第915話 集合場所に辿り着けば
「木と氷漬けのクマを背負ったクジラが水流に乗って空からきたぞ!」
「おぉ! 絶好のスクショチャンス!」
「あれって、灰の暴走種じゃね?」
「え、何、その呼び名?」
「とりあえず撮っとけ! 空飛ぶクジラ自体は他にもいるが、ありゃ色々と特殊だ!」
「勝手に撮っても良いのかな?」
「ここに向かってきてるんだし、駄目とは言わんだろ」
「あ、みんな、ちょっとスクショを撮るのは待ってねー! その辺りは確認するからー!」
集まっている人達からそんな声が聞こえてきて、思いっきり注目浴びてるんだけど、これは果たしてどうすべきなのか……。というか、灰の暴走種とか言ってるのは青の群集だよな!?
まぁ別にスクショのコンテストに出す分については撮られても問題はないし、俺もあっち側なら撮りたい気はする。お祭り騒ぎの一環して、盛り上がるのも悪くはないか。
「あー、これは少しだけ降りるのは待つ?」
「……とりあえずどうするか決めるまでは速度は落としとくか。ケイ、ヨッシさん、そのつもりで速度を合わせてくれ」
「ほいよっと」
「了解!」
てか、そんなにアルの構成って珍しいもんか? アルによく似た木を背負ったクジラの人が青の群集にいた気もするけどなー。まぁ色んな種族の組み合わせが出来るし、背中に乗ってる俺らが氷漬けになってるのが珍しい要因かも?
というか、結構まだ地上まで距離があるのによくここまで声が聞こえてきたもんだ。声がデカい人の発言が聞こえただけかもしれないけどさ。……というか、最後に聞こえたのはレナさんの声だった気がする。
「あ、レナさんからフレンドコールなのさー!」
「……撮って良いかの確認のフレンドコールっぽいな、それ。みんな、どうする?」
「コンテスト用なら問題はないかな?」
「うん、私もそこはサヤと同意見だね」
「俺も別に良いが、条件として団体部門で出してもらうのはどうだ? 被写体として協力してるから、上手く入賞にでもなれば恩恵はあるぜ?」
「お、アル、ナイスアイデア!」
確かにこの状況で撮られるスクショならコンテスト用のものの可能性は高い。そして俺らは色んなグループにそれぞれ協力した事になるはずだから、場合によっては旨みは充分か。
あー、でも団体部門って……別に連結PTとかの制限はなかったっけ。被写体と撮った人達が複数いる場合はどういう判定になるかは分からないけど、まぁそこら辺は任せようっと。流石に俺らがどこにも協力してないって事にはならないはずだしね。
「アルさん、それなのです! それじゃレナさんにはそう伝えるねー!」
「ハーレさん、任せた!」
「任されましたー! レナさん? うん! 撮られるのは構わないけど、お願いというか条件があるのです! うん、うん! そう、団体部門! それなら問題ないのですさー! え、あ、そうなんだ! うん、確認するからちょっと待っててー!」
「ハーレ、どうしたのかな?」
「えっと、団体部門には応募は出来るけど、多分その中の一定数は無効判定されるだろうけどそれでも良いかってー! かなり似たような構図や同一のプレイヤーを写した複数のスクショについては先着になって、受け付けの時点で弾かれるそうです!」
「あー、そういう仕様になってるのか」
まぁ過剰に同じようなスクショが送られてきたら、選別する方が大変だもんね。そこは受け付けの先着順で判定して、弾くようになってるんだな。
「それって俺ら側で処理することは何かあったりする?」
「それはどうなんだろ!? レナさん、それって私達の方でする事って何かあるー!? あ、特にないってさー!」
「それなら、みんなもそれで良いか?」
「おう、問題ないぜ」
「むしろありがたい状況かな!」
「確かにね。とりあえずしばらくはこのまま飛んでれば良いのかな?」
「それも確認するのさー! レナさん、しばらく飛んでいたら良いですか!? え、あ、うん! えっと、それだと私達って……あ、了解です! それなら多分問題ないのさー!」
ん? 何やらハーレさんの受け答えを聞いていると、ただ飛んでいればいいって訳でもなさそうな気がする。
というか、飛んでるのはいいけど、これだと俺らの班分けってどうなるんだろ?
「えっと、レナさんはしばらくこのまま飛んでてくれって! 可能なら何か演出もしてほしいそうです!」
「この状況から更に演出かー。手が空いてるのはサヤとハーレさんだけど、その辺はどうする?」
「うーん、この状態から追加で出来る演出……あ、思いついたかな!」
「お、マジか!」
「サヤ、どんな内容?」
頭を悩ませそうな気がしたレナさんからの要望だったけど、割とあっさりサヤが思いついたみたいだね。でも、どういう事をやる気なんだろう?
