第640話 受けた依頼の進行
全く予定していなかった流れで成長体のコウモリを手に入れたから、これでフィールドボスの誕生の段階に移行出来る。いやー、予想外に良い事もあるもんですなー。
「あはは、まさかこんな所であのカツオの人と会うとは思わなかったかな?」
「確かにびっくりしたよ。でも、1stが海だからって2ndも海とは限らないから、こういう事もあって当たり前ではあるんだよね」
「だなー。てか、俺らが逆パターンだしな」
「そうともさー!」
「えっと、皆さん、さっきの方とはお知り合いだったんですか?」
「あー、まぁな。サービス開始の早い時期に、情報共有板で色々あってね。……まぁ今さっきまで名前は知らなかったけど」
「へぇ、そういう事もあるんっすね」
「興味深いもんだなー」
ミドリさん達は初期のシアンさんや俺が荒らした事による情報の発見とかは知らなさそうだし、そんな反応か。でもまぁ俺としてもさっきのはかなり意外な展開だったね。
ま、今はそれは良いとして、やるべき事をやっていこうか。時間に猶予がないのは変わらないし、急がないと……。
「ともかく、本命のフィールドボスの誕生をやっていくぞ!」
「「「おー!」」」
「なんとか間に合いそうだね、フェルス、レイン!」
「ケイさん達が手伝いに来てくれて、本当に良かったっす!」
「だな! 俺らだけじゃ絶対に間に合わなかっただろうしな!」
元々俺らにも狙いがあったとはいえ、そういう風に言ってくれるのであればこの依頼を選んで良かったというものである。それじゃまずは依頼の雷雨の中での、雷属性のフィールドボスのスクショの撮影からやっていきますか!
……あ、でもその前にやるべき事があった。これ、本来なら取引前にすべきだった事だし、ちょっと慌て過ぎてたか。まぁ大丈夫だとは思うけど、念の為だな。
「さてと、大丈夫だとは思うけどこのコウモリを識別しとくか」
「ふっふっふ、ケイさん、それならさっきの間にやっていたのです!」
「え、ハーレさん、いつの間に?」
「ケンローさんとケイさんが取引の話をしてる間に、思考操作でやっておいたのです! 取引だから、間違ってたら困るもんね!」
「あー、まぁそりゃそうか。ハーレさん、グッジョブ!」
「えっへん!」
思いっきり誇らしそうにしてるけど、まぁ俺が実際にやり損ねていた事ではあるからなー。うん、俺からは文句の付け所はないよね。
「それでハーレ、どういう結果だったのかな?」
「識別した上で止めてなかったって事は、Lv20の成長体なのは間違いないよね?」
「そうともさー! それで、名前は『吸血コウモリ』で、黒の瘴気強化種なのさー! 属性はなしで、特性が吸血と群れです!」
「あー、気になる事もあるけど、属性なしなら物理型ではあるみたいだな」
「……群れの特性があるなら、一般生物のコウモリが集まってくるのかな!?」
「……でも近くに一般生物のコウモリは見当たらないよ?」
えーと、確か特性の群れって同系統の一般生物を強化して群れを形成するって内容だったはず。でもヨッシさんの言うように周囲に群れを形成出来るような一般生物のコウモリの姿は見当たらない……。
「……もしかして群れの特性って、近くに同系統の一般生物がいないと役立たず?」
「多分そうだと思います! それより吸血の方が気になるよー!?」
「……確かに初めて見るしな。フェルスさん達は吸血って特性に心当たりはある?」
「俺は初めて聞くっすね。レインとミドリはどうっすか?」
「……俺も同じくだ」
「ごめんなさい、私も分からないです」
「って事は、あんまり情報が広がってない特性の可能性もあるのか……」
とはいえ、大体の見当はつくけど、これはどうしたもんかな。……フィールドボスを誕生させる際には盆栽みたいな小さい電気を帯びた松をメインに使うから、必ずしも吸血の特性が絶対に引き継がれる訳ではない。
フィールドボスを誕生させてもスクショを撮りたいというフェルスさん達からの依頼が最優先である。……よし、もし吸血の特性が引き継がれた場合、スクショを撮ってる間に情報収集をしてくるという事にしよう。
「とりあえず時間もないから、先にフィールドボスにするぞ。その上で吸血の特性が残ってたら、フェルスさん達がスクショを撮ってる間にまとめに情報がないか確認しようと思うけど、それでいいか?」
「問題なしっす!」
「問題なしだ!」
「それでお願いします!」
どうやらフェルスさん達はそれで問題はないようである。サヤ達も声には出さないものの頷いているので了承という事で良いだろう。さてと、それではフェルスさん達からの依頼の最終段階をやっていきますか!
「それじゃそういう方針でいくぞ! ハーレさん、ミドリさん、成長体を押さえつけておいてくれ」
「了解です!」
「はい、分かりました! フェルス、瘴気石をお願いね」
「お任せっすよ!」
そうしてミドリさんが根で捕縛している小さな松と、ハーレさんが鷲掴みにしているコウモリを地面に押さえつけた。そしてフェルスさんが雷属性を持つ松の前に強化度合いの上の瘴気石を、コウモリの前にもう1つの瘴気石を置いていく。
瘴気石を目の前に置いたのを確認し、2体の成長体の拘束を解除するとそれぞれに瘴気石へと食らいついていった。それと同時に瘴気石を食らった松とコウモリが引き寄せられていき、禍々しい瘴気に包まれていく。
「進化が始まるから、全員少し距離を離して警戒!」
「それは良いけど、どうやって電気魔法を誘発するのかな!?」
「……そういや、それは考えてなかったような?」
「え、それってどうするの、ケイさん!?」
あはは? いや、電気魔法の誘発手段とか普通に戦ってたら普通に使ってくると思ってたからこれといった作戦は考えてなかった……。自分達でやるつもりの雷の操作の取得については考えてるんだけどね。
「それなら問題ないっす!」
「そこは俺らがやるべきとこだしな。頼んだのは護衛の依頼だから、スクショを撮る時の手段まで任すのは筋違いってもんだ!」
「そういう事なので心配はいりません! ただ、防御だけはお願いできませんか?」
「あー、元々計画はあったのか。よし、それじゃ防御は任せとけ!」
「はい!」
フェルスさん達も何もかもを依頼した相手に任せるつもりでいた訳ではないようである。ま、そういう事ならスクショを取り終えるまでは防御以外で手を出すのは無しだな。
おっと、そうしている間に徐々に瘴気の膜が薄れてきたから、フィールドボスへの進化は完了だな。
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『丘陵の強者を生み出すモノ』を取得しました>
<スキル『雷属性強化Ⅰ』を取得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『丘陵の強者を生み出すモノ』を取得しました>
<スキル『雷属性強化Ⅰ』を取得しました>
禍々しい瘴気が晴れて、フィールドボスへと進化した松とコウモリの姿が見えてきた。ちゃんと黒い王冠マークはあるけど……また奇妙な感じの進化になったもんだな。
えーと、基本的には小さい松なんだけどその幹に牙の生えた口があって、枝と枝の間に皮膜があってそれで羽ばたいて飛んでいる。コウモリ要素は牙というか口と皮膜みたいだね。
「おー!? これはかなり珍妙な姿になったねー!?」
「まさに異形のモンスターって感じかな?」
「ある意味、小さくて良かったのかもね」
「あー、確かにそれは同感」
この何とも言い難い珍妙な松の木は小さいからまだ良いけども、普通の木のサイズだとちょっと異形感が強過ぎるなー。……もうちょいフィールドボスを誕生させる時は種族を選ぶべきか。
さて、俺らは防御を手伝えばいいようだけど、手動だけでなく守勢付与もかけておくか。……てか、地味に水の雨避けが邪魔だけど、まぁ上部だけに移動しておくか。俺は良いけど、他のみんなは濡れたくはないだろうしね。
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 57/64(上限値使用:12): 魔力値 191/212
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 50/64(上限値使用:12): 魔力値 170/212
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 43/64(上限値使用:12): 魔力値 149/212
とりあえずこれでフェルスさんとレインさんとミドリさんのそれぞれに守勢付与をかけ終えた。うん、ちゃんと水球がそれぞれに3つ漂っているから、ちゃんと付与は出来たな。
「これって最新情報の付与魔法っすか!?」
「まじだ! ケイさん、これって守勢付与ってやつ!?」
「おう、そうだぞ。電気属性相手には属性相性が悪いけど、それでもそれなりに攻撃は自動防御になるからな」
「ケイさん、ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!」」
「ま、とりあえずスクショの撮影頑張れー!」
まだ大雨で雷も断続的に鳴り響いているから、フェルスさん達がスクショを撮るのに狙っていた状況としてはバッチリなはず。それに必要な俺らのサポートはここまでだな。
「とりあえず私達は今は待機かな?」
「まー、そうなるな。3人が納得出来るスクショが撮れたら、俺らの予定の方をやろう」
「その時はスクショを撮ってても良いですか!?」
「……まぁ多分問題はないと思うから、別にいいぞ」
「やったー!」
「ハーレは相変わらずだね。ところでケイさん、どういう手段で落雷に当てる?」
「あー、それなんだけど、俺はアップリフトで下から雷雲までぶっ飛ばそうかと思ってる。……って事で、ヨッシさんが先にやってくれない?」
「……あはは、それは先にやったら普通に倒しそうだね。うん、それなら私は捕縛した状態で上空に持ち上げようっと」
「上手くいくといいねー!」
「だなー」
何となく雷を狙って落とす為には高い位置に持っていけば良いって感じだとは思ってはいるけど、これは実際にやってみないとな。まぁ雷の操作は必須でもないし、駄目だったら駄目だった時で諦めるけどね。
「ケイ、今のうちに識別しておいて良いかな?」
「あ、それもそうだな。よし、今回はサヤに任せた!」
「うん、任されたかな! 『識別』!」
「わくわく!」
「サヤ、どんな感じ?」
「えっと、名前が『豪傑強電小松』の豪傑合成強電種でLvは12。属性は樹と雷、特性は豪傑、小型、移動、飛行かな」
「コウモリ要素、ほぼ羽の見た目だけかい!」
「あはは、そうみたいだね」
まぁ浮遊だったのが飛行に変わっているので、空を飛ぶ移動速度は上がってるのかもしれないね。でも吸血の特性は無くなったか。……まぁ警戒要素が減ったのはありがたいのかも。
そんな風に話している内に準備の整った3人は俺の水の雨避けから飛び出していき、異形となった松の木へと向かい合っていく。ふむ、普通の雨には守勢付与の自動防御は発動しないか。まぁ流石に雨に反応したら困るもんな。
さて、フェルスさん達がどういう手段を用意しているのかお手並み拝見といこう。
「予定通りに交代しながら順番に攻撃して、電気魔法か雷纏いを使ってきたら手が空いてる人がスクショを撮るっすよ!」
「おうよ! 先発はミドリに任せるぜ!」
「うん! それじゃ私からだね! 『過熟』『砲丸スイカ』!」
うおっ! 小さなスイカの実を蔓についたままの状態でグルグルと回転させながら、遠心力を利用して途中でスイカを切り離して投げた。へぇ、そんな砲丸投げみたいなスキルが……って、当たったスイカがドロドロじゃん!? え、もしかして腐ってる……?
あ、松の木がそれを嫌がって、ミドリさんに標的が向いたっぽい? ふむ、今のスキルはもしかして攻撃ではなく、嫌がらせをして強制的に狙われやすくする為のスキルか。
「行くっすよ! 『ネバ粘液』!」
今度はカエルのフェルスさんが何か粘性のある液体を吹き出した。……地味に嫌だな、これは。あ、これに対して松が雷纏いを発動したね。おー、地味に纏っている電気が粘液を分解してるっぽい?
ふむ、これは初めて知ったけど、もしかしたら雷纏いには今みたいな粘液を分解する効果もあるのか? 同じ系統のスキルの発火とかは触れたものを燃やす事も出来るし、可能性はありそうだ。
「よし、雷纏いを誘発出来たっすよ! 次は出来ればエレクトロウォールか、エレクトロボムを誘発させるっす!」
「迎撃させる為に順番に攻撃だな! 『針飛ばし』! あ、相手にされてねぇ!?」
「あわわ!? 思った以上に私が狙われてるー!?」
「あ、いや、ミドリ、それでいい! そのまま何もしないでいい!」
「え? あ、そっか!」
「はっ! こっちの位置が良さそうっす! 『大ジャンプ』!」
そして小さな松の幹に合成されたコウモリの口からミドリさんを狙った電気の球が撃ち放たれ、俺の付与した守勢付与の水球の1つが自動迎撃して電気の爆発が周囲に撒き散らされていく。
うぉっと!? 守勢付与による自動防御でほぼ威力はなくなっていたけど、雨に伝って電気が流れて少し発光してたか。
「フェルス、ちゃんと撮れたか!」
「ちょっと確認するっす! ……うん、ちゃんと撮れてるっすよ!」
守勢付与の自動迎撃が発動する瞬間に、雷纏いをして飛んでいる小さな松とエレクトロボムの爆破の瞬間の両方が写るような位置にジャンプしていたフェルスさんだけど、見事に狙った通りのスクショは撮れたようである。
「レイン、ミドリ、ミッションコンプリートっすよ!」
「おっしゃ!」
「やった!」
「皆さん、この後はよろしくっす!」
「おう、任せとけ! みんな、やるぞ!」
「「「おー!」」」
今のでフェルスさん達の目的は達成となったようだね。さて、それじゃ今度は俺らの出番だな。討伐自体が依頼の1つだけども、俺らは俺らの目的もある。まずはヨッシさんの雷の操作の取得からやっていこうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます