第611話 他のところの動向


 さて、予定外のスクショの撮影にはなったけど、無事に撮影も終わったという事で本来の目的に戻っていこう! 今日は岩山まで行ってドラゴンと対決だし、スクショの撮影を手伝っていたら模擬戦でベスタに負けた件の気分転換にもなったしね。


「さー、これでキノコ軍団とタケノコ軍団の対決のスクショの撮影は終了です! みんな、お疲れ様ー! そして手伝ってくれたグリーズ・リベルテのみんなとベスタさんにも感謝!」

「サンキュー、リーダー!」

「コケの人達も助かったぜ!」

「さてとそれじゃ雪山の共同撮影に行くかー!」

「あれってまだやってるのかな?」

「あーどうだろな? 誰か確認出来るやつ、いるか?」

「今確認中。……うん、うん、あ、まだやってる!? というか終わりそうにない?」

「あ、まだやってるっぽい」

「よし、それじゃキャラ切り替えて行くぞ!」

「「「「おー!」」」」


 えーと、ラックさんが撮影終了の合図を出せば、そんな風な言葉と共に半分以上の人達がログアウトしていった。そういや雪山支部で共同撮影をしているとは聞いたけど、具体的にどんな事をやってるんだろ? ……これについては灰のサファリ同盟のラックさんがいるんだし、直接聞いた方が早いか。


「なぁ、ラックさん。ちょっといい?」

「ケイさん、報酬についてはまた後日でお願い。私もこの後すぐに雪山に行かなきゃだし」

「あー、報酬についてじゃないよ。それは普通に後日で良いんだけど、雪山支部で共同撮影って具体的に何やってるんだ?」

「あ、そっちの質問なんだ。今日はその場の思いつきで決めるって話だから明確には決めてないんだけど、3群集から色んな人が集まってるから色々やってるとは思うよ」

「……なるほど、具体的には決まってないのか」

「うん、そうなの。えっと、終了済みのなら沢山のお茶を使って雪山をカキ氷に見立てて巨大カキ氷みたいな演出をしたってのは聞いたよ。……お茶が全然足らなくて失敗したらしいけど」

「……まぁそれはだろうな」


 どう考えてもそれはお茶の量が半端ない事になりそうだから失敗するよね。うーん、思いついたからって必ずしも成功する事ばかりではないんだろうな。


「それってお茶が勿体ないよね!? むしろそれならお茶で泳ぐスクショが撮りたいです!」

「……ハーレさん、それは撮りたいんじゃなくて、泳ぎたいんじゃないか?」

「はっ!? アルさん、そうだよ! 私はお茶の中を泳ぎたいので、ヨッシお願いします!」

「……あはは、まぁハーレのリスならやろうと思えば出来なくもないとは思うけど、スクショとしてのインパクトはなさそうだよ?」

「流石にお茶が勿体なさそうかな?」

「むぅ、それは確かに……」


 おー、ハーレさんが頭を抱えて葛藤してるね。ぶっちゃけ、お茶は薄めても効果がは無くなるけど色は薄まらないから出来なくはないだろう。……まぁ流石に薄められる限度はどこかにあるだろうし、完全な無駄遣いになる可能性の方が高いもんな。


「ハーレさん、そのお茶の無駄遣いは流石に却下な」

「あぅ、ケイさんに却下された!? でも私もそう思うので了解です!」

「まぁそれが無難だろう。……ところでラック、他の群集の動きはどうなっている?」

「えっとね、青の群集は青のサファリ同盟やジェイさんとか斬雨さんとかは集まってきてるね。赤の群集はルアーさんを筆頭にしてサファリ系プレイヤーが集まってるよ。ただ、赤のサファリ同盟の一部の人以外は全面的に不参加だね」

「あれ? てっきりそういう集まりだったなら赤のサファリ同盟も参加してそうだけど、そうでもないんだ?」

「うん、まぁねー」


 青の群集の方は結構な参加率っぽいけど、赤の群集で一番参加してそうな赤のサファリ同盟が参加してないってのは何でだろう? そもそも雪山の中立地帯って赤のサファリ同盟の本拠地も兼ねているんだから、そこでのスクショの撮影に参加しないというのも……。

 あー、でも赤のサファリ同盟は実力者揃いだし、こだわりも強そうだから自分達だけで撮りたいとかそういうのもあったりするのかも?


「……いや、それについては大体予想はしていた。やはり赤のサファリ同盟は不在か……」

「え、ベスタさん、それはどういう事かな?」

「単純な話ではあるんだがな……。あの中立地帯はずっとという訳でもないが、赤のサファリ同盟の戦力でトラブルを抑えている。だが今はその必要性が薄い」

「……つまり、今は赤のサファリ同盟はあそこを離れやすいってとこか?」

「あぁ、その通りだ、アルマース」


 あー、言われてみればそういう事にもなるのか。まぁ常に赤のサファリ同盟に任せっぱなしなんて事にはなってないとは思うけど、それでもあそこに本拠地を構えたからにはそれなりに誰かが居る事も多いんだろう。

 でも人が多く集まっていて……特に青の群集の主力勢が集まっているなら、完全に不在になっても問題は発生しにくいはず。人が集まっている今だからこそ赤のサファリ同盟が完全に自分達の好きなように動けるタイミングになるんだな。


「はい、ベスタさん質問です!」

「なんだ、ハーレ?」

「それに何か問題がありますか!?」

「……いや、問題自体は別にないが……」

「何かベスタさんにしては歯切れが悪いねー?」

「……ちょっとした杞憂だ。気にしなくていい」

「うーん、気にはなるけど了解です!」


 ハーレさんが言っているように、ベスタは何ともハッキリとした感じではない様子である。……ふむ、ベスタは赤のサファリ同盟の動向が気になるのか?

 でも今の赤のサファリ同盟の動きを気にする必要性ってあまり無いような気もするんだけどね。うーん、赤のサファリ同盟……フラムのヤツはどこで何をしてるんだろうか?


「あ、赤のサファリ同盟のメンバーの現在地をフレンド登録で確認すりゃいいんじゃ?」

「その手があったかな!」

「そだね、ベスタさんは気にしてるみたいだし、確認してみるよ」

「俺も見てみるか」

「それが確実なのさー!」


 なんだかんだで赤のサファリ同盟のメンバーとフレンド登録している相手はそれなりにいるから、俺も確認しとこっと。えーと、フレンドリストを確認して……あー、フラムは2ndのライノコでログイン中で現在地は……赤の群集の森林エリアの北にあるフレッシュ平原か。前に共闘イベントでティラノと戦ったり、竹を取りに行ったとこだな。

 他の赤のサファリ同盟のメンバーの現在地を確認してみたけど、みんな同じフレッシュ平原にいるみたいだね。……細かい位置までは分からないように設定されてるみたいだから、これ以上は分からないか。


「……赤のサファリ同盟はどこにいる?」

「えーと、フレッシュ平原だな。それ以上は不明」

「特訓でもしてるのかな?」

「ただの移動中かもね」

「……なるほど、フレッシュ平原か。これは場合によっては警戒しておくべきかもしれんな」

「あー、そういう事か。ベスタさんの杞憂の理由が分かったぜ」


 なぬ!? 赤のサファリ同盟が今フレッシュ平原にいるからって、今警戒するような事態になる可能性があるのか……? えー、どんな理由……? 俺らはそもそも岩山へとドラゴンを倒しに……って、もしかして!?


「アル、ベスタ! フレッシュ平原にこれから向かう岩山への経路があるのか!?」

「……厳密にはここから先に進んだ丘陵エリアへと合流する地点がある」

「そんでもって、赤のサファリ同盟……弥生さん、シュウさん、ルストさんとかがドラゴンを狙えるレベルだろうな。そういう事だろ、ベスタ?」

「あぁ、その通りだ。状況次第にはなるが、これからのドラゴン戦は赤のサファリ同盟との取り合いになる可能性がある。赤のサファリ同盟が集団で動いているなら尚更だ」

「……あー、やっぱりその可能性か」


 今の色々と情報を聞いてもしかしてとは思ったけど、赤のサファリ同盟がドラゴン戦の競合相手となる可能性をベスタは考えていたんだな。……うん、状況次第にはなるけどその可能性は考慮しておいた方がいいかもしれないね。


「あのー、何か取り込み中みたいだけど、私はもう行ってもいい?」

「あ、ラックさん、それは問題ないぞ。ってか、妙に足止めしたみたいになってすまん!」

「あはは、いいよ、ケイさん。……何か大変な事になりそうな予感もするけど、頑張ってね!」

「おうよ!」

「ラック、またねー!」

「うん、またねー! 明日は基本的に森林深部にいる予定だから、報酬を取りに来れたら来てね。手が離せなければ、フレンドコールをしてくれれば私の方から私に行くからさ!」

「了解です!」


 そうしてラックさんは転移の種を使ったようで、転移をして消えていった。とりあえず報酬については取りに行くのでも、持ってきてもらうのでも、どっちでもいいみたいなので明日になってからどうするかは考えよう。


 さて、さっきまで残っていたラックさんを除けばいつの間にか俺らだけになっていたみたいだし、改めて行動をしていこうか。


「ベスタさん、赤のサファリ同盟と共闘してドラゴンを倒す事は出来ないのかな?」

「……それは状況次第……いや、人数次第だな。俺らと連携PTを組むだけの人数の枠があって交渉の余地がある」

「あ、確かにそれもそうかな……」

「フレンドコールをしてそれを確認するのはどうですか!?」

「ハーレ、人数オーバーだった場合はどうするの?」

「あぅ!? どうしよう!?」

「……一番の問題はそこか」


 別に俺らと赤のサファリ同盟は仲が悪いという訳でもないし、むしろ交流がある方ではある。でももし人数オーバーとなったら俺らの方を優先する事はないだろう。そしてそれについては俺らも同じだ。

 それに向こうもドラゴンを狙っているかどうかは確定事項でもないんだよな。……もしフレンドコールで連絡をして全くの見当違いなら問題はないけど、目的が同じで人数オーバーになってしまえば完全に競合相手となる。うーん、遭遇しない限りはこっちから探りを入れるのはやめといた方がいいかもね。


「……これは俺らの位置が分からないようにフレンドリストの設定変更をしといた方が良い?」

「俺はケイのその案に賛成だ」

「あぁ、それが良いだろう」

「……それには賛成だけど、もし途中で遭遇した場合はどうするかな?」

「その場合はとりあえず話し合いじゃない?」

「それはそうなった時に考えれば良いと思います! 確定してない内容を考え過ぎても結論は出ないのさー!」

「……それもそうかな」

「確かにそうかもだけど、それでもケイさんの発案通りに設定は変更しておいた方がいいかもね」

「それについては了解です!」

「うん、分かったかな」


 一応考え過ぎない程度にという形にはなったけど、一時的にフレンドリストでの現在地の確認を非表示にしておこう。……まぁ、万が一にも赤のサファリ同盟と競合になったとしても、いきなり問答無用の戦闘になる事はないはず。譲り合いが出来るかどうかは別問題だけど、まぁまだ起きてもいない可能性の1つを考え過ぎても仕方ないか。


「そういや移動はどうする? いつも通りアルに乗って移動?」

「……それだと流石に目立たないか? 気にし過ぎもあれだが、全然気にしないというのも……」

「それについては気にする必要はないぞ、アルマース。そこの木々の先にある丘陵エリアは見通しは良いから、PTで普通に動けばすぐ目に入る。巨体なクジラは小型化したとしても目立つからな」

「そりゃ陸地でクジラはどうしても目立つか」

「だろうねー。てか、やっぱりそこがエリアの切り替え部分なんだ」

「なんだ、ケイ、知らなかったのか?」

「そうなるね。このミズキの森林になる崖部分までなら来た事はあるけど、その先は行ってないしさ」

「……なるほど」


 前にダイクさんと昇華魔法の試し撃ちに来た時も、今いる崖の部分までだったもんな。その先の光景についてはまるで知らないから、岩山までの丘陵エリアも結構楽しみではあるんだよね。


「……ちなみにケイ以外はこの先に行った事は?」

「まだ行った事は無いかな」

「俺らは基本的に新しい場所には一緒に行く事にしてるからな」

「アルさんの言う通り、そうなってます!」

「うん、そういう事になるね」

「……なるほど、そういう行動方針か。覚えておこう」


 そうしてベスタは納得するように頷いていた。そういや俺らは全員揃った時以外にはあまり足を踏み入れたことの無いエリアには行かないのは言った事がなかったっけ? この土日はその行動方針が理由で殆ど他のエリアには行けてないんだよね。


「……よし、ドラゴン戦に行くのは優先事項にはするが、強引な突破は止めておくか」

「え、でもそれじゃ赤のサファリ同盟が来てたらマズいんじゃ?」

「さっきハーレが言ってたが、そうなったらそうなった時だ。不確定要素だらけの事で焦って新しく行くエリアをただ大急ぎで素通りするよりは、楽しみながら進む方が良いだろう?」

「あー、確かにそりゃそうだ」


 赤のサファリ同盟の狙いが俺らと同じというのはあくまで推測でしかないし、ドラゴンを狙っている人が他に居ないとも限らない。……ベスタの言うように気には留めつつも、焦らずに楽しみながら進む方が良いか。


 もし誰かにドラゴンが先に倒されたとしてもそれは運が無かったという事で笑い話にすればいいし、もしかしたら予想外の誰かとの共闘になるかもしれないし、赤のサファリ同盟とドラゴンを巡って対立するかもしれないし、逆に赤のサファリ同盟と共闘するかもしれない。

 結局、今いくら考えたとしても実際にその時がやってこなければどういう結果になるかは分からない。だからこそ、その過程も楽しんでいくべきだね


「その方針に賛成です! 何があるか分からないっていうのも、新しいエリアに行くのも、強敵に挑みに行くのも、どれも全力で楽しむのさー!」

「あはは、そういうとこはハーレらしいかな」

「ま、そだね。全部が思った通りにならないとしても、それで楽しめればいいよね」

「それじゃ丘陵エリアについては普段通り、俺に乗って進むって事で良いな?」

「ほいよっと」

「もちろんさー!」

「アル、今日もよろしくかな」

「アルさん、よろしくね」

「よし、それで方針は決定だ。全員がアルマースに乗り次第、出発する!」

「「「「「おー」」」」」


 そのベスタの号令に従って、みんながアルのクジラの背の上に乗っていく。色々と考えたりはしたけども、何よりも楽しんでいくという結論に至った。これからドラゴンの所へ辿り着くまでに何があるかは分からないけど、全力で楽しんでいこう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る