第813話 予定の調整


 弥生さんとフレンドコールで話していたレナさんから、赤の群集のタッグ戦の出場者が弥生さんに決まったという知らせがあった。これでタッグ戦の赤の群集と灰の群集の組み合わせは弥生さんとレナさんで決定だね。

 この2人はどっちも相当強いから、青の群集とのタッグ戦が楽しみになってきた。こうなると青の群集は誰が出てくるのか、非常に気になる。青の群集でのコンビといえばジェイさんと斬雨さんだけど、そう単純にはならない気も――

 

「……ケイさん? 突然無言になってどうしました?」

「あ、悪い。ちょうどこっちで赤の群集の出場者が決まったって情報が入ってきてさ」

「なるほど、そういう事でしたか。赤の群集からの出場者はあの弥生さんのようですね」

「なんだ、ジェイさんは既に知ってたのか」

「えぇ、その情報が入ってから連絡をしましたからね。そして、灰の群集からはあのレナさんが出場ですね?」

「ま、そこは知ってると思ってたよ。青の群集の人が連絡してたっぽいしさ」

「今回は決勝トーナメントは公開してくれていましたから助かりましたよ。……私としてはケイさんが出場してくれるのを期待していたのですが、まぁそれは海で遭遇した時にない事は分かりましたからね。でもレナさんが出てくるのも面白い事になりそうです」

「まぁ今回はなー」


 ふむ、ジェイさんは俺の出場を期待してたのか。まぁその期待に応えられなくて申し訳ないけど、そこは俺の意思で決めるとこだからね。……ぶっちゃけ、赤の群集の誰とタッグを組む事になるかが分からないから躊躇した面もあるからなー。


「……そういう青の群集は誰が出てくるんだ? ジェイさんと斬雨さんのコンビ?」

「……それがまだ決定が難航していましてね。それでも明日の8時頃までには決定する予定なので、明日のその時間以降でタッグ戦の日程調整をと思いまして」

「あー、まだ決まってないのか。……相手が決まってから、弱点狙いでメンバーを選ぶとか?」

「やってもいいのであれば、今からその方向で考えますよ? とはいえ、弥生さんとレナさん相手ではそれをしても有効だとは思えませんが……」

「……確かにそりゃそうだ」


 下手な小細工でどうにかなるような2人じゃないし、青の群集の全力で対峙しなければあっという間に倒されてしまうだけだろう。

 でもまぁレナさんも弥生さんも基本的には物理型だから、魔法型で揃えてくる可能性は……それはそれでよっぽど立ち回りが上手くないと距離を詰められてあっという間に殺られそうだな。


「とりあえず、ジェイさんはタッグ戦の日程調整をしたいって用件で良いんだよな?」

「えぇ、そうなりますね。その際にはケイさん達にも来ていただきたいのですが、大丈夫でしょうか?」

「あー、ちょい待って。それは俺の独断では答えられないから、具体的な場所と時間帯を教えてくれ」

「まぁそれは当然ではありますか。それでは明日の夜8時半にニーヴェア雪山の中立地点でいかがでしょう?」

「とりあえずそれで聞いてみるから、少し待っててくれ」

「えぇ、分かりました」


 みんなに特別何かの予定がなければ大丈夫な時間帯だけど、この辺の予定はしっかり確認しておかないとね。勝手に承諾した後にやっぱり無理でしたは失礼だし。


「ケイ、ジェイさんは何だって?」

「赤の群集と灰の群集の出場者も決まったし、タッグ戦の開催日時の詳細を決めたいんだとさ。で、俺らにも来てくれって」

「まぁタッグ戦の方はベスタじゃなくて俺らが担当だしな。それで、その日程調整はいつどこでやるんだ?」

「明日の夜の8時半から雪山の中立地点でだとさ」

「なるほどな。俺はそれで問題ないが、みんなはどうだ?」

「その時間帯なら問題ないかな?」

「私も大丈夫だよ」

「私も問題なしなのさー!」

「とりあえず俺らは問題なしだな」


 まぁこれについては念の為に聞いただけだから、予想通りの答えである。あ、そういやここにレナさんもいるし、まだフレンドコールで話している最中みたいだから弥生さんとも連絡が出来る状態か。


「レナさん、ちょっと良いか?」

「どしたの、ケイさん? あ、弥生、ちょっと話がありそうだから後でかけ直す――」

「レナさん、それは待ったー! 弥生さんにも伝えてもらいたい内容だから、そのまま繋いどいて!」

「およ? そうなの? 弥生、何かわたし達に話があるみたいだから、かけ直しはなしでこのままでー! うん、ケイさん。うん、うん」


 ふー、危ない危ない。レナさんは普通に弥生さんと話し込んでたようで、俺の方の内容は全然耳に入ってなかったみたいだね。……まぁ俺もレナさんが出場者が決まったと呼びかけてきた時以外は、何を話してたかとか全然聞こえてなかったけどさ。


「……ケイさん、もしかしてすぐ近くにレナさんがいるのですか?」

「おう、いるぞー」

「……ついでに聞きますが、レナさんは弥生さんとフレンドコールの真っ最中なのですか?」

「まぁそういう事になるな。ジェイさんとしては、ここでレナさんと弥生さんに伝えられる方が都合は良いだろ?」

「それは確かにそうですね。それではレナさんと弥生さんにも、先程の件をお伝えいただけますか?」

「おう、任せとけ、ジェイさん」

「よろしくお願いしますね」


 なんというか少しややこしい伝言の状態にはなるけど、ここに関係者が全員揃っているんだからその状況を活用しない手はないだろう。


「あ、ケイさんはジェイさんとフレンドコール中なの? それじゃわたしと弥生への話って、タッグ戦関係ー?」

「うん、そうなるな。ジェイさんから明日の夜の8時半から雪山の中立地点で、開催日時を決めたいけど都合はどうかって確認」

「あ、なるほどね。弥生、明日の夜の8時半で雪山の中立地点でタッグ戦の開催の日時の相談をしたいって、青の群集のジェイさんから話が来てるけど大丈夫ー? うん、うん、あ、大丈夫なんだね? うん、了解ー。それじゃ伝えとくー!」


 レナさんのフレンドコールだから弥生さんの発言は聞こえないけど、まぁ今のレナさんの言葉で内容は大体分かったね。かなり偶然での状況にはなったけど、それぞれの関係者にバラバラに連絡を取る必要もなくなって、これはこれでよかったのかもなー。


「ケイさん、弥生は問題ないって。あ、わたしもその時間は大丈夫だから、そうジェイさんに伝えてくれる?」

「ほいよっと。おーい、ジェイさん?」

「都合はどうでしたか?」

「関係者、全員問題なしだな」

「そうですか、それなら色々と手間も省けましたし良かったですよ」

「そりゃ確かになー。あ、そうだ。その時って青の群集の出場者は来るのか?」

「一応、そのつもりではいますよ。そうでないと日時を確定出来ませんからね」

「ま、そりゃそうか」


 うーん、これって本当に青の群集の出場者って決まってないのか? まだ決まってない段階で、日程調整の話を進めるというのも少し違和感があるんだけど……。


「……ケイ、少し俺の推論を話すが、その間は言葉を発するな。いいか?」


 え、ベスタが急にそんな事を言ってきたよ? あ、俺の反応をジェイさんに悟られないようにする為か。この感じだと、ベスタなりに青の群集の動きに対する推測があるんだな。

 とりあえず了承したという事で頷いておこう。


「あのジェイの事だ、まだ決まっていないというのは鵜呑みにしない方が良いだろう。既に決まっているが、今日のカインの様に急激に強くなった奴や、表に出てきていなかった強者という可能性もある」

「およ? 青の群集の出場者ってまだ決まってないのに、日程調整の話に進んでたのー? うーん、ベスタさんの言う相手に心当たりは……えーっと、1、2、3…………10……うん、わたしの知る限りでも10人人くらいはいるねー!」

「……そんなにいるのかよ、レナさん」

「10人もいたら絞りきれないのです!?」

「……あはは、まだまだ強い人はいっぱいいるんだね」

「それはびっくりかな!?」


 うん、予めベスタに言葉を発するなと言われてなければ、思いっきり反応していたレベルの情報だね。……流石はレナさん、顔の広さがとんでもないな。

 あ、完全に無言だとジェイさんに変に思われるから、用件自体は終わったし区切りをつけてフレンドコールを切っとくか。


「ジェイさん、とりあえず色々了解。詳細はまた明日決めるって事でいいか?」

「……少し妙な間があったのが気になりますが、まぁそちらの件はそれで問題ありません」


 ギクッ!? ほんの少し無言になってただけで、なんか微妙に警戒された感じがするー!? でもまぁあのジェイさんなら、俺らの方で意図を読む事もそれなりに想定はしてそうなんだよな。

 ドサクサに紛れてシレッと偽情報を混ぜて来る事もあるから、ここは警戒しておくべきだ。……ぶっちゃけ、気になると言った事そのものが困惑させる為の罠という可能性すらもある。


「何か妙に警戒されている気もしますが……出場者の選出も急がなければならないので、この辺で失礼しますね」

「あ、ちょい待った!」

「……何か伝え忘れがありましたか?」

「伝え忘れって訳じゃないけど、明日の詳細話し合いって、今のメンバー以外に参加は無し?」

「あぁ、そういえばそこは決めておくべきですか。……ふむ、あまり人数が多くても仕方ないので、常識的な人数まででお願い出来ますか?」

「……常識的な人数か。ま、それでいいか」

「ではそれで決定ですね。それでは失礼します」

「ほいよっと」


 そうしてジェイさんとのフレンドコールは切れていった。ふむ、常識的な人数か。まぁ多くても1PTくらいまで……って、灰の群集は俺らとレナさんで埋まるがな!


「……そういや、ベスタは明日の日程調整には来る?」

「いや、レナとケイ達が行くなら俺は必要ないだろう。タッグ戦の開催の際には手伝うが、日程調整は遠慮しておく」

「あー、まぁ確かにそれはそうだなー」

「ただ、警戒点は伝えておくか。明日のその日程調整の際には青の群集の出場者を連れてくるだろうが、本質を隠してくる可能性もある。レナ、心当たりがある相手の戦法は全員把握しているか?」

「んー、それは人によるよー。把握してる人もいるけど、他は……把握してないというより、変化してる可能性があるからねー。え、弥生? あー、うん、まぁそりゃそっか」

「……レナ、弥生は何と言っている?」

「んー? 変に先入観だけで戦うのも危ないから、あくまで目安に留めておこうってさー」

「……確かにそれもそうだな。少しジェイを警戒し過ぎか」

「こうやって撹乱するのがジェイさんの目的な気もしてくるのさー!」

「……確かにそれはありえそうかな」

「ジェイさん相手だと、警戒し過ぎも良くないか」

「うん、それは確かにそうかも……」

「……だな」


 フレンドコールを切る前にメンバーの選出を念押ししてきている部分もあったし、そこら辺から警戒度を高めさせようという意図も感じた。

 まだ青の群集のメンバーが決まっているかは未知数だけど、既にタッグ戦の心理戦は始まっているという事か……。まぁ今の時点で確定出来ない内容を気にし過ぎても仕方ないな。


「とりあえず明日、日程調整をする時に考えたらいいか。あ、雪山エリアまでの移動はどうする?」

「8時半からなら移動の時間には余裕があるし、ハイルング高原の切り替え位置で待ち合わせで良いんじゃね?」

「私はアルの提案に賛成かな」

「私もなのさー!」

「同じく私もだね」

「んじゃ、俺らはそうするか。レナさんはどうする?」

「んー、そだねー。折角だし、一緒に行こうかなー? 弥生は赤のサファリ同盟の……うん、そっちで待ってる感じだね。うん、了解ー! それじゃ弥生、また明日ねー!」


 ふむ、レナさんの話している内容的に赤のサファリ同盟は雪山エリアで待っているみたいな感じか。ま、本拠地が中立地点にあるんだからそうなるよな。


「さーて、わたしはちょっとログイン制限の時間が危ないから今日はもう終わりにするけど、みんなはー?」

「あ、もうこんな時間か!」


 レナさんに言われて時間を見たら11時半を過ぎているから、アル以外はそろそろ切り上げの時間だね。決勝トーナメント戦の開始の時点でそれなりの時間になってたけど、全然時間を気にしてなかったよ。


「明日の夜に予定の話も片付いたし、今日はとりあえずこの辺までだなー」

「だな。そういや、夕方やタッグ戦の日程を決めた後はどうすんだ?」

「あー、とりあえずLv上げ?」

「……それなら、夕方は俺の事は気にせずにLv上げをしてくれて構わんぞ」

「え、アル、良いのかな?」

「夜には俺も野良PTでLv上げをしてたりするからな。それに来週からしばらくログイン出来ないなら、今のうちに俺がログインしてない間にもやっとけ」

「おー! アルさん、太っ腹なのさー!」

「そういう事なら、遠慮せずにそうさせてもらう?」

「その方が後々の事を考えると良さそうかな?」


 確かに俺らがテスト期間中でまともにログイン出来ない時でも、アルは普通にやってほしいからこの辺で調整をしておくのもありかもね。でも、みんなで行った事のない場所は避けておきたいから、行ける場所は限られてくるか。


「それじゃ、明日の夕方もLv上げを中心って事で! 場所としてはまたカイヨウ渓谷が良い?」

「他の場所はまだみんなでは行ってないから、そうなるかな?」

「まぁそこは、そうしたいよね」

「それならタッグ戦の日程調整が終わったら、他の候補地に行くのさー!」

「お、そりゃいいな。それなら封熱の霊峰のにある溶岩の洞窟にフェニックスでも見に行くか」

「アル、それはありだな!」

「だろ? ま、それまでに適応の準備はしとかないとな」

「だなー」


 とりあえずアルとヨッシさんは確実に纏火の用意をしておいた方が良いかもね。俺もちょっとどうなるか分からないから、自分の分も用意しておこう。

 多分ハーレさんとサヤについては発火草で大丈夫だとは思うけど、少し多めに用意しておいた方がいいか。ま、この辺は明日調達しますかね。


「それじゃ今日はこれで解散!」

「「「おー!」」」

「さて、それじゃ俺はもう少しやってくか」

「俺もタケノコの育成を進めていくとしよう」

「それじゃみんな、また明日ねー!」


 アルとベスタはそのまま引き続いてプレイをしていき、俺とサヤとヨッシさんとハーレさんとレナさんはログアウトをしていった。

 そういや今日はレナさんはダイクさんとは一緒じゃなかったんさな。まぁそういう時もあるか。


 

 ◇ ◇ ◇



 そうしていつものいったんのいるログイン場面へとやっていきた。今回の胴体部分は『プレイヤー主催のイベントにトーナメント戦を使ってもらってありがたい! 実装を頑張った甲斐があった!』となっている。

 うん、今回のテスト実装のトーナメント戦……特に急遽プレイヤー主催であるタッグ戦の出場者の選出に合わせてブロック分け機能を前倒しって感じで実装してくれたのは感謝! そういや八百長とかは大丈夫だったんだろうか?


「いったん、ちょっと質問いいか?」

「はいはい〜。どうしたのかな〜?」

「トーナメント戦で八百長対策を色々してたけど、その辺は大丈夫そう?」

「うん、今のところはね〜。ただ画策しているプレイヤー自体はいるから、警戒中ではあるよ〜」

「あー、やっぱり狙ってる奴はいるのか……」

「残念ながらね〜」


 まぁ報酬がかなり豪華だから、八百長を狙う奴が出てくるよな。そういやスキル強化の種を手に入れるのに必要な情報ポイントっていくらなんだろ? ……覚えてたら明日にでも確認しとくか。


「……ま、変な事にならないように祈っとこ。そういやスクショの承諾はある?」

「今日は特にないよ〜」

「あ、そうなんだ」


 まぁ今日はそれほど目立つような場所で戦闘はしてないし、スクショを撮られるような機会もなかったもんな。そりゃそういう日はスクショの承諾も来ないよねー。


「それじゃ今日はこのくらいで終わりにするよ」

「はいはい〜。またのお越しをお待ちしております〜」

「ほいよっと」


 そうしていったんに見送られながらログアウトをしていった。……あれ、そういや何かを忘れているような気がしないでもない。

 なんだっけ……って、あー!? 新しい進化先が出てたのに、内容を確認してない!? くっ、今から再ログインして確認するのもあれだし、明日ログインしてから確認するか……。


 そういや数学の課題が出てたし、それもやっとかないとね。どっちにしても、今から再ログインして進化先の確認は無しだな……。さて、とりあえずさっさと課題を終わらせて寝るぞ!

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