第1031話 スキル強化の種の使い道


 少しの間は行動値の回復と、情報の整理という事になった。さーて、それじゃ俺は『砂岩魔法Lv1』の『サンドショット』のスキル詳細を見ていこう。


『砂岩魔法』

 魔力値を消費して砂や岩を生み出し、強力な現象を引き起こす。

 威力はLvと魔力に依存。消費行動値は15×Lv。

 消費魔力値は使用魔法のLvの4倍の値と、『岩の操作』か『砂の操作』の高いLvの方の消費行動値との乗算。


 【砂岩魔法Lv1:サンドショット】消費行動値:15 消費魔力値:4×『岩の操作』または『砂の操作』の消費行動値

  行動値と魔力値を消費して、砂を球状に集めてから散弾のように前方の広範囲に射出する。


 あ、やっぱり消費魔力値は岩の操作と砂の操作の消費行動値が関係してた。ふむ、スキルLvが高い方を優先して参照する感じかー。てか、Lvが上がれば魔法の種類が増えていくのは通常スキルの魔法と同じなんだな。

 今までの法則から考えると『砂岩魔法Lv2』は攻撃的な魔法ではなく、補助的な魔法になる? でもLv1の時点で法則通りではないから当てにはならないか。しかもこれ、消費行動値も消費魔力値も倍になるよなー!? 行動値も魔力値も大幅に増えたけど、その上でも消耗が激し過ぎる……。


「そういやサヤのは行動値の消費はどんな感じ?」

「羅刹さんが言ってた『重爪刃・連舞』と同じ法則かな。初期の行動値消費が25で、そこからLvが上がる度にスキルLvとの乗算で増えていくよ」

「あー、その辺は応用連携スキルの中で統一されてる感じ……いや、万力鋏とか例外もあるからなんとも言えないか?」

「うん、実際に取得したスキルの情報がないと断言は出来ないかな」

「だよなー」

「ところで、魔法の方はどんな消費の仕方なのかな?」

「あ、そういやそうだった。えっと、とりあえず俺の――」


 という事で、サヤにも俺の応用魔法スキルでの行動値の消費の説明をしていく。それにしても行動値の消費は応用連携スキルの方が多めなんだな。まぁ魔法の場合は魔力値も消費するから当然ではあるか。



 とりあえずサヤの新連撃スキルの仕様も大体分かって、俺の砂岩魔法Lv1の消費の仕様を説明し終えた。アルも一緒に聞いていたから、清水魔法との違いがあるかも分かるはず。まぁ極端に違うとも思えないけど……。


「ふむ、ケイの砂岩魔法のサンドショットは、俺のと消費の仕様は同じみたいだな」

「そんな気はしてたけど、やっぱりかー。ちなみに清水魔法の名前は何になってる?」

「Lv1は『ウォーターハンマー』だとよ。多分、性質的にはアクアインパクトに近そうだな」

「お、そうなんだ?」


 アルの『ウォーターハンマー』がアクアインパクトの近い感じなら、水を一気に叩きつける感じなんだろうね。まぁ具体的にどういう風になるのかは実物を見ないとなんとも言えないけど……。


 それはそうとして、実際に新しいスキルを手に入れて率直に思った事がある。……これ、スキル強化の種でスキルLvを上げるのも考慮に入れてたけど、今の段階で上げても消耗が激し過ぎる気がする。よし、ここは相談してみよう!


「アル、応用魔法スキルにスキル強化の種を使うのはどう思う?」

「流石に進化したてじゃ、消耗が激し過ぎるから現時点では無しだな。そもそもLv2の魔法の性質が分からんから相当な博打だぞ?」

「……やっぱりそうだよなー。アルが1番スキル強化の種を持ってるんだし、上げてみない?」

「……無しと言った上で、それか。あー、まぁ少し考えさせてくれ、てか、ケイが取っても良いんじゃねぇか?」

「いやー、こうなってくると土魔法か水魔法をLv10まで上げてしまうのもありって気がしてきてさ。もしくは水の操作か土の操作をLv9まで上げる」

「……なるほど、そうきたか」


 1番下位のスキルになる爪撃もLv10になって化ける事が分かっているんだし、選択肢として通常スキルに分類される魔法系スキルや操作系スキルを極めてしまうのもありなはず。

 スキル強化の種は3個持ってるから、実行するのであればあれば水魔法か土魔法が優先だね。Lv10まで上げたら、そこで称号やら強化用のスキルとかが手に入りそうな予感もするもんな。……ただ、今すぐここでやるのはマズい。目立てとは言われてるけど、切り札と使うものになるだろうから、囮で使うような真似は出来ないしね。


「あ、そういやサヤはその辺はどうするんだ?」

「私は考えてた通り、Lv2には上げておこうと思ってるかな。Lv3は流石に消耗が激し過ぎるから、今はパスしておくけどね」

「まぁそうなるかー」


 サヤの手に入れた連撃同士の応用連携スキルの『連爪刃・閃舞』はLv1でも行動値を25も消費する。スキルLvが上がる毎に消費量が25ずつ増えていくんだから、Lv3にしたら75も消費する事になる。その分だけ威力は上がるにしても、いくらなんでもそれは消耗が激し過ぎだ。

 あー、スキル強化の種でLvだけ上げたとしても、行動値で使える回数が抑えられるように設定されてるなー。強いスキルを使いたければ、それを扱い切れるだけのLvまで上げろって事か。まぁ下手に先取りし過ぎてもバランスブレイカーになるから、その辺は仕方ない……。


「みんな、とりあえず現状の報告はしてきたよ」

「ヨッシ、グッジョブなのさー! みんなの反応はどうだった!?」

「無所属の乱入の方法は驚いてたよ。あ、羅刹さん、イブキさんの情報をありがとうって伝えてって言われたから伝えとくね」

「まぁ、それが今回の目的でもあるから問題ねぇよ。……流石にこんなに早く遭遇するとは思わなかったがな」

「それでダメ元で聞くんだけど、無所属はどのくらいで黒の統率種になるのかって分かる?」

「……悪い、それは俺にも分からん。少なくとも無所属のままでここに来れば少し黒に染まるのは確定みたいだが、それ以上はな……」

「あ、やっぱりそうだよね。うん、そこは予想してたから気にしないで。それと」


 羅刹としてもまだまだ今回の競争クエストでは分からない事だらけだろうしね。その辺は今後も無所属の乱入勢と戦う事もあるだろうから、そういう機会に確認すればいい。


「……ハーレ、気付いてるかな?」

「気付いてるのさー。でも、全然隠す気がないみたいだよー?」

「サヤ、ハーレさん、何かがいるのか……?」

「擬態じゃない小動物系の人かな?」

「あ、それは少し待って。多分――」


 あ、ヨッシさんの言葉を遮って、赤いリスが飛び出てきた。って、レナさんか! やっぱりこっちに参戦してたんだな。


「ケイさん達、発見ー! えっと……うん、周囲には何もいないね」

「早かったね、レナさん」

「まぁ意外と近くにいただけなんだけどねー! さてと……厄介な情報を聞いたんだけど、イブキさんがまだ経路確立が出来てないサバンナに行ったってのは本当で良いんだよね?」

「そうだけど……レナさん、直接来たって事は何か企んでる?」

「おっ、ケイさん鋭いねー! ちょっと無茶振りな内容になるし、不確定要素も多いからフレンドコールとか伝言で済ますんじゃなくて直接来たんだけど……ねぇ、羅刹さん、一度死んでみない?」

「ちょ、レナさん!?」

「……へぇ、そりゃまた随分な内容だな」


 ちょ、本気で何を考えてるんだ!? ここで羅刹を死なせても……あれ? 傭兵になってるけど無所属ではある羅刹って、ここで死んだらどうなるんだ? あ、その辺の確認がレナさんの狙いか!


「傭兵の俺が死んだらどうなるかを確認したい。あわよくば、俺をまだ経路が確立出来ていないエリアへの先兵として送り出して……ってとこか?」

「うん、正解! ただ、わたしとしても結構無茶な要求だと思っているから、断ってくれても問題ないよ。わざと負けろっていうのは羅刹さんが気に入らないのは分かってるし、だからこそ直接話にきたんだしね」

「……俺がどう反応するか分かった上での提案か」


 ちょっと羅刹の雰囲気が険しくなってるんだけど、平然としているレナさんはそれも折り込み済みかー!? まあ大真面目に羅刹の心境を度外視すれば、試す価値のある内容ではある。

 ただ、これは羅刹を送り込めたとしても、残り4ヶ所のどこに飛ばされて、いつ経路が確立出来るかの保証もない。それを単独で、傭兵として参加している羅刹にやれというのは間違いなく無茶振りだ。でも傭兵以外の人には条件的に頼めないのも事実か。


「悪いがレナさん、それは断らせてもらう」

「あらら、やっぱりそうなるよねー。無茶な事を言ってごめんね、羅刹さん。今のは聞かなかった事に――」

「……だが、結果的にそうなった場合なら……俺の裁量で自由に動いて良いという条件なら構わん」

「およ? わたしが言い出しておいてあれだけど、それで良いの?」

「偶然そうなった場合はどうしようもないだろう?」

「あはは、そりゃそうだねー。うん、経路が確立出来るまでって事にはなるけど、それで良い?」

「あぁ、それで構わん。ただ、死んだからと言って飛ばされる保証はないし、そもそもそう簡単に死ぬ気はねぇぜ?」

「うん、それで問題ないよ! 万が一、他の場所に飛ばされるような事態になった場合って事でね!」


 ふー、羅刹の険しくなっていた雰囲気は霧散していったし、一時はどうなる事かと思ったけどなんとか話はまとまった。羅刹相手だとこの内容はベスタやレナさんくらいしか言えない内容だしね。

