第1036話 圧倒的不利な状況で
どこからどう現れたのか分からないけど、弥生さんとシュウさんから奇襲を受けた。くっ、派手に目立つように動いてはいたけど、消耗しまくった後でこの2人の相手は厳し過ぎる!
「ヨッシから離れてかな! 『強爪撃』!」
「サヤ、ありがと!」
「あはははははははははははは! 今度はサヤさんが相手ー!?」
「うっ! くっ! これならどうかな! 『爪刃乱舞』!」
サヤが弥生さんに飛びかかって、ヨッシさんの救出に動いたね。よし、弥生さんに踏み潰されていたヨッシさんだけど、サヤの攻撃を飛び退いて回避したから何とか脱出出来たっぽい。
ハチもボロボロにはなってるけど、ウニの棘が折れまくってHPが減ってるから防御に使えてた感じか。とはいえどっちがやられても支配進化じゃ負けたようなものだから、危なかった。
「あははははは! いいね、いいね、いいねー!」
「スキルを! 平然と! 受け流すの! かな!?」
サヤの鋭い連撃なのに、弥生さんは平然とその攻撃を逸らすように動いて、その上でサヤへとカウンターを入れている。今使える手はあるにはあるけど……この状況で、当てられるのか?
「ヨッシ、少しでも回復しておくのです!」
「……そうだけど、そんな隙をくれるの?」
「僕なら基本的に手は出さないから、そこは自由にしてくれていいよ。まぁ弥生が許せばだけどね?」
「……あはは、余裕だね、シュウさん。それじゃ遠慮なく!」
どうもシュウさん自身は積極的に戦闘に参加するつもりはないみたいだけど……これはチャンスか! 一瞬だけど弥生さんが回復という言葉に反応してたし、暴走状態で戦っているなら反射的に反応する可能性がある!
「アル、枝の操作でヨッシさんを回復!」
「なに!? いや、ギリギリいけるか……?」
「あははははははは! そんな事、させる訳ないよねー!?」
「あ、抜けられたかな!?」
よし、狙い通りにアルの木に目掛けて弥生さんが動き出した! てか、アルの反応的にギリギリ枝の操作で回復を狙えるくらいは行動値は残ってたか!
「作戦通り! おらよっ!」
さっきの大蛇に突き刺した岩の残り操作時間を全て使って、空中に跳び上がっている弥生さんへ叩きつける! って、当たったのにその衝撃を殺して、岩の上に着地!? くっ、最大まで生成してるから追加生成で捕獲が出来ない!
「あははははは! ケイさんの狙いは良いけど、詰めが甘いねぇ!」
「俺を囮にしやがったな!?」
「そこは謝る!」
とか言いつつ、しっかりと根を俺の岩に隠すようにしつつ弥生さんの近くまで伸ばしてるじゃん! あ、ヤバい。これ、もう岩の操作が保てない!?
「よっと! あははははは! 残念だったね、アルマースさん!」
「ちっ、外したか!」
「まだかな! 『強爪撃』!」
「あははははは! ケイさん達、消耗してるっぽいのに手応えがあるねぇー! こうでなくっちゃ! というか、あんまり役に立たないからこれもう良いや!」
え、ブラックホールが消滅して吸い寄せられないように力を入れてたのでバランスが!? 吸い寄せる効果自体が厄介なのに、任意に解除されたんじゃ態勢を一気に崩されて――
「あははははははははは!」
「アルさんが狙われているのです! 『散弾投擲』!」
「ケイ! 俺ごとまとめて押し潰せ! 『アクアクリエイト』!」
くっ、弥生さんは真っ先にアルの木を狙いに行ったのか! あぁもう、弥生さんの動きが速過ぎる! もう殆ど取れる手段が残ってないんだから、威力は出そうにないけどアルが意図している事をするしかない!
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 0/100(上限値使用:7): 魔力値 69/274
アルの木が、生成した小石を足場にして縦横無尽に動く弥生さんの攻撃で次々とHPが削られてる。……弥生さんは俺らのしようとしてる事は無視なのか? 確かに相当消耗してるから期待するほどの威力にはならない気がするけど、ここまで無視されるとは!
<『昇華魔法:デブリスフロウ』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/274
あ、まだアルの方には思ったよりも魔力値が残ってたみたいで思ったよりも威力は――
「ぐふっ! な、何が――」
「あははははははははは!」
って、アルが地面に向かって吹っ飛ばされてきた!? ヤバい、発動した昇華魔法は無視したんじゃなくて、速攻で潰すつもりだっただけか。しかも強弱が発生した銀光を放ってるって事は、Lv2以上の応用スキルでの攻撃!
「ぐはっ! がはっ!」
「もしかして『双打連破』かな!?」
「あはははは! まずは1人!」
「ここまで……か」
「「アルさん!?」」
そんな言葉を残しながら、闇に姿を隠したままの弥生さんによってアルの木が仕留められてしまった。……アルがいればすぐに俺らはすぐにリスポーンしてこれるけど、それを分かった上でアルを真っ先に潰してきたか。
ヨッシさんはまだ戦闘が出来る状態じゃないし、ハーレさんの遠距離の投擲は弥生さんとの相性が悪過ぎる。取れる手段は、ほぼない。やるとしたら……もうこれしかないか。不安定だからあまり使いたくはないんだけど、そうも言ってられないな。
「サヤ、もう無茶を承知で暴発を使うぞ」
「……確かにそれしかなさそうかな。『暴発』!」
行動値がない以上、どうこう言ってる場合じゃない。博打の要素が強過ぎるとはいえ、可能性があるのはもうこれだけだ。
<『暴発』を発動して行動値が倍増、全快します> 行動値 0/100 → 207/207 (上限値使用:7)
<一定時間、スキルの発動時に不発、制御不可、暴走による無差別のダメージが発生する可能性があります>
万全でも勝てるかどうか怪しいのに、シュウさんが傍観の状態でこれじゃもう勝ち筋は無理。だけど、これで少し手札を引き出す事くらいはしてやる!
「行くかな! 『並列制御』『爪刃双閃舞』『重硬爪撃』!」
「あはははは! 制御が乱れて荒々しいねぇ! でも、それで楽しませてくれるのは嬉しいねぇー!」
サヤが暴発で制御が難しくなってる状態で銀光を放つ連撃を繰り広げつつ、脚の爪でチャージも行っている。でも弥生さんが闇に姿を隠して、ヒットアンドアウェイで攻撃し始めてサヤが一方的に攻められてるじゃん! ちっ、足場も併用して厄介だな!
俺は魔力値を使い切ってしまっているから、今は魔法での攻撃は使えない。かと言って中途半端な近接攻撃ではサヤの邪魔になりかねない状況だ。暴発を使ったものの、ここからどうするのが正解だ……?
「ケイ、私も巻き込んでいいから、盛大にやってかな!」
何かを鼓舞する様にサヤが地面を踏み付けつつ……って、そういう事か! サヤの意図を読み違えてたら後で謝るとして、それでやるのみ! この際、むしろ暴発での無差別ダメージでいい!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になります> 行動値 204/207(上限値使用:7)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になります> 行動値 198/207(上限値使用:7)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
<『暴発』により不発になりました>
<『暴発』により暴走状態に入ります>
ここまでの戦闘の余波で、剥き出しになっている地面の土があるから、それを支配下に置いて持ち上げる! 片方は不発になったけど、もう片方が暴走状態になったのなら構わない! てか、並列制御の場合だと順番に表示が出るんだな。
無差別ダメージは暴走状態で制御困難になった時に確率で発生してたはず! というか、制御困難と無差別ダメージは実際に出るまで見分けがつかないんだよな。
「あははははは! 無差別ダメージ狙いでも、土の操作程度ではまだまだー!」
「だろうな!」
だから元々それは狙ってはいない! 俺が狙ってるのは、ジャングルの木々を吹っ飛ばす事! そうすれば、どこかに岩があるはず! 期待は出来ないけど砂でもいい!
「それはよくないねぇー! サヤさんより――」
「弥生さんの相手は私かな!」
「あははははは! いいね、いいね、いいよー! 対戦はこうで――」
「『狙撃』!」
「おっと、危ないねー、ハーレさん!」
「私達を忘れないで欲しいのです! 『散弾投擲』!」
「おっとっと!」
「そうだよね! 『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』!」
「あらら、闇が解除になっちゃった。でもまぁ、ここからが本番だよねぇ!」
おぉ、規模は大した事はないけども、ヨッシさんがダイヤモンドダストで弥生さんの闇と足場を兼ねた移動操作制御を消し去った! グッジョブ、ヨッシさん!
って、土の操作が急激に荒ぶり始めた!? え、今までこんな事って……あ、もしかして無差別ダメージになる時の前兆が分かりやすく改良でも入ったか! こりゃいいや!
「吹き飛べ!」
「あはははははははは!」
あー、もう! 弥生さんの方を狙って無差別ダメージになった土の操作をぶつけたけど、あっさりと小石を生成されて上空に逃げられた。でも、目当ての物は見つけたぞ! それに慌ててたから忘れてたけど、他にも使える物はあったというか、ハーレさんが持っている!
「ハーレさん! ありったけの砂をくれ!」
「了解なのさー!」
「あはははははははは! 楽しいねぇ! 本当に楽しいねー!」
「だから、弥生さんの相手は私かな! 『爪刃乱舞』! きゃっ!?」
「危ない、危ない!」
ちょ、今のサヤの暴発での無差別ダメージをあっさり飛び退いて躱すって、冗談抜きでどんな反射神経をしてるんだよ、弥生さん!?
