第991話 討伐の準備完了


 成熟体の巨大なサメに襲われるという予想外の事もあったけど、なんとか敵の補充は完了。1つ1つのタイドプール毎ではなく、このエリア全部のタイドプールに一気に補充がされるから、餌のばら撒き数のカウントはエリア全体でされてそうだよな。

 さて、それじゃ戦闘を始めていきますか。基本的には夕方の戦い方と同じでやればいいし、それを今のメンバー用に調整していけばいい。


「アル、夕方と同じで海水の生成を頼んだ!」

「基本戦術は夕方と同じでいくんだな。了解だ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」


 他の戦い方でもやりたいとこではあるんだけど、こうも敵の傾向が同じで時間制限もあるなら変に手探りに動くよりもこっちの方が確実だからなー。ヨッシさんに単独発動でのサンダーボルトを使ってもらう事も出来るけど、それは暇になる可能性が高いから却下の方向で。


「アルから聞いたけど、電気の昇華魔法は封印かな?」

「威力がありすぎるからなー。他の昇華魔法も電気程ではなくても同じような結果になりそうだから封印で。まぁ暇になって、餌のばら撒きの負担が一部の人にかかりまくる事になってもいいなら解禁するけど? ちなみに俺はパス」

「……それは私も遠慮したいね」

「俺もそれはパスだな」

「……あはは、確かにそれはそうかな」

「なので、ここは手分けをしていくのさー! そして、ヨッシは電気魔法の担当なのです!」

「まぁ役割的にはそうなるけど、ヨッシさん、それでいいか? 基本的にさっきアルが生成した海水の中に、エレクトロボムかエレクトロインパクトを叩き込むだけの簡単な役目」

「いいけど、なんだかそれでも相当楽じゃない?」

「だろうなー」


 まぁ昇華魔法こそ封じるけど、電子魔法自体は海水との相性が良過ぎるからなー。アルの木が地味に海水の昇華になってるのも大きいし、かなり効率は良い方だと思う。

 あー、でも今回は風雷コンビとは違ってヨッシさん1人になるから、少し負担が大きいか? サヤの竜に電気魔法で倒す方に回ってもらうのもありだな。……サヤには威嚇で魚の動く方向を制限してもらおうかと思ってたけど、そこは予定変更でいくか。


「サヤ、ヨッシさんと一緒に竜で電気魔法での攻撃に回ってくれるか?」

「え、それはいいけど、魚を打ち上げるのは私はしなくて良いのかな?」

「そっちは俺とフーリエさんでやるから問題なし!」

「僕はそっちなんですね! それでどう動けば良いですか?」

「それなんだけど……フーリエさん、最大まで大きくして敵を追い回せるか? それで動きが単調になった敵を俺が狙っていく」

「あ、はい! それくらいなら問題なしです!」

「んじゃ、そういう感じで! ハーレさん、討ち漏らしは任せた!」

「了解なのさー!」


 基本的には夕方の風雷コンビがしてくれていた役割をサヤとヨッシさんに、刹那さんがしてくれていた事をフーリエさんに置き換えただけではあるけどね。他に効率が良さそうな手段は……あー、ばら撒く餌用の一般生物を倒していく時みたいに、タイドプールから海水を無くすって手もあるのか。……こっちは一緒に一般生物も倒す事にはなるけど、この次はそれで試してみるのもありかもね。


「それじゃ、作戦開始!」

「あ、ちょっと待って。まだ『経験値の結晶』を使ってないよ」

「すぐに使うかな!」

「僕も急いで使いますね!」

「あー、そういやそうだっけ」


 そりゃ使うとしたら、この戦闘が始まる直前だよな。うん、今回は俺は使わないって事にしてたからそこは失念していた。てか、今の時点で俺はLv30までの経験値は3分の1ほど行っているしなー。

 これ、場合によっては2倍にしなくてもLvが上がるんじゃないか? あー、でもギリギリどうかって微妙なラインではあるよなー。まぁ今回のボーナスの恩恵が終わってもまだ21時だし、どこかにLvを上げに行ける可能性はある!


