第758話 全滅した後に
とりあえず思いっきりアンモナイトに殺されたので、リスポーン位置はアルにして……って、選択出来ないな……? あ、そういやアルは木のみの共生進化の状態になってるから、もしかすると――
「あー、ケイ、こっちだ、こっち」
「ん?」
なんだかPT会話ではない感じの声がアルの死んだ方から聞こえて……あ、半分透けた灰色の球みたいなのがあって、そこからアルの声が聞こえている。
その半透明な灰色の球にアルマースって名前も表示されているから、これはリスポーン前の精神生命体か。その横には同じ見た目のライルさんもいる。そういや今まで死んだらすぐにリスポーンしてたからじっくり見た事は無かったっけ。へー、リスポーン前ってこうなってるのか。
「アル、ライルさん、リスポーンしてないのか?」
「するにはするが、木でこのままランダムリスポーンだとどこに出てもほぼ間違いなく沈むから、先に合流場所を話しとこうと思ってな」
「そういう事ですね。海エリアで空中にリスポーンしてもらえるとは思えませんし……」
「あ、そういやそうか」
このまま海水に弱い木のアルとライルさんが単純にリスポーンすると、すぐにアイテムで適応させないと結構悲惨な事になる。
えーと、だとするとどうするのが良いんだろ? この状態からログアウトが出来れば……って、そういや普通にこの死亡状態からでもログアウトは選択出来るのか。ログアウトした場合は、次にログインした時にこのマップでランダムリスポーンで固定になってるな。
「って事は、これからログアウトして共生進化のし直し?」
「ま、とりあえず俺はそうするつもりだ。だからサヤ達が死んだらそれを伝えといてくれ」
「ほいよっと。……って、あれ? それって普通に今伝えればいいんじゃ……?」
「死んでる時には死んでる相手同士でしか会話は出来ないようになってますよ。範囲は同じ連結PTまでですね」
「なるほど、そういう仕様か。……地味に知らなかった」
アルと同様に半透明な灰色の球になっているライルさんが死亡時の仕様について教えてくれた。ふむふむ、中々こんな風に死ぬ事は無かったし、今までみんなが全滅した時はすぐにリスポーンをしてたからこれは気付いてなかったね。
えーと、ちなみにサヤ達は……あー、みんなもう打つ手無しって感じで逃げ回ってるな。あ、急に動きが遅くなった瞬間に紅焔さんとカステラさんがアースバレットで撃ち抜かれて死んだ。
「だー! 自己強化が切れた瞬間に死んだ!」
「……僕は紅焔の巻き添えだったじゃないか。あれ、ライル? それにケイさん達もまだリスポーンしてなかったんだ?」
「私もアルマースさんもこのままリスポーンするのは少し都合が悪くてですね」
「……そういえばそうだったね。それなら僕らも海エリアでリスポーンはあんまり良くはないから、どこかに帰還の――」
「あれー!? みんながまだいるのさー!?」
「あ、ホントかな」
「サヤ、ハーレさん、お疲れさん。とりあえずこの後どうするかを相談中だから、カステラさん、続きをどうぞ」
「あ、邪魔しちゃったの!? カステラさん、ごめんなさい!」
「いや、大丈夫だよ、ハーレさん。それで話を元に戻すけど、僕らは帰還の――」
「ぐぬぬ、やはり成熟体相手ではここまでが限界のようだな、疾風の!」
「ま、仕方ないだろ、迅雷の! どうも徘徊してるのより強そうだしな」
「…………」
あ、カステラさんが仕切り直して話そうとしたタイミングで風雷コンビも殺られてきたか。うーん、かなりタイミングが悪いけど、カステラさんが悪い訳でも風雷コンビが悪い訳でもないからなんとも言えない雰囲気になってしまった。
死んで精神生命体のみの状態になったら、近くに集まってくるんだね。というか、名前を見ないと全員の見た目が一緒だから誰が誰だか分からないな。あ、ヨッシさっも殺られたか。
「え、あれ? 誰もまだリスポーンしてないの? ……もしかして何か問題でもあった?」
「あー、ちょっと……な?」
