第617話 上風の丘の上空で
岩山エリアへ向けてかなりの移動速度で出発していき、しばらく経ってきた。時々襲いかかってくる敵がいても、俺の守勢付与だけで回避は出来ている。まぁ何度かアルの水流の操作と水の操作の効果時間切れで再発動は必要にはなったけど、順調、順調。
「はっ!? 危機察知に反応ありです!」
「ハーレ、今回は私がやるかな! どの方向!?」
「左上からです! 今回は迎撃さー!」
「アルマース、左上を少しだけ開けろ」
「おうよ! ついでに前に飛んでけ!」
おっと、また敵が出てきたか。お、良い感じに守勢付与が飛んできていたトンボを前方に弾き飛ばしたね。何度か使ってみて分かったけど、弾き飛ばしたい方向性というのを意識していて、無理がない方向なのであればそっちに防御の方向が優先されるらしい。
そんな仕様に気付いたのと、この上風の丘の敵の出現率が高いのと、残滓が多かったという理由で方向次第では迎撃するように方針を変更した。
「ハーレ、合わせてかな! 『爪刃双舞閃・風』!」
「はーい! 『連投擲』!」
スライムという俺の行動値の回復源も確保した事もあって、サヤとベスタに攻勢付与をして追撃の水刃と遠距離攻撃を交代しながらやっている。それに加えてハーレさんは通常スキルと攻勢付与の追撃の水弾もあるしね。
うん、ハーレさんの投擲でトンボを前方へと弾き飛ばしながら、サヤの追撃の水刃と自前での風属性の追撃の風の刃が斬り刻んでいく。俺の付与魔法の方が威力はあるけど、操作属性付与での追撃効果も結構凄いよなー。俺の付与魔法ではカウントされないけど、自前での追撃の方は連撃のカウントは増えるみたいだしね。
あ、今のでサヤへの攻勢付与の効果が切れたか。アルの守勢付与もさっきので切れたから、これが終わったら付与のかけ直しさないといけないね。……あー、地味にトンボが生き残ってた。
「あ、ほんの少し削り切れなかったね」
「ケイ、追撃をお願いかな!」
「ほいよっと!」
ま、今は高速で移動中だから割と外れてはいるけど、それでも攻勢付与の追撃効果は威力が高い。でもまぁ今みたいに倒しきれない時もあるから、そういう時は俺の出番である。
<行動値4と魔力値12消費して『土魔法Lv5:アースボム』を発動します> 行動値 58/72(上限値使用:1): 魔力値 175/206
急がないとアルの位置から遠くなってしまって攻撃が届かなくなってしまうので、素早く発動してっと。よし、今の飛んできていたトンボにアースボムが命中! 残り僅かなHPだったから今ので削りきれて、ポリゴンとなって砕け散っていった。
「おし、追撃で撃破完了!」
「お疲れ様かな」
「ケイさん、グッジョブ!」
「あはは、なんだかんだで素早い連携だよね」
「ま、結構経験値も入ってきてるし良いんじゃねぇか?」
「……ふむ、この風に乗ってくる敵は経験値が多めだという情報もあったが、ケイ達の見る感じだとそのようだな」
「あ、そうなんだ?」
ふむふむ、なんか残滓にしては結構経験値が多いような感じはしてたけど、風に乗って襲いかかってくる敵は経験値が多いのか。ここの敵は素早くて厄介な印象が強いから、その分だけ経験値が多めに設定されているのかもしれないね。
「それにしてもホントに奇襲が多いな……」
「このエリアで空を飛ぶってのは、それを覚悟の上でやるって事だからな。まぁ俺も実際にここまで飛んでみた際の様子は伝聞でしか聞いていなかったから、予想以上ではあったが……」
「おー!? ベスタさんでもそういう事があるんだねー!?」
「……あのな、俺だって何もかもを把握してる訳じゃないぞ。俺自身のみのスキルではここまでの長時間の飛行は無理だから、検証のしようがねぇんだよ」
「やっぱりそれはそうなるよね。ベスタさんは物理の近接がメインだから、それ以外は誰かに任せるしかないんだ」
「あぁ、ヨッシの言う通りだ。現にLv7の魔法の検証は任せただろう?」
「あー、言われてみればそうなるのよなー」
ベスタ自身が言ってるように、まさしく今日の午前中の検証は魔法型のキャラを持ってる人でないと無理な検証ではあった。ベスタには空を駆ける手段はあるとはいえ、常に空を駆けている訳でもないし、飛ぶ種族でもないから、その辺は自身で検証をしてた訳じゃないんだね。
まぁ俺だって何でも試せる訳じゃないし、出来る人で手分けをして検証していくしかないか。つまり、今まで通りにやっていくという事だな。……うん、特になんも変わらないね。
「あ、ケイ。今ので攻勢付与を使い切ったから、付与のかけ直しをお願いかな」
「俺の方も頼むぜ」
「おっと、そういやそうだった」
攻勢付与も守勢付与も実際にこうやって使ってみるとかなり便利だから、可能な限り早く土属性の方も欲しくなってきた。……ま、その前に土魔法をLv6にはしないとなー。さて、今はとりあえず付与をしておこう。
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 51/72(上限値使用:1): 魔力値 154/206