「ケイさん、ありったけの砂です!」
「ハーレさん、サンキュー! 先に謝っとく。これからする事で巻き込んだらすまん」
「状況的に仕方ないのさー!」
「うん、そこは気にしないから思いっきりお願い!」
「ほいよっと!」
暴発でどういう効果が出るかにもよるけど、全く手を出して来ないシュウさんがいる状態でもこの有り様だ。……そもそも弥生さんの行動値は一体どうなってんだ? 今までの攻撃で応用スキルは普通に使ってるっぽいし、通常攻撃が多いような気がするけど……あの嫌な予感が的中してるとかないよな?
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『砂の操作Lv3』は並列発動の待機になります> 行動値 179/207(上限値使用:7)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を38消費して『岩の操作Lv4』は並列発動の待機になります> 行動値 141/207(上限値使用:7)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
<『暴発』により暴走状態に入ります>
<『暴発』により暴走状態に入ります>
おし、両方が暴走状態に入った! それじゃ砂の操作は周囲に満遍なく散らすように操作して、岩の操作は弥生さんに向けてぶつけていくのみ!
「あははははははははは! 消耗し切ってたとこから、ここまで動くとは思ってなかったよ! あははははは! あははははは!」
「って、はい!?」
ちょ、さっきまでは自己強化っぽかったけど、魔力集中に切り替えたっぽい? その上、風属性を付与して風の斬撃を次々と飛ばしてきてる!? こういう時の弥生さんは全然発声してスキルを使わないから、何が何やら……って、風の刃が目の前に!? くっ、岩の操作で防御は……いや、今は防御は捨てる! 丁度岩の操作が荒ぶってきたとこだしな!
<ダメージ判定が発生した為、『移動操作制御Ⅰ』は解除され、10分間再使用が不可になります>
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 141/207 → 141/213(上限値使用:1)
飛行鎧に風の刃は当たって強制解除にはなったけど、その代わりに弥生さんに動かした岩の操作が盛大に爆発して無差別ダメージをぶつける事には成功した! これで一矢報いて――
「あはははははははは! 今のは良いよ! あはははは! でも、詰めが甘い!」
「んな!?」
いくらなんでも今のタイミングで、空中にいた俺の位置までどうやって!? はっ!? もしかして、無差別ダメージの爆発を推進力に使ったのか!?
「あはははははははは!」
「くっそ!」
「ケイ!?」
「「ケイさん!?」」
ロブスターの背中の上に乗られて、思いっきり背中に爪を立てられてる。砂の操作は惜しいけど、このまま落下してたまるか! ここは頼むから暴発しないでくれ!
<行動値を4消費して『スリップLv4』を発動します> 行動値 137/213(上限値使用:1)
よし、暴発なしでスリップの発動は成功! 弥生さんは足を滑らせて、俺のロブスター上から落ちた。ここから更に追撃を仕掛ける! この至近距離は危険だから、まずは吹っ飛ばす! 魔力集中を使いたいけど、今は魔力値が無いから諦めるしかないか……。
<行動値を10消費して『双打連破Lv1』を発動します> 行動値 131/213(上限値使用:1)
<『暴発』により不発になりました>
くっそ、このタイミングで不発!? えぇい、もう一度だ! この不安定さが暴発の欠点なんだけど、これがなきゃそもそも戦えてる状況じゃないから文句言ってる場合じゃない!
<行動値を10消費して『双打連破Lv1』を発動します> 行動値 121/213(上限値使用:1)
<『暴発』により暴走状態に入ります>
よし、今度こそ暴走状態ではあるけど発動は出来た! 無差別ダメージでも、普通に吹っ飛んでもどっちでもいいから、今はとにかく弥生さんを――
「あははははははははは!」
「ちょ、大型化!?」
しかも足場を生成して、俺のロブスターのハサミに噛み付いて……げっ!? ハサミにヒビが入った!?
「あはははははははははは! 吹っ飛んじゃえ!」
「うおっ!? ちょ、待っ!?」
ちょ、ロブスターのハサミを咥えた状態で振り回されて、投げ飛ばされた!? あ、ヤバい!? ヨッシさんとハーレさんのいる方向か、これ!?
「2人とも避けろ!」
「ハーレ、逃げるよ!」
「了解なのさー!」
とりあえず俺の落下地点からはヨッシさんとハーレさんは何とか逃げれたみたいだけど、俺は地面に突っ込んで落下ダメージを受けた。うげっ、暴走状態からの無差別ダメージを盛大に発生した……。ヤバい……朦朧も入ってるし、もうHPもそんなに残ってないぞ。
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