「……全員に関係しそうではあるから、もう全員死ぬまで続きは言わない……」
「……本当に何があったの?」
「ヨッシ、こっち、こっち!」
「……ハーレ、この状態では移動は出来ないからね?」
「え!? あ、本当なのさー!?」
ほほう、この状態では移動は不可能なんだ? あ、ホントに全然動けないし、リスポーン場所の指定とログアウトの項目しか選べないようになってる。
ん? そんな事をしてる間になんかカウントダウンが始まったけど……あ、10分以内に選ばなきゃ強制的にランダムリスポーンで確定なんだ。なるほど、この状況はずっとは続かないんだな。ま、そりゃ当たり前といえば当たり前か。
さてと、カステラさんが半分拗ねたような感じで言うのを止めてしまったけど、内容としては帰還の実でどこかに戻ろうって話なんだろうね。
他にアンモナイトと戦っていて生き残っているのは、ソラさんと辛子さんと刹那さんだな。誰が最後まで生き残……あ、そんな事を考えてたら一気にまとめて砂の散弾の魔法で仕留められたか。
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『烏合の衆の足掻き』を取得しました>
<ボーナス経験値を獲得しました>
<ケイがLv22に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『烏合の衆の足掻き』を取得しました>
<ボーナス経験値を獲得しました>
<ケイ2ndがLv22に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
ん? んん? え、このタイミングで、死亡状態での称号取得とかあるの!? しかもこれ、かなりの量の経験値が手に入ってるんだけど!?
「ほほう、これは面白い称号ではないか。なぁ、疾風の!」
「こりゃすげぇ経験値量だな。なぁ、迅雷の!」
「「ふっはっはっはっはっ!」」
えーと、とりあえず変にテンションが上がっている風雷コンビも同じ称号を手に入れたというのは間違いなさそうだな。って事は、連結PTに入っているメンバーが全員取得か?
「逃げ切れずに死んだと思ったら、何だか妙な称号が手に入ったみたいだね」
「こりゃどういう称号だ? てか、全員リスポーンせずにいるのかよ!」
「全員勢揃いであるな!」
「ソラさん、辛子さん、刹那さん、とりあえずお疲れさん」
「ケイ殿もお疲れ様なのである! そして予想通り全滅ではあるが、皆もお疲れ様なのである!」
とりあえずこれでアンモナイトによって俺らの連結PTは全滅になったけど、まぁこれも一つの決着の形だね。よし、死んだ直後にも思ったけど、成熟体に進化したらリベンジで仕留めに来るから覚悟してろ。
「あ、アンモナイトが去って行くよー!?」
「今度遭遇した時は、必ず倒すかな!」
「あはは、それも良いね。それじゃアンモナイトへのリベンジを目標にして頑張る?」
「ほう、それもありだな。で、地味に負けず嫌いなケイとしてはどうなんだ?」
「……それ、俺に限った話じゃない気もするけど……まぁ、絶対にぶっ倒す!」
「今度はアンモナイトへリベンジなのさー!」
「ま、俺が言っといてなんだけど、ケイだけに限った話じゃねぇか」
おー、みんなとしてもアンモナイトへのリベンジに燃えているね。このリベンジへの意気込みはあれだね、ヒノノコ戦で全滅した時と同じような感じだ。……今回はヒノノコ相手の時とは違って負けるのが前提ではあったけど、それでも倒すべき目標として据えるには良い相手だろう。
「その時は拙者も誘って欲しいのである!」
「おし、刹那さんもリベンジに参加だな。紅焔さん達と風雷コンビはどうする?」
「我らは2人でリベンジを果たそうではないか。なぁ、疾風の!」
「俺らが格下だからこの人数だっただけだしな。なぁ、迅雷の!」
「あー、確かに」
アンモナイトの方が進化階位が上という事で全然ダメージが通らなかったという側面もあるし、同じ進化階位の成熟体になればこのメンバーは過剰戦力かもしれないね。
でもまぁ、今回は作戦的にアンモナイトにとっては不利な状況にしてたから本領は未知数なままではあるか。ぶっちゃけ、イカを倒させた後に海中へ戻ってからの攻撃パターンは相当ヤバかった……というか、実際にあっという間に壊滅させられたしね。
「風雷コンビの意見に近い面もあるけど、俺らはアンモナイトへのリベンジは遠慮しとく。みんな、それで良いよな?」
「えぇ、構いませんよ。元々私達としては決して相性の良い相手ではありませんしね」
「そうだね。今回僕らは空中戦力として呼ばれた訳だけど、海中の敵に拘る気はないよ」
「僕もカステラの意見に同意。そもそも僕はそこまで勝ち負けには拘らないしね」
「俺は……まぁリベンジしたい気持ちもない訳じゃないが、ここはカステラやソラに合わせとくぜ」
「了解っと。それじゃリベンジをする時に誘うのは刹那さんだけだな」
「頼むであるよ、ケイ殿!」
「……忘れなかったらね?」
「本当に頼むであるよ、ケイ殿!?」
「今のは冗談だって!? ちゃんとその時は誘うから!」
「まぁケイの場合はど忘れがあるから、俺らの方でもしっかり覚えとこうぜ」
「「「おー!」」」
「ちょっと待った! アル達だってど忘れしてる時はあるよな!?」
「「「「………………」」」」
あ、みんなの見た目は半透明な灰色の球だけど、思いっきり露骨に視線を逸らしているような感じがする!? まぁこの辺はいつもの事だし、盛大にど忘れする事があるのも事実だけどさ……。
成熟体への進化を果たした後にアンモナイトへのリベンジ戦をする時は、絶対に刹那さんを誘う事! これはしっかり覚えておかないとね。
「さて、気分を切り替えて、さっきの称号の話をしようか。念の為に聞くけど、称号『烏合の衆の足掻き』が取得にならなかった人はいる?」
ふむ、誰からも返答はなしって事は全員が取得した称号みたいだね。まぁ連結PTの全員が全滅した段階で手に入った称号だし、連結PTのメンバー全員に手に入るという認識で良さそうだな。
「この『烏合の衆の足掻き』って称号の条件は、烏合の衆って言うくらいだし最低人数が決まっているのかな?」
「……それは確かにありそうですね。私達で今は……13人ですか」
「はい! 区切りが悪いので、最低は2PT分の12人だと推測してみます!」
「ほほう、確かにそれはありそうではあるな! どう思う、疾風の?」
「要検証だとは思うが、そんな気はするぜ、疾風の!」
ふむふむ、確かにサヤが着目した烏合の衆の部分を考えてみれば、ハーレさんの意見の2PT以上での連結で12人以上というのはありえそうな話だね。そして、『足掻き』という事から考えるなら……。
「仮に条件の1つを2PT以上の12人以上として、足掻きの部分を考えると格上の相手……今回の場合は成熟体のアンモナイトへと挑んで全滅するのが条件か? あ、違うな。……挑むだけじゃなく、一定以上の何かをした上で全滅する事?」
「そういう事なら、考えられそうなのは耐えきった時間じゃないかい?」
「ソラ、それもあるとは思うが、攻撃回数って可能性もあるんじゃねぇか?」
「あ、確かに紅焔の意見も一理あるね」
「そういう事なら、ヘイト対象を切り替えた回数って可能性もありそうだな」
「……それもありそうですね、アルマースさん」
うーん、『烏合の衆』の方はある程度の条件は絞れそうだけど、『足掻き』の方が関係しそうな要素が結構あってこの場で条件を絞り切るのは難しそうだな。
少なくとも全滅が条件なのは称号の取得タイミング的に間違いはないはず。……でも、これ以上は再現の検証を行ってみるしかないだろうね。今回の称号ではスキルの取得じゃなくて、かなり大量の経験値が報酬だったから結構難易度は高そうな気はするけど……って、あれ? スキルの取得がない称号って事は……。
「……ちょっと思ったんだけど、この称号『烏合の衆の足掻き』ってスキルの獲得じゃないから、空白の称号が使えるんじゃないか……?」
「あっ、確かにそうかな!」
「おー! 確かに空白の称号を使えば、何回でも取り直せそうなのです!」
「あー、その可能性もあるんだろうが、空白の称号の入手手段も考えろよ?」
「……どちらかというとそっちが問題か」
アルの言うように、空白の称号は今のところ何個も気軽に手に入れられるアイテムじゃないんだもんな。そういう意味で考え直してみると、かなり大量な経験値が手に入るとはいえ割に合うかは微妙なとこか。
もし今後、空白の称号が手に入りやすくなればその時は有効活用が出来る可能性は高そうではあるけどね。これ、ベスタみたいに適正Lvの敵が少なくなってる人には凄い役立ちそうだし。
「とりあえず称号については今はこれくらいにして、そろそろリスポーンしようよ。ほら、みんな海エリアでリスポーンすると不都合もあるから、帰還の実で森林深部へ戻ろう。その後、適応させてからまた海エリアに来ればいいよ」
「やっと言えましたね、カステラ」
「……ようやく言えたよ、ライル」
「おっしゃ、それじゃ俺らは森林深部まで戻るか!」
「それもそうだな、紅焔」
「我らは草原へ戻るぞ、疾風の!」
「おうよ、迅雷の!」
「僕らや風雷コンビはそれで良いとして、ケイさん達はそうはいかないんじゃないかい?」
おっと、ソラさんがそんな事を言い出した。まぁ俺は別にそのままでも問題はないんだけど、俺以外はそうはいかないんだよな。みんな共生進化が解除になってる訳だしね。
「ケイはそのまま戻ってくれて構わないかな。私達は一度ログアウトして共生進化に戻してから、帰還の実で始まりの海原に戻るよ」
「ま、そうなるな」
「共生進化をし直すには、同じエリアにいる時が都合が良いのです!」
「別々に帰還してから共生進化をし直す方が面倒だもんね」
「だよなー。んじゃ俺は先に戻って待ってるよ。えーと、とりあえず合流するのは始まりの海原で問題ない?」
「問題なしなのです!」
「ま、それが無難だろうな」
「うん、分かったかな」
「共生進化に戻したら、すぐに向かうからね」
さて、これでみんながリスポーンをして合流する場所が決まったね。さっきの称号については後でまとめと情報共有板に上げておくとして、とりあえず今日の予定は完了!
あ、そうじゃない、まだ予定は残っているよ。えーと、現在時刻は10時くらいだから、思ったよりは時間が残っているね。
「拙者も始まりの海原に戻るのであるよ。レナ殿とベスタ殿に頼んだ海鮮バーベキューの用意もあるのである!」
「じゅるり……! 祝勝会の海鮮バーベキューなのさー!」
そんなハーレさんのハイテンションな様子になりながら、そこからみんなはそれぞれに合った手段でリスポーンをしていった。
さてと、俺は始まり海原への帰還の実をリスポーン位置に指定してリスポーンをしていこうっと。
【ステータス】
名前:ケイ
種族:同調強魔ゴケ
所属:灰の群集
レベル 21 → 22
進化階位:未成体・同調強魔種
属性:水、土
特性:複合適応、同調、魔力強化
群体数 0/7050 → 0/7200
魔力値 195/216 → 195/218
行動値 13/78 → 13/79
攻撃 80 → 81
防御 129 → 132
俊敏 95 → 97
知識 194 → 199
器用 215 → 221
魔力 283 → 291
名前:ケイ2nd
種族:同調打撃ロブスター
所属:灰の群集
レベル 21 → 22
進化階位:未成体・同調打撃種
属性:なし
特性:打撃、斬撃、堅牢、同調
HP 0/8250 → 0/8450
魔力値 101/101 → 101/102
行動値 68/68 → 68/69
攻撃 282 → 290
防御 258 → 265
俊敏 214 → 220
知識 75 → 76
器用 90 → 92
魔力 47 → 48
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