第699話 様子が見えてきて
さてと何やら妙な喋り方とスキルの発動をする自称忍者志望の刹那さんを無事に助けられた。まぁ変わったプレイヤーもいるもんだけど、スリムさんというネタな人もいるから初めて見る訳でもないね。
それはそうとして刹那さんって確実にプレイヤースキルは高いよな。どう考えても無駄な発言をしながら思考操作でスキルを発動してたしさ。
「さてと、とりあえず刹那さんはこれからどうするんだ?」
「拙者は陸地への適応進化と、他に何か変わった適応進化がないかと探りに来ていただけなので、目的は達成した今は戻るだけである!」
「……他の変わった適応進化?」
「左様! 陸地への適応を済ませ、その後も食べられ続けた結果、硬化するという適応進化となったのだ!」
「へぇ、そういう適応進化もあるのか」
ふむふむ、食べられ続けると毒を持つ適応進化があるとは聞いた覚えがあるけど、硬化する進化もあるんだなー。硬そうなヒトデというイメージは間違ってはなかったんだね。
適応進化もやりだすと奥が深そうだ。……死にまくる必要があるから、そう何度もはやらないけど。
「ともかく此度は急な救援を受けて頂き、感謝の念しかない! お礼を渡したいところではあるが、あいにく1stの方にしかないのである……。拙者、通常は海エリア拠点として活動しているので、代わりと言ってはなんだが、今後何かあれば申し付けて頂きたい」
「あ、刹那さんって海エリアがメインなんだ?」
「左様! 拙者、それなりに海の地形には詳しい故に、海エリアへ来る事があれば最優先で向かおう!」
うーん、まぁ海エリアにもフレンドはいるけど、あっちはあっちで色々やってるだろうからね。第一印象は変な人な刹那さんだけど悪い人ではなさそうだし、海エリアに行く際には案内役を頼むのも良いかもね。
「それじゃ、もし海エリアに行く事があったらお願いするよ」
「承知! 話は変わるのだが、グリーズ・リベルテの方々はどちらへ行く予定なのだ?」
「青の群集の森林エリアに行く予定だけど……」
「なるほど、そうであったか! ……では、この東へ向かっている最中という事か?」
「まぁ、そうなるな」
「では、あと少しで広範平原の東部へと到着ではあるな」
「お、そうなのか?」
「左様、もう目前なのである! ……む? しまった!? 待ち合わせ時間なのであるぞ!?」
「あー、俺らは大丈夫だから、待ち合わせがあるなら行ってあげてくれ」
「……す、すまぬ! では、また会った際にはお礼をさせていただく! それで御免!」
<刹那様がPTから脱退しました>
そうして慌ただしくフレンド登録をしてから刹那さんは転移をしていった。まぁ誰かと待ち合わせをしているのであれば、俺らが無理に足止めするのも悪いしね。
「なんか凄い人だったねー!?」
「でも悪い人ではなさそうだったかな?」
「だなー。あ、勝手に案内役を頼んじゃったけど、問題あったりする……?」
「いや、別に問題ねぇぜ。海エリアに行くからって、シアンさんやソウさん達に案内役を頼めるだろうが、あっちの手が空いてるとも限らんしな」
「そういう意味では、案内役をしてくれる人がいるのはありがたいかもね?」
「まぁ、それもそうだな」
「うー! そんな話をしてたら、海エリアに行きたくなってきたのです!」
そういや何気なく海エリアに行く時の話をしてしまったけど、明確に海エリアに行く予定立ててた訳でもないんだよな。まぁ今日の夕方に海エリアでフィールドボスが行方不明になったという話は少し気になってるけど。
「……今日中に青の群集の森林深部まで行けたら、次は海エリアでも行ってみるか? 2ndを作って以来、殆ど行ってないしさ?」
「たまにはそういうのもありかもな。だが、その前に移動しつつにしようぜ」
「あ、そりゃそうだ」
既に敵を倒し終わっているのに、動きを止めている意味はないもんな。さて、今降りているのはサヤだけだけど……あ、普段飛ぶのに使う竜を小型化してるのに、自力で戻ってこれる……?
