝心の魔法はどんな感じですか!?」

「……水魔法Lv8なら……広がっていく……アクアディヒュース。……毒魔法なら?」

「説明するより、ちょっとどんな感じになるかは実際に使ってみるよ。『ポイズンマイン』!」

「毒が地面に染み込んだかな!? あ、分からなくなったかな?」

「へぇ、名前的に毒の地雷って感じか。こりゃ、触れたら発動する罠系の魔法って事か?」

「うん、アルさんの言う通りの性能だよ。設置出来る個数は、毒の操作の操作数までだから、今は3つまでだね」

「ほほう? これはいいな!」


 全然違う方向性の魔法になったけど、3つまで設置出来る毒の地雷の罠は使い道がありそうだな! 麻痺毒や神経毒で設置しておいて動きを封じるのでもいいし、腐食毒や溶解毒でダメージ狙いでもいける。単純に微毒や毒でもいいのかも?


「ただ、これには複合毒は使えないのと、一定時間以上の経過か、一定距離以上離れれば効果は消えるみたいだね」

「……それは流石に……仕方ない制限」

「あはは、まぁいつまでも残って、どれだけ離れてても有効だと強力過ぎるもんね。それに複合毒も強力過ぎるだろうしさ」

「まぁ確かになー。ちなみにこれって、魔力視では見れる?」

「うーん、どうなんだろ? そこは後で模擬戦ででも確かめてみた方がいいかも?」

「……その方が……良さそう?」

「それもそうだなー。一通り終わってから模擬戦で確かめてみるか。見えるか見えないかで、運用方法が大きく変わってきそうだし」


 味方の魔法の発動の予兆は魔力視で見えないのが痛いよなー。でも、もし見えたら見えたで戦闘中に混乱しそうな部分でもあるから、今の仕様が悪いとも言えない。うーん、この辺はなんとも難しいところ。


「ケイさん、この場合の毒の罠の運用方法ってどんなのがあるんですか? 魔力視で見えるかどうかで違うが出るんです?」

「そこは思いっきり違いが出てくるぞ、フーリエさん! 目の前にあからさまな毒の罠があるのが見えてたら、フーリエさんはどうする?」

「……迂回して回避か、飛び超えます!」

「その2択に行動が誘導される形になるんだよ。これが魔力視で見えた場合の、パッと思いついた運用方法」

「あ、確かに行動が誘導されてますし、そこを狙う訳ですか!」

「そう、そういう事! 逆に見えない場合なら、こっちはシンプルに普通の罠として使う感じだなー」

「なるほど、参考になります!」


 とはいえ、まだ正確にこの『ポイズンマイン』の発動の挙動を確認した訳じゃないからなー。流石に罠になる魔法だとは思ってなかったから、罠が実際に発動する条件を満たす事なんてのは考えてなかったぞ。


「ヨッシ! これって、どうなったら罠として発動するのー!?」

「えっと、設置した場所の上を敵が通ったからだね」

「……真上を飛んでも……発動する?」

「直接触れる必要はあるみたいだから、多分それだと発動しないと思うよ」


 ふむふむ、地雷というからには接触が必須なのか。そういう性能なら、罠として以外にも色々とやり方はありそうな気がするね。


「アル、根の操作で捕縛して罠に叩きつけるのもありじゃね?」

「確かにそれはありだな。ヨッシさん、罠を設置した後にすぐに他のスキルは使えるのか? それとも設置中は他のスキルは使えなかったりするか?」

「えっと、設置中は他のスキルは使えない方だね。でも、3つまでの追加設置は出来るみたい。ほら、こんな感じで。毒自体も罠ごとに別々に設定出来るみたいだよ」


 おー、さっき毒が染み込んだ場所の隣に2つ目の罠が設置された。すぐに地面に染み込んで分からなくなったけど……これって、自分達で罠の位置を覚えておけって事か?


「あー!? マップの方に、罠の位置が表示されてるのです!」

「あ、マジだ。なるほど、普通の視界では分からないけど、マップで設置してる位置は分かるのか」


 ハーレさん、よく気付いた! マップの方にちゃんと毒の種類も表示されてるし、これなら味方が設置した罠の位置が分からなくなるって事はない。罠のある位置に視線が向いて気取られる可能性も低く……って、ちょい待った。

 こういう仕様なら、魔力視で見えるとも思えなくなってきたな。味方ですら直接の視認が出来ないのに、敵なら視認が出来るなんて仕様にはなってないはず。


「なんだか模擬戦は必要ない気がしてきたかな?」

「あはは、私もそんな気はしてきたよ」

「俺もだけど……流石に実際に発動してみる必要はあるだろ」

「あ、そういう事なら俺が適当に敵を捕まえてきますよ!」

「……それがいい。……手伝ってくる」

「お、それなら任せた! 風音さん、シリウスさん!」

「それじゃ行ってきます!」

「……行ってくる」


 そう決まったら、すぐに風音さんとシリウスさんは飛び上がって敵を探しにいった。実際に発動する光景は見ておきたいから、適当にここのエリアにいる敵を使って発動させてみるのが無難なとこか。

 模擬戦での確認は……やるだけはやっておく方がいいだろ。ほぼ無意味な気はしてきてるけど、まだ毒魔法Lv9とLv10の効果と、Lv10になった時に手に入るだろうスキルの内容もあるからなー。


「あ、ヨッシさん、それって不発のままキャンセルは出来る?」

「えっと……うん、出来るみたい」

「それなら、変にヨッシさんが身動きが取れなくなる事はなさそうだな」


 流石にキャンセル不可な仕様だと、使い所が難しくなりそうだもんね。まぁ今までとは大きく性質が違う様子だから、この辺は色々と使い方を検討していかないとなー。

 地面以外に設置する事が出来ればいいんだけど……あぁ、それは実際にやってみればいいだけか。


「ちょっと試してみたい事を思いついたから、付き合ってくれ!」

「え、それはいいけど、何をやるの?」

「それはこうする!」


 多分、魔法産のものだと変に干渉する可能性があるから、今回はとりあえずこれで試すのみ! 岩で試してみたかったけど丁度いいのがないから、土でいいや。


<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します>  行動値 117/120(上限値使用:1)


 ヨッシさんが既に毒の地雷を設置した部分は、地味に指定不可になってるなー。ちょっとそこが不安要素にはなったけど、まぁ今は試す事を優先で! 他に操作が可能な場所の土を持ち上げて、球状に形成!


