第784話 投擲の試行錯誤


 さて、今まで地味に試してみた事がなかった他のプレイヤーが生成した魔法を投げてみるという実験である。なんか元々の予定のスキルの熟練度稼ぎからどんどん離れていってるけど、まぁこれはこれで無駄な事ではないし別にいいか。


 おっと、そんな事を考えている間にハーレさんの爆散投擲のチャージが終わったみたいだね。さて、それじゃ験開始といきますか。 


「チャージ完了です!」

「よし、ハーレさん、ぶっ放せ!」

「了解なのさー!」


 そうしてハーレさんが俺の生成した小石を投げ放っていく……って、普段なら弾も銀光を放っているけど、今回はそうなってないな?

 あー、この感じだとどうやら投擲スキルの補正はないっぽい。でも初速としては十分な加速ではあるから、ここから俺の操作で一気に加速させていくか。


「って、速!?」


 思いっきり最大限に加速してみたら、予想以上に加速し過ぎたっぽい。一応的には当たってぶっ壊していたけど、そこから更に直進していって……どこまで行ったんだろ?

 とりあえず操作が解除になっているから一気に操作時間を使い果たしたっぽいけど、これって速過ぎて的には掠っただけだった。……命中精度に問題ありか。


「これは成功なのかな?」

「今までより相当速くなかった?」

「投擲スキルの威力補正は無かったみたいだけど、まぁそれがあるかどうか確認でもあったから一応は成功だな。でも、これはちょっと速過ぎ……」

「これ、なんだか狙いにくいのさー!? なんだか普段の狙いの補正が甘くなっていた気がするのです!」

「あー、それは俺の操作のせいかも……。多分操作してる弾には投擲スキルの補正が全然無くて、ただ投げる動きの勢いは有効になってる感じだな」

「確かにそんな感じなのさー!?」


 ふむ、他のプレイヤーの操作下にある小石を投げる時だと投擲スキルはほぼ無意味。でも投げる動作自体は有効だから、勢い良く投げる爆散投擲の勢い自体は有効か。

 ただし、投擲スキルでの補正がないから命中精度は一気に下がるし、思いっきり加速させると速すぎるから、扱いやすい範囲を探る必要はありそうだね。


 でもまぁこれは色々と使えそうな気がする。これなら小石にコケを増殖させて遠隔同調も使って、遠距離からの狙撃で敵のど真ん中に突っ込んでいくって手段も出来そうだ。


「ケイさん、操作をしない場合だったらどうなりますか!?」

「……そっちも一応やってみるか。でもスキルはどれを使うんだ?」

「命中補正の高い貫通狙撃でやってみます! これなら影響が時に分かりやすいはずなのさー!」

「でも応用スキルの貫通狙撃じゃなくて、普通の狙撃でもいいんじゃね?」

「そこは気分と熟練度稼ぎなのですさー!」

「あー、なるほど」


 うん、確かに使える時に使っておいて熟練度稼ぎをするのはありか。Lv2になれば行動値の消費は激しくなるけど、それに見合っただけの威力はあるもんな。


「ヨッシさん、次はさっきより小さめの的を用意してもらえない?」

「うん、良いよ。『アイスクリエイト』『氷の操作』! えっと、さっきより位置は離してた方がいい?」

「ヨッシ、ありがとー!」


 さて、今度はさっきより遠めの場所に氷の的を設置してくれた。ま、距離がある方が命中補正がどうなってるかは分かりやすいもんな。


「それじゃやるぞ、ハーレさん」

「はーい!」


 今回は俺の操作がない場合の判定を見るためだし、俺の方にリスの手を広げているところにただの小石を1個生成すればいい。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 54/79 : 魔力値 209/218


 投げやすいように形状は変に尖らせる事もなく、その辺に転がってる小石と同じような感じで……よし、生成完了。


「それじゃいくよー! 『貫通狙撃』!」


 それからハーレさんが俺の生成した小石を握って、チャージを開始した。……そういや魔法で生成したものって操作をしなけりゃそれほど長持ちはしないんだけど、その辺はどうなんだろ?

 うーん、ハーレさんが自前で生成した小石を使う時は問題になってないし、ちゃんと弾として判定されれば大丈夫?


 そしてチャージが終わるのを待っていく。ふむ、どうやら生成した小石が消える気配もないし、普通に投擲用の弾として判定されてそうな感じだな。

 おっと、そうしてる間にチャージが完了したね。さて、このパターンならどうなるのかな。


「これで当たれば成功なのさー! えいや!」


 そう言いながら銀光を放つ小石がかなりの勢いで投げ放たれる。ほほう、さっきは銀光は無かったけど、今回のは銀光がちゃんとあるんだな。……これは成功か?


「あ、ちゃんと命中したかな」

「今のはあんまり普段と変わらない感じだね」

「……だな。ハーレさん、何か違いはあったか?」

「うーん、多分だけど威力が少し上がってると思うのさー! 感覚としてはアルさんの木にある巣のボーナス補正がある時くらいな感じです!」

「あー、俺が生成した分の魔法ダメージの補正がそれくらいあるのか。……俺のでそうなるって事は、クラゲで生成した小石でもいけそうだな」

「多分そうだと思うのさー!」


 ふむふむ、これは地味に実用的なハーレさんの強化手段になりそうな感じだね。多分アルの木にある巣のボーナス補正は別枠でかかるだろうし、更なる威力の強化にもなりそうだ。


「それじゃ次はこれなのです! 『アースボム』……って、投擲が発動出来ないのさー!? わっ!?」

「……ハーレ、大丈夫かな?」

「ハーレ、慌てすぎだよ」

「あぅ……並列制御を地味に忘れていた……」

「まぁそれを忘れたら、そりゃそうなるわ」


 投擲が発動出来ない状態で手の上にアースボムを発動したら、そりゃ自分を巻き込んで爆発するだけだよな。……てか、今の爆発を見て改めて思ったけど、そもそも投擲の弾として持てるのか?


「今度はちゃんと並列制御を使うのさー! 『並列制御』『アースボム』『投擲』! あ、投擲の弾に指定が出来……あぅ!?」

「……あはは、これは盛大に失敗みたいかな?」

「どうもそうみたいだね」

「投擲の弾には出来るみたいだけど、爆発するのが早いー!?」

「……弾に出来ても、投げる前に爆発したら意味ないよな」


 うーん、これは見た感じでは失敗ではあるんだけど、本当に失敗と言ってもいいのか? 俺はてっきり弾には出来ずに爆発しただけになると予想してたんだけど、投擲の弾になるのに投げれないなんて事はどうも不自然な感じがする……。


「弾になるのに投げれないって不自然だし、これは多分知らない何かがありそうだな」

「……確かにそうだよね」

「まとめで少し確認してみるかな?」

「うー、確かに何かありそうだから自分で探りたいけど、情報があるかも気になるのです!」

「まぁ確かにその気持ちも分かるから、どうするかはハーレさんに任すけど……」


 それにしても何かがあるとしたら何がある? 俺の持ってる魔法砲撃みたいに、魔法を投擲の弾に変換して性質を変えるようなスキル? もしくは魔法の発動タイミングを遅延させるようなスキル? それとも他に全く別のスキルが存在する……? あー、魔法型の投擲キャラってのもあり得るのかも?

 うーん、もし魔法の発動タイミングを遅延させるスキルとかがあるなら、それは俺が普通に欲しいやつだな。……これはかなり俺としても気になってきたし、アースボム以外の魔法ならどうなるんだろうか。


「ハーレさん、アースバレットとかアースプリズンでも出来るか?」

「はっ!? ちょっとやってみるのです!」

「それってどうなるのかな?」

「……元々撃ち出すアースバレットを投げる意味もよく分からないよ? それにアースプリズンも……あ、もしかして魔法砲撃みたいになる? ケイさん、もしかして魔法砲撃の投擲版を考えてる?」

「まぁ一応可能性の1つとしてな。……もしそうなら、条件は不発を繰り返すって可能性もありそうだし」

「そっか、確かにそういう条件はありそうだね」


 投擲の場合なら、地味に魔法砲撃とは違った使い方も出来そうなんだよね。山なりに投げてみるとか、投擲の種類によって性質が変化するとか、何かしら差別化されるような部分がありそう。

 まぁこれは勝手な想像だから無いかもしれないし、魔法の発動を遅らせるスキルというのも可能性としては考えている。

 魔法の発動遅延ならどの魔法でも適応されそうな気がするけど、ヨッシさんも言ってたようにアースバレットと投擲の組み合わせだと割と意味が分からないから、そこで何かしらの変化がある気がするんだよね。


「とりあえずアースバレットから試してみるのさー! 『並列制御』『アースバレット』『投擲』!」

「ハーレさん、どうなった?」

「アースバレットは投擲の弾にはならなくて、普段使ってる投擲の弾を要求されるのです! というか、アースバレットの照準と投擲の照準が両方が出てて邪魔ー!」

「「あはは……」」

「その組み合わせだと照準が2種類出るのか……」


 並列制御を使えば魔法と投擲の照準が同時に出るとか初めて知ったけど、それはそれで使い道はあるんじゃないか? 魔法を牽制に放ちつつ、投擲で狙い撃つとかさ。まぁこれは逆でもいいけど。


「次はアースプリズンをやるのです!」

「ほいよっと。まぁ多分無駄な発動だとは思うけど……」

「無駄そうなのにやるの、ケイさん!?」

「出来ないっていう確認は大事だしな。まぁ、効果があるのは一部の魔法だけじゃないかって気はしてる」

「そうなの!? でも確かに確認は大事なのさー!」

「ケイ、その根拠は何かな?」

「んー、まぁ投擲との相性の問題だなー。全部の魔法と投擲の組み合わせで変化とかになったら、流石に多過ぎるだろ? だから投擲の弾に出来るのは一部の魔法……爆発魔法と衝撃魔法くらいじゃないかと思ってなー」

「……確かにそれもそうかな?」

「でも、衝撃魔法はなんで選択肢にあるの?」

「あー、散弾投擲とか拡散投擲とかと相性が良いのかなって思っただけだな。爆発魔法だけだと単発のみになりそうだしさ」

「あ、そっか。確かにそうなるよね」


 まぁそんな事を言ってみたものの、根拠というほどしっかりしたものではないけどね。……ぶっちゃけ連速投擲とかの連続投擲系がどうなるかが想像付かないから、割と穴だらけではあるからなー。

 ただ、アースバレットが弾に出来なかった事から、魔法の発動タイミングを遅延させるようなスキルではないと判断した。もしそれなら魔法全部に効果が無いとおかしい気がするしね。


「何はともあれ、試してみるのです! 『並列制御』『アースプリズン』『投擲』! あぅ、発動箇所を間違えたー!?」

「あー、なんでミスって自分を拘束してるのかは置いておくとして、別々に発動っぽいな」

「ケイの想像通りの結果かな」

「……あはは、そうみたいだね」

「2つの照準は混乱するのさー!? アースプリズンは解除ー!」


 うん、ハーレさんが自分に拘束魔法をかけるミスをするのは予想外だったけど、これで効果があると分かったのはアースボムのみか。ハーレさんはアースインパクトは使えないから、衝撃魔法の確認は出来ないな……。


「ケイさん、これは確実に何かありそうなので、まとめの確認をしたいです!」

「ハーレさんがそれで良いなら、俺はそれでいいぞ」

「という事で、まとめのチェックをしてきます!」

「ほいよっと」


 そうしてハーレさんはまとめの情報を確認し始めた。とはいえ、確実にその情報があるとも限らないんだよな。まとめにある情報は基本的に誰かが見つけて、再現検証が行われて、取得条件が明確に判明した情報だからね。


 サヤとヨッシさんもどうやらまとめ情報を確認し始めたようだから、俺も見ていこうっと。えーと、投擲スキル絡みの情報は……あ、この辺か。

 ふむふむ、拡散投擲の弾には砂が良いとか、連速投擲には竹串が良いとか、花粉の弾は凶悪だとか、そういうコツみたいなのが纏まってるけど……今回知りたい情報は見当たらないぞ?


「情報がなさそうなのです!? それなら自力で――」

「あ、ハーレ、待ったかな! 検証中の案件の方にあったかな!」

「え、ホント!?」


 ほほう、検証中の情報提供のとこにあるのか。どれどれ、どんな風に検証してる状態になってるんだろうか? あー、なるほど、情報自体はあるけどまだまとめ切れていないのか。

 よく考えてみれば当たり前だけど、こういう事もあって当然だ。ちょっとまとめられている状況を当たり前だと思い始めてたっぽいから、ここは少し反省か……。


「そこそこ前には検証自体は終わってるみたいだね」

「みたいだな。まとめ作業ってベスタとかプレイヤーが手作業でやってるんだし、そういう事もあるよな。むしろ普段からまとめの編集をしてくれてるのに感謝しないと……」

「……あはは、確かにそれはそうかな」

「普段まとめの編集をしてくれている人達に感謝です!」


 ハーレさんが何か敬礼をしつつ感謝をしているけど、まぁそこは本当に感謝しとかないとね。まとめの編集者の名前を見れば、知ってる人の名前もあれば知らない人の名前もあるもんな。俺らは情報提供はしてもまとめの編集作業は全然してないから、本当にありがたい話である。

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