「うん、準備完了かな!」

「僕も大丈夫です!」

「私も問題ないよ!」

「おし、それじゃ改めて作戦開始! 行くぞ、フーリエさん!」

「はい! 『増殖』『増殖』『増殖』『増殖』!」


 という事で、俺とフーリエさんはタイドプールの中へと飛び込む! って、フーリエさんがかなり大きくなってるなー。全長3メートルくらいあるんじゃないか? 最大限って言ったけど、ちょっとこのタイドプール内では大きくなり過ぎてるような気もする。


「……指示した俺が言うのもなんだけど、大きすぎない?」

「……僕もそんな気がしてます。『群体化解除』! これくらいでどうですか?」

「1メートルちょっとってくらいか。ま、そんなもんだろ」

「ですよね! それじゃ敵を追い回して行きます! 『自己強化』『威嚇』!」

「え、ヘビって威嚇が使えたのか!?」

「あ、はい、使えますよ! あれ、まずかったですか?」

「あー、問題なし! そりゃ良い誤算!」


 でもフーリエさんのLvはここでは一番下だし、それほど効果はあるのか? オフライン版だと威嚇は格上の敵を呼び寄せる性質もあったけど……うん、無反応。どうも格上を呼び寄せる仕様は無くなってみたいだな。地味に初めて知った。


「あ、全然相手にされてません!? だったら、これでいきます! 『連突撃』!」


 流石に海中の敵でメインは魚だから、あっさりとフーリエさんの突撃は躱されている。だけど、逃げていく際に動きが捉えやすくはなるんだよね。うん、これなら問題なさそうだ。


「フーリエさん、当てなくても良いからその調子で頼む!」

「はい、分かりました!」


 1メートルちょっとのヘビ型のコケの塊が何度も行き来をしながら突撃していれば、この狭いタイドプールでの回避方向は限られてくる。ここは当たる必要はないし、ダメージ担当は俺でもない。俺がやるべき事は、夕方と同じ!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 79/86 : 魔力値 226/232

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 77/86 : 魔力値 223/232

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 夕方にやった石の銛6本での串刺し作戦開始! あー、こうなってくると土の操作Lv7にして同時操作数を増やしたくなるなー。今回、思いっきり土の操作をー使いまくってるから、Lv7に上がってくれたりしない?

 スキル強化の種で上げるという手段もあるけど、いっそどれか1つに注ぎ込んでスキルLv10まで上げてしまいたいという誘惑もあるよなー。その場合どのスキルにするかも問題だけど……まぁそれは今考えなくても良い話! 今は時間の制限があるんだから、こっちに集中!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を3消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になり>  行動値 74/86

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を6消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になり>  行動値 68/86

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、これで石の銛の準備は完了。後はフーリエさんの突撃を避ける……って、フーリエさんのコケが魚に食べられてる!? 海の魚もコケを食べるんかい!? 夕方にそんな様子はなかった気もするけど……Lv上限の刹那さんが魚を追い回していたからか?


「わっ!? た、食べないでください!?」

「いや、ある意味丁度いい! フーリエさん、適度に増殖で群体数を回復させていけ! その間に俺が食べてる魚を集中的に狙っていく!」

「あ、僕が囮をやるんですね! 分かりました!」


 囮という役目は嫌がられる可能性もあったけど、そんな素振りは一切なくフーリエさんは引き受けてくれた。コケだし、群体塊だし、増殖で群体数さえ定期的に増やしておけばそう簡単に死にはしない!

 無防備に食べられ続けたら食べ尽くされる危険性もあるけども、そうはさせないのが俺の役目だ。とりあえずフーリエさんと距離がある魚は今はスルーで、最優先で狙うべきはコケを食べている……比較的小さな魚! 一部大きめのもいるけどね。

 色んな種類がいるけど、今は個別の種類を気にしてる場合じゃない! それにしても食うのに夢中で、狙われてる事に気付いてる様子もないな。それじゃ、サクッと仕留めさせてもらおうか!


「とりあえず6体!」


 よし、思った以上に無防備であっさりと狙いをつけられて6体を同時に串刺しに出来た! これで海面まで跳ねていって顔を出して、アルの生成した海水の中に石の銛ごと放り込む!

