第922話 スクショの演出 後編


 そこからシュウさんに指定してもらった場所にひたすらコケを増殖させていった。なんというか、発火草が特に多い場所を指定されてる気もするね。

 そして、ぶっちゃけ32ヶ所もやってる時間の余裕がないという判断で、半分の16ヶ所になって、残る場所は1ヶ所だ!


<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します>  行動値 32/79(上限値使用:4)


「コケの設置、終了!」

「ケイさんお疲れさま! 次の人達の時間の関係もあるから、大急ぎでやってくよー!」


 その弥生さんの号令がかかってから、スクショの演出だけのメンバーは写らない場所……今回はルストさんの後ろへと移動していく。俺もその1人だから、急げー!


「おし、んじゃいくぜ! 『纏属進化・纏瘴』!」

「私はこっちかな! 『大型化』『纏属進化・纏浄』!」


 そうして今回のメインとなるアルの木は禍々しい瘴気を放つ木へと進化し、サヤは大型化した上で対となるように浄化の光を放つ竜へと進化していった。


「みんな、よろしくっすよ!」

「「了解! 『纏属進化・纏瘴』!」」

 

 そして、アルの木の禍々しさを強調するのと、徐々にその様子が弱まっていくのを瘴気属性を混ぜた風魔法で演出をする為にスイカの人とカボチャの人が纏瘴をしていく。

 昇華に至っていない生成魔法と瘴気収束を並列制御で発動すれば、瘴気属性が追加状態になるらしいからねー。ただし、その状態で操作するのは中々の難易度だそうだけど。


「私達は纏浄でいくよ! 『纏属進化・纏浄』!」

「「 おー! 『纏属進化・纏浄』!」」


 そしてバラバラに離れた位置に散らばっているトウガラシの人と、豆の人と、トウモロコシの人がそれぞれに纏浄をしていった。

 こっちはアルがサヤの手によって浄化されていく様子を大々的に盛り上げる感じの演出で、浄化属性を混ぜた風魔法の予定である。トウガラシの人が風の昇華になっていたから、アルとサヤを押し潰す感じで浄化魔法を使ってもらう予定。


「さて、もう一段階上げとくか! 『瘴気制御』!」

「私もかな! 『魔法砲撃』『雷纏い』『浄化制御』!」

「うん、纏属進化の準備は完了だねー! それじゃサヤさん、合図をするまで上で待機をお願い」

「うん、分かったかな!」


 そう言いながらサヤは弥生さんの闇の操作を超えて、上空へと待機しにいった。それにしても浄化の光と雷を纏った雷属性の竜かー。あれ単独でもかなり神々しい雰囲気だったよなー。

 そして、瘴気制御でより禍々しさを増したアルもすごい。どこの呪われた木だよって感想になるね。うん、纏浄と纏瘴は見た目として思いっきり変化が出るから、こういう演出で地味に役立つな! ……普段は不動種の人じゃないと使い道がないから使わないけど。


「弥生、闇の操作の時間は大丈夫かい?」

「全然動かしてないから大丈夫だよー! シュウさんこそ、光の操作は大丈夫?」

「多少は減ってるけど、この演出中は大丈夫な範囲だね」

「そっか、なら大丈夫だね! ハーレさん、煮付けさん、ルスト、スクショの撮影は大丈夫ー?」

「念の為、私は足場を作り直しておくのです! 一旦解除して、『アースクリエイト』『土の操作』!」

「私は問題ありません! それよりも、なによりも、早く撮りたいですね!」

「おいらの方は問題ないっす! 後はサヤさんの姿を如何に神秘的に撮れるかどうかってとこっすね!」

「うん、スクショの撮影班は問題ないねー!」


 なんとなく流れで弥生さんが指揮してくれてるけど、内容としては的確だからこのまま任せておこうっと。とりあえずここまでの段階で、実際に演出に使用するスキル以外の準備は完了だな。


 俺はルストさんの背後……というよりは横に退避してるし、トウガラシの人も俺の横で待機中。アルのとこまで少し距離はあるけど、まぁ浄化魔法を発動するにはなんとか距離は足りる範囲。

 まぁ『青の野菜畑』の人達って魔法の発動位置の指定が凄い上手いっていうのもあるけどね。豆の人とトウモロコシの人は、それぞれにアルの左右の延長上に待機している。ここは浄化属性を混ぜた風の操作で、ヨッシさんの禍々しさを演出する霧というかドライアイスに見立てた粉雪を吹き飛ばす役目だな。


「ヨッシさん、それじゃそろそろ氷雪の操作をお願いね」

「分かりました! 『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷雪の操作』『氷雪の操作』! これで吹雪くようにじゃなく、粉雪が地面の近くで漂うように……」


 そうして、ヨッシさんが発火草の群生地の地面の付近へと、粉雪状態の雪を散らばしていく。ふむふむ、ドライアイスの代用だったけど、意外といけそうだな。


「……ケイさん、発光のLvを下げてもらえますか? 今の明るさだと、ヨッシさんの霧に見立てた粉雪を照らして神秘的ではあるんですが禍々しさは薄れます。シュウさんも全体的にもう少し暗くお願いします」

「ほいよっと」

「ルスト、了解だよ」


 ふむ、発光Lv2でも神々しさ寄りになってしまうんだな。初めは禍々しさが優先なんだから、それじゃ駄目だし修正をしていこうっと。


<『発光Lv2』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 32/79 → 32/81(上限値使用:2)

<行動値上限を1使用して『発光Lv1』を発動します>  行動値 32/81 → 31/80(上限値使用:3)


 さて、Lv1に切り替えて発光を発動してみたけどどうだろね? ……なんかシュウさんが全体的に暗くしたのも相まって、妙にコケの明かりが浮いているように見える。


「これは流石に暗過ぎだね。……ルスト、こんなもんかい?」

「あ、はい! これなら禍々しさを損なわなず、それでいて暗くなり過ぎない程度になりました! ケイさんの方も、ヨッシさんの粉雪を少し照らす程度になっているので問題ありません!」

「お、それなら良かった」

 

 うん、ルストさんからOKが出た。弥生さんの闇の操作で外の明かりは遮断しているから、光源の強さの調整がやりやすいね。

 さて、これで下準備は終わったから、次は実際に演出をしていくのみ!


「それじゃこれから演出を始めていくよー! サヤさん、カウントダウンをするから、そのタイミングで入ってきてね」

「分かったかな!」

「ケイさん、切り替えのタイミングを間違えないように!」

「そりゃもちろんだっての!」

「他のみんなも、しっかりとタイミングを合わせていくよー! それじゃカウントダウンを開始するね。5……4……3……2……1……演出開始!」


 よし、弥生さんから開始の合図が出ると同時にサヤの神々しい状態の竜が闇の操作を突き破って、発火草の群生地の中に入ってきた。

 そこから禍々しい瘴気を纏うアルの木を探すような素振りを見せながら動いていき、途中でアルの木を見つけたように一気に動き出していく。


「瘴気属性ありの風の操作をアルさんの周りに展開! 予定通り、瘴気を周囲に撒き散らす感じで!」

「「了解! 『並列制御』『瘴気収束』『ウィンドクリエイト』『風の操作』!」」


 そこでスイカの人とカボチャの人が、禍々しい色をした風をアルの周囲から広がっていくように操作していく。

 ……ん? ただの風の操作の時より荒々しくて制御が乱れてるっぽいけど、まぁこっちの方が雰囲気は出ているね。操作の難易度が上がるとは聞いたけど、それが逆に良い感じの演出になってるっぽい。

 そこまで長時間の操作じゃないし、難易度が高くて大変だろうけど頑張ってくれー!


「サヤさん、予定通り真上から突っ込む感じで! それに重ねるように浄化魔法の発動!  それが当たった時点で瘴気属性の風の操作は解除ね! サヤさんもそのタイミングで浄化制御は解除だよ! アルマースさんは光が薄れてきたタイミングで瘴気制御は解除!」

「分かったかな!」

「おうよ!」

「いきますよ! 『並列制御』『ウィンドクリエイト』『浄化の光』!」


 そうしてサヤの全身を包み込むような感じで、トウガラシの人が浄化魔法……この場合はピュリフィケイション・ウィンドか。それが浄化の力の柱のようになっていく。

 ここはサヤの竜がアルの木を浄化する為に力を行使していく場面だね。


「タイミングは今! 風の操作、解除!」

「私も解除!」

「私も浄化制御を解除かな!」


 しばらく浄化魔法を光がサヤとアルを包み込んでいき、その間に少し浄化されたアルの木と、浄化に力を使って少し弱ったサヤの竜という演出の為に段階的にスキルを解除していく。


「おし、俺はこのタイミングだな! 瘴気制御、解除!」


 浄化魔法の効果が切れ始め、アルのシルエットが見えてきた頃に瘴気制御を解除して、禍々しい瘴気が少なくなっていくのを演出していった。

 そして、力を使って弱った感じに地面に降りているサヤの竜と、瘴気の力を削がれたアルの木が対峙していく。


「サヤさん、そこから浄化属性のエレクトロインパクト! 浄化属性の風の操作と、粉雪の移動も準備! ケイさん、かなりシビアだけどタイミングを逃さないでね! アルマースさんも纏瘴の解除準備! サヤさんはアルさんの纏瘴が解除になったら、纏浄を解除して地面に降りて!」

「ほいよっと!」

「分かったかな!」


 さて、完全に浄化属性の風が消える前までに俺は大急ぎで出番をやらないと……変に悪影響を与えても嫌なので、完全にルストさんの背後に回ってから実行だ!


「これで大詰めかな! 『並列制御』『エレクトロインパクト』『浄化の光』!」


 あまり早くにやり過ぎると演出に齟齬が出るけど、この手順はどうしても少し時間がかかる。だから、浄化属性の風で誤魔化すともいう!


<『浄化の輝晶』を使用して、纏属進化を行います>

<『同調強魔ゴケ』から『同調強魔ゴケ・纏浄』へと纏属進化しました>

<『同調打撃ロブスター』から『同調打撃ロブスター・纏浄』へと纏属進化しました>

<『浄化制御』『浄化の光』が一時スキルとして付与されます>


「いっくよー! 『並列制御』『ウィンドクリエイト』『浄化の光』『風の操作』!」

「いっけー! 『並列制御』『ウィンドクリエイト』『浄化の光』『風の操作』!」


 よし、具体的にタイミングが見えてないけど、多分俺が纏浄に進化したと同時くらいになった。これであちこちに増殖させたコケから浄化属性の光を放っているはず。そして更に追加だ!


<行動値上限を1使用と魔力値2消費して『浄化制御Lv1』を発動します>  行動値 32/80 → 32/79(上限値使用:4): 魔力値 224/226 :効果時間 10分


 これで、普通に発光してたコケの光は浄化の光が強くなったはず。ロブスターの方も、思いっきり光ってるしね。それにしても発光と浄化の光って、やっぱり光り方の雰囲気が違うもんだな。

 発光は単純に暖色のライトって感じだけど、浄化の光は白っぽい光だもんね。でも閃光とはまた違った感じではある。

 

「ケイさん、ナイスタイミング!」

「おっしゃ、これで纏瘴は解除だ!」

「浄化制御は解除して、ここで地面に弱わったように着地かな」


 ちょっとロブスターも光っているのがスクショの影響を与えないように、ルストさんの後ろへ更に下がってから、向き直っていこう。


 サヤの竜の口から浄化の光を帯びた電気の衝撃魔法は見れなかったけど、アルがそれの直撃に合わせて完全に浄化されていくように禍々しい瘴気が消えるように纏瘴を解除出来たようである。

 俺のコケが浄化属性で光るようになったのも無事に浄化の力の余波を受けて、周囲にも影響が出たって感じになったみたいだね。


「次でラストだよー! サヤさん、弱った雰囲気を出しながら、アルさんに近寄って力尽きて木に寄り添う感じで!」

「分かったかな! 雷纏いも纏浄も解除!」

 

 サヤの竜はよろよろと弱った様子で、禍々しい瘴気の消えたアルの木に向かって歩いていく。その途中で纏浄の効果が消え、纏っていた雷も消失し、アルの木に辿り着いたところで力なく倒れ伏していった。


「これはおまけなのさー! 『略:ウィンドクリエイト』『略:風の操作』!」

「おぉ、ハーレさん! ナイスなおまけですね!」

「ハーレさん、ナイス!」


 最後に倒れ伏す竜と浄化された木に向けて、緩やかな風が吹いていく演出は良かったね。そのタイミングでアルとサヤへのスポットライトへと切り替えたシュウさんも良い感じ!


「さーて、スクショの撮影はこれにて終了ー! 次の人を待たせ過ぎてもあれだから、即座に撤収だよ! その方がいいよね、ウィルさん?」

「あー、まぁそうしてもらった方が助かるな。外にいくつか待機場所があっただろ? 反省会をしたり、撮ったスクショの確認をするのはそっちで頼む」


 あ、なるほど。外に待機場所が4ヶ所あったのはそういう役目でもあるんだな。うん、確かにそういう使い方をしてた人達もいたっけな。


「良いもん見せてもらったぜ、ケイさん!」

「そりゃどうも、斬雨さん。ジェイさんにもよろしく言っといてくれ!」

「おうよ!」

「ハーレ、見応えあったよー! でも、負けないからねー!」

「ふっふっふ、ラック、望むところなのさー!」


 そんな風に軽く挨拶を交わしてから、俺らは不恰好なトンネルを通って発火草の群生地の外へと出ていった。それと入れ替わりで次の連結PTの人達が入っていったね。

 ふー、とりあえずこれで演出は終わったー! 時間としては17時50分か。うん、ちょっと時間をかけ過ぎたかな? あ、でもそもそも開始時刻を見てないし、出発した時間と移動時間を考えたらそんなもんか。


 間欠泉を利用したスクショが出来なかったのは残念だったけど、それはどこかの機会でやればいい。スクショのコンテストが今回限りとも思えないしねー。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る