第641話 雷の操作を狙って


 フェルスさん達の目的であるスクショの撮影は終わったので、今度は俺らの目的である雷の操作の取得をやっていこう。

 でも、かなり雨が弱まってきているし、雷も収まってきている。……条件を満たすにはかなりぎりぎりか? よし、どっちにして俺は後からの予定だったから、大急ぎでヨッシさんの分は取らないと。


「ヨッシさんの雷の操作を最優先で取っていくから、ヨッシさんよろしく! 俺らは下手に攻撃をすると邪魔になるから待機で!」

「分かったかな!」

「了解です!」

「それじゃちょっと手早くやるね。『並列制御』『アイスプリズン』『氷の操作』!」


 ヨッシさんの手動操作にした氷の檻で、空を飛んでいる小さな松の捕縛に成功していた。まぁフィールドボスとはいえ俺らの方がLv上だし、ヨッシさんだけでは無理という事はないだろう。

 さっきのスクショの際に小さな松は雷纏いを発動しているものの、流石にそれだけで氷が解かされるということにはなってないようである。


「……何か氷に噛み付いているけど、何をやってるのかな?」

「はっ!? もしかして魔法吸収!?」

「あー、それはあり得るかも……」


 魔法産の氷の檻に対して何かをしているのなら、魔法吸収の可能性はあり得るな。コウモリが合成されているし、吸血という特性こそ無くなっているけど吸収するようなスキルは持っていそうではある。

 まぁ魔法吸収なら手動操作で制御下におけば吸われる心配はないけどね。あ、でも魔法吸収って普通に他の種族でも使えたっけ。……あんまり吸血は関係なさそうだな。


「ヨッシさん、何か知らないスキルがあっても面倒だし、さっさとしちまおう!」

「それもそだね! えい!」


 そのヨッシさんの掛け声と共に、松を捕獲している氷の檻が雷雲に向けて一気に高度を上げていく。さて、これで松に向けて雷が落ちてくれば良いんだけど……。

 お、雷雲が光って、雷が松に向かって……って、ちょっと待てー!?


「わー!?」

「雷がこっちに来たかな!?」


<ダメージ判定が発生した為、『移動操作制御Ⅰ』は解除され、10分間再使用が不可になります>

<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 54/64 → 54/66(上限値使用:10)


 くっそ、落雷は松には直撃せずに、俺の水のカーペットを応用した雨避けに直撃したか……。ダメージ判定の発生で強制的に解除になる瞬間に、水の雨避けに雷が水全体に走っていた。……流石に水の弱点属性である水では通電するんだな。

 てか、全く不純物のない純水だと電気は通さないらしいけど、この魔法産の水って純水ではないのかー。まぁ水属性が電気に弱いのは良くある話だし、弱点設定としてそういう風になってる感じかな?


「みんな、大丈夫か? 感電はしてないよな?」

「大丈夫です!」

「私も大丈夫かな。フェルスさん達は?」

「大丈夫っす!」

「びっくりはしたけどな!?」

「今のはびっくりしたよねー!?」


 ふー、どうやら俺の水の雨避けが破壊されただけで被害は特に無かったようで……って、待て。今の、ヨッシさんからの返事がなかったぞ。もしかして麻痺にでもなって、動けない状態に……!?

 慌ててヨッシさんの方を確認してみるけど、普通に飛んでいるから問題はなかったようだ。あー、でも何だか考え込んでいるっぽいね。……まぁ内容は予想がつくけど。


「ヨッシさん、大丈夫か?」

「あ、うん、被害は特にはないよ。……ただ、ちょっと困っちゃってさ?」

「……あー、どうやって雷を当てるかって問題だよな?」

「うん、そう。……今の、多分だけど雷の操作で避けたよね?」

「多分そうだろうな」


 あのコウモリの羽を持つ異形と化した小さな空飛ぶ松は、Lvは俺らより下とはいえ雷属性という事で相性が最悪だったのかもしれない……。

 うーん、天然の雷自体は利用したにはしたけども、今ので取得の判定としては通ったのか……? ……これは討伐の称号と一緒に手に入るかどうか、戦闘が終わってみてからじゃないとわからないな……。


「あ、逃げられた!?」

「逃がすか!」


<行動値3と魔力値9消費して『土魔法Lv3:アースプリズン』を発動します> 行動値 51/66(上限値使用:10): 魔力値 171/212


 そうして分析している内に松が電気の弾を放ち、氷の檻は破られてしまった。逃がさないために即座に土で固めて拘束して……って、あー!?