「サヤ、上がってこれるか?」
「……多分大丈夫。えっと、竜を脚に移動して……これでどうかな? 『略:ウィンドボム』!」
「おっ、ウィンドボムでのジャンプか!」
ほほう、クマの脚に小型化した竜で張り付き、そこから魔法砲撃で真上に向かって推進力を得て盛大にジャンプしたっぽい。飛行の加速に使えるんだし、風魔法を使ったこの手のジャンプは俺もやってたからね。
「わっ!?」
「『根の操作』! サヤ、大丈夫か?」
「アル、ありがとうかな」
流石に初めて使ったやり方なので地味に着地の位置をミスっていたけど、即座にアルが根の操作で引き上げて無事に戻ってこれたね。さて、これで全員がアルのクジラの背の上に戻ったので、移動を再開していこう。
「さてと、それじゃ移動再開! ヨッシさん、ハーレさん、回復は充分?」
「全快なのさー!」
「私も全快だから大丈夫だよ」
「それじゃ戦闘役は交代って事でよろしく!」
「ヨッシ、ハーレ、任せたかな!」
「任されました!」
「うん、任されたよ」
「アルも適度に回復はしとけよー」
「ま、元々そのつもりだから心配はいらねぇよ」
確かにアルについては……というより、この辺の事でみんなの心配をする必要もないか。意固地になって単独で無茶な事はしないだろうし、必要な状況になれば回復途中でも俺とサヤも参戦すればいい。……まぁ、そこまでピンチになる状態があるとも思えないけどね。
そしてアルの水流が東へと向きを変え、移動の再開となった。とりあえず俺とサヤはアルの木の根の辺りで、周囲を眺めつつ休憩だね。
んー、進行方向から右手には森があり、他の方面は平原が広がっている。あとはあちこちに小規模な湖や丘や林が点在しているくらいなもんだな。
「あ、そうだ。さっきの話の続きだけど、明日は海エリアに行くので確定でいい?」
「私はもちろん賛成なのさー!」
「同じくかな!」
「私も賛成……だけど、行くのは夜だよね?」
「アルも一緒にだからそうなるけど……ヨッシさん、何か問題あった?」
「あ、うん、明日は夜までログインは出来そうにないんだよね」
「え、そうなのか?」
「え、言ってなかったかな?」
「何か学校で放課後に用事があるんだよねー!」
「あー、なるほどね。……俺、聞いてないんだけど」
「奇遇だな、ケイ。俺も聞いてないぞ」
「……アルは夕方はいないんだし、問題なくね?」
「まぁそうとも言うな」
ですよねー。っていう事は、関係あるのに聞いてなかったのって俺だけかー。なんで教えて……って、あれか。今日って夕方はベスタと蒼弦さんの模擬戦で盛大にバタバタしてたし、夜からも不具合のあった進化情報の件でそれどころじゃなかった気もする……。
「……あはは、言ったつもりでそのまま忘れてたみたいかな?」
「……そうみたいだな。ま、今のうちに思い出してくれといて良かったってとこか」
「まぁそういう事だから、夕方はケイとハーレは好きにやっててかな?」
「そのつもりです!」
「ほいよっと」
ま、学校でどんな用事があるのかまでは分からないけど、サヤとヨッシさんは同じ学校なんだしそういう事もたまにはあるだろう。
俺も明日はちょっと帰りに新しい弁当箱を買いに……って、そういやなんで普通に買いに行こうとしてんだろ? 別に通販で買ってしまえば良いような気もしてきた。……まぁ弁当箱の1つくらいなら、お釣りはくれるんだしアイスを買うつもりで行けばいいか。
「そういう事ならケイ、1つ頼まれてくれるか?」
「ん? 内容にもよるけど、よっぽど無茶でなければやっとくぞ?」
「なら、海エリアでの目的地の候補を上げといてくれるか? Lv上げ、しときたいだろ?」
「……確かにそりゃそうだ。よし、それじゃ夕方にそれはやっとく」
「おう、任せたぞ」
「ほいよっと」
とりあえずこれで明日ログインしてからやる事の1つは決定っと。行き当たりばったりで進んで行っても良いんだけど、今はLvも上げていきたいからね。海エリアにLv上げに良さそうな場所があれば、そこを目指していきたいところだ。
それに普段は上げにくいアルの海水の操作も、周り中が海水で満ちている海エリアなら特訓もしやすいだろうしね。……場合によっては、俺は海流の操作を狙うのもありだな。
「あ、ケイがまた何か企んでるかな」
「はい! 海流の操作を狙っているんだと思います!」
「何故バレた!? 今のは声に出てなかったはず!」
「……うん、まぁ海エリアで取れるものって考えたら想像はつくよね?」
「……確かにそりゃそうだ」
「というか、ケイはそんなに応用操作スキルを取りまくってどうする気だ? 育てきれてないのも多いだろ?」
「え、いやまぁ、取れる時に取っておきたいだけ? ほら、いざって時に意表は付けるしさ!」
「……まぁ、味方である分についてはそれでいいか」
おい、アルに同意するようにみんなまで頷くんかい! まぁ敵にこれだけ持ってる人を相手にするのは……ジェイさんやシュウさんなら十分過ぎる程に怖いな。うん、客観的に考えてみたらどんな手札が出てくるか想像がつかない、プレイヤースキルが高い人を相手にするのはやばいね。
まぁその辺は気にし過ぎてもドツボに嵌まるだけなので、適度なとこで意識を切り替えていこうっと。えーと、刹那さんはもうすぐ東部だと言ってたよな。東部に入ってから少し南下して、西へと方向転換をすれば青の群集の森林エリアへ辿り着くはず。
いや、ジェイさんが言っていたのは整備クエストのエリアに入ってから南下だったっけ? あれ、もしかして今いる中央部と東部と整備クエストの3エリアの切り替えが入り混じってる感じ……?
