第822話 フィールドボスの連戦について


 フィールドボスの連戦ってどういう事だろうか? 言葉の通りに受け取るなら、フィールドボスを連続して誕生させて戦っていく? ふむ、なんとなくフィールドボスの誕生手順の検証の時の事を思い出すね。


「よし、とりあえず詳細を聞きたい。フィールドボスの連戦って、そう簡単に出来るもんなのか? 瘴気石と、進化元になる成長体も必要にはなるだろ?」

「あー、今の上限Lvに近付いてきてるプレイヤーやそういうLv帯のプレイヤーが多い共同体で広まりだした手段なんだよ。基本的にフル連結PTでやるから、瘴気石自体の消耗は思ったよりは激しくはねぇぜ?」

「そうそう、1戦辺りで最大で18個は回収出来るからさ。まぁ減りはするけどね」

「……なるほど、確かにそれなら激減はしないか」


 最大18個では俺らの適正Lvのフィールドボスを誕生させれば減ってはいくけど、それに関しては少し数を減らすとか、他の機会で補うとかをすればどうにかなる事だ。

 でもその場で瘴気石の強化は出来ないから、連戦をする前に用意しておく必要はあるはず。……連戦という割にはそれほど回数は出来ないんじゃないか? いや、持ってる強化済みの瘴気石の数で連戦数が決まるのか。


「はい! 進化元の成長体はどうするんですか!?」

「それについては現地調達だぜ。ちなみに野良でメンバーを募集すると、獲物察知持ちと、進化用の瘴気石を持ち込む人の取り合いになるな」

「マジか!?」

「まぁそうなるね。僕には獲物察知と同等性能の鷹の目があるし、ケイさんも獲物察知は持ってるから、瘴気石持ちの人が割と集まりやすいと思うよ。ちなみに成長体の持ち込みの人の争奪戦になる時もあるね」

「あー、そういう感じか。そりゃいいな」


 ふむふむ、それは確かに結構魅力的な話ではある。話を聞く感じだと、瘴気石よりも進化の元になる成長体の確保の方が重要みたいだね。

 それなら俺らが野良PTで募集するのもありな気はするけど、出来ればここは知り合いとやりたいとこでもあるよなー。


「そういうのって野良PTだけなのかな?」

「あー、俺らの『飛翔連隊』やケイさん達の『グリーズ・リベルテ』みたいな小規模な共同体が同じような規模のとこを募集してる事はあるぜ」

「おー、そうなんだー!?」

「今、都合がいい共同体の募集があるかはわからないけど、ダメ元で6時くらいまでを目安にした連戦の募集を探してみるかい?」

「……ヨッシ、どうするかな? 私は大丈夫だけど」

「もしその条件であるなら、私はそれで良いと思うよ」

「だなー。それじゃちょっと探してみるか!」

「「「おー!」」」

「さて、あれば良いんだがな」

「こればっかりはタイミング次第だからねぇ」


 とりあえずの方針が決まり、まとめにある各共同体の依頼……というか今回は募集だな。その辺で丁度いい条件のものがないかを漁っていこう。


「あ、そうだ。紅焔さん、俺らの方は瘴気石は用意しなくても良いのか? 俺らも多少は持ってるけどさ」

「無いよりはあった方が良いけど、大体募集してる側は瘴気石を確保してる事も多いから気にしなくても大丈夫だ。まぁこのメンバーならって条件はつくがな」

「今はまだ少しだけど、+19の瘴気石も出回ってはきてるからね。禍々しい瘴気の紋様ありの+20もあるにはあるよ。出回ってるので多いのは+10〜15の範囲みたいだね」

「……なるほどね。その辺が出回り始めたなら、問題はなさそうだな」

「ま、そういうこった! 俺らも何個かは持ってるしな」


 俺らが持ってるのでも+10と+8はあるし、数が+15とかが普通に出回っているなら適正Lvのフィールドボスを誕生には問題なさそうだ。


「瘴気石を大量に確保して、獲物察知を使える人が複数いるPTを募集してるとこがあるのです! ……あっ、これ、8時までの予定ー!?」

「……予定時間が惜しいな、それ」

「私とヨッシは途中まででケイとハーレだけでも続けてくれても構わないよ?」

「……私もそれでいいけど――」

「アルさんはどうしても時間が合わない部分が大きいからしかたないけど、他のみんなとバラバラでLv上げは私が嫌なのさー! これは却下です!」

「ま、それは俺もハーレさんに賛成だな」

「「……あはは」」


 そういう風に言われたサヤとヨッシさんは何だか照れくさそうな感じな声を上げていた。

 ま、アルは本当に一気にズレが生じる可能性があるから仕方ないにしても、ハーレさんがサヤとヨッシさんとバラバラにLv上げをするのを許容する訳もないか。


「お、良いのが……って、これは海エリアの共同体か」

「それは僕らにはあまり良くないね」

「紅焔さんとソラさんはそうなるよなー」


 うーん、流石に早々都合よく俺らの条件に合う募集はないな。あんまりここに時間をかけ過ぎても仕方ないし、この方向性は諦めるか……?

 ふむ、募集がないなら俺らで募集をするのもあり? でも待ってる時間も惜しいよなぁ……。


「紅焔さん、俺らがこの募集をするとして、先に成長体を確保しとくのってあり?」

「ん? 実施する場所と募集対象を明記してたらそれは問題ないが、それなら野良PTで募集をかけた方が多分早いぞ?」

「あー、確かにそれもそうか。みんな、野良PTで募集をかけるのは――」

「お、ケイさん達に紅焔さん達じゃねぇか!」

「……ヨッシ! それにみんなも!」


 おっと、誰かが声をかけてきたかと思えばザックさんと翡翠さんがそこにいた。……しかもザックさんは根で何かを捕まえているっぽい。これは……成長体のトカゲとタケノコか?


「おっす、ザックさん、翡翠さん! 俺らはちょっとこれからの行動を相談中なんだけど、ザックさん達はどうしたんだ?」

「俺らはあれだな! 見ての通り成長体を捕まえたから、灰のサファリ同盟に引き取ってもらおうと思って来たとこだ!」

「……ザックの毒が、地味に捕獲に役立つ」

「あー、なるほど」


 確かにザックさんは毒持ちだし、根の操作で捕獲するのに向いているのか。……ふむ、このタイミングで遭遇したのはある意味では運が良い?


「……みんなはこれから何かをするの?」

「フィールドボスの連戦をやろうかと相談してたとこだな」

「え、マジで!? って事はLv上げ目的だよな!?」

「お、おう、そうだけど……ザックさん、どうした?」

「いや、俺と翡翠もこのトカゲとタケノコを灰のサファリ同盟とトレードしたらどっかのLv上げ狙いの野良PTでLv上げをするつもりだったんだよ!」

「……タケとイッシーに少しLv差をつけられてる。……主に死にまくって経験値が減ってるザックが」

「……あはは、それってデスペナでかな?」

「……うん、そう」

「がっはっは! 名誉の負傷ってもんよ!」


 まぁあれだけ……無意味ではないにしても死にまくっていたら、デスペナで経験値も減りますよねー! でも、これは良いチャンスかも?


「はい! ザックさんと翡翠さんのLvは今いくつですか!?」

「……私は単独進化で24だけど、ザックは単独進化の21。イッシーは単独進化でイノシシがLv25、タケはキノコとカニの共生進化でLv22だよ。……ちなみに今日はタケとイッシーは夜までいない」

「あ、思ったより全体的に高めかな?」

「……そう比べてみると、ザックさんが飛び抜けて低いね」

「ザックさんが少し低いけど、離れ過ぎてる訳でもないから一緒に出来そうです!」

「だなー。紅焔さんとソラさん的にはどう思う?」

「んー、ザックさんの特攻死亡にだけ注意してれば問題ないんじゃね?」

「僕も紅焔に同感だね」


 ふむふむ、確かにザックさんが特攻して死亡すると厄介ではあるけど、流石にフル連結PTでフィールドボス戦をやるならそこまで心配はいらない気もする。

 それに翡翠さんは風と氷の2属性だし、ザックさんは毒持ちだ。フィールドボスでは全然効かない状態異常もあるけども、効く相手にはちゃんと効くから戦力にもなるはず。


「よし、ザックさん達もLv上げが狙いなら一緒にやるか!」

「おっしゃ、乗ったぜ!」

「……うん、私もそうしたい!」

「それじゃザックさんと翡翠さんの参戦は決定って事で8人になったから……後は10人か。みんな、野良で募集をかけてみるけどそれでいいか?」

「問題なしなのさー!」

「うん、大丈夫かな」

「出来るだけ早めにね」

「……だな」


 フーリエさんと模擬戦にそれほど時間がかかった訳じゃないけど、もう5時が近い。……大急ぎで移動してフィールドボスの連戦をやるとしても、そこまで大量には倒せないか。

 でもまぁこのフィールドボスの連戦もやってみたいとこではあるし、明日や明後日Lv上げをする手段として実際に試してみたいしね。


「さて、募集条件は+10以上の瘴気石持ちでLv20以上ってとこで良いか?」

「ケイさん、出来ればだけどもう1人ほど獲物察知持ちが欲しいとこだよ。そうすれば成長体の捜索は3手に分かれて出来るからね」

「確かにそりゃそうだな。野良PTで募集するなら、エンのとこに移動するか」

「あ、ケイ、待ったかな。実行するエリアはどこにするの?」

「……そういやそれも決めないといけないか」


 えーと、森林深部から行くなら候補はハイルング高原の東のザッタ平原か、ニーヴェア雪山か、ミズキの森林の西側の上風の丘ってとこだよな。うーん、どこがいいか……。


「いっそ、雪山で募集をするか?」

「ケイさん、それはやめといた方が良いぜ?」

「ん? なんでだ、ザックさん?」

「あそこ、人は集まるんだけどな。その分、Lv20の成長体が捕まりまくってるから探す方向性では見つけにくいんだぜ」

「そうなんだー!?」

「……あはは、人が集まってるからこその問題かな?」

「多分そうなんだろうね」


 うーむ、そうなるとニーヴェア雪山では却下だな。こういうフィールドボスの連戦を行う事が増えてきているのなら、中立地点で捕獲している成長体の数もそう居ないだろう……。


「あ、そういやザックさんと翡翠さんって、前にも雪山に成長体を持ってきてたよな? あれってなんかコツとかあるのか?」

「ん? 特にそんなのはないぜ! ただの勘だ!」

「まさかのただの勘かよ!?」

「……ザックの勘も妙に役立つ」


 トリカブトに索敵用の固有スキルでもあるのかと思ったけど、全く関係ない勘だとは思わなかった。……でも、実際にそれで捕獲してきているんだし大したもんだよな。


「はい! それならザックさん的には、これからどこに行くのがいいと思いますか!?」

「おっ、そうきたか。んー、そうだな。俺の勘としては……ミズキの森林で募集をかけて、上風の丘が良いと思うぜ!」

「……なるほど、そういう感じか」


 確かに今は昨日に引き続き混雑気味のエンのとこで募集をするより、他の事をしている人のいるミズキの森林で募集をするのもありかもしれない。

 それほど多い訳ではないけど普段でもミズキの森林で募集をしている人がいない訳じゃないし、モンスターズ・サバイバルが拠点にしている湖の畔なら人は結構集まってるしね。……勘とは言っても、意外とちゃんとした理由もあったりしそうだな。

 

「よし、それじゃ一旦ミズキの森林の湖まで移動するぞ。そこで少し募集してみて、すぐに集まらないようなら今の8人で出来る範囲でフィールドボス戦をやるって事で!」

「「「おー!」」」

「さて、知ってるやつが来ればいいんだけどな」

「……まぁそればっかりは募集をしてみないとね」

「おっしゃ、Lv上げをやってくぜー!」

「……頑張る!」


 みんなの気合も充分だし、とりあえずサクッとミズキの森林まで行ってしまおう。その為にもまずはエンのとこに行ってから転移だな。


「あ、その前にPT申請かな! はい、ザックさん、翡翠さん」

「お、サンキュー、サヤさん!」

「……サヤさん、ありがと」


<ザック様がPTに加入しました>

<翡翠様がPTに加入しました>


 そういえば紅焔さんとソラさんでPTを組んでいて、連結PTにしている状態だったっけ。この後にフル連結PT募集をかけるんだし、ザックさんと翡翠さんを俺らのPTの方に入れておくほうが良いかもね。

 1PT丸ごとで参加希望をしてくる可能性もあるからなー。まぁさっき探してた俺らがまさしくその状況だったしね。


 さて、それじゃ発動したままの水のカーペットにみんなを乗せて飛んでいきますか。今まで俺1人が乗れるだけの広さだったけど、追加生成をして広くしていこう。……よし、これでいい。


「おし、それじゃ出発するからみんな乗ってくれ」


 そう言えば、サヤ達はいつもの様に水のカーペットの上に乗っていく。って、あれ? ソラさんと翡翠さんは普通に乗ってきたけど、紅焔さんとザックさんが向き合って……睨み合っている? え、なんで?


「……ザックさん、なんだ?」

「いや、ちょっと紅焔さんに言いたい事があってな?」

「……内容次第だけど、聞こうじゃねぇか」

「おう、そうさせてもらうわ」

 

 えっ、えっ!? ここでこの2人がまさかの喧嘩か!? さっきまで普通に話してたし、険悪になるような雰囲気も、相性が悪そうな感じもしなかったのに……。


「紅焔さん……頼む! この移動の間で良いから、ドラゴンの背中の上に乗せてくれ! 一度ドラゴンに乗って飛んでみたかったんだよ!」

「何を言うかと思ったら……そんな事か。そういう事なら大歓迎だ、思う存分乗ってけ!」

「おっ、あんがとよ!」

「いや、良いって事よ! ならデカい方がいいよな。『大型化』!」

「おぉ! 確かにそりゃいい!」


 あれー? 険悪な雰囲気っぽくて心配したんだけど、全然そんな事はなかったねー。紅焔さんは警戒してたみたいだけど、今のはザックさんが紛らわしいわ!


 

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