「私の竜の魔法砲撃にしたエレクトロボムの連射を、ハーレが撃ち抜いて周囲で爆発させていくのはどうかな?」
「……ふむ、悪くはないが、演出として噛み合うか?」
「あ、確かにそこは微妙かな……?」
うーん、確かに普通に俺らが飛んでる周りで電気の爆発があっても微妙な気もする。演出としてやるなら、誰かに追われているのを迎撃してる感じにするか、もしくは俺らが強襲を仕掛けているように演出したいとこだな。
「ハーレ、いっその事、サヤと一緒に襲う側の演出をやってみる?」
「おー! それは良さそうなのです!」
「あ、それなら行けそうかな?」
ふむふむ、サヤの竜で飛びながら、ハーレさんの投擲辺りで演出するのもありか。氷柱でも投げてもらって、着弾場所から氷が広がっていくみたいに演出するのも良いかもなー。
「あ、レナさんが少し呼んでるから、ちょっとごめんー! レナさんどうした……え、私達って待ち時間の時間潰し役になるのー!? うー、6時にはサヤとヨッシが晩御飯でログアウト……あ、5時半までで、そこからは私達は自由にしていいんだー! え、うん、うん! それでみんなに確認してみるねー!」
うーん? あれ、なんだか俺らは合同撮影会に参加しにきたはずなのに、その枠から外れていっているような気がするんだけど!?
「ハーレさん、詳細の説明を頼む! 今、何がどうなった!?」
「えっと、私達は班分けでの順番待ちは免除されました! その代わり、5時半までは待ってる人達のスクショの撮影に付き合って欲しいそうです!」
「……あー、そうきたか。まぁ発火草の群生地の方にも行けるなら別に良いけど、そっちの班は俺らはどうなんの?」
「確かにそこが本命なんだからな。そこがはっきりしないと、同意は出来ないぞ?」
「他の群集の人達と一緒じゃないと、そっちのスクショが団体部門に出せないもんね」
「そこは大事かな!」
「えっと、赤の群集と青の群集からそれぞれに1PTずつ、時間潰しの演出をしてくれるPTを募集するそうです! 私達はその人達と連結PTを組む事になりそうなのさー! 思った以上に人数が集まって、班分けも、順番に発火草の群生地に行くのも時間がかかりそうなんだってー!」
ふむふむ、そこら辺についても考慮はしてくれたのか。……ここで待ってる人達のスクショの被写体になる代わりに、発火草の群生地に行く時間は固定になり、その上で複数の団体部門に参加出来るのはかなり良い条件だな。
空飛ぶクジラであるアルがここまでかなり飛ばしてきて目立ったのが大きいんだろうね。うん、ちょっと見せ物になり続ける事さえ許容すれば決して悪い話ではないな。
「赤の群集と青の群集の演出をするPTがどういう人達かにもよるけど、俺は条件としては良いと思うぞ」
「俺もケイに同意だな。ただ、最後の確認だ。いくらなんでも30分間続けては厳しいから、赤の群集や青の群集の演出に立候補してきた人達と交代制か?」
「そうだって言ってたのさー!」
「……これは断る理由はないんじゃない?」
「うん、私もそう思うかな」
「それじゃレナさんに請け負ったって伝えるねー!」
「ほいよっと」
どっちにしてもかなりの大人数なんだから、その間の時間潰しには丁度良いし、運が良ければお得な部分もある。
あえて言うなら思いっきり目立つというのがデメリットではあるけども、既に目立ちまくってるから、そこは気にしなくてもいいだろう。
「レナさん、みんなの同意は取れたよー! うん、あ、了解です! 赤の群集か青の群集から立候補が出た時点で一回休憩すればいいんだね! 了解なのさー! それじゃまた後でー!」
そう言って、ハーレさんはレナさんとのフレンドコールを切ったようである。今の聞こえた内容的に、とりあえず行動値の回復時間とかも確保はしてくれるようだね。
でも、ぶっちゃけ現状ではそれほど操作可能時間はそんなに残ってないから早めに目処は立てて欲しいところ。
「とりあえず、しばらくは今のまま飛んでいれば良いそうです! その後に赤の群集か、青の群集から時間潰しのPTの立候補が出たら休憩だってー!」
「ほいよって言いたいとこだけど、あんまり操作時間が残ってないって言っといてくれー!」
「了解なのさー! レナさん、ケイさんがもうそんなに操作の時間が残ってないって……え、もう赤の群集から立候補が出たのー!? それって……赤のサファリ同盟!? うん、了解なのです! えっと、フレンドコールは繋げたままの方が……うん、それじゃ繋げたままでいるのです!」
おーい、もう赤の群集からの立候補者が決まったとか聞こえたと思ったら、赤のサファリ同盟かい! いや、別に主催者側がそういう立場になったらいけない訳じゃないし、1PTに限定されているんだから、赤のサファリ同盟の全員が参加する訳でもないか。
それに赤のサファリ同盟は実力者揃いだし、こういう演出には意外と向いているのかもしれないね。
「大体の内容の予想は出来てるけど、レナさんはなんて?」
「操作時間が切れるまではこのまま飛んでて、時間切れになったら赤のサファリ同盟の人達と交代だってさー! 青の群集からの立候補が出たら、5分ずつくらいで交代しながらやっていくってー!」
「なるほど、そういう感じか。アル、ヨッシさん、そういう事みたいだから、このままこの周囲をぐるっと飛び続けるぞー!」
「おうよ!」
「了解!」
とりあえずこれで俺らはしばらくやっていく事は決定。全然予想してなかった展開だけど、まぁこれはこれで楽しそうだから別にいいか。
「はっ! 今の状態の演出で良いことを思いついたのです! 私とサヤで追いかける案じゃなくなるけど!」
「どんな事を思いついたのかな?」
「拡散投擲で雪を上に投げるのさー! 連撃は稼げないから弱い銀光にはなるけど、キラキラと光るはずなのです!」
ふむふむ、銀光を放つ雪を上空に投げれば、この氷漬けになっている状態とは相性が良い演出になるかもしれないね。出来れば上から落ちてくるようにしたいけど、それは流石に贅沢過ぎるか。
「よし、ハーレさんのその案は採用!」
「やったのさー!」
「……そうなると私だけ何もなしかな?」
しまった、ハーレさんの案を採用したらサヤの出番が無くなってしまう。うーん、それなら追いかける方に案を戻すか?
サヤって微妙に寂しがり屋だし、ここでサヤだけが何もする事がないというのも寂しいみたいだね。それにサヤだけ団体部門での登録が出来なくなる可能性も出てくるし、追いかける方向性に戻した方が確実か。他にサヤが出来る演出があれば今の案でも良いんだけど……。
ん? 今のここの天気は厚い雲に覆われていて、今にも雨が降り出しそうだし雰囲気だよな。サヤの竜の電気魔法はそれなりに強化されたし、操作も前よりも上達している。それならこれは出来るかもしれない。
「サヤ、並列制御を使ってエレクトロウォールとエレクトロプリズムで複合魔法のエレクトロウェブを雲に中に放つってのはどうだ? 雲の境目ギリギリくらいに狙いを定める必要はあるし、横に展開する必要もあるけど……」
「ほう、ケイの狙いは雷雲の中で放電してる感じの演出か」
「アル、大正解! ただ、発動位置をかなり正確にしないといけないけど……」
普段は普通に真っ正面に展開する事が多いから意識はしてないけど、真横にも展開は出来るんだよな。まぁ出来なきゃ真上からの攻撃に対応出来ないから当然だけど。
エレクトロウェブを完全に雲の中で発動してしまえば、多分かなり電気から発生する光量は少なくなるはず。かといって、雲の手前過ぎれば雷雲の中での放電っぽく見えなくなる気がする。
サヤの魔法の狙いも以前よりは確実に良くなってるけど、実際に上手く出来るかはやってみないと何とも言えないんだよな。魔法の狙いは操作ほどは苦手じゃなかったはずだから多分大丈夫だとは思うけど……。
「ケイ、私はそれでやってみるかな!」
「ほいよっと。それじゃ俺らの操作時間が切れる前にやってみますか。アル、ヨッシさん、俺らはハーレさんが投げた雪に突っ込んで行く感じで! ヨッシさん、そのタイミングで氷の範囲を広げれるか?」
「了解なのさー!」
「お、そういう感じでいくんだな。了解だ!」
「アルさんのクジラの表面に薄っすらと広げる感じなら負荷も少なくて出来ると思うよ」
「おし、それなら問題なし。サヤはそのタイミングでエレクトロウェブを発動!」
「分かったかな!」
よし、演出の手順はこれで良い! ふっふっふ、スクショの演出でもやるからには全力でやるまで!
ともかくこの手順なら雷鳴が轟く不気味な雰囲気の中、銀光に輝く雪に触れ、凍りつく部分が広がりながらも空にある水流を泳ぐクジラとその仲間達って演出には出来そうだ。ちょっと苦しい部分もあるけど、まぁその辺は即興だから仕方ない。
「ハーレさん、スクショを撮るタイミングは知りたいだろうから、その連絡をレナさんに頼んだ!」
「はーい! レナさん、今からちょっとした演出を追加するので、スクショの準備をお願いするのさー!」
「準備が済んだら合図をくれ!」
「了解です!」
さて、さっきまでよりも注目度合いが上がった気もするけど、まぁそうなって当然の事を伝えてもらったんだからそうなるよな。
「ケイさん、準備完了なのさー!」
「んじゃやっていくぞ!」
「それじゃやるのです! 『拡散投擲』!」
「私もかな! 『並列制御』『エレクトロウォール』『エレクトロプリズン』!」
よし、良い感じに雲の中で放電しているような感じでエレクトロウェブが発動したし、俺らの真上には弱い銀光を帯びた投げ放たれた雪が散らばっている。これなら結構良い演出になりそうだね。
「アル、突撃!」
「おうよ!」
「私は氷の拡大だね!」
そうして銀光を放つ雪の中にアルが突っ込み、それに触れた事によって凍っていくという演出が出来た。後で誰かにどういう風に撮れたか見せてもらおうっと。
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