第773話 トーナメント戦の準備 前編
成長体に進化したタケノコのベスタがオオカミにログインし直しているから、戻ってきたらトーナメント戦の開催設定をしに行かないとね。
「それじゃ私達は桜花さんのとこに行くのさー!」
「うん、それが良さそうかな」
「それもそだね」
「……あれ? そういや俺ってトーナメント戦の開催の設定をしたらエンのとこで1人で待機?」
「……えっと、開催だけは群集拠点種で行う必要があるけど、その後の管理はステータス画面から専用の管理管理画面から管理が出来るんだってさ。それからなら移動は問題ないみたいだね。」
「あ、そういう仕様なのか」
ふー、ヨッシさんがヘルプを確認してくれたね。……地味にヘルプの文字数が多かったから、全部の項目は見れてないんだよな……。
まぁそういう仕様なら開催の設定をしてから桜花さんの所まで行けば問題はないか。流石にエンのとこに張り付いていなければならないという仕様にはなってないんだな。……という事は、参加者もずっと張り付いておく必要もない? ふむ、この辺も要確認か。
あ、そんな事を考えてる間にベスタがオオカミで森の中から走ってきた。この感じだとエンに転移してきた訳じゃなさそうだし、オオカミはこの近くでログアウトをしていたのか。
「悪い、待たせたな」
「ベスタ、おかえり。戻ってきていきなりなんだけど、細かい対戦マップの設定とかを聞きながら設定していきたいし、実際にトーナメント戦をしてる最中に連結PTで会話が出来るようにしといていいか? ……連結PTにしてたらトーナメント戦に参戦出来ないとか、模擬戦の邪魔になるとかはないよな?」
「模擬戦では実際の戦闘になればPT会話は繋がらないから、それお同じと考えればトーナメント戦中も問題はないだろう。……色々と調整がしやすいし、組んでいた方が都合はいいか。十六夜、フーリエ、イブキ、PT申請だ」
「……あぁ」
「はい!」
「おうよ!」
すぐにベスタがPTを組んで……あ、俺の方に連結PTの申請が来たね。それじゃ連結PTは了承っと。
<ベスタ様のPTと連結しました>
よし、これでトーナメント戦の開催の下準備は完了っと。それじゃ実際に4人での小規模なトーナメント戦の開催をやっていきますか!
「それじゃ先に桜花さんの所で実況の準備をしています!」
「ほいよっと……じゃない!? あれ、十六夜さん的には桜花さんのとこのみなら実況は良いのか……?」
「あー!? そういえば中継は良いって言ってたけど、実況はどうか聞いてなかったのです!?」
「……桜花が中継するのは許可したから、実況もやってくれて構わん。ただし、戦闘中にこっちに声が聞こえるのは無しだ」
「あー、それに関してはそう設定しとくよ。」
「やったー! 十六夜さんの貴重な戦闘が実況出来るのさー!」
「……ふん」
そういや十六夜さんの戦闘って岩山にいた土属性のドラゴンと戦っているのを断片的に見ただけなんだよな。……あの時だけでも相当強い感じはしてたけど、実際にそれが見れるのは俺としても楽しみだな。
「サヤ、乗せてー! ヨッシもサヤに乗っていこー!」
「うん、いいよ。それなら、たまにはクマで走っていこうかな?」
「最近飛ぶ事が多かったもんね。でも、サヤ、この崖はどうするの? 桜花さん、反対側だよ? グルッと回り込んでいく?」
「このくらいの高さなら、今の私のクマなら大丈夫かな!」
「……あはは、降りて突っ切るんだ。まぁ失敗してもダメージは無いから大丈夫だよね」
「はっ!? ヨッシ、氷でジャンプ台を作るのです! ほら、スキーとかスノボーみたいな感じ!」
「……ハーレも無茶言うね。サヤ、やったら出来る?」
「ちょっと感覚は違うと思うけど、スノボーの感覚でやればいけそうかな?」
「あ、そっか。スノボーの感覚なら……うん、ちょっと試しにやってみよ」
「……ヨッシ?」
ん? ただ単に移動をしていくだけかと思ったら何やら妙な流れになってきているけど、ヨッシさんは何をする気だ? ハーレさんも雪がない場所で氷だけでスキーやスノボーとか結構な無茶振りを……あ、何となくヨッシさんがしようとしている事が分かったかも。
「上手くいけばいいけど……『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷雪の操作』『氷解の操作』!」
「わ!? 氷の坂道が出来て、その上に雪が積もっていってるかな!?」
「おー! ヨッシ、ナイスなのさー!」
「……ちょっと集中力がいるから、安定するまで集中させて。雪を積もらせたら多分大丈夫だから……」
「了解なのさー!」
「……あはは、これならいけそうかな?」
なんというか、かなり即席ではあるけどヨッシさんも無茶な事を考えるもんだね。……流石に生成している道代わりの氷解の範囲が広いから氷が薄めで強度が少し心許ない感じだけど、一気に滑り降りるだけならこれでも問題はなさそうだ。……折角だし、スクショ撮っとこ。
「へぇ、こりゃ面白いもんを見たぜ!」
「はい! ヨッシさんも凄いです!」
「ま、確かにな。だが、俺らは俺らで動いていくぞ」
「……あぁ、時間が無限にある訳でもないからな」
「……だな。俺らはどう降りる?」
「それなら俺が大型化して――」
「イブキは目立つから却下だ。ケイ、空中で設定を相談していきたいから足場を頼めるか?」
「言い終わる前に却下された!?」
「ほいよっと」
ま、無所属であるイブキの龍の背に俺らが乗ったら盛大に目立つだろうし、十六夜さんとかは基本的に目立ちたくはないんだろうから空中から設定していくのが無難ではあるよね。それらを除外しても地上は混雑してるから空中からの方が楽だもんな。
さて、普通にいつも使ってる飛行鎧か水のカーペット……水のカーペットは下から丸見えだから今回は無し。それなら飛行鎧……いや、大きく動かす訳じゃないし、また通常発動で熟練度稼ぎをしていきますか。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 78/79 : 魔力値 215/218
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します> 行動値 59/79
よし、これでただの岩の板の生成が完了っと。って、生成が終わった瞬間にイブキが乗ってるし!? あ、その様子を十六夜さんがじっと見ているような?
「……おい、イブキ」
「ん? 十六夜さん、どうしたよ?」
「……一言くらいあっても良いだろう」
「あ、それもそうか! ケイさん、邪魔するぜ!」
「……ふん」
あー、どうも十六夜さんはイブキの軽率な態度が微妙に気に入らないみたいな感じだったけど、意外なほどにイブキがあっさり引き下がったね。
なんというか初対面で奇襲してきた時のイブキと比べたら相当マシになってるけど、これは羅刹がふっ飛ばしまくってた成果か……?
「あ、えと、僕もお邪魔します!」
「おうよ、フーリエさん! それじゃサヤ、ヨッシさん、ハーレさん、少しの間だけど別行動な!」
「うん、分かったかな!」
「了解なのさー!」
「また後でね」
とりあえずエンの方に行く俺らの方は移動の準備が終わったので、エンの青々と茂った葉の方へと飛んでいこう。ヨッシさんの生成している……簡易スキー場みたいなのはそろそろ安定してきた感じだし、そんなに時間はかからないだろうけどね。
「うん、これでとりあえず完成!」
「おー! サヤ、ヨッシ、私達も出発なのさー!」
「……先に言っておくけど、失敗したらごめんかな?」
「あはは、まぁその時はその時だね」
「失敗しても良いのさー!」
そんな声をPT会話で聞きながら、エンの所へとあっという間に到着である。ま、全然距離は離れていないんだから、すぐに到着して当然だけど。
さてと、それじゃトーナメント戦の開催の設定をしていきますかね。とりあえず初めて設定をやる訳だけど、模擬戦の機能の1つだから設定項目は模擬戦の所でいいはず。
お、あった、あった。えーと、新たに『トーナメント戦に参加』と『トーナメント戦の開催』という項目が増えているから、『トーナメントの開催』を選んでっと。
まずはトーナメント戦の参加人数、参加制限、参加費と報酬の設定、開催共同体の代表者を指定していくのか。参加人数は5人までしか設定出来ないけど今回は4人での最低限なトーナメント戦だから4人に設定。
あ、無所属の参加の可否もここで決められるみたいだから、イブキが参戦する為に無所属の参戦は可能にしておいてっと。
代表者は共同体の他のメンバーにも設定は出来るみたいだね。ただ、リーダー以外にする場合はメンバーに過半数の同意が必要ってなってるな。まぁここは俺が共同体のリーダーだから俺を指定すればそれで問題なし。
参加費は……あー、情報ポイント0〜200までの範囲になってるから、とりあえず予定通り100で設定にして、報酬は情報ポイントの総取りに設定。……そういや項目が見当たらないんだけど、情報ポイントと交換出来る報酬アイテムの指定はどうやるんだろ?
あ、よく見たら説明があった。えーと、参加メンバーが確定した後に参加する人が自分が欲しいアイテムの指定をして、見事に勝ち抜いたらそれが貰えるって形なのか。ふむ、これはわざわざ目的のアイテムが賞品となっているトーナメントを探す必要がないから意外と良いシステムかも?
そして参加制限はパスワード制か。ふむ、ここで設定したパスワードを入力しないとそもそも参加出来ないように出来るんだね。……近くに聞いている人もいないし、みんなに聞いてみるか。
「えーと、参加制限にパスワードがいるんだけど、パスワードは何がいい?」
「へぇ、そんなのがあんのか! 俺はなんでもいいぜ!」
「なんでもいいって返答が一番困るんだけど……。なんでもいいならパスワードは【イブキ】って事で!」
「え、そう来るのか!?」
「……俺はそれで構わん」
「まぁそこで時間をかけても仕方ないし、俺も十六夜に同意だ」
「僕もそれでいいです!」
「え、マジで!?」
「んじゃそういう事で」
イブキはなんでもいいと言ったから、その意志を尊重してなんでもいいパスワード……【イブキ】に設定してっと。よし、これで次の設定項目に進んだね。
えーと、次の設定項目は中継絡みか。中継の範囲指定は基本的に普通の模擬戦と一緒みたいだけど、特定の不動種に限定という項目があるね。これは既に桜花さんに限定する事は決まっているから、その設定を選んで……フレンド登録をしている今ログイン中の不動種の人の一覧が出てきた。……てか、不動種のフレンドは少ないなー。
って、フラムも選択出来るの!? え、他の群集もありって意外なんだけど……公開範囲に群集の設定とは別項目だし、赤の群集には許可しない設定にしてもフラムが地味に選択出来るぞ。
うーん、もしかしてこれは不具合か? ふむ、これは晩飯を食べる為にログアウトした際にいったんに確認をとっておこう。とりあえずフラムからはチェックを外して、中継は桜花さんのみに設定っと。
他のこの画面での設定項目は、普通の模擬戦にもあった外部音声が聞こえるかどうかの設定だね。あれ、代表者の音声のみ聞こえるという設定がある。あ、これは代表者が任意で声をかけられるように設定が出来るようになってるのか。
「えーと、なんか代表者の俺の声だけ、俺の任意のタイミングで聞こえるように出来るっぽいけどこれはどうする?」
「それは円滑に進行させる為のものだろうな。任意なら不都合はないし、オンでいいか?」
「……あぁ、問題ない」
「色々設定が多いんだなー。あ、もちろん俺も良いぜ!」
「僕も大丈夫です!」
「ほいよっと。それじゃこれはオンにしとく」
ま、今回の小規模なトーナメント戦だとあんまり必要はなさそうだけど、灰のサファリ同盟とかが行う大規模なものでは重要な機能かもしれないね。
さて、意外と設定項目が多いからサクサクやっていこう。えーと、次は参加メンバーの不在時の設定か。ふむふむ、これは対戦の順番が来ても本人が居なかった際の設定みたいだね。順番を飛ばして後回しにするか、不戦勝か不戦敗の処理にするかの二択になってるな。
あ、注意書きがある。えーと、後回しを選択していても同じ階層の最終戦の場合は不戦勝か不戦敗の処理になるのか。つまり1回戦の最終戦とかだと後回しには出来ない訳か。……まぁ今回は少人数だしどっちでもいいんだけど、不戦勝か不戦敗の処理にしとこ。
おっと、ここまでで次の画面に変わったね。えーと、今度は対戦エリアの天候やマップとか、アイテムの使用とかの設定か。これはみんなに聞いておくべきだな。
お、地味に対戦エリアに高原、雪山、砂漠、岩山、湖、湿地帯とかが増えてる。海エリアも遠浅、深海、海流とかいくつかあるね。色々とエリアが増えてるし、陸と海で別々にランダム設定が出来るようになってるな。
「えーと、次の設定項目は対戦エリアなんだけど、これはどうする? 色々マップは増えてるし、ランダムでも海と陸で別々選べるようになってるっぽいけど。あ、ちなみにこの設定、トーナメント戦の全てで共通みたいだ」
「俺はどこでもいいぜ!」
「……なら、海エリアのランダムにしてもらおうか」
「ちょ!? それはヤドカリの十六夜さんだけが有利じゃね!?」
「……だったら、何も考えずにどこでもいいと即答するな」
「十六夜さんの言う通りですよ、イブキさん! 選択を放棄したのに、後から文句を言うのも無しです!」
「うぐっ!?」
「……はぁ、今のはイブキが悪いぞ。……言われて自覚はあるだろう?」
「……うっす。陸のランダムにしてもらっていい?」
「イブキは陸のランダムを希望だな。ベスタ、十六夜さん、フーリエさんは?」
「俺も陸のランダムに一票だ」
「……俺も陸のランダムで構わん」
「僕もそれで構いません!」
「ほいよっと」
もっと意見が分かれるかと思ったけど、マップについてはあっさりと決まったね。まぁこれだけマップ数が増えた上に、海と陸のランダムも分けられているのならランダムで決めるのもありかもなー。うん、実際にどのエリアが選ばれるのかが楽しみだ。
「それじゃ次。アイテムの使用と天候のランダム設定はどうする?」
「アイテムの使用は無しだよな! 天候がランダムってのも面白そうだ!」
「……ここは俺もイブキと同意だ」
「僕は天候は固定の方が良いけど、多数決になるならそれでも構いません! あ、アイテムは無しで良いです!」
「今回はイブキと十六夜が同じ意見で、フーリエが天候は固定を希望か。……フーリエ、悪いが俺も天候のランダムを体験してみたいから、ランダムを希望させてもらう」
「……はい! 無理を言って参加させてもらっているし、それで構いません!」
「ほいよっと。あ、ベスタ、アイテムの方は?」
「……そっちは言い忘れていたな。アイテムの使用は無しでいい」
「了解っと」
それじゃアイテムの使用は不可で、天候はランダムだな。昼か夜かは指定は出来ないから、そこもランダムになる訳だ。
これってアイテムが使用不可だと、ランダムで決まったマップによっては結構悲惨な事になりそうだよね。特に砂漠とか雪山だとエリアの特徴があるもんな。まぁ条件自体はみんな同じだし、種族として適応出来ていないエリアになったら運が無かったってとこだね。
さて、ここの設定項目は完了っと。えーと次は……あ、設定自体はここまでで最終決定みたいだね。ふむふむ、トーナメント戦の組み合わせとか、実際にトーナメント戦への参加募集はここで決定して開催になってからって説明が出ているね。
決定してしまえば、後の管理は聞いていた通りにステータス画面に追加されるトーナメント戦の管理画面から管理は可能になるんだな。でも、今のここで決めた設定は後からでは変更不能か。とにかくこれで確定っと!
<共同体『グリーズ・リベルテ』がトーナメント戦を開催しました>
よし、これでトーナメント戦が開催になった事のアナウンスが出てきたね。うん、ステータス画面にも専用の画面も追加されたっぽい。詳しくは後で見るとして……。
「これで開催になったはずだから、みんなはパスワードを入力して参加してくれ」
「おう!」
「了解だ」
「……あぁ」
「はい! ……少し緊張してきました」
さて、とりあえずこれで俺が設定すべきとこは終了だ。それじゃみんなが参加してきたら、実際にトーナメント戦をやっていこう!
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