第1059話 風音の事情
魔法砲撃にしたアクアクラスターの性能は分かった。12発全てを細かく指定していくのに手間がかかりそうではあるけど、明確に狙いを定められるのはありがたい。
細かい使い方自体は戦ってる中でケースバイケースに考えるとして、次の段階に移っていきますか! あ、その前にふと気になった事を聞いておこう。
「風音さん、ちょっと聞きたい事があるんだけど、聞いていいか?」
「……味方になったし……ゲーム内の事……ならいいよ」
「ほいよっと」
まぁ別にリアルの事を聞こうとした訳じゃないから、そこは問題ない。いや、レナさんやダイクさんとリアルでも繋がりがあるかどうかが微妙に気になるとこだけど、そこは変に詮索すべきとこじゃない。
「ケイ、何が気になったのかな?」
「えーと、風音さんの龍って闇魔法以外は何が使えるかが気になったんだけど……」
「あ、なるほど」
「おぉ! それは確かに気になるのです!」
「……それなら……属性は闇属性のみ……魔法は普通のは土魔法Lv7と火魔法Lv7まで……応用が闇魔法Lv1」
「へぇ、土魔法は見たが、火魔法もあるのか」
「それにスキルLvがかなり高いんだね」
「予想以上だったなー」
付与魔法まで育ってる魔法が2属性かつ、応用魔法スキルが1つとなったら、かなり強力な方なはず。まぁ俺も似たような感じでそうなってるけどスキル強化の種は使ってるし、風音さんは変に属性は持たせ過ぎないようにしてるんだな。
「はい! あの1stの大きなトカゲの方はどうなってますか!?」
「……あっちは風属性にして……風魔法Lv7と水魔法Lv7。……応用魔法スキルは……暴風魔法Lv1だけ」
「あのトカゲも、魔法が随分多いな! ちなみに、なんであのサイズ?」
「……あれ……ただの大型化。……普段は小さい」
「スキルで大きくしてただけなんかい! え、何か理由でもあったのか?」
「……歩幅が大きいから……いつも移動は……あれ」
「あー、そういう理由」
割と普通に真っ当な理由があったよ! てか、今日のログインをした時に巻き込んだ時には既に大きかった気もするけど、あれってログインしたら直後に発動してただけって事なのか?
いや、確かに俺はログイン直後の様子は見てないような気はするけど! えぇ、そんな事ってあるんだなー。
「……ちなみに……3rdで光属性にして……光魔法と……電気魔法と……氷魔法も……取りたい。……毒魔法とか……海水魔法とか……樹木魔法とか……草花魔法までは……流石に時間が……足りない。……応用魔法スキルまで……手が回らない」
「確かにそうなるだろうなー!?」
とことん魔法を取っていくつもりみたいだな、風音さん! 3rdを植物系するとしても、樹木魔法か草花魔法のどっちかは捨てないと無理そうなのがなんとも……。いや、合成進化で樹属性か草属性を得ればなんとか出来るか?
「……全部取るには……数が……多過ぎる。……ところで……話しながら……まとめを見てるけど……応用魔法スキルの取得条件……属性が必須?」
「あー、そういやそうなるのか?」
「……それだと……困る」
「そう言われてな……」
俺らが設定した取得条件ではないからどうしようもないし……って、ちょっと待てよ? 魔法Lv8にする方向なら、属性を持たなくても可能性はある?
「……あれ? ……水魔法Lv8でも称号『水魔法に長けしモノ』が……手に入る? ……これなら……可能?」
「ケイ、その辺はどうなんだ?」
「その情報を上げたのは俺だけど、属性の有無でどうかは聞かれても分からないから!? いや、確かにその可能性はありそうだと思ったとこだけど!」
「……それなら……魔法Lv8の方で……目指してみる。 ……もし分かったら……どうすれば……いい?」
「貴重な情報源にはなるからまとめの方に報告してもらえるとありがたいけど、まぁそこは無理強いじゃないから好きに扱ってくれていいぞ」
「……そういうの……苦手。……レナとか……みんなとか……人伝てでもいい?」
「うん、それは問題ないかな!」
「そういう事なら、後で桜花さんを紹介するのはどう?」
「おー! ヨッシ、ナイスアイデアなのさー!」
なるほど、いつでも俺らが対応出来るとは限らないから、窓口を増やしておくのはありかもね。桜花さんなら俺らの馴染みの人だし、十六夜さんみたいに人伝てでの情報提供もやってるし、風音さん自身もアイテムの補充とかしやすくなるはず。
「……また桜花? ……昨日……もしかして……声がしたの……気のせいじゃ……なかった? ……やっぱりここにいる?」
「ん? 風音さん、桜花さんがどうした?」
「……さっき……アルマースさんが……連絡してた人が……桜花? ……灰の群集の人?」
