第976話 第1回のコンテストの結果 上


 いつまでも緊張していても仕方ない! もう出ている結果だし、ここはもう見るしかない! えぇい、結果を見るぞ!


 あ、先に注意書きがあったよ。えーと、『運営の方でスクリーンショットに仮の名前を付けている為、変更を希望される場合は報酬の受け取り時にいったんにお伝えください』ってなってるな。


「この注意書きがあるって事は、事前にコンテスト結果の連絡は確実になさそうなのです!」

「そうみたいだね」

「結果を全部見てみるまでは、当事者すら分からねぇか」

「仮でのタイトルになるみたいかな!」

「そうっぽいなー」


 ま、応募の際にスクショのタイトルは決める項目はなかったし、受賞者にタイトルを決めてもらおうとしたら予め連絡が必要になるからこういう形になったんだろうね。

 そもそも、受賞したスクショは宣伝に使う事になってたし、金銭的なこの後でも問題はないのか。


 とりあえず、運営が付けた仮タイトルって事は分かった。よし、今度こそ受賞したスクショを見て……あ、部門ごとに選択しないと詳細が見れなくなってるのか。

 ふむ、一括表示にも出来るみたいだけど、それぞれの部門で順番に見ていけるようになってるっぽい。


「えーと……まずはどこから見る? 他の群集の部門からでも……」

「ケイさん、ここは大目玉の『総合部門』の最優秀賞からなのです! 私のやつ、こーい!」

「……あはは、さっきまではそうでもなかったけど、こうなると緊張してきたね」

「……ドキドキしてきたかな」

「ま、気楽にいこうぜ。こういうのは通ってる時は通ってるし、ダメな時はダメなもんだ」

「……アルに何か余裕を感じるなー」

「そりゃ、ケイ達より伊達に歳は取ってねぇからな?」

「そりゃそうだ……」


 アルは社会人なんだし、俺らが高校生が経験してないような事も色々経験してるだろうしね。ふー、もっと気楽に考えろー!

 これはあくまでもゲームだ。VRのeスポーツのプロ選手にでもならない限りは、どこまで行っても所詮は遊びの一環。ゲーム内で使える賞品はあるけど、賞金は出ていない!


「……よし、それじゃ『総合部門』を見ていくか!」

「「「「おー!」」」」


 という事で、それぞれに公式サイトの特設ページから『総合部門』を選択していくぞー! これ、VR空間と違って、画面は共通化出来ないのが残念だよなー。

 まぁ他の人の公式サイトが見れると、ログイン情報とか課金状態とかそういうのも見れちゃうから、この辺は仕方ないとして……どのスクショが最優秀賞に選ばれたんだろう?


 

『総合部門』

 灰の群集、団体部門より選出。

 賞品:スキル強化の種、2個


 最優秀賞:【夕焼けの森を彩る海のモノ達】

  撮影者:ラック

   


「わっ!? 最優秀賞、ラックのやつなのさー!?」

「これ、アルが写ってるやつじゃん!?」

「レナさんとラックさんが競り合って撮ってたが、通ったのはラックさんの方だったんだな。ふっ、悪いな。スキル強化の種は2個は貰ったぜ」

「あ、そういえばそうなるのかな!?」

「これに参加してたの、アルさんだけだもんね」

「……というか、灰の群集の人に大量にスキル強化の種が配られるようになった気がする」

「これは参加人数が多かったからな。海エリアの人と、灰のサファリ同盟にかなり配られる事になるか」


 あー、これが最優秀賞に選ばれるのなら、何らかの形で参加しとくんだったー! いや、それは今更言っても仕方ないか。

 このスクショ自体は凄い迫力があるし、最優秀賞っていうのも納得。ハーレさんは団体部門で、ヨッシさんは総合部門で投票してたしな。


「それにしても、アルはこれでスキル強化の種を2個は確定かー。何に使う?」

「……いや、まだ流石に使い道は考えてねぇよ。そもそもちょっと前の補填のですら、まだ使ってねぇからな?」

「でも、個数があったら使いやすくはなるよね」

「出し惜しみをしにくくなるのさー!」

「ま、それはそうだな」

「用途については、全部の結果を見てからでいいんじゃないかな? まだ参加してるのもいくつかあるしね」

「だなー」


 それについてはサヤの言う通りだね。ルストさんが撮ってた発火草の群生地のスクショも、このラックさんのスクショに引けは取ってないはず。

 赤の群集の団体部門で優秀賞を狙えるだけのレベルではある! それなら俺らにもスキル強化の種が回ってくるしね。……アルは更に個数が増える事になるけど。


「さてと、次に見るとしたら表示の順番に個人部門か? それとも先にケイの結果を見ちまうか?」

「……俺の結果が見るのは一番最後で!」

「ケイ、地味に往生際が悪いかな?」

「いいじゃん!? 表示の順番的に、次が『個人部門』なんだし!?」

「私はどっちもあるから問題ないのです!」

「あ、そういえばハーレはそうなるんだよね」

「あー、あの夜の月虹のスクショか。あれは良いとこ行ってるんじゃねぇか?」

「えっへん! それを確認したいのです!」

「よし、確認しよう! 先に『個人部門』で決定!」

「……ケイ、大丈夫か?」

「……あー、変な緊張感で落ち着かない。さっさと確認したい気分もあるけど、見たくないという気持ちもある……」

「ま、そういう事なら順番通りに見ていくか」


 という事で、とりあえず次は『個人部門』の確認になった。……いや、正直こういうコンテストで事前審査とか突破した事がなかったから知らなかったけど、こんなに結果発表って緊張するもんなの!? 高校受験の時でも緊張はしたけど、ここまでじゃなかったぞ!

 あぁ、落ち着かない。……でも、落ちてたら落ちてたで別の形で落ち着かなくなりそうだから、確認は最後で! 


「あ、群集毎に表示が分かれてるみたいかな?」

「灰の群集は最後みたいだね」

「赤の群集、青の群集、灰の群集の順番か」

「とりあえず順番に見ていくのさー!」

「赤の群集は、知ってる人が多い予感がするぞ」

「……だろうな」


 赤の群集には実力者揃いの赤のサファリ同盟がいるんだから、全力で参加してるだろうしね。さて、ここは気楽でいられるし、どんなものか見ていこう。


『個人部門』

 各群集毎に優秀賞を3枚、入賞は4枚。


 優秀賞賞品:スキル強化の種、1個

 入賞賞品:各種アイテムの詰め合わせから好きな物を2個


 ・赤の群集

   優秀賞:【水面越しの月】

   撮影者:弥生


   優秀賞:【深い森の渓流】

   撮影者:シュウ


   優秀賞:【荒野の星空】

   撮影者:ディー


    入賞:【流れ星】

   撮影者:ルスト


    入賞:【強敵に挑め!】

   撮影者:最強は俺!


    入賞:【見破った擬態】

   撮影者:ラインハルト

   

    入賞:【朝露の森】

   撮影者:ラピスラズリ

   


 おー、綺麗な風景を撮ったスクショが多いな。そして受賞者については、予想通りの状況でもある。投票した時に見て良いと思ったのが結構あるけど、撮ったのは普通に知ってる人だったよ。


「ルストさんのは、ザッタ平原で撮ってたやつだよね?」

「見覚えがあるから、そうなのさー!」

「ライさんがカメレオンの擬態を見破ったスクショって……」

「……むしろ、そこは撮られる側な気もするがな」

「あはは、確かにそうかな」


 えーと、確かラインハルト……ライさんは赤のサファリ同盟ではなかった筈。ディーさんがネス湖で会ったカバの人で、ラピスラズリさんが羽の生えた毒ヘビの人で、この2人は赤のサファリ同盟だな。


「フェニックスが炎の槍を使うスクショを撮ったのが赤の群集の人だとは思わなかったのです!?」

「あれはてっきりディールさんが撮ったものだと思ってたんだがな」

「あー、それは俺も思ってた」


 グラナータ灼熱洞に初めて行った時のものかと思ってたけど、まさか別人だとはなー。なんで個人部門にあるのかが微妙に引っかかってたけど、別の人が撮ったものならそりゃそうだ。