 流石に一緒に囮として動いている現状で、俺らに伝言を頼めるような内容でもないから、わざわざレナさんが言いに来た理由も分かったよ。


「さてと、それじゃわたしはもう行くねー!」

「ほいよっと!」

「この辺からは偽装して動くとしますかー! 『纏属進化・纏草』!」


 おぉ、レナさんのリスに蔦系の植物が巻き付いていく!? あ、赤いリスってのが分かりにくくなって、迷彩状態みたいになった。リスの赤い体毛は、パッと見では花や実に見えるかも? へぇ、纏草ってこんな使い方も出来るんだな。


「それじゃ、わたしは隠密偵察に行くから、みんなは強行偵察をよろしくねー!」


 レナさんがそう言いながら、返事をする間もなぅ極力音を立てずにジャングルの中へと消えていった。動きは素早いのに、物音を全然立てずに移動していくのがすごいな。


 さてとレナさんが隠密偵察をしてるのも分かったし俺らは俺らでやっていきますか! って、まだこれくらいの時間じゃあれだけ減った行動値も魔力値は全快にはなって……あれ? もう全快してた? 思った以上に時間が経過して……いや、そうじゃない気がする。


「もしかして、成熟体から行動値の回復速度が少し上がってる?」

「あぁ、ケイさん気付いたか。戦闘中はそうでもないが、最大値が増えてる分だけ回復は早くなってるぞ」

「おぉ!? それは朗報なのです! ちなみに爆散投擲の再使用時間も過ぎました!」

「そういう事なら、行動再開だな! アル!」

「おうよ! 小型化、解除! 俺の行動値は減ってる状態だから、普通の敵の相手は避けさせてもらうぜ」

「ほいよっと! それじゃ強行偵察と、ヨッシさんとハーレさんの新スキルを狙いに行くぞ!」

「「「「おー!」」」」

「おう!」


 そうして元の大きさに戻ったアルのクジラの背に乗り、改めて行動開始である。アルには移動中に行動値の全快をしてもらうとして、とりあえず黒の瘴気強化種を探してみますか。

 それとは別にそろそろ青の群集の偵察要員っぽい擬態した蝶の人を始末した情報は広がってきてるはず。その辺で青の群集がどう動いてくるかも警戒しながら、動いていかないとね。


「ケイ、獲物察知をお願いかな!」

「ほいよ!」


 さっきのレナさんのジャングル内での誤魔化し方を見たし、擬態に対しては効果がなくても獲物察知が無駄ではないのがよく分かった。あのレナさんの状態は、サヤやハーレさんには通用しないだろうけど、俺くらいなら充分見落としそうだしね。

 場合によっては、ほぼ使わなくなってしまった『進化の軌石・樹』の効果もあるかもしれない。……まぁ今は囮だから使う意味は意味はないけどね! それは良いから、さっさと獲物察知を使おうか。


<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します>  行動値 101/106(上限値使用:1)


 フィールドボスが存在してないんだからLv5までは必要ない気もしたけど、よく考えたら効果範囲が広くなるんだからやっぱりLv5で発動。

 とりあえず周囲には……ん? 残滓っぽい薄い黒い矢印がある? 残滓の姿はまだ未確認って言ってたけど、存在自体はしてるのか? 赤い矢印も青い矢印も白い矢印も反応はないし、これは調査に行ってみるべき?


「みんな、残滓らしき反応を見つけた。調査しておいた方が良い気がするけど、どうする?」

「え、残滓がいるのかな?」

「ヨッシ、残滓の情報はありましたか!?」

「ううん、なかったよ」

「……ケイ、方向を教えろ。それは間違いなく調べておくべき案件だ」

「俺もアルマースさんに同意だな」

「だなー。サヤ、ヨッシさん、ハーレさんもそれでいいか?」

「もちろんなのさー!」

「私も賛成かな。グレイが言ってた、異常な進化ってのも気になってるしね」

「その辺は確認したいもんね」


 よし、みんなの同意も得られたし、残滓らしき反応がある方へ行ってみよう。イブキが出てきた瘴気の渦が、その異常な進化とやらに絡んでいるかと思ったけどハズレだったしね。

 少なくとも演出でグレイが出した情報なんだから、全く関係がないという事はないはず。攻略の為に必要なのか、攻略する上で避けるべき相手なのか、どういう要素なのかは未知数だけども……。


「アル、あっちだ! 他の敵は避けていくぞ!」

「おうよ!」


 とりあえずアルにハサミで方向を指し示しつつ、残滓らしき反応がある方向へ移動を開始。それにしても今回の競争クエストは新要素が多いし、エリアも広いし、中々他の群集と真っ向からぶつかる機会がまだないね。

 まだどこの群集も手探りで情報を探ってる段階で、大々的な攻撃に移れる段階になってないのかも? でも、青の群集の偵察はかなり灰の群集の安全圏に近い場所まで来てたから、そこら辺も要警戒だな。

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