「まぁ灰の群集の不動種の人だぞ。この後、模擬戦の中継を頼む人だ」
「……不動種? ……うん……後で紹介して……欲しい」
「妙に気になる感じだが……まぁ、その辺は任せとけ」
検証の再開の前でも風音さんの反応が変な感じではあったけど、やっぱり桜花さんとの接点がある? いや、でも風音さんは元赤の群集所属だったはず。
あれ、冗談抜きでどういう接点だ? ジェイさんとも知り合いだったっぽいけど、その辺もよく分からないし……ダメ元でちょっと聞いてみるか。流石にかなり気になってきた。
「風音さん、追加でもう1つ質問。答えるのが嫌ならスルーしてくれていいけど、もしかして青の群集にいた時期がある?」
「……移籍が出来る……ようになってから……少しの間だけ。……でも、合わなくて……すぐ抜けた。……内輪揉め……嫌い」
「あー、青の群集も騒動あったもんなぁ……」
「……ジェイには……その時……引き止められた。……でも……断って……それっきり。……移籍前に……進化協力で……意気投合してた……青の群集の人……いなくなってたから。……フレンド登録……してなかったの……後悔してる」
「……なるほど」
あー、ジェイさんとしては風音さんの魔法への執着とも言える興味とかを味方として残ってて欲しかったのかもな。青の群集は赤の群集ほどではなくても内輪揉めが発生してたから、その渦中にいたジェイさんじゃ止められなかったのか。
赤の群集の騒動で嫌になって群集を離れた先で、そんな状態じゃ群集に所属する気になれなくても仕方ないか。改善された後でも戻る気になれないなら、もう根本的に選択肢が灰の群集しか残ってないんだしね。
「……昨日の夜から……灰の群集で……気になってる事が……あるから……今回は良い機会。……でも……それとは関係なく……青の群集は……潰す!」
「……あはは、楽しみを潰された恨みは怖いかな?」
「その気持ち、分かるのさー!」
「分かるんかい!」
ついツッコんだけど、ハーレさんの場合なら食べ物の恨みは怖そうだなー。うん、対象こそ違うけど、冗談抜きで本当に風音さんの気持ちを分かってそうだよ、ハーレさん。
ん? 共同体のチャットが光ってる? 今の状態でチャットって、何か内緒話をしたい事でもあるのか? とりあえず見てみようっと。
アルマース : ふと思ったんだが、風音さんが意気投合した相手って桜花さんじゃねぇのか? なんか妙に何度も桜花さんの名前に反応してるし、移籍が可能になった頃に青の群集からいなくなった人だろ?
ケイ : そうっぽいよなー。でも、昨日桜花さんって、油を運んできてなかった?
サヤ : 桜花さんはすぐに戻ってたし、気のせいだと思ってたんじゃないかな? でも、私達が何度も名前を出すから気になってるとか?
ヨッシ : その可能性はありそうだね。もしかすると、その辺が理由で灰の群集に入ろうかと思ったとか?
ケイ : あー、なるほど。でも、それなら俺らに普通に聞いてくれてもいいんだけどな……。
ハーレ : ケイさん、人には言いにくい事ってあるのです!
ケイ : ……なるほど。
人には言いにくい事か。まぁハーレさんは実体験から言ってそうだから、その辺の説得力はあるよな。
アルマース : その辺の事があるから、どうするかの相談だな。俺らの方から言ってみてもいいが……
サヤ : それならこの後で桜花さんのとこに行くんだし、その時でいいんじゃないかな? 風音さんからは聞かれたいって感じもしないしね。
ハーレ : 私はその案に賛成なのさー!
ヨッシ : まぁ人違いの可能性もあるから、根掘り葉掘り聞いて、当てが外れてガッカリさせたくもないし、私もそれに賛成。
あー、あくまでも可能性でしかないから、変に期待させるのはもし違ってた場合に悪いのか。フレンド登録をしてなくて後悔してるって言ってるくらいだし……。
「風音さん、そんな相手がいたんだな? それならレナさんに相談してりゃ、すぐ見つかったかもしてないのに初耳だったぞ」
「……レナには……勧誘を断ったのに……都合よくは……頼れない」
「その辺は気にしないと思うけどなー」
「……こっちが……気にする。……ダイク……余計な事は……言わないで」
「ま、そういう事なら了解っと」
あー、風音さんは風音さんなりに、レナさんへの遠慮みたいなのはあったんだ。まぁ一度断った事があったら、流石に頼み事もしにくいか。てか、その辺が俺らにも頼ろうとしない理由? 風音さん、出来るだけ自分だけでどうにかしようとしてる?
「あ、ケイ君、おはよ。なんか凄い事になってたね、競争クエスト」
「あー、アイルさんか。おはようさん」
なんかシレッとアイルさんが出現。そういえばどのタイミングか忘れたけど、アイルさんの声を聞いた覚えがあったっけなー。いつだったっけ?