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 44/72(上限値使用:1): 魔力値 133/206
よし、これでサヤに攻勢付与を、アルに守勢付与のかけ直しは完了っと。
「ありがとかな!」
「おし、岩山もかなり近付いてきてるし、もう一踏ん張りだな」
「あぁ、もう少しでエリアの切り替えだからな。ケイ、今のうちに行動値の回復速度を上げておけ」
「ほいよっと。ヨッシさん、スライムをよろしく」
「あ、うん。でももう死にかけだね」
「もう岩山も目前だし、ちょうど良いって事で!」
「あはは、まぁそれもそうだね」
岩山まで行けば後はドラゴンまで一直線に進めばいいだろうし、スライムを捕獲し続けているヨッシさんの行動値の回復が出来ていないからね。エリアの切り替えの前には、移動を担当しているアル以外の全員の手が空いている状態にはしておきたい。
アルが途中で水流の操作とかを再発動をしているから、その回復の余裕も欲しいとこである。ま、最悪そこは俺の水流の操作で補えばいい。その為にも俺の行動値の回復速度を上げないとね。
<行動値を1消費して『養分吸収Lv1』を発動します> 行動値 43/72(上限値使用:1)
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『養分吸収Lv1』が『養分吸収Lv2』になりました>
おっと、養分吸収のLvが上がったね。……ふむ、それならLv2の養分吸収で再度発動した方が回復速度も上がるかな? よし、まだぎりぎりスライムは生きているからそうしよう。
もうほぼスライムの身体を形成しているのは核だけになってるけどね。……それはそうとして、地味にHPでなくても吸収は出来るんだなー。逆に言うと、コケ自身も吸われて群体数が減る可能性もありそうだ。ま、それはその内、試せる機会があれば試してみよう。
<行動値を2消費して『養分吸収Lv2』を発動します> 行動値 41/72(上限値使用:1)
あ、スライムのHPの代わりである身体体積が0になって、消滅したね。ふむ、この場合はポリゴンになって砕け散っていく訳じゃないのか。
<ケイが未成体・暴走種を討伐しました>
<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイがLv17に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・暴走種を討伐しました>
<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイ2ndがLv17に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
あれ、まだLvが上がるまでの必要な経験値は結構あったと思うんだけど、なんかLvが上がった!?
「へぇ、スライムって経験値が多いんだな?」
「そうみたいかな!」
「今のでLvが上がった人ー!」
「あ、私は上がったよ」
「私も上がったかな」
「お、それなら俺も上がったぞ!」
「言い出しっぺの私も上がりました! 上がってないのは、もうLv17になってたアルさんと、ベスタさんだねー!」
「あー、俺はまぁちょっと前にLv17になってたしな」
ま、今の移動の途中でアルはLv17になってたから今上がらなくても当然ではあるし、ベスタはそもそも俺らよりかなり上のLv……今のベスタのLvは26か。……よく考えてみたら、今のベスタよりも岩山の土属性のドラゴンの方がLvは上なんだな。
「俺についてはそもそもLv差があるからな。……そのスライム自体のLvがケイ達より上という事はあるだろうが、スライム自体の経験値が多いかもしれないな。……追加情報の提供を頼んでおくか」
「そういやベスタ自身もスライムを見るのは初めてって言ってたもんな」
「あぁ、そうなるな。今日はドラゴン戦が本命ではあるが、ここで少ないスライムのサンプルが手に入ったし、本命以外の収穫は多いぞ」
「聞いてる限りそうみたいだな」
根本的に敵として出てくるスライムの討伐数が少なそうだし、その辺の情報はサンプル数が必要か。スライムを見つけたのは偶然ではあるけど、ラッキーであったんだね。
まぁ赤のサファリ同盟にドラゴンをあっさりと渡す気もないけど、全くの無駄足にはならないようなのでそこは良かったかもしれない。
「ケイ、岩山での動きの話をしておきたいが構わないか?」
「それについては俺にはさっぱり知識がないからベスタに任せた!」
「あぁ、それなら任されよう。まず、もうすぐで岩山エリアに突入だが、基本的にはフィールドボスの例のドラゴンは岩山エリアの中をランダムに動き回っている。岩山に入ったらアルマースは通常の速度に落とせ」
「お、岩山のドラゴンって定位置って訳じゃないんだな。おし、それについては了解だ」