 あ、そうだ。一気に刺す部分で操作時間をかなり使ってるんだから、残ってる時間を使って貫通した石の銛の先で他の魚を刺しまくってしまえ! ふっふっふ、どうせ解除するんだからギリギリまで有効活用をしようじゃないか。


「サヤ、ヨッシさん! エレクトロインパクトを任せた!」

「分かったかな! ヨッシ、先にやるね。『略:エレクトロボム』!」

「了解! さてと、それじゃ私はこっち! 『エレクトロインパクト』!」

「よし、2人ともナイス!」

「……地味にケイがえげつない事をしてたな」

「石で串刺しにした上で、他の魚まで刺しまくってたのさー!?」

「どうせ倒すんだし、効率重視だよ! この方が行動値の節約にもなるしな!」

「確かにそうですね!」


 さて、これでとりあえずこれで6体は倒した。『経験値の結晶』を使ってない分だけ夕方よりは経験値は少ないけども、それでもこの経験値の量は美味いね。


「はっ!? ケイさんが背後から狙われているのです!?」

「背後からかよ!?」


 ちっ、このタイミングで背後から何かが狙ってきた……って、もしかして俺のロブスターの背中のコケを食べに来たのか!? あ、マジで少し食いやがった! ちょ、これって即座に撃退……いや、もう土の銛は間に合うほどの効果時間は残ってないから即座に解除して、食べられても大丈夫なように群体数を増やしておく方が先決か!


<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 64/86


 とりあえず応急的にロブスターの表面を覆うようにコケの増殖は完了! さて、食ってきた魚はぶっ殺す! 背後にいるならコケに視点を変えれば……って、魚じゃなくてエビじゃん!? いや、それはこの際どうでも――


「やらせないのです! 『魔力集中』『連速投擲』!」


 あ、自分で撃破しようと思ったけど、ハーレさんが次々と小石を投げつけてエビはあっという間に死んでポリゴンになって砕け散っていった。……うん、まぁ誰が倒しても問題はないか。


「ハーレさん、サンキュー!」

「どういたしましてなのさー! 地味にする事がなくて暇だったし、変に襲いかかる敵がいれば私が対処するのです!」

「どうもその方が良いっぽいし、頼んだ!」

「頼まれましたー!」


 この辺は夕方にはなかったパターンだよなー。うん、どうも刹那さんの狙いがまともに定まってはいなかったけど、魚を追い回していたのが相当効果があったみたいだな。Lv差がここで影響してきたか。

 そして海の敵でも、いつかの川魚のように平然とコケを食ってくる事が分かった。……あんまり意識はしてなかったけど、地味に魚ってコケにとっては天敵か。いや、捕食系の攻撃にも弱いと言うべきかもね。


「っと、フーリエさん! 食べられ方は大丈夫か!?」

「群がっては来てますけど、増殖でどうにか出来ているので大丈夫です! ケイさんはそこを狙ってください!」

「今はそれが手っ取り早そうだな!」


 まずはコケを食べる魚の方を一掃しよう! 俺のコケを狙ってくる敵についてはハーレさんに対応してもらう事にして、数を減らすのを最優先だな。

 って事で、海面から海中に戻ってもう一度石の銛を再生成だ! さっきので少し数は減ったけど、一般生物も含めてまだまだいるからね。サクッと仕留めていこうじゃないか!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 63/86 : 魔力値 220/232

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 61/86 : 魔力値 217/232

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 あー、本当に土の操作Lv7が欲しい。もうスキル強化の種をここで使って、同時操作数を増やすか? いや、その場の勢いで決めるのはなし! さっきから地味にその辺の事で惑わされてるけど、ともかく今は倒すのに専念!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を3消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になり>  行動値 58/86

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を6消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になり>  行動値 52/86

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 再び6本の石の銛を生成して、フーリエさんのコケを食べようと集っている魚を狙って……今だ! あっ、1体外したけど、その先にタコがいたからそれに突き刺しておこう。うん、成功!

 それじゃまた海面に戻ってから、さっきと同じ手順でアルの生成した海水に放り込んでぶっ倒していきますか!

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