「急に集まれーって招集がかかったから流れに乗って大慌てで移動してみたら大混雑だし、なんか一気に状況が変わって撤退になったし、大忙しだねー。ところで、ケイ君は派手に目立ってたね?」
「あー、人違いじゃない……?」
「いやいや、大技っぽいのを防いでたし、『グリーズ・リベルテに続けー!』って聞いたよー?」
「アイルさん、これから私達はやる事があるから、今はごめんかな?」
「あ、そうなんだ。ごめんね、邪魔しちゃって!」
おっと、警戒してる感じでサヤが割り込んできた? うーん、サヤにしては妙に珍しい感じで警戒心が剥き出しになってる? 俺はかなり警戒心は緩めたんだし、サヤも緩めてくれていいんだけどな。
「さてと、私は灰のサファリ同盟ってとこに行って、初心者向けにレクチャーを聞いてこよっと! それじゃ、本格的に競争クエストが動き出したら頑張ろうねー! 『群体塊』!」
そんな風に、ただ単純にゲームを楽しもうという感じでコケの塊になって西の方へ転がっていった。ここから西に行ったって事は、ミズキから転移していく感じか?
というか、なんでアイルさんがミズキの森林にいたんだろう? この辺にリスポーン位置の設定でもしてた? 思い当たる可能性としてはそれくらいしかないけど。
「サヤ、もうそんなに警戒しなくても良いんじゃない? なんだか、らしくないよ?」
「……うん、なんか自分でもよく分からないけど、ついカッとしちゃった……かな?」
「……ほう? まぁそういう事もあるだろうよ」
「そういうものかな?」
「ま、俺の思い過ごしかもしれんが、もし心当たりが出てきたなら相談には乗るぜ?」
「……それって何のこと?」
「分からんなら、今はそれでも良いだろうよ。さて、とりあえず桜花さんのとこに向かうか」
ん? アルは何の話をしてるんだ? サヤもよく分かってないみたいで首を傾げてるけど、アイルさんの何かがサヤとは相容れないもの? うーん、よく分からん!
「……これは私はどうすれば!?」
「ハーレ、どうかした?」
「あぅ……ちょっと難題なのです……」
「……本当にどうしたの?」
「今後どうなるかはまだまだ分からないし、今は考えるのは放棄なのさー!」
「ねぇ、ヨッシ? ハーレはどうしたのかな?」
「うーん、私にもよく分からないや?」
俺もハーレさんが何の考えを放棄したのかさっぱりだけど、これは聞いても教えてくれそうにはなさそうな気がする。今後の事って、何か心配するような案件があったっけ?
「アルさん、桜花さんのとこまで移動するのです! 模擬戦の前に、みんなで行くのでいいよね!?」
「それもそうだな。風音さんは検証は見ていきたいだろうし、桜花さんへの紹介もあるから一緒に行くのは確定だが、ダイクさんはどうする?」
「模擬戦を使って水魔法関係のを検証するんだよな? それなら興味あるから見に行くぜ!」
「なら、それで決まりだな。あー、PTを組んでた方がやりやすいが、7人いるからダイクさんと風音さんでPTを組んでもらって連結PTにする形にするか」
「おうよ! ほい、風音さん」
「……ダイク……ありがと」
なんかハーレさんとアルが話題を流そうとしてる感じはあるけど、まぁよく分からない内容だし、検証はやっていきたいから流されておきますか。
「ケイ、PTの連結申請は頼むぞ」
「あ、そういや今は俺がPTリーダーか! ほいよ、ダイクさん!」
「サンキュー、ケイさん!」
<ダイク様のPTと連結しました>
これでひとまず、今いる7人でのPT会話は問題なし。このまま俺とアルの2人と、他のみんなで分かれて検証の為の模擬戦の準備を始めてもいいけど、まぁ風音さんを桜花さんに会わせるという目的もあるから、ハーレさんの提案通りにみんなで行きますか。
「よし、それじゃ全員アルに乗れー! 桜花さんのとこまで行くぞ!」
「「「「おー!」」」」
「……うん。『小型化』」
「おし、移動中にまとめに上がってる魔法の情報を見ておくか!」
そんな感じで、みんなでアルのクジラの背の上に乗っていく。てか、風音さんが乗れるのかどうかを全然考慮せずにいつもの感覚で言っちゃったけど、普通に小型化して乗ってきたよ!
「そういやハーレ? 大型化の取得はどうなったのかな?」
「はっ!? そういえばまた中断して、そのまま忘れていたのです!?」
「……あはは、中々取れないね、ハーレの大型化」
「あぅ……やろうとすると、何か他の出来事が起きてそのまま忘れるのです……」
「呪われてるんじゃねぇの、ハーレさん?」
「アルさん、その言い方は酷いのさー!? 意地でも今日中には取るのです!」
「ハーレさん、頑張れよー!」
「はーい!」
何度も取ろうとして、何かしらの騒動があって取れないままのハーレさんの大型化。今日中に取れたら良いんだけどなー。
まぁそれはともかくとして、今は桜花さんの元へ移動開始! 風音さんが少しの間で意気投合した相手が桜花さんだと良いんだけど、そこは会わせてみてからじゃないとなんとも言えないからな。
なんか成り行き任せで灰の群集の入った風音さんだけど、経緯はともかく折角移籍してきてくれたんだから、青の群集への邪魔した報復以外にも楽しんでいける環境になって欲しいもんだよね。
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