第1172話 これからどう動くか
丁度いいタイミングでベスタがログインしてきたので、ジェイさんからの返事は伝えられた。これで最低限しておくべき事はやったけど、急に時間が空いてしまった形になったし、どうしたもんか……。
「さて、俺は皆に対戦の希望時間を聞いてくるが……ケイ達は希望時間はあるか? おそらく状況的には俺らの方の希望時間は通らせられるぞ」
「んー、別に俺らだけの意見で決まる訳でもないしなー。みんなはなんか希望はある?」
「はい! 晩ご飯までには終わらせておきたいです! 出来れば、18時前には勝敗が決まりそうな時間帯!」
「ご飯の時間帯に被ると、また慌ただしくなりそうだもんね。私もそこはハーレに賛成」
「私もかな! というか、なんでそもそも今日は12時になってたのかな?」
「……今更だけど、そういや何でだ?」
「本当に今更だな……」
食事時には被せない方がいいのはハーレさんの言う通りだよな。それを考えると、なんでミヤ・マサの森林での戦闘の解禁が12時になってたんだろ? てか、アルは呆れるんじゃない!
「あぁ、その件か。総力戦を想定してなかったし、12時にしたのはわざとだな」
「わざとって何でそんな……って、一斉に動き出さないようにする為か!?」
「ケイさん、どういう事ですか!?」
「あー、簡単に言えばわざと集まりにくい時間帯にして、お互いに作戦でその辺を調整する余地を残したって感じ? ベスタ、合ってる?」
「本当に簡単な説明だが、まぁそんなとこだ。集まりやすい時間帯にすれば、単なる総力戦になるだけだったからな」
「おー! なるほど!」
「……でも……結局意味は……なかった?」
「まぁ再度時間の調整を行う事になった以上はそうなる。元々、青の群集の希望でそういう形にはしていたんだがな」
あー、12時から解禁は青の群集の希望だったんだ。総力戦でお互いに一斉に動く形じゃなく、作戦で色々仕掛けようとしてたんだろうなー。まぁサバンナに動かないといけない状況になって、そうも言ってられない状況が今なんだろうけど。
「まぁ今回の調整で……いや、どうせなら赤の群集も巻き込むのもありか? その方が色々と動きやすくなるし、盛り上がるかもしれんな」
「……どういう……こと?」
なんかベスタが思いついたみたいだけど、赤の群集も巻き込む? ミヤ・マサの森林には赤の群集は関係ない……って、そうじゃない! あぁ、なるほど。そういう手もありか!
「最後の霧の森での勝負を、全群集での総力戦にしようとしてる?」
「正解だ、ケイ。それなら赤の群集が動き出すタイミングを見極める必要も無くなるし、例の無所属の集団への対処もしやすくなるからな」
「やっぱりか!」
「なるほど、確かにそれはありかもしれん」
「おぉ!? 最後の一戦で、総力戦なのさー!」
「それは楽しそうかな!」
「あはは、確かにそれは成立するなら盛り上がるかも?」
「……盛り上がりそう?」
これなら開始時間を決められるから、どこの群集も奇襲を受ける事はなく準備が出来る。多分サバンナは青の群集がこのまま取るだろうし、青の群集にとっては悪い話ではない。
既に2エリアを勝ち取った赤の群集も、最後の全群集での全力勝負には乗ってきそうな気がする。無所属に関しては……そもそも動きが読めない上に、暗躍してる集団がいるっぽいから、そこに対しての共闘を考えてる状態ならそういう意味でもありか。傭兵として参加してる人なら、嫌って事もないだろうし。
「その方向も考えつつ、ひとまずは青の群集との1戦の方の調整だな。ケイ達は、今のうちに休むなり、鍛えるなり、好きにやっておけ」
「それが良さそうだなー。ベスタも1人で無茶な事はするなよー! 手伝いが必要なら言ってくれ!」
「……そうさせてもらおう。この手の意見の収集は灰のサファリ同盟やオオカミ組が得意としているから、そっちに動いてもらうとして……とりあえず場所を変えるか。その辺りは決まり次第、報告は上げるからその辺はチェックしておけよ」
「ほいよっと!」
そう言いながら、ベスタは安全圏に植わっているサボテンの群集支援種……えーと、名前はなんだっけ? あ、ヒビキか! そのヒビキの元へと駆けていき転移していった。やっぱりベスタは灰の群集のリーダーをしてますなー。
それはまぁベスタらしい光景だとして……なんだかそのサボテンのヒビキの横に見知らぬ竜の群集支援種が増えてるのは気のせいか? その前に群集支援種のサソリのカナデがいるのは分かるんだけど……群集支援種がなんで3体?