「ヨッシさん、この土に毒の地雷は設置出来るか?」

「……どうなんだろ? 分かんないし、とりあえずやってみるね。あ、空中には設置出来ないけど、浮かんでる土には設置自体は出来るみたいだからちょっとやってみるね。これで――」

「おわっ!? ちょ!? 急に操作が盛大に乱れた!?」

「ケイさん!?」


 くっ! 操作した土の中に毒自体は染み込んでいったけど、それと同時に操作の負荷が一気に増した!? これ、泥を操作しようとした時と同じ感じで、毒の方が全然制御出来てない状況っぽい!


「わわっ!? なんか失敗な感じなのさー!?」

「ヨッシ! 一旦解除かな!」

「うん、分かった! ポイズンマイン、解除!」

「はぁ、焦った……」

「無茶し過ぎだぞ、ケイ?」

「いやー、上手くいけば便利かと思ったんだけどなー」


 やっぱり操作系スキルには他の属性の不純物が混ざると、急激に操作の難易度が跳ね上がるもんだな。残念だけど、今回のは失敗――


「……今のなら……ケイさん、もう一度やってみてもらっていい? 毒の操作で動かせないか確かめてみるよ」

「そりゃいいけど……操作が出来るのか?」

「動かせるかどうかはやってみないと分かんない感じだね。でも、試してみる価値はあるでしょ?」

「そりゃそうだ!」


 泥なら水の操作と土の操作での同時操作で制御する事が出来たんだから、ポイズンマインを毒の操作で制御出来るなら、実用化の可能性はある。まぁ2人で操作の精度を合わせないといけないけど、そこは俺の方で調整していけばいい話!


<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します>  行動値 114/120(上限値使用:1)


 という事で、再びその辺の地面の土を操作して持ち上げていく。さぁ、これでどうなるか。


「それじゃケイさん、いくよ! 毒はとりあえず麻痺毒にして……『並列制御』『ポイズンマイン』『毒の操作』!」

「ほいよっと! ぐっ!?」


 操作した土に毒が染み込んだ瞬間にまた荒れ狂い始めた!? だけど、少しだけでも全力で今は抑え込む!


「あ、指定が出来た! それならこれで!」

「おっ!? 荒れ狂ってる様子が安定したって事は、成功か!」

「やったよ、ケイさん!」

「……戻ってきたら……凄い事になってた。……はい……お土産」

「俺、何もする事がなかった……。実力差を思いっきり見せつけられたぞ……」

「シリウス、ドンマイだよ!」

「……ははっ、すげぇなぁ」


 おっと、風音さんとシリウスさんが戻ってきたみたいだね。しかも風音さんの黒い龍の手には、捕まっているイタチがいた。無事に適当な敵の確保は成功したみたいだね。


「風音さん、シリウスさん、サンキューな。ケイ、このままその状況で使ってみるか?」

「折角だし、そうしてみるかー! 動きは俺の方で合わせるから、ヨッシさんのペースで動かしてみてくれるか? 風音さんは、土に向けてイタチを放り投げてくれ!」

「……分かった」

「了解! それじゃせーのでいくよ?」

「ほいよっと!」

「せーの!」

「……えい!」


 そのヨッシさんの掛け声に合わせて、土の操作の中で動く感覚のある毒に合わせて移動させていく。……なんか感覚的な事だけど、土の外へと毒は出ていけないような感じがするね? 土の中に留まっておくというのが、ポイズンマインの性質か?

 ともかく、風音さんが投げたイタチが毒の地雷を内包した土へと当たっていく。そして当たった瞬間に、爆発的に毒が広がっていった。当たった敵の方に向けて指向性がある感じで爆発するっぽいね。

 それと同時に土の操作は、ほぼ強制的に解除になった。まぁ操作してた土も一緒に吹き飛んだんだから、そこで解除になるのは不自然ではないか。


「おぉ! 麻痺毒になった上に、結構なダメージが出てるのさー!」

「こりゃ、毒以外でもダメージとして結構期待出来そうだな」

「みたいだなー! とりあえずヨッシさん、今回は成功だ!」

「うん、それじゃ良かったよ!」

「……毒魔法の検証が、戦法の検証にまで広がってるのは気のせいかな?」

「……そこは……気にしない」

「そうだぞ、サヤ! 次の1戦に向けて、重要なとこだしな!」

「まぁそれもそうかな?」


 確かに脱線気味なのは思ったけども、今言ったように重要な内容なのは間違いない! まぁこうやって試した事を実戦でそのまま使う機会があるかどうかは分からないけど、連携の幅を広げるのは大事だよな!


「実力派の検証勢、恐るべしだな!」

「やる事、ないっすね」

「まぁそこは仕方ないよー」


 なんだかフェリスさん達は萎縮してる感じがするけど、この手の事は得手不得手があるから気にしなくてもいいんだけどな。まぁそれでも気になるのなら俺らのやってる事を参考にしてもらえればいいか。

 とりあえず毒魔法Lv8についてはこれくらいでいいだろう。さて、次は毒魔法Lv9の内容を確認していきますか!

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