第24章 タッグ戦の下準備

第764話 トーナメント戦のテスト実装


 今日の授業も問題なく終わり、これから家に帰るところである。えーと、今日は母さんから特に何も買い物を頼むメッセージは届いていないし、そのまま帰って問題はなさそうだね。


「あっ、やっべ!?」

「……なんだよ、慎也?」

「……2ヶ月目の基本料金、手持ちが微妙に足らね!? くそ、昨日の自転車の修理料金がー!?」

「……あー、うん、ドンマイ」


 そういや先月末にサービススタートで、今は6月の下旬になってきたからそろそろ初回の月額料金……正確には30日分のプレイチケットで3000円だな。ぎりぎりで慌てるのも面倒だし、次を買っておいた方がいいか。


「圭吾、1000円で良いから貸してくれ!」

「金の貸し借りはお断りだ。てか、自転車の修理ってあれくらいならそんな高くは無かっただろ」

「ぎりぎりしか残ってなかったんだよ……」

「それは知るか! まだ日数はあるんだし、土日にでも短期バイトでも行ってこい!」

「くっ、薄情な奴め!」

「……よし、水月さんに今の一連の発言は伝えとく」

「それだけはやめてくれー!?」


 なんか猛烈に鬱陶しいけど、そもそも慎也って次の月額料金を水月さんから金を貰ってなかったっけ? 突発的に自転車の修理に金がかかったとはいえ、無駄遣いもしてた気がするからここは自業自得だな。って事で、慎也は放置して帰ろうっと。





 そうして慎也を放置して家まで帰ってきた。まぁ今日までという訳じゃないし、土日もあるからどうにかなるだろ。……別に一緒に固定PTでやってる訳じゃないからどうにもならなくても知らないけど、突発的な問題は発生してたんだから、条件付きでなら水月さん辺りがなんとかしてくれそうな気はする。

 まぁ慎也の事は別に良いとして……さっきのあの状況では課金しにくかったけど、家に帰って来たんだし今のうちにやっておこう。


 えーと、携帯端末から公式サイトにアクセスして、ショップでプレイチケットを選択して、これで電子マネーで決済をすればいい。よし、決済完了! これで30日分のプレイ可能日数が追加っと。……ん? あ、継続プレイのボーナスとして転移の実が5個貰えるのか。ふむふむ、これは地味にありがたい。


 それにしてももっとやってたような気もするんだけど、実際はまだ1ヶ月経ってなかったんだな。……7月になったらテストがあるから、その辺は少し勿体無い気もするけど仕方ないか。その分、夏休みにログイン制限に引っかからない上限までやればいいや。



 さて、とりあえず今日は暑かった……というか、今も普通に暑いから冷房を入れてから続きをやっていきますか。熱中症になりかけて強制ログアウトとかそんな状況にはなりたくないからね。……水分もしっかり飲んでおこうっと。



 ◇ ◇ ◇



 そうして今日もやってきました、いつものいったんのいるログイン場面! 今回は内容の予想は付くけど、いったんの胴体部分を見てみよう。えーと『定期メンテナンスは無事終了しました。模擬戦のテスト実装の内容が追加されていますので、いったんか公式サイトから詳細をご確認下さい』か。大体予想通りの内容だったね。


「いったん、模擬戦の追加実装の説明をよろしく」

「はいはい〜。既に告知はしていたけど、共同体の主催によるトーナメント戦の実装と、模擬戦のマップと天候の追加だね〜。基本的に告知していた通りでヘルプにも記載は追加してるけど、詳細な説明は必要かな〜?」

「あー、特に新しい情報ではないのか」

「まぁそうなるね〜。それで詳細はどうする〜?」


 ふむ、ほぼ前情報通りの内容で、ヘルプにも載っているなら詳細を聞くのはどうしよう? 模擬戦で選べるマップが増えるのや、天候をランダム設定が出来るようになっているのは今聞いてもあんまり意味はないか。でもトーナメントの方は詳細が分からなかったから聞いておいた方がいいかもね。


「とりあえずトーナメント戦の仕様について教えてくれない?」

「はいはい〜。トーナメント戦は共同体のリーダーか、リーダー不在時にはメンバーの過半数の賛成で開催が可能になっているよ〜。注意点としては共同体の人数によって、開催出来る規模が変わって来ることだね〜」

「ん? 人数によって規模が変わる?」

「うん、そうなるね〜。トーナメント戦の参加人数は、共同体の所属メンバーの人数までが上限に制限されます〜」

「あー、そういう感じか」


 所属メンバーの人数までって事は、仮に俺らのグリーズ・リベルテがトーナメント戦を開催したら所属メンバーが5人だから、参加人数が5人までのトーナメント戦を開催する事が出来るんだな。……流石に5人でのトーナメントは少ない気もするけど、小規模な共同体だとそんなもんか。

 トーナメント戦を管理する側の人数の問題があるから、共同体の規模によって扱える人数に制限があるって事なのだろう。まぁよっぽど大規模な事をしない限りは、そこまで無茶苦茶な規模にはならないだろうけどね。


「……ん? そういやトーナメント戦の場合って、会場はどこになるんだ?」

「それはトーナメント戦の開催設定をした群集拠点種になるね〜。一応トーナメント用の枠はかなり多めに用意しているけど、無制限ではないから混雑時はトーナメント戦の新規開催が出来ない場合もあるのはご了承下さい〜」

「あー、トーナメント戦の開催そのものを順番待ちって訳にもいかないのか」

「うん、そういう事だね〜。それと共同体の連盟機能を使っている場合は、連盟になってる共同体も含めて同一の共同体として扱うか、個別の共同体として扱うかは選べるからね〜」

「……なるほど」


 確か灰のサファリ同盟は森林深部本部が本体の共同体で、他のエリアの支部とか専門の役割のある部門は別の共同体にして連盟機能で纏めてたはずだもんな。その辺を1つの共同体の所属メンバーの人数としてカウントする事も、完全に別の共同体として扱う事も出来るんだな。

 ふむ、灰のサファリ同盟の所属人数は知らないけど連盟機能を使って同一の共同体として人数をカウントさせれば凄い大規模なトーナメント戦は開催出来そうだな。でもそうなると規模がデカくなり過ぎない……?


「なぁ、いったん。トーナメント戦への参加人数が多くなり過ぎた場合ってどうなんの? ブロック分けとかは可能なのか?」

「今のところ、ブロック分けは機能にはないね〜。その辺りは使用状況を見ながら調整して行く予定です〜」

「あー、まぁまだテスト実装だもんな」

「そういう事になるね〜。なので、実際に使ってみて不具合や、不便だと思う所や、その他の要望があれば僕までよろしくね〜」

「ほいよっと」


 ま、現時点ではテスト実装の機能になる訳だから、多少の不備や不具合があってもおかしくはないか。というか、その辺を調整する為のテスト実装だろう。……まぁ模擬戦自体もテスト実装の直後は結構不具合はあったようだしね。


「そして重要なのはここから〜! トーナメント戦には賞品が設定する事が可能なのさ〜」

「あー、まぁそりゃ確かに必要だよな」


 勝ち抜いていくトーナメント戦で、その結果に対して何もないというのも味気ないしね。まぁ賞品がなくても腕試しとして開催される事もありそうだけど、共同体が開催するとなればやっぱりそういうのも欲しいよな。


「ちなみに設定出来る賞品は?」

「えーと、いくつかに種類が分かれるね〜。単純に通常の消費アイテムを賞品にする場合と、参加費として情報ポイントを徴収して勝ち抜いた人が集まった情報ポイントの総取りが出来る場合と、その集めた情報ポイントを勝ち抜いた人が特定のアイテムと交換が出来る場合だね〜」

「……マジで?」


 え、ちょっと待って。ここで情報ポイントを使う事は全然想定していなかったんだけど、勝ち抜いた人が情報ポイントを総取りとかヤバくない? ……これ、八百長で意図的に誰かに情報ポイントを固めるとか出来そうな気もするんだけど……。

 情報ポイントで特定のアイテムとの交換ってのも気になるけど、不正利用の可能性の方が気になるぞ。


「いったん、それって八百長とかは大丈夫なのか……?」

「それは危惧している要素ではあるんだけど、とりあえずは試してみようって感じだね〜。そういう八百長が多いようであれば、何かしらの制限をかけるか、場合によっては賞品設定の機能自体が削除になるかもしれないよ〜」

「一応その辺は考慮済みって事か」

「そういう事だね〜」


 俺でもパッと思いついた問題点ではあるから、なんか異常に変な事すら想定して条件を組み込んでいるここの運営が気付かない筈もないか。まぁ悪用しなければ面白い賞品ではあるのは間違いない。


「ところでその情報ポイントで交換出来る特定のアイテムってのはどんなのがある?」

「えっと、今の段階なら一番良いので『瘴気石+20』とか『特性付与の水』とか『属性付与の水』とか『空白の称号』とか『スキル強化の種』だね〜」

「滅茶苦茶、賞品が豪華じゃん!?」


 え、これまでイベントでしか手に入らなかったアイテムや、まだ存在を聞いていない+20の瘴気石とか、豪華過ぎだよね!? ……これ、普通に参加したくなってきたかも。


「あ、ちなみに今のはかなりの情報ポイントが必要だからね〜。進化の輝石のセットとか、各種アイテムの詰め合わせとか、お手軽なのもあるよ〜」

「……まぁそりゃそうか。ちなみに参加費として必要な情報ポイントっていくら?」

「それは可変式だから、開催する共同体が設定する内容だね〜」

「……なるほどね」


 そうなると、参加に大量の情報ポイントが必要だけど比較的少人数で行えるトーナメント戦もあれば、少量の情報ポイントでも参加出来る大規模なトーナメント戦もあり得るんだな。

 うん、これは八百長をしてる奴は排除しないと、かなり良い報酬を手に入れる手段が失われてしまう。あー、この豪華な報酬は八百長をしようとするプレイヤーを他のプレイヤーが抑止するという狙いもありそうだね。


「そういや今の段階って言ってたけど、場合によっては報酬の種類も増える?」

「うん、八百長とかの問題にならなければその予定だよ〜」

「……なるほどね」


 これは何が何でも八百長をするプレイヤーの排除は考えなければならないかもしれないね。そうでなければ折角の豪華報酬が台無しになってしまう。

 とはいえ、トーナメント戦だから賞品を得られるのは勝ち抜いた人のみか。……ふむ、八百長は無しだとしても検証型のプレイヤーのガチ勝負で誰が賞品を得ても恨みっこなしでやるのはありかもしれない。

 自分自身が手に入れられなくても、検証に使えるもんな。特に『スキル強化の種』は重要だ! それと地味に昨日の『烏合の衆の足掻き』の称号を消すのに使える『空白の称号』!

 

「あと、トーナメント戦でもマップや天候のランダム設定は有効に出来るからね〜。ただし、トーナメント戦では全てが統一した設定にはなるけど、普通の模擬戦と設定項目は同じだよ〜。不動種での中継も基本的に仕様は同じだね〜」

「あ、そうなんだ」


 という事は、外部音声だけはオフにしておかないととんでもない事になりそうな気がする。でもまぁ、トーナメント形式になるだけで1戦ずつはこれまでの模擬戦と同じなのはありがたいかも。あ、でも新たに選べるマップと天候のランダム設定が追加されているからそこはちょっと違うか。


「とりあえずトーナメント戦の概要はそんなところだね〜。何か質問はあるかな〜?」

「んー、特には……あ、いや、これは聞いておいた方がいいか。トーナメント戦に参加するにはどうしたらいいんだ?」

「あ、それは群集拠点種で模擬戦の申し込みの所に参加者受付中のトーナメント戦が表示されるから、そこから参加してくれれば大丈夫だよ〜。ただし、開催をした共同体が何人まで参加できるかの設定をする事になるから、その人数になるまでの先着だね〜。参加登録が出来たら参加したトーナメント戦の対戦表が見れるようになるよ〜」

「なるほどね。ちなみに参加の取り止めとか、途中でログアウトしたりした場合は?」

「その場合は参加受付が終わっていて自身の対戦のタイミングだったら不戦敗になって、受付が終わってなければ枠が空くね〜。自分の順番じゃない時ならログアウトしてるのは大丈夫だよ〜」


 ふむふむ、そういう仕様なら急に参加出来なくなってもそれほど迷惑がかかるという事はなさそうだね。……わざと不戦敗ばっかにしての八百長ってのもあるかもしれないけど、まぁそうなった時は運営が何かしらの対処はするんだろう。


「よし、とりあえずは大体は把握した!」

「あ、ちょっとまだ説明があるからね〜」

「あ、まだあるのか。どんな内容?」

「えっと、テスト実装への参加の報酬だね〜」

「……そういや掲示板で見たな。えっと、参加報酬が転移の実が1個で、不具合報告で5個だっけ?」

「うん、そうなるよ〜。それに追加でトーナメントを開催した共同体には素材アイテムの詰め合わせが選べるからね〜」

「そういやそうだったっけ。……それってどうやって選ぶんだ?」

「えっと、共同体への報酬になるから共同体の管理画面から受け取れるよ〜。ただし、開催してすぐに渡すんじゃなくて、共同体のメンバーでの多数決で決定になるよ〜。ちなみに1日以上経ってメンバーの過半数以上の票が集まっていればリーダーの方で確定にして受け取れるようになります〜」

「あー、そういう感じか」


 共同体への報酬という形になるから、リーダーのみで開催の報酬は決められないんだな。まぁ俺らは開催する予定もないし、もし何かの形でするとしても普通に話し合いで問題ない部分か。どちらかというと大規模な共同体用の調整だね。


「よし、後は実際にやってみて確かめてみるか」

「はいはい〜。それじゃスクショの承諾をお願いします〜」

「あー、そういやそうだった」


 昨日はスクショの確認をせずにログアウトをしたから、今のうちにチェックをしていかないとね。とりあえずいったんからスクショの一覧を受け取って、内容を確認していこうっと。えーと、来てるのは灰の群集の人からばっかだね。

 ふむふむ、アンモナイトとの戦闘の様子を撮ったの結構あるけど、見事にアンモナイトが映らないように工夫しているのばっかだね。……まぁあの場でアンモナイトのスクショを撮られていたら危険な可能性も高いからその辺は配慮してくれたんだな。

 後は作戦が終わってからみんなで打ち上げをしている時のスクショだね。今回は赤の群集や青の群集からは来ていないから、全部承諾で問題ないか。


「いったん、今回は全部承諾で。まぁ灰の群集からのみだけど」

「まぁ実質いつもと同じだね〜。それじゃそう処理しておきます〜」

「よろしくなー」

「お任せください〜。あ、これは今日のログインボーナスね〜」

「サンキュー! それじゃコケでログインをよろしく」

「はいはい〜。それじゃ今日も楽しんでいってね〜」

「おうよ!」


 そんな風にいったんから見送られながらゲームの中へと移動していく。ちょっとトーナメント戦の事を聞くのに時間がかかったけど、とりあえず昨日聞き忘れた情報の確認からやっていこうじゃないか。

 まずは称号『横取りされたモノ』の取得がどうなったのかと、アンモナイトの使った白く光るスキルについての推測についての確認からだな。さーて、やっていくぞー!

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