「なぁみんな、あの群集支援種の竜ってなんだ? えーと、名前はサイカ?」
「そりゃあれだろ。討伐されたエリアボスのミマタノオロチが味方になったやつだ」
「あっ、そういやそうか!」
そうだよ、エリアボスを倒せばその中身の精神生命体が群集支援種として別種族になって味方になるんだった! 峡谷エリア自体は負けて占拠出来なかったから、安全圏のここにいる形になるのか。
「……成熟体で、頭が3つってどうなってるのかな? オフライン版なら完全体でヤマタノオロチだったよね?」
「あ、そういえばそうだね? 確か、オフライン版の成熟体で頭が増えてた場合はゴマタノオロチだった気がする」
「成熟体なのに、頭の数がまだまだ少ないのです!?」
俺はオフライン版ではヘビは一切見てないから、全然その辺が分からん! というか、そんなに頭が増えるんだなー。……オフライン版の基本的な命名ルールからは外れてるし、何のステータスを上げて進化させたらそうなるんだろ?
えーと、オフライン版で他に頭が増えるのは、オオカミからのオルトロスやケルベロスだっけ。確か2種類の進化条件を満たした上で発生する特殊なルートで、必要なのはオンライン版の『HP』に相当する『生命』と、『攻撃』に相当する『屈強』のステータスの2つだったはず。
「ケイ、ヤマタノオロチの場合なら『生命』と『知恵』の2つだぞ」
「あー、その組み合わせか! 地味に厄介な……って、また声に出てた?」
「思いっきりな。ちなみにこのルートから超越体で人化した時には『メデューサ』になるぞ」
「……そうきたかー」
ヤマタノオロチからメデューサへの進化なのか……。まぁどっちもヘビ要素はあるし、超越体は人の姿になるんだから不思議ではないよなー。
「……普通のヘビからだと……人化のベースは……女性体が『ラミア』……男性体が『ナーガ』……だったはず?」
「男女で、色々変わってたもんねー!」
「オンライン版じゃ、まだまだ人化は先になりそうだけどね。ケイさんのコケの人化とか、どうなるんだろ?」
「そこはさっぱり分からんな!」
そもそも支配進化から同調にしてる現状が、人化の際にどういう影響があるのかもさっぱり不明。共生進化の扱いとかもどうなるんだろ? うーん、オンライン版の特有な要素だから、よく分からん!
「……ふと思ったんだが、進化階位が上がる時以外にも頭が増えるパターンってのもあるんじゃねぇか? まぁどの種族にもあるとは言えんが……」
「あー、ありそうなパターンだな。『部位合成の種』で頭を増やして進化させる……いや、流石にそれは種族的に負担が大きくなり過ぎるか」
「確かにそこは負担が大きそうな気がするかな?」
「……何か……固有スキルが……存在するとか?」
「おぉ! それはありそうな可能性なのです! スキルLvに応じて、進化階位が上がらない変異進化があったりしそうなのさー!」
「なるほど、それは確かにありそうな可能性だな」
そうなると、根本的に進化条件がオフライン版とはまるで違う可能性は高そうだ。というか、既にオフライン版には存在してなかった進化が色々あるんだから、同じになる訳もないよなー!
でも、進化階位が変わらない変異進化で大幅に見た目が変化していく可能性ってのは面白いとこだね。まぁ確証がある訳じゃないし、どの種族でもあるとは思えないけど、それでも次の完全体までの間に進化が発生する可能性もある訳だ!
「まぁまだまだ先の人化については今は置いておくとして、これからどうする?」
「はい! とりあえず群集支援種の竜のサイカから、何が出来るかを確認したいです! 地味にエリアボスが味方の群集支援種になった時に、何が出来るのか気になってたのさー!」
「あ、それは私も気になってたかな!」
「青の群集に横取りされた城塞ガメの中身の精神生命体が、どういう役目になってるのかは気になるもんね」
「……ジェイ!」
「あー、風音さん、落ち着けよ? 今、横取りの件を思い出して怒っても意味ないからな。そういうのは、総力戦の時に全力でぶつけてくれ」
「……分かった。……そこは……アルマースさんの……言う通り」
ふぅ、風音さんが横取りされた時の怒りを思い出してしまったみたいだけど、アルの言葉で冷静になってくれてよかった。
風音さんはまだ地味に根に持ってるみたいだし、ジェイさんは大変そうだね。まぁ俺もあれに関しては何かの形でやり返すつもりでいるから、ジェイさんには思いっきり苦労してもらおうか! まぁ具体的にどうするかは後から考えるとして……。
「そういう事なら、まずは何が出来るのかを見に行きますか!」
「「「「おー!」」」」
「……うん!」
という事で、みんなで竜のサイカの元へと移動していく。もう対戦が終わった峡谷エリアの安全圏って事で、群集支援種の周囲はそんなに人はいないね。
まぁ他の新エリアへと繋がる方向を妨害しているボスのゾンビなトカゲに挑んでる人はそこそこいるけどね。なんか火魔法や火の操作で焼いてる人が多いから、掲示板で見た通りに倒し方自体は確立されてるっぽいなー。
うーん、俺らの共同体の中では火魔法を十全に使える人がいないし、ここは風音さんがメンバー入りしている間に討伐してしまうのもありかも?
「おい、ケイ! 何をボーッと止まってんだ?」
「あ、悪い! あの移動妨害のボスの事を考えててなー」
「あー、あれか。纏浄や火がかなり有効らしいな」
「え、そうなのかな? それなら風音さんがいる時に倒すのを手伝ってもらうのがいいのかな?」
「……火なら……任せて」
「まぁそういう事を考えてたとこだけど、それは後回しで!」
もし、サイカで出来る事がアイテムのトレードの類なら、早めに行った方がいい。優先順位はちゃんと決めた上で動かないと、勿体ない事になる可能性だってあるし。……まぁレアアイテムがラインナップにあったとしても、残ってるかは怪しいけども。
「先に行って、内容を確認してくるのです! 『自己強化』!」
「あ、私も行くよ! 『自己強化』『高速飛翔』!」
ハーレさんが先行して内容を確認しにいくのも、もう割といつもの事だよなー。まぁそれが悪い事でもないし、その少しの差で貴重なアイテムが手に入る可能性だってあるんだから――
「あー!? ヨッシ、ヨッシ! これ、大急ぎでトレードをするのさー!」
「え、何か良いのが……あ、『スキル強化の種』!? 急いでトレードしなきゃ!」
おぉ、ここで『スキル強化の種』のトレードが出来るってマジか! ヨッシさんはもう1個欲しいって話をしてたとこだし、これは相当ラッキーだぞ!
「ちょ!? さっき見た時は『スキル強化の種』は無かったぞ!?」
「どうなってんだよ、ここのアイテムのラインナップの更新頻度!?」
「扱ってる数自体も少ないのに、当たりとハズレの落差が酷い……」
ん? なんだか周囲にいた人の反応が気になるけど……このサイカからトレード出来る物の品揃えってどうなってんだ? 俺もサイカとのトレード画面が開ける場所まで近付いたから、内容を確認してみようっと。
えーと、ラインナップは……在庫切れになった『スキル強化の種』が1個のみ。って、いくらなんでも種類が無さ過ぎない!? いや、凄い貴重なアイテムだけどさ!?
「みんな、やったよ! 『スキル強化の種』が交換出来た! これで毒魔法をLv10に出来るね!」
「……それは気になる!」
「あはは、風音さん、落ち着いてね?」
「……ごめん」
魔法大好きな風音さんらしい、ヨッシさんの元へと一気に迫っていく様子だったよ。でも、その気持ちは分からなくもないよなー。
「ヨッシ、おめでとうかな!」
「毒魔法Lv10までの内容が気になるのさー!」
「こりゃ良いタイミングでありがたいもんが手に入ったな」
「だなー。ヨッシさん、おめでとさん!」
「みんな、ありがとね」
基本属性の魔法だとアブソーブ系で統一されてる感じだけど、例外属性の毒魔法については全然予想が出来ない。毒を吸収するような性質の新たなスキルが手に入ったりするのか?
それにまだよく分かっていない毒の応用魔法スキルも、途中で手に入る可能性もあるんだよな。かなり興味深い内容だし、それを検証する時間も確保出来そうだしね。……一緒にアルの樹木魔法も上げるのもありか?
「くっそ! ラインナップの更新頻度は高いみたいだし、張り付いてレアアイテムを狙うか……?」
「でも、出てくるのはゴミも多いしなぁ……」
「進化の軌跡の欠片が1個だけとか、今のタイミングじゃいらねぇよ……」
「HP100の固定値回復アイテムとか、もういらねぇよ!」
周りにいた人達から聞こえてくる会話の内容では、どうも少数だけどレアアイテムが出る代わりに、更新頻度は高めでもういらないようなアイテムがラインナップに並んでくるっぽいね。
うん、ヨッシさんが『スキル強化の種』を交換出来たのはラッキーだったみたいだな。そうか、追加になった群集支援種はこういう感じになるんだね。中々に癖のあるボーナス要素だなー。
「さてと、それじゃヨッシさんの毒魔法を――」
「あ、ケイさん、待って!」
「ん? 何か問題あった?」
「問題って訳じゃないんだけど、先に妨害ボスの討伐をやらない? 毒魔法Lv10まで上げて、内容を確認するのはその後でさ。多分、今じゃないと混雑がしそうな気がしてね?」
あー、そうか。青の群集との対戦が、最低でも1時間は発生しない事が確定したんだもんな。今のうちに妨害ボスを倒そうとする人が増えてくる可能性はあるか。
「確かに混雑し始める可能性はありそうだから、俺は賛成だけど……みんなはどうだ?」
「問題なしなのさー!」
「私も大丈夫かな!」
「……問題ないよ?」
「俺も問題ねぇぜ」
「おし、それじゃ満場一致って事で、ゾンビなトカゲの討伐をやっていきますか!」
「「「「おー!」」」」
「……うん!」
という事で、妨害ボスの討伐をする事に決定! 今の段階で戦闘中の1PTと、順番待ちをしてるのが1PTだから、その後ろで順番待ちをしていきますか。
えーと、確か妨害ボスを倒せば確定で刻印石が手に入るんだっけ? 刻印系スキルの強化にもなるし、丁度いいかもね!
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