 咄嗟の判断で不利な属性な水属性ではなく土属性で拘束したけど、それに松の根が絡みついて、どんどん吸われるように魔法が消滅していく。くっ、魔法吸収を持ってる可能性はさっき考えたのに、並列制御で手動操作にするのを忘れてた!


「ヨッシさん、手段変更! 直接当てられないなら、間接的に雷で感電させてやる!」

「それは良いけど、ケイさん、どうやるの?」

「ヨッシさんは氷で避雷針を作ってくれ。それであの俺が岩に閉じ込めて視界を封じた状態で、少し穴を開けて岩の中を水で満たして、避雷針へと繋げる!」

「おー!? それは大掛かりだね!」

「……それならケイとヨッシが同時に天然の雷を利用した事になるのかな?」

「多分なるとは思うけど、そこはもう運だな。……駄目だったら駄目だった時って事で!」

「うん、ケイさんの案に乗ったよ! ……それにもうチャンスは少なそうだしね」


 あ、確かに西の方を見てみると雲が途切れて月明かりが差し込み始めている。……倒すのは雨が上がってからでも問題ないけど、天然の雷を利用するにはもう時間の猶予はないな。

 ちっ、そうしている内に魔法吸収で完全に土の拘束が破られたか。……思ったより保ったけど、魔法吸収も厄介だな。


「サヤ、ハーレさん、威力はいらないから少しだけ動きを制限してくれ。ヨッシさんは俺が合図をしたら一気に氷で避雷針を生成。そこからは俺がやる!」

「任せて、ケイさん!」

「了解です! サヤ、やるよー! 『連投擲』!」

「分かったかな! それならこれで! 『魔法砲撃』『略:ウィンドボール』『ウィンドボール』!」


 よし、サヤは竜の口から魔法砲撃にして吸収を出来なくした風の弾を次々と撃ち出しているし、ハーレさんはサヤの狙いが甘めなのをフォローするように連続投擲を行ってくれている。

 それらの攻撃を松は回避ではなく、根で打ち落とすような感じで迎撃しているね。……回避優先のパターンでないのはありがたい。……それにしても、雨足は弱くなったとはいえ雨が鬱陶しいな! まぁそういう条件なんだから仕方ないけど。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 50/66(上限値使用:10): 魔力値 168/212

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 48/66(上限値使用:10): 魔力値 165/212

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 これで昇華魔法にならない様に離れた位置にそれぞれに生成! ……あー、敵が小さな松で良かった。あのくらいのサイズなら水流の操作や岩の操作でなくても、対応し切るだけの操作は出来そうだ!

 敵が大きかったら、行動値が足りない可能性もあったしな。でも念には念を入れて、土の方は岩で完全に逃げ道を塞ぐか。……そういや普通に視界を封じると考えたけど、松とコウモリって……いや、アルだって普通に見えてるんだし、スキルで視界を指定に利用するんだから、敵もその辺の条件は同じはず!


「サヤ、ハーレさん、攻撃ストップ!」

「了解です! これは……えいや!」

「分かったかな!」


 既に発動中だったハーレさんの連続投擲の残弾は全く関係ない方向へと投げ飛ばされていき、サヤも新たな風の弾を撃ち出すのは止めていた。よし、これで後は操作をしていけばいい。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』は並列発動の待機になります>  行動値 29/66(上限値使用:10)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を6消費して『水の操作Lv6』は並列発動の待機になります>  行動値 23/66(上限値使用:10)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 すぐに岩の操作で松を球状の岩で包み込み、下部にほんの少しだけ開けた穴から生成した水を流し込んでいく。

 うん、松の雷纏いが水に伝わってバチバチと火花が散っているっぽいけど、これは問題ないな。むしろちゃんと水に電気が流れている証拠である。とにかく俺の方の準備はこれで完了だ。


「ヨッシさん、避雷針!」

「了解! 『アイスクリエイト』『氷の操作』!」


 俺の合図と同時にヨッシさんが細長く、可能な限り高い氷柱を生成していく。ふむ、大体3〜4メートルくらいか? 

