第1029話 上位の応用スキルの取得
さて、ハーレさんの咄嗟の機転でちょっとした仕込みは出来た。必ず有効に使えるかは分からないけど、全ての状況をジェイさんが把握した上で指揮する事は不可能なはず。むしろ何度も見つけられているライさんがいる赤の群集でなくて良かったかもね。
「色々仕込んでるのは分かったが、それならスキルの取得は早めに済ませた方が良いんじゃねぇか?」
「……確かに羅刹の言う通りだな。どんな敵が出てくるかは運次第だけど、とりあえずアル、このまま真っ直ぐで! そこに1体、黒の暴走種か瘴気強化種がいる!」
「おうよ!」
そうして少し真っ直ぐに進んでいく。あ、地面の方に黒い矢印が向かっていて何やら岩っぽい感じの何かを刺し示して――
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
あ、発見報酬が出たし、岩っぽい感じではあるけど擬態してる訳じゃなさそうだな。というか、この周囲だけ妙に荒らされてる感じがする。何か巨大なものに木々が薙ぎ払われているというか……。
その真ん中にいるカメが、発見報酬が出た成熟体っぽい。……妙にデカいけど、これが周囲を荒らした? 近くに水場らしきものは見当たらないけど、ジャングルの中のカメか。いや、陸に住んでるカメもいるからそっちのタイプ?
「結構大きなカメかな?」
「前に飛んでた成熟体のカメに比べたら小さいが、それでも随分とデカいカメだな。ケイ、こりゃ丁度良いんじゃねぇか?」
「確かにカメなら物理攻撃への防御力は高そうだしな」
軽く1メートルは超えそうで、顎と甲羅に白い模様のある。ついつい確認を忘れがちにはなるけど、秀でている部分には白い模様が出るからね。というか、成熟体になってから未成体までより分かりやすくなったような気もする。
「先に俺とサヤとアルの取得をやるぞ! ヨッシさん、ハーレさん、羅刹は周囲の警戒!」
「任せて!」
「はーい!」
「おう、任せとけ!」
さて、ここは手早く済ませてしまった方がいい。えーと、俺の魔法が一番効きがいいだろうから、先にアルとサヤの条件を満たしておくか。……これで俺の取得が失敗するようであれば、俺もアルやヨッシさんと同じ方法で取得を狙った方がいいな。おっと、その前にこれは言っておかないと。
「俺は土魔法にするから、アルは水魔法で。今は不確定要素は排除でいく!」
「おう、了解だ!」
「それじゃ俺がまず識別するから、サヤは条件狙いの攻撃開始! アルはダメージは少なめになるように、魔法を使いまくれ!」
「分かったかな! 『自己強化』!」
「おうよ! 『アクアボール』『アクアボール』『アクアボール』『アクアボール』『アクアボール』!」
サヤがクジラの上から飛び降りると同時に、アルはアクアボールの連発を始めた。あ、3発じゃなく1発だけにして威力を抑えつつ、特に硬そうな甲羅部分を目掛けて撃ちまくっているのか。これなら、ダメージは相当抑えながら魔力値を消費していけるね。
さて、俺も手早く識別するとして……発見報酬は1体分だけだったし、共生進化や支配進化ではないはず? いや、一応その辺も確かめておくか。
<行動値を5消費して『識別Lv5』を発動します> 行動値 96/106(上限値使用:1)
『激顎打硬甲ガメ』Lv1
種族:黒の暴走種(激顎打硬甲種)
進化階位:成熟体・黒の暴走種
属性:土
特性:顎撃、打撃、堅牢、硬甲、鈍重、一撃強化
えーと、この特性の読み方はガクゲキか? とりあえずアゴでの噛みつき攻撃だとは思うから、そこは特に珍しくはない! 問題は『硬甲』と『鈍重』の未成体まででは見た事がない特性のやつ!
「『激顎打硬甲ガメ』でLv1! 属性は土、特性は『顎撃』『打撃』『堅牢』『硬甲』『鈍重』『一撃強化』! 『鈍重』がマイナス要素だけとは限らないから要注意!」
「……これ、『魔力集中』でも良かった気がするかな! 『連閃』! わっ、硬くて反動が凄いかな!?」
想像以上にカメの甲羅が硬いみたいで、サヤがLv3で発動している連閃でもHPの減り方は相当悪い。冗談抜きでサヤは魔力集中でも良かった気はするけど、既に銀光を強めながら連撃を繰り広げているんだから遅いか。
まぁそれでも上手い具合に甲羅は避けて、脚を斬っているのは流石サヤだね。
「ケイ、早めに付与魔法ありのアースインパクトをぶっ放せ! 俺も本格的な攻撃に切り替える!」
「どうもその方が良さそうだな!」
この様子だとサヤは確実に条件を達成は出来るだろうけど、逆にカメを討伐するのに手間取りそうだ。って、カメの顎から銀光を放ち始めた!?
ちっ、成熟体は雑魚でもこんなに早くから応用スキルを使ってくるのか。強弱が発生してないだけマシかもしれないけど、そのチャージは妨害してやる!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値7と魔力値21消費して『土魔法Lv7:アースエンチャント』は並列発動の待機になります> 行動値 89/106(上限値使用:1): 魔力値 253/274
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値12と魔力値18消費して『土魔法Lv6:アースインパクト』は並列発動の待機になります> 行動値 67/106(上限値使用:1): 魔力値 235/274
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
サヤの邪魔になってもいけないから、狙うのは連閃が途切れた時! あれ? なんかおかしくね? なんでサヤの攻撃が当たっているのに、チャージが中断になってない? ……ちょっと待て、特性の『鈍重』の効果って、まさか!?
「このカメ、なにか変かな!?」
「アル、サヤの前にアクアプロテクション! サヤは一旦下がれ! 攻撃は俺が逸らす!」
「ちっ、未知の特性ってのは厄介か! 『並列制御』『アクアウォール』『アクアウォール』!」
「アル、ありがとうかな!」
サヤの連閃の発動が終わって、そう時間が経たない間にカメの頭が伸びて顎がサヤへと迫っていくけども、それはアルのアクアプロテクションが受け止めてくれた。守勢付与の水球はここで2つも消費か。それでも受け止めきれそうにないっぽい。
「とりあえず攻撃を止めろ、このカメ!」
アルの展開しているアクアプロテクションが破壊される前に、カメの噛みつく顎を真下から打ち上げるように付与魔法で強化したアースインパクトを叩き込む!
おし、今までの攻撃に比べると目に見えてダメージが入ってHPが2割くらい削れたし、頭も仰け反った。へぇ、少しだけだけど、前脚も浮いたか。
「ちょっと勿体無いけど自己強化は解除かな! それで『魔力集中』! ケイ、もう1発下から打ち上げてかな!」
「ほいよっと!」
何となくサヤの狙いは分かった。まぁ、カメが相手ならそうするのが良いよな! それじゃ、条件の為のもう1撃をいきますか! あ、首も脚も引っ込めようとしてるけど……動きが鈍いな? 流石は『鈍重』か。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値7と魔力値21消費して『土魔法Lv7:アースエンチャント』は並列発動の待機になります> 行動値 60/106(上限値使用:1): 魔力値 214/274
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値12と魔力値18消費して『土魔法Lv6:アースインパクト』は並列発動の待機になります> 行動値 48/106(上限値使用:1): 魔力値 196/274
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
狙いは引っ込めようとしている頭と甲羅の境目辺り! 真下よりは少しだけ斜めからにして……ひっくり返っちまえ、このカメ! ははっ、魔法の威力が相当上がってる気がするね。
「おし、成功! アル、ひっくり返ったカメに魔法を叩き込みまくれ! サヤは少しだけ待機!」
「おう! 『アクアインパクト』『アクアインパクト』!」
「分かったかな!」
ひっくり返ったカメの腹部側は表に比べたらまだ硬くないみたいでアルのアクアインパクトはちゃんと効いている。
今にも首を引っ込めようとしているカメは攻撃を受ける度に動きが止まるから、今のうちだ。甲羅に中に閉じ籠って防御に専念されて、サヤの攻撃がまともに通らなくなるのは困るからな! 新しいスキルの取得条件にまともにダメージを与える事ってあっても不思議じゃないんだよ!
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 47/106(上限値使用:1): 魔力値 193/274
<行動値19を消費して『岩の操作Lv3』を発動します> 行動値 28/106(上限値使用:1)
という事で、カメの首を絞めつつ、甲羅を間を固めるように岩を生成して首を引っ込めなくしてやるのみ!
「へぇ、ケイ、やるじゃねぇか! 『アクアインパクト』『アクアインパクト』『アクアインパクト』」
「どうも! サヤ、やれ!」
「ケイ、ありがとうかな! 『爪刃双閃舞』!」
よし、流石のこのカメも全然物理攻撃が通らないのは甲羅だけっぽい! 今の時点で残りHPは3割程。これならアルの魔法とサヤの連撃で仕留め切れるはず!