へぇ、それは初耳だ。ふむ、今回のドラゴン戦はハーレさんの希望で負けても良いつもりでいたけど、既に1回戦っているベスタが同行してくれて良かったのかもしれないね。負けても良いつもりとは言っても、勝てるものなら勝ちたいしさ。
「それだと岩山に入ったらまずはドラゴン探しかな?」
「あぁ、そうなるな。……ただし、赤のサファリ同盟の動きが気になる所ではある」
「……上風の丘ではディーさんを見かけただけだけど、その後の動きが分からないもんね」
「もう一度、赤のサファリ同盟のみんなの位置を確認する事を提案します!」
「あ、それもそうだな。ちょっと確認の為に見とくか」
もしディーさんが俺らを見つけた後に見当たらなくなったのが、ただの個人的な用事なら変化は多分ないはず。でももし、俺らの動きに何か感じる所があれば変化があるかもしれない。
改めてフレンドリスト開いて、シュウさん、弥生さん、ルストさん、水月さん、アーサー、フラムなどの赤のサファリ同盟のメンバーの現在地を確認してみたら……フレンド登録をしている赤のサファリ同盟の全員の現在地が非表示設定となっている。……あー、こりゃ完全にドラゴン戦の競合相手になったと思って良さそうだな。
「これは完全に俺らの動きを捕捉されてるっぽい。フレンドになってる赤のサファリ同盟の人の現在地は全滅だ」
「……やはりそうなったか。だが、それも予想の内だからな」
「取られる前に、取る……かな?」
「ま、それしかないよね」
「赤のサファリ同盟より先にドラゴンを見つけるのさー!」
「おっしゃ、やるだけやってやるぜ!」
岩山でドラゴンが定位置にいないとなれば、赤のサファリ同盟が先に到着していたとしても運の要素が絡んでくるからチャンスはあるね。まぁ逆に俺らが見つけられなければ意味がないという話でもあるんだけどさ。
……ん? あれ、もしかしてこの状況って俺が地味に役に立ったりする……?
「……なぁ、ベスタ?」
「なんだ、ケイ?」
「フィールドボス相手に獲物察知って有効?」
「……仕様上では可能なはずだが、現時点では効果はないな」
「それってどういう事ですか!?」
「あ、もしかしてある程度のスキルLvが必要とか?」
「あぁ、その可能性が高いと推測して……いや、ちょっと待て。今、それに関する新情報が出てきたぞ」
このタイミングでその情報が出てくるの!? っていうか、いつも同時並行で動いているのは知ってたけど、情報共有版かまとめの情報提供をずっと見てたんだろうね。まぁそのおかげで新情報が手に入りそうだし、ベスタの動きが疎かになってる訳でもないから問題ないか。
「獲物察知Lv5からフィールドボスの位置の察知が可能になるそうだ。表示される矢印に王冠マークが付くらしい」
「お、そりゃ朗報だな! でも、俺の獲物察知ってまだLv4……」
「そこは一か八かで、捜索中に上がる事を期待するのさー!」
「確かにそれが良さそうかな!」
「ケイさん、頑張って!」
「ケイ、頑張れよ」
「ま、それしかないか」
まだLvが足りていないとはいえ、土壇場でLvが上がる可能性も秘めてはいるからね。少し賭けにはなるけど、やってみる価値はあるはず。
「……一応俺も獲物察知は取ってはいるが、まだLv3だからな。ケイ、ここは期待しているぞ」
「ほいよっと」
ベスタにも期待されてしまったからには気合を入れていかないとね。でもなんでベスタが獲物察知を……って、取得条件が違うだけで別に取れない訳じゃなかったっけ。俺らのPTは役割分担にしているから、完全にその事を忘れていたよ……。
何はともあれ、もう岩山エリアは目前だ。赤のサファリ同盟の動きに注意しつつ、ドラゴンを探していこうじゃないか。さー、現在時刻は夜10時を回ってきた。今日の締めくくりのドラゴン戦をやる為に頑張っていくぞ!
【ステータス】
名前:ケイ
種族:同調強魔ゴケ
所属:灰の群集
レベル 16 → 17
進化階位:未成体・同調強魔種
属性:水、土
特性:複合適応、同調、魔力強化
群体数 450/6300 → 450/6450
魔力値 133/206 → 133/208
行動値 41/73 → 41/74
攻撃 75 → 76
防御 114 → 117
俊敏 85 → 87
知識 169 → 174
器用 185 → 191
魔力 243 → 251
名前:ケイ2nd
種族:同調打撃ロブスター
所属:灰の群集
レベル 16 → 17
進化階位:未成体・同調打撃種
属性:なし
特性:打撃、斬撃、堅牢、同調
HP 7250/7250 → 7250/7450
魔力値 96/96 → 96/97
行動値 63/63 → 63/64
攻撃 240 → 248
防御 223 → 230
俊敏 184 → 190
知識 70 → 71
器用 80 → 82
魔力 42 → 43
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます