第751話 役割分担 前編
さて、ベスタの指定した場所へとやってきて、結構なメンバーが揃っている状態になっている。てか、ベスタの呼びかけた人数って明らかに連結PTの人数を超えているよね!? まぁ元々今回の討伐作戦は人数の制限は気にしてないから問題はないか。
あ、よく見たら陸エリアのメンバーで他にいる1PTの中の1人は、ハーレさんと同じ投擲メインのリスのアリスさんか? 他の人は本当に知らない人だけど、なんだか小型な種族が多いね。……何かの共通点があって集めたPTかな?
もう1つの海エリアの人を集めたPTもいるけど、カジキの人や、アジの人が2人ずつの4人PT? ふむ、カジキの人は遊泳速度が速いとは聞いたけどアジの人がいる理由がよく分からないし、どういう役割で集まってるんだろ? うーん、ベスタの事だから無意味ではないと思うんだけど、いまいち分からん。
「ベスタさん! 結局、どういう作戦になりますか!?」
「それは説明するが、もう少しだけ待ってくれ。あとは『飛翔連隊』が来ればメンバーは揃うからな」
「了解です!」
ふむふむ、今はまだ紅焔さん達待ちなんだね。まぁ作戦の話をするならベスタが想定しているメンバーが全員揃ってからの方が良いか。それにしても海エリアで風雷コンビも呼んでいるのが地味に気になるところだね。
「ソウとジンベエは俺らと一緒のPTだから、今のうちに用意しとこー!」
「シアンと……セリアもか。ソウ、手綱はしっかり握っておけよ」
「ちょ、ジンベエ!? いつも思うんだけど、それって俺の役目なのか!?」
「いや、ソウくらいしか無理だろ。少なくとも俺はパスだぜ」
「ケンローまで!?」
「……ねぇ、セリア。なんか失礼な事を言われてない?」
「え、私に対してはそうだけど、シアンに対してはこんなもんじゃない?」
「「「どっちもだよ!」」」
「「えー」」
うーん、海エリアの人達と普段は情報共有板で話す事があるくらいで具体的にどういう活動をしているかは知らないんだけど、シアンさんとセリアさんの扱いはなんとなく俺と似たような扱いな気がする……。
というかセリアさんの発言は、どことなく『ビックリ情報箱』というあだ名を俺のみのものにしようとするアル達の行動に似ているような……?
「ケイ、とりあえずもう固定は良いんじゃないかな?」
「ん? あ、そういやしたままだったっけ」
そういや岩で固定をしたまま、元に戻すのを忘れてた。もう今の時点では不要だから、俺の飛行鎧の分だけに戻しておこうっと。……よし、これでいい。
ん? そんな事をしてたら、ちょっと陰ったみたいに暗くなったね。また雲でも出て月が隠れ……いや、これは違うっぽい? あ、大きな岩に乗っている松の木が海中に潜ってきた。この飛んできた松の木はライル2ndってなってるから飛翔連隊のみんなが到着したっぽいね。……ライルさん以外の姿は見えないけど。
「おっしゃ、到着ー!」
「紅焔、まだ出たら駄目なのは分かっているよね?」
「おおっと、そうだった!」
「リーダー、お待たせしました。『飛翔連隊』、到着しました」
「あ、それは俺のセリフだぞ、ライル!?」
「だったら余計な事をしてないで先に言うべきだろ、紅焔」
「辛子に同意だね。紅焔はもう少し落ち着こう」
「うぐぐ!?」
ライルさんの松の木の方から紅焔さん達の声が聞こえてきているから、これは樹洞の中にいるっぽいね。ライルさんの松の木は濃いめの青色になっているし、海への適応はライルさんがして他のみんなは樹洞の中で待機をしてた感じか。
「よし、これで全員揃ったな。それでは今回のイカ討伐戦の最終作戦の説明を開始する」
ベスタが想定していたメンバーが揃ったということで、イカの討伐の最終作戦の説明が開始になった。さてと、俺らがどういう役割をするのかも気になるけど、他の人達にもどんな役割があるのかが気になるところだね。
「さて概要から説明していくぞ。今回の作戦は3班に分かれて行っていく。まずは1つ目の班はイカの追い込み班だ」
「それは俺らだよね!」
「……まぁそうなるが、順番に説明するから慌てるな。シアン達は他の連中が包囲網を構築しているから、その中を通りながらこの地点までイカを追い詰めてくれ」
「って事は、俺らは追い込み漁をすれば良いって訳だな?」
「あぁ、その通りだ、ジンベエ。そして陸エリアから遠距離攻撃が得意なメンバーで1PTに集まってもらっているから、連携して追い詰めていってくれ」
「あ、そっちの小型な陸エリアの人のPTはそういう構成だったんだねー。今回はよろしくー!」
「こちらこそよろしくね!」
そんな風にセリアさんとアリスさんを筆頭に、それぞれの陸エリアの人が海エリアの人の上に分乗していく。なるほど、クジラ、サメ、マグロ、カツオと大型な種族に上に遠距離攻撃が得意な陸エリアのプレイヤーのコンビで牽制してイカを追い詰めていく作戦なんだな。
「さて、次の班だ。これは招き猫がリーダーをしているPTでいくぞ」
「はいはーい、私のとこだねー!」
ん!? ちょっと待って、前に常闇の洞窟での作戦で一緒だった招き猫さんだって!? あ、よく見たらアジの人の名前が招き猫2ndになってるよ。アジでその名前って……いや、キャラ名の付け方によってはそうなるよな……。うん、俺はどの種族でも問題ない普通の名前にしておいてよかった。
まぁそれは良いとして、このPTは移動が速い魚と小魚の混成PTになってるみたいだけど、どういう役割なんだろうか?
「それでベスタさん、私達はどういうコンセプトのメンバー?」
「あぁ、それはこれから説明していく。端的に言えば、アンモナイトを連れてくる囮役だな」
「私達って、囮役なの!?」
「あー、だから群れの特性持ちを集めてたのか」
「移動速度が速い方は、逃亡の補助役ってとこか」
「あ、なるほど、そういう事なんだな!」
どうも反応を見る限りでは招き猫さん達も何故こういうメンバーで集められたのかが良く分かっていなかったようである。
それにしても招き猫さんともう1人のアジの人は群れの特性を持ってるんだな。こういう海のエリアなら、一般生物を支配下に置く群れの特性は使いやすそうではある。そっか、囮という使い方はありなんだなー。
「……まぁ今ので大体察してくれたようだが、この班は小魚で群れを扱って、そこの奥にいるアンモナイトをここまで引っ張り出すのが目的だ。内容が内容だから、無理にとは言わんが……」
「ふっふっふ! いつも死にまくって情報を得てくるザックさんとかもいるんだから、その程度で怯みはしない!」
「そりゃ招き猫の言う通りだな。で、カジキの俺らは基本的に逃げれば良いだけか?」
「群れで引きつけてアンモナイトが岩場から出てきた後はそうなるな。そこから先は……」
「なるほど、残る2PTの出番って訳だな。で、岩場の迷路から引っ張り出すのが群れの一般生物を使うって感じか」
「あぁ、そうだ。奥からアンモナイト引っ張り出してさえしてくれれば、後は押し付けて逃げ切ってくれて構わん」
「おっし、そういう事ならやりますかね!」
「ちょっかい出して、逃げるのみだね!」
思いっきり俺らと紅焔さん達を見てきて、招き猫さんのPTの人達とベスタがそんな会話が繰り広げている。うん、押し付けられるのは俺らの役目になっているようだ。
多分アンモナイトの相手をするんだとは思ってたけど、こうも思いっきり押し付けて逃げていいと言われるとは思ってなかったな。……うん、まぁ最終的に俺らが相手をするのなら間違ってもないんだろうけど……って、あれ? なんでアンモナイトを引っ張り出す段階から俺らじゃないんだ?
「ベスタ、質問いいか?」
「アンモナイトを引っ張り出してくる役目が別の班なのは、アンモナイトがいる場所は複雑な経路でクジラだと通れないからだ。聞きたいのはこれだろう、ケイ?」
「……大正解っと。なるほど、アルじゃ今回は不適格なんだな」
「あぁ、そういう事になる。小型化すれば問題はないが、海上に出してしまうならこの位置まで引っ張り出す方が何かとやりやすいからな」
「あー、確かにそりゃそうだ」
アンモナイトが具体的にどこにいるのかは分からないけど、こういう作戦になるって事はそのアンモナイトがいる場所はイカを誘導するには不適格と判断したんだろうね。……よし、チラッと俺らの役割も言われたような気もするけど、続きを聞いていこうじゃないか。
「2班はそれで問題なさそうだな。……大体の想像は出来ているだろうが、最後の班の役割を説明するぞ。『グリーズ・リベルテ』と『飛翔連隊』の2つの共同体でアンモナイトと空中戦をしてもらう」
「あー、やっぱりか。……具体的にはどうすんの?」
「基本的にはケイとライルの岩の操作、ヨッシの氷塊の操作でアンモナイトを空中に持ち上げてもらう予定だ」
「え、ケイさんは分かるけど私も?」
「今のヨッシならいけるのさー!」
「それは私も思うかな!」
「俺もいけると思うぞ。ヨッシさん、ここ数日で氷塊の操作の精度はかなり上がってるしさ」
「確かにそうだな。……油断してるとケイに勝てないどころか、ヨッシさんに操作スキルの扱いで抜かれちまいそうだしな……」
「そ、そうなの? ……うん、それなら頑張ってやってみる!」
ヨッシさんの操作系スキルの精度は、氷を包丁に見立てて使い始めてから一気に良くなってるからね。……地味にアルが危機感を感じているのは今初めて知ったけど、まぁ実際のところアルに迫る勢いではあるもんな。
それにしても成熟体のアンモナイト相手に、3人体制での応用操作系スキルで捕獲か。ライルさんの操作系スキルの精度はどの程度のものかは分からないけど、ベスタが指名したならおそらくは高水準だろう。……問題はそれが成熟体相手に通用するかどうかだな。
「……流石に3人体制でも成熟体が相手だと厳しいのではないですか?」
「ライルのその心配も考慮の内だ。だからこそ連携が取れて空中戦が出来るメンバーを揃えたからな」
「なるほど、そういう理由ですか」
「……そうなると空中戦が出来る僕らがアンモナイトの注意を引けば良いのかい?」
「あぁ、そうだ。倒す必要はないから、捕獲要員の3人以外はイカを誘導し終わるまで適度に時間を稼いでくれ」
「おし、了解だ! 俺ら『飛翔連隊』はその役割を引き受けた!」
「ま、僕らもやるだけやろうじゃないかい」
「辛子、どっちが長く生き残るか勝負といこうじゃないか!」
「お、言ったな、カステラ! 上等だ、受けて立つ!」
「……まぁお互いに足は引っ張らないようにだけはしてくださいね」
「「それはない!」」
ははっ、何だか高らかに宣言した紅焔さんはスルー気味で、辛子さんとカステラさんが別方向に気合が入ってるなー。樹洞の中にいるから姿は見えないんだけど、紅焔さんは地味にポーズを取ってそうな気はする。……なんとなくだけど。
「紅焔さん達はやる気一杯みたいだな」
「私達も全力でやるのみかな!」
「ま、やるからには失敗する気はねぇぜ」
「ひたすらアンモナイトに嫌がらせをするのさー!」
「……あはは、まぁ内容的にはそうなるんだよね。でも、頑張ろう!」
「おっし、死ぬ可能性大だけど、全力でやるぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
成熟体を相手にする以上、全滅する事は大前提となるからね。それでもこのお祭り騒ぎで大役を任されるというのであれば、それも良いだろう。ただし、作戦を成功させるまでは死ぬ気もないけどね!
「あ、そういやベスタは今回は何をやるんだ?」
「ん? 俺は遊撃だな。状況に応じて、イカの誘導に行くかもしれないし、アンモナイトを引っ張り出すのを手助けもするし、ケイ達の援護にも回る予定だ。風雷コンビ、お前らは俺と一緒に待機してもらう」
「おぉ、我らは待機か。なぁ、疾風の!」
「そうみたいだな、迅雷の!」
「……先に明確に言っておくが、今回のお前らは保険だ。予想外の事態も無いとは言えんからな。万が一、イカの包囲網が崩れた際には電気の昇華魔法で立て直しに行ってもらう」
「ほほう、それは責任重大ではないか! なぁ、疾風の!」
「リーダー、任せてくれ! なぁ、迅雷の!」
「……ただし、指示した事以外はしなくて良いからな」
「「了解だ、リーダー!」」
「……どことなく不安があるが、まぁそうも言ってられないからな」
何だか最後にベスタの一言に不安を感じるけども、風雷コンビには大きな役割があるんだな。もし包囲網が崩れた場合に、海水の中では問答無用で威力や範囲が増幅される雷属性の昇華魔法で立て直す計画とはね。
パッと聞いただけでは無茶な事をしているようにも思えるけど、包囲網で周囲の敵は排除されているだろうし、味方である灰の群集には影響は出ない。そういう意味ではイカにのみ有効で、体勢を立て直すにはうってつけではあるんだな。……やり過ぎて倒してしまうという可能性も排除は出来ないけど、この手の保険は必要だよね。
でも風雷コンビは喧嘩して暴走する事もあるから、ベスタと一緒に待機というのは余計な事をさせないためでもあるのかもね。
「大掛かりではあるけど、無駄は多くねぇか?」
「紅焔の言う事も分かるし、俺もそうは思ってはいるが、成熟体を利用して厄介な進化をしたイカを仕留める為の作戦だからな。……それにここまで大掛かりな事になった以上は一部のプレイヤーだけで片付ける訳にもいかんだろう」
「ベスタさんは盛り上げる事を考えてるのさー!」
「あー、そりゃそうか。悪い、変な事を言ったぜ」
「ただ倒すだけなら無駄があるのは事実だから、気にしなくていい。それにある意味ではケイ達と紅焔達はハズレの役割になるが済まないな」
ふむ、ベスタとしては死ぬのを前提とした役割となる俺らの事は悪いと思っているみたいだね。その辺はゲームなんだし気にしなくていいんだけどなー。
「そこは誰も気にしていないのであるよ! それよりも、拙者の役割はどうなってるのであるか!?」
あ、そういや刹那さんにも何か役割があると聞いた気もするけど、その説明は無かったような……? 多分まだ説明の途中だったんだろうけど、刹那さんの役割も気になるところだね。
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