第1176話 場所を変えて
ヨッシさんの毒魔法をLv10まで上げてしまう事には決まったけど、まだ具体的にどこでやるのかが決まってない! まずはそこから決めないと――
「ヨッシ、ヨッシ! ミズキの森林と群雄の密林のどっちに行きますか!?」
「んー、そこはどうしよう? 私としてはどっちでもいいんだけど……ハーレはどっちがいい?」
「私もどっちでも……はっ!? 成熟体の人が多そうな、群雄の密林がいいと思います!」
「……何で今、私を見て決めた感じなのかな?」
「な、なんでもないのさー!?」
「その妙な慌て方は気になるかな!」
「わー!?」
なんだかよく分からないけど、妙に慌てたハーレさんがサヤに追いかけ回されてるんだけど……これは一体何事? なんかこうなった原因が謎なんだけど……。
「アル、ヨッシさん、今の流れの理由って分かる?」
「……あはは、まぁ一応はね」
「あれだ、アイルさんだっけか? サヤが妙に警戒してたから、ハーレさんが鉢合わせしないように気を遣おうとした感じだろ」
「あー、そういう……」
確かにミズキの森林ではアイルさんと遭遇したりしてるもんな。俺はアイルさんの事は水に流しはしたけども、サヤ自身があまり相性が良くなさそうな感じだったし、避けようとしたハーレさんの判断は適切な気もする。
「ハーレ、そうなのかな?」
「……あぅ……そうなのです!」
なんかサヤに捕まったハーレさんがチラッと俺の方を見てきたけど、そこで俺に目線を振る理由はなんだ!? そういやハーレさんも妙にアイルさんの事は気にしてたみたいだし、助けを求めてきたのか?
「……そのアイルって人と……仲が悪いの?」
「あー、色々とややこしい状況で知り合ったもんだから、何とも言い難い……」
「……そうなんだ?」
「こりゃ、面倒な事になってんな」
「だよなー」
「……ケイも含めてだがな?」
「俺も含まれてんの!?」
アイルさんと積極的に交流しようとは思ってないけど、別に露骨に避けようとも思ってないんだけど!? なんでそこに俺が含まれた!? 確かに俺のリアル経由での部分ではあるけどさ。
でもまぁサヤとハーレさんの2人が相性が悪そうなら、無理に遭遇する可能性がある場所に行く必要もないか。
「サヤ、とりあえず今回は群雄の密林にしよう? ほら、ハーレも」
「……少し釈然としないけど、分かったかな」
「助かったのさー!」
サヤに捕まっていたハーレさんが解放されて、一応は行き先は決定。……うーん、ちょっとこれは聞いてみるか。本気で嫌だと思ってるなら、可能な限り遭遇しないように明日にでも学校で話してみるしさ。でも、一応これは聞いとこう。
「単刀直入に聞くけど、サヤとハーレさんは……アイルさんが嫌いなのか?」
「……何とも言えないかも? でも、なんだか仲良くしたいとは全然思えない感じかな」
「あぅ!? これは、どう答えればいいの!?」
サヤははっきりとは理由が分かってないみたいだけど、相性が悪いという感じはしてるっぽい。でもハーレさんは、何で頭を抱え始めて悩んでるんだ?
なんというか……ハーレさんのアイルさんへの反応はおかしくねぇ!? 昨日の夜は彼女がどうとか言ってたし、何を考えてるのかさっぱり分からん!
「ハーレさん自身が嫌ってるんじゃなくて、サヤのその何とも言えない部分を気遣ってるだけだろ。ケイ、そういう気遣いを聞くのは無粋ってもんだぜ?」
「……そういうもん?」
「ま、年上だからってのを理由にするのはあんまり好きじゃねぇんだが、ここは人生の先輩としてのアドバイスだ。言いたくない事や言えない事、表には出したくない話ってのもあるからな。ケイだって、なんでもかんでも話したいとは思わんだろ?」
「まぁそれは確かにそうだよな……」
ハーレさんが言いたくないと思っているのなら、無理に聞き出すような真似はしない方がいいか。変に抱え込みがちな部分があるのが判明してるからそこが心配ではあるけど、ヨッシさんが何も言わないのなら大丈夫な気がするし。
「すまん、ハーレさん! 無理に聞いて悪かったな」
「……ヨッシ、なんか妙に疲れたのです」
「はいはい、気持ちは分かるけど、この件は変に焦らないの」
「……うん」
なんか謝ったのに盛大にスルーされたんだけど!? あー、本当に余計な事を言っちゃったっぽい。なんとも言えない微妙な雰囲気になってしまった……。
「ハーレ、なんかごめんかな! 気遣ってくれてたみたいなのに……」
「それはもう良いのです! 気分を切り替えて、群雄の密林へ行くのさー! ヨッシの毒魔法をLv10にして、色々検証していこー!」
「うん、そうだね! そうしよう!」
「分かったかな!」
あ、いつもの雰囲気に戻ってきた。理由はよく分からないままだけど、今後はハーレさんの方から話題を振ってこない限りはアイルさんの事は気にしない方がいいのかもなー。少なくとも、俺から話題に出すのはやめとこ。
◇ ◇ ◇
<『始まりの森林:灰の群集エリア1』から『群雄の密林』に移動しました>
一旦、荒野エリアに戻ってから、森林エリアを経由して、群雄の密林へと到着! 転移してきたのは、安全圏ではなく進化したマサキがいる川の方で!
そうしてやってきたのはいいけど……ちょっと予想外の光景が広がってるんだけど!? 戦場になってた場所に人が集まってて、邪魔な木を撤去してたのは知っている。だけど、今は全然違う様子になっていた。
「おぉ!? なんか様子が変わってるのさー!?」
「……木が植わってるかな? あ、木だけじゃない?」
「これ、不動種の人達だよね?」
「おいおい、地味に海藻の不動種までいるのかよ」
「……サボテンも……いる」
「カオスな森が出来上がってるな、これ!?」
杉や桜や松の不動種の人が植わってるのは問題ないとしても、空中を水中のように揺らめいてる巨大なコンブの人とか、巨大なサボテンの人がいるとか、凄い珍妙な光景だな!? あー、竹とかバオバブの木までいたよ。
「各エリアから、不動種の人が移動してきたのかな?」
「この感じだと、そうっぽいよなー」
3rdで作って間もない感じの人もいるけど、1stであからさまに育った後の木の人もいるしね。初期エリアから、こっちの占有エリアに引っ越してきた人が結構いるのかも?
てか、普通に人も結構多いなー。やっぱり新しい拠点ともなると、成熟体へと進化した人は結構やってくるよね。まぁ俺らもその中の1組にはなる訳だしさ。
「……そういえば……桜花も移動するか……考えてた」
「え、そうなのか?」
「……うん。……初期エリアは……新規の人向けに……少し場所を空けようって……そういう話が出てるって……言ってた」
「あー、なるほど」
そっか、なんだかんだでプレイヤー自体は増えてるみたいだし、初期エリアで植わりっぱなしの不動種の人が居続けるのも新規の人の定着を阻害しかねないのか。
1回目の開催の競争クエストの時はどこも隣接エリアだったから大移動は発生しなかったけど、これからは活動拠点そのものが大きく変わってくるもんな。ここが成熟体以上に進化した人たち向けの拠点になるのかも?
「へぇ? こうなると確実に霧の森も取りたくなってくるじゃねぇか!」
「だなー! あー、赤の群集が海エリアを真っ先に取りに行ったのは、この辺の不動種の移動を考えた上でなのかもなー」
「確かにそれはありそうなのさー!」
単純に海が1番取りやすいと判断したからだと思ってたけど、陸地に海藻が植わってる状況を見たら合点がいった。こりゃ、陸地と海に1ヶ所ずつ欲しいわ!
「桜花さんは、どうする事になったの?」
「……まだ決めかねてた。……全部が終わってから……結論を出すって」
「……霧の森、負けられなくなってきたかな!」
「そうなのさー! 最後の1戦になりそうだけど、勝ち取るのです!」
もし俺らが霧の森を勝ち取れたら、桜花さんが森林深部から移動する可能性もあるんだね。俺らとしては、成熟体向けの新たな拠点に馴染みのある不動種の人が移動してきてくれるのはありがたいのかも?
でも、それはあくまで勝ち取った時の話! てか、全部の勝敗が決まったら、特定の群集拠点種からしか転移してこれない部分は緩和されたりしないもんかね? そうなれば移動が多少楽になるんだけど……まぁそれは今気にしなくてもいいか。
「さてと、霧の森を勝ち取る為にも強化は必須だな! どっか空いてる場所を探すぞー!」
「「「「おー!」」」」
「……うん!」
という事で、いつものようにみんなでアルのクジラの背の上に乗って飛んで移動開始! さーて、あちこちで戦闘の跡は残ってるし、ちょいちょい拓けた場所も存在はしているから、検証をするのに丁度いい場所はどこかにあるはず!
◇ ◇ ◇
そうしてしばらくウロウロしていたら、丁度良さそうな場所を見つけた! ここのジャングルは木の種類が全然違うけど、木々の密度は森林以上で森林深部未満ってとこか。
場所を探してる間に色々と見かけたけど、Lv上げで戦ってる人達もいれば、熟練度稼ぎをしてる人達もいる状況だった。Lv上げをしてる人達は戦闘時以外は基本的に移動しながらで、熟練度稼ぎをしている人達は定位置に留まってやってた感じか。
どうもLv上げの戦闘後に、その戦闘の余波でスペースが出来たとこが熟練度稼ぎの場所になってる様子だなー。そして、見つけた丁度良さそうな場所は、今まさに戦闘が終わったばかりの場所!
「さてと、そこのPTが移動したら、あの場所を使わせてもらうかー!」
「ま、それが良さそうだな」
という事で、今は上空で待機。てか、戦闘をしてたのには気付いたけど、具体的にどんな人達が戦ってたんだろ? えーと、スイカ、カエル、ハリネズミ、トンビ……それに細長いコケの塊……って、ちょっと待てーい!
どの人にも心当たりがあるし、名前をしっかり確認して……あぁ、やっぱりか! 全員顔見知りな上に、1人は顔見知りどころじゃない!
「おーい、フーリエさん!」
「……え? 空飛ぶクジラ!? あ、ケイさん!?」
「おう、そうだぞ! アル、少し降りてくれ!」
「おう! まぁケイの弟子がいたなら、スルーするのもあれだしな」
ん? それ以外にも顔見知りはいるんだけど……あ、アルはフーリエさん以外は全然知らないのか! 知っててもシリウスさんくらいまでになるのかも? 確か知り合ったのは、夕方でアルがいない時だったはずだしな。
「え、グリーズ・リベルテの人達だ!?」
「落ち着くっすよ、ミドリ!」
「落ち着いてられないよ、フェルス!?」
「フーリエさん、コケの人の弟子なのか!?」
「あ、はい。そうですよ、レインさん」
なんか慌ててる感じだけど、カエルの人がフェルスさん、ハリネズミの人がレインさん、スイカの人がミドリさんだよな。前にヨッシさんの雷の操作を取得する際に、護衛依頼として一緒に動いた3人組で、共同体名は『グレースケール』だね。
という事で、とりあえず無事に着地! いやー、こんなとこでフーリエさんとシリウスさんと一緒にPTを組んでLv上げをしてるとは思わなかった。
ここでLv上げをしてるって事は、全員成熟体まで進化したんだな! ははっ、こうなってくると残ってる競争クエストでは一緒に戦う事もあるかもしれないね。
「フーリエの師匠の人のPTかー! なんか今までろくに会話出来てなかった気がするけど、フーリエがお世話になってます!」
「なんでシリウスがそんな挨拶をするの!?」
「いやいや、幼馴染の師匠ならそうなるだろ! 実際、強いって有名な人なんだしさ。……そうじゃなきゃ、俺が師匠とは認めん!」
「それはそうだけど、気恥ずかしいじゃん!? それになんでシリウスがそんなのを決めるの?」
「それは……あれだ! 幼馴染が変なのに引っかからないように気を付けるのは、おかしくないだろ!」
「それ、余計なお世話だよ!?」
フーリエさんとシリウスさんはリアルで繋がりはあるっぽい感じだったけど、幼馴染なのか。水月さんが言うにはフーリエさんは女の子らしいけど、シリウスさんは完全に男だよな?
ふむふむ、アーサーと同年代くらいという見立てだったけど、これはひょっとするとひょっとする? いや、フーリエさんは自分自身の女性としての意識は薄い可能性があると言ってたし、そういう風に見るのは野暮ってもんか。俺はシリウスさんの事をよく知ってる訳じゃないしなー。
「えっと、えっと!? グリーズ・リベルテの皆さん、ここの占拠はありがとうござました!」
「おかげで、こうして成熟体でのLv上げが出来てるっす!」
「次の1戦は、少しでも戦力になれるように頑張るぜ!」
「そりゃ良かったよ。頑張った甲斐があったってもんだ!」
こうして久々に会った人達からお礼を言われるとむず痒くなってくるけど、ここで謙遜し過ぎるのも駄目だよな。ミスが無かったとは言えないけど、それでも頑張ったのは間違いないし、それは俺自身が否定したらいけない事だ。
ミスがあれば反省はすべきだけど、全てを自分の責任だと思う必要はない。それはレナさんにはっきりと言われた事。あの言葉はこれから先も肝に銘じておく!
「ケイさん達は、ここでどうしたんですか?」
「えーと、私の毒魔法がLv10に出来る目処が立ったから、それを試す場所を探してたとこだよ」
「そういう事だな!」
「おぉ、そうなんですか! あの……ちょっと見学していってもいいですか? 僕も毒は使うので、興味があるんですけど」
ふむふむ、確かにフーリエさんは物理毒がメインではあるけど、毒魔法の方にも興味があっても不思議ではないか。それにまだ情報が上がってない内容になるしね。
「フーリエ、それを頼むのはいいけど、俺らに確認は取ろうぜ? 別に反対はしないけどさ」
「あ、シリウス、ごめん! みんなも、ごめん!」
「そこは別に構わないっすよ!」
「気になる気持ちは分かるもんね!」
「だな。俺らは別にそれで問題ないぜ!」
どうやらフーリエさんの今のPTメンバーからは特に反対意見はないらしい。そうなると後は俺らの方の都合だけど……。
「そういう感じなんだけど、みんな見学はいいか?」
「私はそれで問題ないよ」
「ヨッシが良いなら問題ないかな!」
「そうなのさー!」
「……興味があるのは……大歓迎!」
「ま、ケイの弟子の頼みを断る理由もないしな」
満場一致で、フーリエさん達の見学は了承っと。まぁみんなが駄目だと言うとは欠片も思ってなかったけどね。
「って事で、フーリエさん達の見学は問題ないぞ」
「やった! 皆さん、ありがとうございます!」
ちょっと想定外の再会もあったけど、本題のヨッシさんの毒魔法Lv10の方を進めていきますか! さて、どんな魔法や強化用のスキルが手に入るのやら?
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