「それにして『最強は俺!』って凄い名前だなー」

「もう名前と言って良いのか微妙な気がするかな?」

「まぁその辺りは自由でいいんじゃない?」

「それもそうだなー」


 他にネタ的な名前の人がいない訳じゃないし、本人がそれで良いというのであればとやかく言う事でもないか。


「それにしても、風景のスクショが多めなのです!」

「これはハーレの月虹のスクショも期待出来るかな?」

「そういう傾向はありそうだよね」

「正直、赤のサファリ同盟はもっと動きのあるのを撮ってる気がしたんだけどなー」

「撮ってたが、事前審査を通らなかっただけって可能性もあるぞ?」

「あー、そういやそうなるのか」

「運営の事前審査で好みが出た可能性もあるのです!」

「それを言い出したらキリがないけどね」

「あはは、確かにそれはそうかな」


 まぁ運営の人だって人間なんだから、事前審査で好みが出る可能性は十分あるよな。でも、事前審査を通ったスクショには動きがあるのも普通にあったから、風景のスクショがより良かっただけの可能性も十分ある。

 いや、もうどれも凄いもん。水の中から撮ったっぽい月とか、迫力を感じる渓流とか、撮れと言われて撮れる気は欠片もしない。


「さてと、青の群集も見ていくかー」

「知ってる人、いるかな?」

「煮付けさん辺りが入ってそうな気もするのです!」

「青のサファリ同盟の人も入ってそうだよね?」

「……青のサファリ同盟っていうと、誰がいたっけ?」


 んー、青のサファリ同盟、青のサファリ同盟……。えーと、思い出せ。全く知らない人ばっかじゃないはず。あ、確かシャコの人の三日月さんが青のサファリ同盟だったはず! それとワニの紫雲さんもだな!


「よし、思い出した! シャコの三日月さんとワニの紫雲さんだ!」

「あぁ、そういえばそうだったか。ジークさん……正式にはジークフリートさんもだな。というか、リーダーがジークさんか」

「前にカマキリのフィールドボスから助けた、セラさんもじゃなかったかな?」

「スリムさんも青のサファリ同盟所属に変わってたはずなのです!」

「こうやって思い出してみたら、意外といたね?」

「……確かに」


 青のサファリ同盟には殆ど知り合いがいないとか思ってたけど、知り合いだった人が青のサファリ同盟に入ってたってのを失念してたパターンが多いな。

 でも、いまいちサファリ系プレイヤーって印象はないから、青のサファリ同盟って実態としてはそこまでスクショにこだわってない? あー、でも俺らが活動実態を全然知らないだけだし、実際はガッツリとサファリ系プレイヤーだったりするのかも?


「まぁそれなりに知ってる人がいるって事でいいや。とりあえず見ていこう!」

「だな。さて、青の群集の個人部門はどうなってるか」

「楽しみなのです!」

「ジェイさんがいるかが、少し気になるかな?」

「そうその辺はどうなんだろうね?」


 という事で、青の群集の個人部門の結果も見ていこう! 赤の群集の個人部門との違いみたいなのがあるのかも気になるしね。


 ・青の群集

   優秀賞:【星空を写す水鏡】

   撮影者:煮付け


   優秀賞:【湿地の星空】

   撮影者:紫雲


   優秀賞:【逃げ惑え!】

   撮影者:リウ


    入賞:【強敵、上等!】

   撮影者:ジークフリート


    入賞:【かかってこいや、雑魚ども!】

   撮影者:カゲロウ


    入賞:【我に続け!】

   撮影者:夕陽

   

    入賞:【海の彩り】

   撮影者:サカキ



 ほほう、青の群集は赤の群集よりも動きがあるのが少し多めっぽい。……正直に言えば、景色系のスクショは赤のサファリ同盟の人達のスクショより一段落ちるね。

 いや、それでも凄いんだけどさ! それにしても青の群集は動きがあるスクショが多いっぽい印象。


「……夕陽って人、もしかして黒の統率種になってないか? よく見たら荒野で敵を統率してる風に見えるんだけど」

「パッと見だと敵を追いかけてる風にも見えるけど、従えてるようにも見えるかな?」

「仮のタイトル的にもそんな気がするのです!」

「……大規模なPKが出たという話は聞いていないが、いか焼きさんみたいな経緯か? その時に撮ったスクショを、青の群集に移籍してから応募したのかもしれん」

「そっか、そういう手段もあるんだね」


 あー、そういう可能性もあるのか。そうだとすると結構な手間はかかってそうだけど、投票した際に見落としちゃってた?

 時間的に全部をしっかり見れた訳じゃないから、よく見たら凄い事をやってるのに気付けたけど、スルーしてた可能性は否定出来ないか。……テスト期間じゃなけりゃじっくり見れたんだけどな。


「湿地のホタルの群れのスクショは、紫雲さんのスクショだったのさー!?」

「煮付けさんのは夜の『涙の溢れた地』かな!」

「2人とも、良い感じスクショだな。……紫雲さんの湿地のホタル、もしかして涙の溢れた地じゃなくてスターリー湿原か?」

「湿地は湿地だが、見た目はスターリー湿原っぽいな。まぁどこかの平原エリアの一部かもしれんが」

「別に他の群集の隣接エリアだからってダメな理由はないし、その辺は問題ないよね」

「だなー。あそこなら青の群集の森林深部から近いし、狙いどころとしてはありかー」


 こうやって撮影者が分かった上で見ていくと、色々とみんな考えて撮影場所を選んでるんだね。特に群集の部門を狙うのなら、他の群集の隣接エリアは地味に狙い目だったのかもしれない。


「ジークさんのは、どこかで成熟体のクジラと対峙してる様子だね」

「リウって人は、薄っすら前脚が写ってるからライオンかヒョウかその辺の種族だな。草原で一般生物や成長体を追いかけてる様子か」

「……このカゲロウって人、海で電気魔法をぶっ放して敵を集めてる様子だなー」


 追いかけていたり、追われていたり、敵を集めていたりと色々なバリエーションが選ばれてる。ふむふむ、こういう系統は赤の群集かと思ったけど、青の群集がこういう系統になったんだな。

 いやー、他の人のを眺めていくと色々な狙いが見えてくるのが面白い。撮る事そのものには変な小細工はせず、群集の優先的なエリアに囚われずひたすらに良さそうと思う構図で撮ってる感じ。


 シュウさんが撮っていた渓流の様子も思いっきり見覚えがあるから、あれは灰の群集の森林深部の川なんだろうなー。


「サカキって人のは純粋に海の一般生物を撮った感じだな。浅瀬の珊瑚礁っぽいとこか」

「シンプルに鮮やかで綺麗かな!」

「とりあえず、青の群集のは知ってる人もいたけど、知らない人も結構いたのです!」

「まぁ知ってる人ばっかにはならないよね」

「ま、そりゃそうだ」


 これだけの大量のスクショがあって、それが全部知り合いのみで固まってるとかはいくらなんでもあり得ない。……青の群集の個人部門で知ってる人が3人いるだけでも多い気はするけどさ。

 まぁジークさんははほぼ名前を知ってるだけだけどなー。交流があると言えるのは紫雲さんと煮付けさんだし、それでもそう回数が多いって訳じゃないからね。

 

「さてと、とりあえず青の群集の個人部門はこんなもんでいいだろ」

「……ゴクリ」

「ハーレさん、緊張してきたか?」

「あぅ……いざ、これからとなったら思いっきり緊張してきたのです! ケイさん、思いっきり緊張してる様子をまた見せてー!」

「ちょっと落ち着いてきたのに、お断りだよ! てか、俺が緊張してるのを見てどうする気だ!?」

「人が緊張してるのを見たら、なんだか少し気が楽になるからです!」

「そういう理由かよ!?」


 あ、でもなんとなくその気持ちは分かるかも? 誰かが冷静さを失っているのを見たら、逆に自分は冷静になる事ってあるもんな。

 なるほど、団体部門の発表を見る際にハーレさんが緊張していたら、それを見て落ち着けるようにしようっと。さて、それじゃハーレさんの個人部門の結果を見ていきますか!

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