あ、地味に首を絞めすぎて窒息状態になってるから、少しだけ緩めようっと。流石にサヤとアルが条件未達成のままで終わらせる訳にはいかないもんね。
「残り3発で条件達成だ! おらよ! 『アクアインパクト』『アクアインパクト』『アクアインパクト』!」
「アル、ナイスかな! これでトドメ!」
そのサヤの言葉と共に、最大限まで強化されたLv3での爪刃双閃舞の最後の1撃がカメの顔を斬り裂き、残りHPの全てを削り取り、ポリゴンとなって砕け散っていった。よし、岩の操作はもういらないから解除!
<ケイが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<規定条件を満たしましたので、称号『成熟体・暴走種の討伐』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
<規定条件を満たしましたので、称号『土魔法に長けしモノ』を取得しました>
<スキル『土属性強化Ⅱ』を取得しました>
<『土属性強化Ⅱ』『魔力制御Ⅱ』により、『砂岩魔法』を取得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を討伐しました>
<成熟体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<規定条件を満たしましたので、称号『成熟体・暴走種の討伐』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
おぉ、取得条件までは聞いてたけど、称号の取得があるのは聞いてなかったな。そしてまさかの『土属性強化Ⅱ』がここで手に入るんだ。でもまぁ今までの事を考えたら、こういうパターンにはなるよなー!
「おっし、とりあえず『砂岩魔法』をゲット!」
「俺は『清水魔法』だな」
「私は『連爪刃・閃舞』が手に入ったかな!」
「おー! みんな、条件が達成出来たのさー!」
「どれも初めて聞くスキルだね。まぁ当然と言えば当然だけどさ」
ま、なにはともあれ無事に取得は完了。称号取得が無駄にならずに済んだし、次はヨッシさんとハーレさんの番だな。
「それにしても、今のカメは相当硬かったな……」
「成熟体がここまで硬いのばっかりは勘弁かな……」
「いや、いくらなんでも今のカメが硬過ぎただけだろ。『堅牢』はあったし、『硬甲』は確実に甲羅の防御力の強化の特性だろうしな」
「だよなー。アル、ちなみにだけど『鈍重』はどう判断する?」
「……動きが鈍い感じはしたからそこは間違いなくあるんだろうが、その代わりにチャージを妨害されない特性ってとこか」
「やっぱりそう思うよな。そうじゃないと、チャージの妨害が出来なかった説明が出来ないし……」
白光するスキル……刻印系スキルが発動して、チャージのキャンセルを防ぐ効果があったのならまだ分かるんだけどね。まさか、特性でそれと同じような効果を持つものがあるとは思わなかった。
「『鈍重』という特性は俺も初めて聞いたな。……単独ではそれほど脅威ではないが、拘束と連携されると一気に危険度が跳ね上がりそうだ」
「確かにそうだよなー」
全体的に動きが遅くなるというデメリットはあるみたいだけど、攻撃の瞬間だけは普通の速度だったみたいだしね。……動きを封じられたら、冗談抜きで相当やばいかもしれない。
「あ、そういえばアルは称号で『水魔法に長けしモノ』と『水属性強化Ⅱ』は手に入った?」
「おう、それは手に入ったぞ。ケイはそれの土版か?」
「そうなるなー! それで、サヤの場合はどうなったんだ?」
「私は称号で『連撃に長けたモノ』と、スキルで『連鎖増強Ⅱ』が手に入ったかな」
「おー!? 連撃同士で応用連携スキルになるとそうなるんだ!?」
なるほど、ここで『連鎖増強Ⅱ』が手に入るようになっているんだな。まだ詳細は見てないけど、単純に成熟体からの新攻撃スキルだけでなく、これまでのスキルにも影響が出てくるようになりそうだ。
「それって、チャージと連撃での連携スキルになった場合はどうなるの?」
「あぁ、それなら称号で『連携に長けたモノ』、スキルで『凝縮連鎖Ⅰ』が手に入るぜ。連撃と単発、どっちにも強化が入るスキルだ」
「私が取るのはそっちになるのさー!」
「そういう感じになってるのか」
ふむふむ、なんだか成熟体からは得意な部分を更にどんどん伸ばしていくような感じになるみたいだね。まぁバランス型向けの『応用複合スキル』に関しては、俺らの中にはいないからさっぱり分からないけど、そこは全体的な広く強化する形になってそうだな。
さてと、それじゃヨッシさんとハーレさんの取得が出来るように、黒の瘴気強化種を探しにいきますか! 他の群集の動向にも警戒していきながらにはなるけどね。
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