 この氷柱は操作していなければすぐに倒れてしまいそうだし、細すぎて強度が危うい感じもするけど、これで何とかいってくれ! てか、さっさと水を氷柱に繋げて……よし、これでいい。後は上手く雷が落ちてくれれば……!


「お願い、ここに雷が落ちて!」


 そしてそのヨッシさんの願いに応えるように氷で作った避雷針に轟音と共に雷が落ちていき、俺の生成した水へと一気に雷が流れていったようである。

 流石に強度的に細長い氷だと、落雷の衝撃には耐えられなくて砕け散っていたけどね。まぁ目的は達成したから、それについては良しとしよう。


「……すげぇっす」

「……あぁ、こりゃすげぇ」

「あはは、よくこんな手段を思いつくね。……専用の報告欄があるのも納得かも」

「……だな」

「……そうっすね」


 何だかフェルスさん達が今の俺らのやってた事を見てそんな感想を言っているけど、こういうのは思い付きで何とかするものさ!


 てか、まだ松に雷でのダメージがあるかどうかの確認が出来てないから、そこからやらないと。……流石に雷属性持ちとはいえ、ダメージの量が少ない事はあっても無効ではないはず。

 さっきので少しでもダメージが与えられていれば、天然の雷を利用したという条件は確実に満たせているだろう。って事で、生成した岩と生成した水の操作を解除!


「おっ、ちゃんと削れてるな」

「みたいだね。ケイさん、ナイス!」

「ヨッシさんこそな!」


 多くはないけど目に見えて松のHPが減っているので、雷のダメージはちゃんと通っているようだね。これならちゃんと雷の操作の取得にはなったはず。ふー、とりあえず天候が悪い間にここまで出来て良かった。

 でもHP自体はまだ8割くらいは残っているから、サッサと仕留めて終わらせようか。


「サヤ、ハーレさん、削るの任せていい?」

「特にこれといって出番もなかったから、むしろ望むところかな! 『上限発動指示:登録1』『魔力集中』『爪刃双閃舞』!」

「サヤに同意です! それじゃいっくよー! 『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『爆散投擲・土』!」


 そうしてちょっと手持ち無沙汰だった様子のサヤとハーレさんが全力での攻撃を開始した。サヤは大型化した竜に乗って、小さな松の撃ち出してくる針状の葉の斬り落としながら連撃数を稼いでいく。銀光の強弱の頻度を見た限りではLv3での発動のようである。

 それと同時にハーレさんもLv3で爆散投擲のチャージを開始していく。あー、これなら魔法型のあの松を倒すにはサヤとハーレさんだけで充分っぽいな。ヨッシさんと昇華魔法で仕留める事も考えてたけど、その必要はなさそうだ。


「これで私のは最後の一撃! 残りは任せたかな、ハーレ!」

「任されました! いっけー!」


 そうして最大まで連撃を強化したサヤが松のHPを残り2割くらいまで削り、その残り2割のHPはハーレさんの一撃によって消し飛ばされていった。まぁオーバキル気味だったけど、無事に倒してポリゴンとなって砕け散っていったので問題なし!


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『丘陵の強者を討ち倒すモノ』を取得しました>

<増強進化ポイントを3獲得しました>

<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『闇を扱うモノ』を取得しました>

<スキル『闇の操作』を取得しました>

<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『雷を扱うモノ』を取得しました>

<スキル『雷の操作』を取得しました>


<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『丘陵の強者を討ち倒すモノ』を取得しました>

<増強進化ポイントを3獲得しました>

<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『闇を扱うモノ』を取得しました>

<スキル『闇の操作』を取得しました>

<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『雷を扱うモノ』を取得しました>

<スキル『雷の操作』を取得しました>


<『瘴気石』を1個獲得しました>


 おおっと、一気に称号の取得メッセージが出たね。無事に雷の操作は取得……って、ちょっと待って!? なんで闇の操作まで取得してんの!?

 あ、もしかして松を岩の操作で真っ暗闇の中に閉じ込めたから……? 思い当たる節はそれくらいしかないけど、闇の操作の取得ってあれでいいんだね。……予定外の取得ではあったけど、取得出来るスキルが増えた事については問題なし!


 さてと、これで俺らの目的もフェルスさん達からの依頼も完遂だな。ヨッシさんもちゃんと雷の操作が取得出来たかの確認はしないといけないけど、俺が取れているからそれについては大丈夫だろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る