「アル、この先って広範平原の東部と青の群集の整備クエストエリアのどっちに繋がってるか分かる?」
「そりゃさっき刹那さんが……あ、いやそれだとジェイさんが言ってたのと少し食い違うのか?」
「あ! なんとなくそれっぽい変化が見えます!」
「お、マジか!」
「ハーレ、どんな違いかな?」
「えっと、ここから少し先で森が途切れてるんだけど、その先になんか見えにくいけどなんか変化があるのさー!」
「ハーレ、変化ってどんな感じ?」
「えっと、ここからじゃ先の様子がまともに見えないので、多分傾斜になってて高度が下がってます!」
「……窪地にでもなってるのかな?」
ふむふむ、窪地があるという可能性はありそうだね。あー、川が流れててその先が窪地になっているって事は、ジェイさんが言ってた景色ってもしかすると……。うん、これは楽しみになってきた。
「とりあえずハーレさんナイス! 多分そこが青の群集の整備クエストエリアだ!」
「だろうな。よし、進行方向はそっちに向けるぞ」
「「「「おー!」」」」
ふー、広範平原の東部を通り抜けて行く必要があると思っていたけども、ここからなら青の群集の整備クエストへの直通ルートもあるようだね。予想しているものがあるとすれば結構な良い景色が見れそうだし、うまく行けば冷やしている最中のスイカをそこで食べれるかもしれないね。
って、ちょっと待った。青の群集の森林エリアについては良いんだけど、赤の群集の森林深部エリアについては何も知らない気がする!?
「……今更だけど赤の群集の森林深部の位置って、どうなるんだ?」
「ん? そりゃ青の群集の森林エリアの隣だし、今いるここのすぐ南側が競争クエストのエリアなら、ここより西側の方じゃねぇか?」
「あー、位置関係的にはそうなるのか」
ふむふむ、確かに競争クエストエリアは2つの群集の初期エリアに隣接しているんだからそうなるよな。とはいえ、ここの地点からは森の木々があるから見通せないか。
どうも少し離れた位置の木が徐々に高くなってるから、森林深部に向けて傾斜があるんだろうね。その先に何があるかは分からないけど、さっきまで上空を飛んでた時にもっとしっかり見ておくべきだったかな?
「はっ!? 危機察知に反応です!」
「もう少しって所で出てくるね! ハーレ、仕留めるよ!」
「了解です! わっ!? 『魔力集中』『散弾投擲』!」
おっと、地面の方から3発の水弾が放たれて青い……なんだこれ? 妙に長いヒレを何本も持っている魚っぽい何か……? うーん、何かで見た覚えはあるけど、オフライン版で見た覚えはないからどうもよく分からん。オフライン版って魚というか海の種族の種類はそれ程多くはなかったしなー。
「とりあえず俺は位置を固定するぞ。『略:空中浮遊』!」
「アルさん、ありがとー!」
「おうよ。戦闘が終わるまではこのままにしとくぞ」
「了解です!」
「了解!」
アルのクジラの背中にみんなが乗ったままだし、そのまま水流に乗っていると流石に戦闘にならないのでアルが一時的に水流から浮かせた状態にしていた。これなら敵の位置から離れる事もなく戦闘が可能だな。
「それにしても、ミノカサゴっぽいのがこんなとこにいるのか」
「アル、ミノカサゴって何かな……?」
「あんな風にヒレが多くて妙に長い毒魚だな。色こそ違うが、見た目は大体あんな感じだ」
「へぇ、毒持ちの魚なのか」
「あ、何かで見た事ある気もするかな?」
「……俺もどっかで見たような覚えはあるなー」
ふむふむ、色こそ違うけどリアルに存在している毒持ちの魚か。……なんでこんな陸地にいるのかというツッコミは今更意味もないので気にしない。大きさとしては俺のロブスターと同じくらいってとこか。
「ミノカサゴなら毒は多分意味ないから、こっちで! 『エレクトロプリズン』! ハーレ、識別!」
「了解です! 『識別』!」
「どう、ハーレ?」
「瘴気強化種のミズミノカサゴでLv17! 属性は水と毒で、特性は刺突と伸縮です!」
「……あんまり私の毒とは相性は良くなさそうだね。今回はハーレの物理主体で行くよ!」
「了解なのさー! 『連投擲』!」
そうしてヨッシさんとハーレさんの担当での戦闘が始まった。さて、まだ経験値の増加の効果中だから見つけた敵はどんどん倒していかないとね。という事で、ヨッシさん、ハーレさん、ファイトー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます