第21章 後回しになっていた場所へ
第635話 みんなとの合流までに
無事に今日の授業は全て終わり、足早に部活に行く人達を見ながら、俺と慎也と同じように普通に帰宅していく人が集まっている下駄箱までやってきた。慎也はここから駐輪場まで自転車を取りに行く必要があるから、放置してサクッと帰ろう。
あ、その前に携帯端末の方を確認しとこう。今日は母さんから何かメッセージは……特になさそうだな。よし、それならどこにも寄らずにすぐに帰ればいいや。地味に今日は慎也が鬱陶しいし……。
「ところで圭吾達が来るのって夜だったよな?」
「あー、一応夜の8時半に雪山の中立地点で待ち合わせだな。……地味にまだ行った事ないんだけど、あそこって今どんな感じなんだ?」
「え、来た事ねぇの!? あれ、こないだ居なかったっけ? 圭吾達とは雪山で会ったよな?」
「それ、青の群集の問題連中が騒いだ時……。あの時って行く真っ最中だったんだけど、色々あってそのまま行く機会を失ってて……」
「……あー、なるほど、あの時か……」
本当ならあの時に中立地点へ行く予定だったんだけど、その後は何だかんだで色々やってて行きそびれてるんだよな。
赤の群集の森林深部エリアと青の群集の森林エリアが隣接してる場所へ向かいつつ探索をしていくのも延期になりっぱなしだしね。急な予定変更が入らない限りは、今日中にどっちにも行くつもりで動こうっと。
「って事で、俺は帰る!」
「あっ、ちょ!? 中継の件は頼んだぞー!」
その件についてはこの場で即答は出来ないからスルーで! 後、単純に休み時間の度に聞いてきて非常に鬱陶しい! やり過ぎは逆効果だと学習しろよな……。
そんな慎也のしつこさにうんざりしながら、素早く家まで帰ってきた。……くっそ、暑くなってきてるのに、無駄に急いだから無意味に汗をかいてるじゃん……。あー、すぐにゲームを始めるんじゃなくて昨日買ってきたアイスコーヒーでも飲んで落ち着くか。
そんな風にアイスコーヒーを飲んで一息つきながら汗が引くのを待って、その間にまだ見れていなかった新たに公式サイトで公開された【Monsters Evolve Onlineの入門の手引き】とやらを流し見ていく。……ふむふむ、ざっと見た感じの内容では聞いていた通りに成長体までの情報と2枠目の解放条件くらいまでだな。
流石に応用スキルの取得方法とかはないけど、称号取得と重ねる事で操作系スキルが手に入るとかは載っているんだね。でもまぁ特にこれといった新情報はないか。ま、元々が強制開示になった際の情報って話だからこんなもんだよな。
よし、汗も引いてきたし今日も続きをやっていきますか! まだこの時間ならみんなはいないだろうから、少しの間はソロで動いておこうっと。
◇ ◇ ◇
そしてやってきました、いつものログイン場面! まずはいつも通りにいったんの胴体部分を見てみよう。えーと、『本日より公式サイトにて【Monsters Evolve Onlineの入門の手引き】を公開しました。こちらの更新は、ゲームの進行具合に合わせてとなります』となっている。うん、思いっきり普通のお知らせだった。
「いったん、ちょっと質問いい?」
「はいはい〜。どんな内容かな〜?」
「この手引きの更新って、要するに強制開示にならないままで特定の段階まで進めば更新って認識でいい?」
「うん、そうなるね〜。ただ、それがどのタイミングでどういう段階なのかは教えられないよ〜」
「ま、そうだろうな」
そのタイミングを教えるという事は、どこで情報の区切りがあるかを教えるという事だもんな。明確な内容は分からないにしても、多少のネタバレの可能性が出てくるから運営が教えてくれる訳もないか。
「他にお知らせって何かある?」
「ううん、今は特にはないよ〜」
「ほいよっと。そんじゃスクショの承諾のやつをよろしく」
「はいはい〜。よろしくお願いね〜」
いったんがそう言いながら、いつもにようにスクショの一覧を渡してくる。昨日の夜はこの辺は後回しにしてログアウトしたし、時間に余裕がある今のうちに片付けておこうっと。
えーと、うん、弥生さん、シュウさん、ルストさんを筆頭に赤のサファリ同盟の人達から昨日の乱戦の時のスクショが沢山来てるね。あー、ディーさんからディーさんのイカが凧揚げになってた時っぽい場所から俺らがツバメと戦ってる時のスクシュまである!?
ある程度は予想してたけど、相変わらず赤のサファリ同盟と関わった時にはスクショの数が多いね。逆に羅刹やイブキとかからは来てないし、青の群集のメンバーからも特になしか。この辺りは個性が出てくるとこだね。
他には……あ、ベスタと模擬戦をした時に待ってる状態のスクショがあるね。ほほう、エンの樹洞の中でもスクショは撮れるんだ。でもあそこで待機してたのを撮って何か意味があるの?
まぁそこは気にしなくても別に良いか。とりあえずこの辺はいつも通りの処理で良いだろう。
「いったん、いつも通りに灰の群集だけ許可で!」
「はいはい〜。そのように処理しておくね〜」
「それじゃコケでログインするから、ログインボーナスをよろしく」
「はい、これをどうぞ〜。今日も楽しんでいってね〜」
「ほいよっと!」
今日の分のログインボーナス受け取って、いったんに見送られながらゲームの中へと移動していく。さてと、何からしていこうかな?
◇ ◇ ◇
そうしてゲーム内へと移動してみると、思いっきり雨音が聞こえてくる。えーと、エンの近くでログアウトしたからエンの枝葉が雨避けになってるけども、どうやらその範囲から出たら大雨になっているようだ。
ログイン早々にこの大雨とは……。あ、どうも降り出したばっかみたいで、慌ててエンの枝葉下まで駆け込んでくる人が結構いるね。
「うっわ! 思いっきり降り出した!」
「これ、雨の範囲はどのくらい?」
「あー、ミズキの森林も雨っぽいぞ?」
「あ、もしかして上風の丘の天候も崩れてる?」
「そういや雷の操作を狙ってるって言ってたっけ」
「うん、そうだね」
「お、そこのウナギの人は雷の操作狙いか? これから上風の丘に行って、フィールドボスの誕生をやるけど一緒にどうだ?」
「え、それはありがたいけど、良いの?」
「なに、空きはあるから良いって事よ!」
「そういう事なら、お願いしようかな」
「おっしゃ、決まりだな。他にも来たいやつがいれば名乗り出てくれー! あ、ただし、『丘の強者を打ち倒すモノ』の称号を持ってない奴に限定させてもらうぞ」
「それなら俺も入れてくれー!」
「あー、行きたいけどその称号は無理だな……」
「なら『空白の称号』を使ったら?」
「いやいや、判明し切ってる条件のやつにそれは勿体なさ過ぎるだろ!?」
丘陵エリアで天気が悪い時は雷の操作の取得が狙えるって話だったけど、こうして野良PTで募集をする場合もあるんだな。雷の操作はヨッシさんと取りに行こうとか話していたけども、狙いに行けるタイミングで俺1人とはちょっと運が悪かったかな……?
まぁ、みんなと合流する時も天気が悪い可能性もあるし、そこは運に任せるしかないな。とりあえず夜の日には必須な夜目を使っておきますか。
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 76/76 → 75/75(上限値使用:1)
よし、これで視界は良好になった。それと忘れない内にログインボーナスも貰っておこうっと。これを忘れると損だしね。
<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
さて、ログインボーナスはちゃんと確保したし、何からしていこうかな。とりあえずラックさんがログインしていれば昨日の分の報酬を受け取ってくるか。もしくは桜花さんがいれば、フィールドボスの誕生用の瘴気石の確保をしておくのもありかもしれない。
よし、まずはフレンドリストの確認からしていこう。まだサヤ達もログインはしていない気もするけど、そっちも確認しておかないと。もし予想外で既にログインをしているのなら、合流を最優先にしたいしね。
えーと、フレンドリストを開いて……ふむ、やっぱりサヤ達はまだいないか。ラックさんも桜花さんも今はログインしている気配はなし。ま、いつでもいる訳じゃないからこの辺は仕方ないね。
他に誰か……あー、ソウさんとシアンさんがログインしているね。他には……うん、他の群集の人がチラホラといる。うーん、森林深部やミズキの森林が大雨だし海エリアに遊びに行くのもありか……?
でもみんなと合流するまで長時間って訳でもないし、ちょっと面倒にはなりそうだよな。……いっそ、この雨を利用して何かをしてみるか?
「あ、ケイさんだ! こんにちは!」
「……ん? あ、フーリエさんか。こんちは!」
この後に何をするかを悩んでいたら、丸くなった球状のコケのフーリエさんが空中を転がりながら声をかけてきた。こうやって俺とは系統の全く違うコケの姿を見るのもなんだか新鮮な感じがするね。
「ケイさんは何をやってるんですか?」
「あーいや、今は1人だから何をしようかと悩んでたとこ。まだ共同体のメンバーの誰もログインしてなくてな」
「あ、そうなんですか。……あの、だったら少し相談してもいいですか?」
「……相談?」
「あ、いえ、無理なら無理でも良いんですけど!」
「いや、無理って事はないから大丈夫だぞ」
別に今は誰かを待たせてる訳でも、明確に何かをやると決めている訳ではないからね。同じコケという縁もあるし、相談に乗るくらいなら大丈夫である。
「それで相談ってどんな内容?」
「あ、はい! えっと、僕のこのコケって成長体のLv20になってて、未成体に進化は出来るようになってるんですけど、2ndと共生進化もしてみたいんです。でも2ndの方はまだ成長体になったばかりで、進化の順番に悩んでまして……」
「あー、両方を個別に育てて未成体にしてから共生進化させるか、成長体で共生進化させた状態で2ndを育てるかで悩んでる感じか」
「あ、はい、そうです!」
ふむ、なるほどね。んー、共生進化の状態だと経験値が二分されるから、この場合なら個別に育てた方が無難かな? 確か俺の時は……あー、成長体で共生進化で育成してたけど、青の群集との総力戦の最中に支配進化にしたんだった。……特殊な状況過ぎて俺のは参考にならん!
サヤも同じ時に共生進化が解除になった状況で進化しててあまり参考にはならないから、参考になるのはハーレさんとヨッシさんの場合か。あの2人は先にリスとハチを進化させていたんだよな。
「確かフーリエさんって、一緒にやってる人がいたよな?」
「はい、シリウスの事ですね!」
「えーと、確かトンビだったよな。そのシリウスさんの方はどうなってる?」
「同じ理由で悩んでます!」
「……なるほど。それならフーリエさんのコケと、シリウスさんのトンビを未成体に進化させてから、お互いの2ndのレベル上げを1stで手伝うのが良いか。ちょっと適性Lvから外れて経験値は少なくなるけど、効率は上がるぞ」
「えっと、それってパワーレベリングってやつですか?」
「ま、そうなるな」
完全な初心者とかを相手にパワーレベリングをやるとプレイヤースキルとかマナーとか、色々と必要があるものが身につかないままLvが上がってしまうから問題はあるけど、それなりに慣れてきているのであればありだしね。
「……あの、始めたばかりの頃にあまり序盤ではそれはしない方が良いと灰のサファリ同盟の方から聞いたんですけど……」
「うん、それも正解だな。パワーレベリングが駄目な理由は慣れないままレベルが上がる事だしな」
「あ、それは聞いた気がします!」
ふむふむ、この辺りは灰のサファリ同盟からちゃんと聞いてはいるんだな。でもどのタイミングまでパワーレベリングをするのが駄目なのかがよく分かってないという感じか。まぁデメリットがない訳でもないからなー。
「だけど、今みたいに未成体目前まで育てた経験がある上で、2ndを早く未成体にしたいって理由なら手段としてはあり。ただし、このゲームだとスキルLvの熟練度はどうにもならないから、そこは要注意だな」
「あ、はい! ……スキルLvなら、未成体に進化してからでも熟練度は稼げますよね?」
「おう、それは問題なく出来るぞ。あ、でも未成体への進化の前提条件にスキルLvとかもあるから、そこも要注意か」
「……言われてみるとそうですね」
「それと補足しておくけど、今の時点でも成長体同士で共生進化した場合は、程度の差はあるけど一種のパワーレベリングにはなるからな」
「あ、Lv差があるから、結局そうなるんですね!?」
「ついでにLv上限に達している方には経験値は入らないし、貰える経験値自体も半分になるからな」
「……そうでした」
俺らがやった時には余剰分の経験値はクエストの関係で群集拠点種に送られるようになってたからそのままにしてたけど、今はそうじゃないから無駄になるんだよね。それを考えるなら、パワーレベリングをしてさっさと2ndも成長体Lv20まで育てた方が効率は良いはずだ。
「シリウスと相談して、2nd同士で普通に育てるか、1stを未成体にしてから交互にパワーレベリングをするか決めたいと思います!」
「おう、それでいいと思うぞ」
「はい! ケイさん、相談に乗ってくれてありがとうございました!」
「いやいや、これくらいどうって事はないよ」
「いえ、それでもありがとうございました! それじゃこれで失礼します!」
「おう、頑張れよ、フーリエさん!」
そうしてフーリエさんから受けた相談は終了となった。ふむ、この手の事で悩んでいたって事はフーリエさんはオンラインゲーム自体、このゲームが初めてなんだろうね。まぁ実際にやってみないと意味が分かりにくいとこではあるからなー。
「やっぱり面倒見は良いよね、ケイさんって」
「うわっ!? って、ヨッシさんか!」
「あはは、こんにちは、ケイさん」
「……ヨッシさん、どこから見てた?」
「ん? フーリエさんがありがとうございましたって言ってた辺りだよ」
「……殆ど聞いてはいないんだな」
「まぁそうなるね」
とはいえ、アドバイスをしている最中に見られたというのはどうも気恥ずかしい!? いや、人が多い場所でそのまま相談を受けてた所に原因はあるんだろうけどさ……。
まぁ、悪い事をしてた訳でもないので気にしても仕方ないか。とりあえずこれでヨッシさんとは合流が出来たね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます