第564話 繋がる情報
さてと色々と準備も整ったし、予定通りベスタにフレンドコールを……って、ベスタは戦闘中にフレンドコールを受ける設定になってるのかな? とりあえずベスタ宛にフレンドコールを……うん、すぐに繋がったね。問題はなかったみたいだ。
「ケイか。思ったより早かったが、ジェイと斬雨の手が空いたって事で良いのか?」
「おうよ。今はアルの樹洞の中で待ってもらってる」
「よし、それならすぐに戻る」
「……ところで、ベスタの方はドラゴンはどうだった?」
「どうだもなにも、現在進行形で戦闘中だが? ……思った以上に厄介なのは分かったから、様子見自体は完了だがな」
「あ、戦闘中だったんだ……」
平然と会話をしているから戦闘中ではないと思ったんだけど、絶賛戦闘中でしたよ! ……流石はベスタと言うべきか。
「まぁ、それはいい。すぐに戦闘を切り上げて戻ると伝えておいてくれ」
「ほいよっと」
そんな簡潔な内容ではあるけども、ベスタはすぐに戻ってくるという事になった。まぁ倒せる様子ではなかったみたいだけど、逃げ切るのには問題ないだけの余裕はありそうだったね。
「とりあえずすぐにベスタが来るから、少し待っておいてくれー」
「分かりました。ところで、ベスタさんが挑むようなドラゴンというのは岩山で育ち過ぎてるドラゴンでしょうか?」
「あ、ジェイさんも知ってるんだ?」
「……知ってるも何も、私と斬雨の2人で挑んで逃げ帰りましたからね。流石に2人というのは甘く見すぎていましたが、かなり強いですよ」
「え、マジで!?」
「嘘を言っても仕方ないでしょう?」
「……まぁ、そりゃそうだけど」
確かにここで逃げ帰ったなんて嘘をつく意味もないか。それにしても2人だけで挑む事そのものが無謀なのは間違いないけど、それでもジェイさんからしても強敵認定なのか。……これは下手なPTだとあっさり壊滅して、経験値を与えて育てまくってる様子だな。
「参考までにどんな感じか聞いても良い?」
「えぇ、構いませんよ。構成としてはバランス型のフィールドボスになりまして、凝縮破壊Ⅰ、連鎖増強Ⅰ、土の昇華、土魔法Lv6、複数の物理攻撃の応用スキルを持っています。特性に堅牢と強靭もあり、手札が多彩で相当厄介ですよ」
「Lv27ともなると、とんでもないな……」
「……私達が戦った時はLv25だった筈ですが、またLvが上がっているのですか」
「それってマジかー」
どうやら今の岩山のドラゴンはジェイさん達が挑んだ時よりもLvが上がっているらしい。……こりゃ、挑みまくって負けた人が大量にいるっぽいな……。ちょっといくらなんでもLv上がり過ぎじゃないかなー?
そうして話している内に、ベスタが駆けながら樹洞の中に入ってきた。って、あのベスタのHPが半分以上減ってるぞ!?
「あ、ベスタさん、回復を――」
「いや、どうせ放っておけば勝手に回復するからそのままで構わん。ジェイ、待たせたな」
「いえ、構いませんよ。ご覧になったでしょうが、斬雨は外の方にいますがご了承ください」
「あー、まぁジェイがいるなら、俺としては別に構わんが……」
「それはありがとうございます。それでは迂闊に口外できないような無所属の方の話を聞かせてもらいましょうか」
「……そこまで推測出来ているなら、話は早そうだな」
さて、とりあえず話を進める為の準備は整った。……ドラゴンに関しては色々と気になるところではあるけど、流石にそれに関しては今日は無理だな。
まぁLv差があって負ける可能性がありそうな強敵との戦いに興味がない訳でもないけども、もう11時を過ぎている。ハーレさんのアルバイトは明日もあるし、もし挑むとしたら明日の夜以降だろうね。……まぁ挑むかどうか自体をみんなと相談しなけりゃいけないけどな。
そこからは改めて簡単にではあるけども、赤の群集での騒動と、その裏でウィルさんと俺らが何をしたかと、そして無所属には増援クエストというものがあるという事の説明をしていった。まさかこんな形で青の群集へ伝える事になるとは思わなかったね。
「……なるほど、あの騒動にはそのような裏があったのですね。伝聞でしか知りませんでしたが、違和感の正体が分かりましたよ」
「まぁそういう事だ。……勘付いている奴も多いが、迂闊に話すなよ?」
「……えぇ、分かっています。手段を誤ってはいますが、青の群集の騒動の件ほど悪質な方ではないようですしね」
「あー、まぁあれと比べたらねぇ……」
ウィルさんについては本人に悪い事をした自覚もあって、それを自分が盛大に散って消える事でどうにか終息させようとはしてたもんな。手段は間違っていたけど周りが変に悪化させたというのもあるし、あの時点では表に出てきていなかった赤のサファリ同盟についても、リーダーである弥生さんが色々と訳ありだったみたいだからね。
それに比べて青の群集での騒動の方は、主犯格は明確に悪意だらけだったもんな。それも明確に運営が動くレベルでだし。……どっちもプレイヤー主導による騒動ではあったけども、その実情はかなり違うもんな。
「私としてはそのウィルという方の選択を尊重しますよ。それに無所属の一部の方々を抑えているというのであれば、私達としても決して悪い話ではありませんからね」
「あ、でもウィルさんについては赤の群集の味方に付く可能性が高いから……」
「それはそうでしょうが、無所属の総意という訳ではないでしょうから気にしませんよ。それよりも増援クエストの情報が重要ですね。……これは私達に伝えても良かったのですか?」
「そのうち接触がある可能性もかなりあるからな。別に構わねぇよ」
「……そうですか、これは借りが1つ出来ましたね」
「ま、今回の群集クエストについては競っている訳じゃねぇからな」
「……そうですね。では、青の群集の方で相談してからにはなりますし、確約もまだ出来ませんが、増援クエストで光る『進化記憶の結晶』の持ち込みがあった場合には情報の提供を検討させていただきますね」
「あぁ、そういう情報は歓迎するぜ」
「だなー。あ、ジェイさん、一応忠告しておくけど、無所属って言っても一枚岩じゃないみたいだからその辺は注意してくれ」
ウィルさん達から聞いた黒の統率種という特殊な進化先もあるって話だしね。あれについては詳細がさっぱり分からないけど、少なくともそこまでの進化に至ったプレイヤーがいるというのは間違いない。
「……先程の話に出てきた黒の統率種ですね」
「あれについては俺も気にはしているが、特に情報はないな」
「まー、そう簡単に出てくる訳もないよな」
聞いて分かっている範囲では、カーソルが黒くなってしまえば進化して、残滓と瘴気強化種の統率が可能になるというくらいか。あ、あとは進化階位が下がるほどデスペナが厳しいってくらいか? それ以上については何も特に情報がないし、圧倒的に情報不足なんだよね。
「……いえ、待って下さい。それに関わりがありそうな情報を見た覚えが……」
「え、青の群集に何か情報があるのか?」
「……少し待ってください。該当の書き込みを探しますので……」
「……これは思わぬ収穫?」
「そうかもしれないな」
どうやらジェイさんには黒の統率種に関する情報に心当たりがあるようで、青の群集のまとめ機能の書き込みを確認しているようである。……青の群集にも灰の群集と同じで、匿名の不確定情報を提供する項目があるのかもしれないね。
「……見つけましたよ。意味が分からなくてデマ情報の可能性が高いとスルーしていましたが、黒の統率種というプレイヤーがいるのであれば真実味が出てきましたね!」
「……ジェイ、どういう情報だ?」
「本来なら教えるわけが無い……と言いたいところですが、今回はそれでは不義理が過ぎますしね。要約しますと、『異常な程に執拗に追いかけてきて、目の前に来ると無防備になる黒のカーソルの敵を見かけた』というものです」
「……え? どういう事?」
「……それは、その後どうなった?」
「不気味だったから、逃げきったそうですね。バグを疑って、報告してもバグではないと返答があったそうです」
「……なるほどな」
ふむ、それだけを聞いてみると確かに行動パターンや識別情報にバグが発生しているように思えるけど、黒の統率種という存在を考えてみればそうでもないのかもしれない。……あくまで推論でしかないけど、その倒されたがっているという状況というのは……。
「ひょっとしてなんだけど、黒の統率種への進化ってかなりデメリットが多いとか? 例えば、喋れなくなるとかさ」
「……突飛な発想ではあるが、黒の暴走種にある半覚醒という特性を考えると可能性としてはあり得る話か。PK以外でも『進化記憶の結晶』を持ち続ける事で黒く染まるのならば、それを試してみて進化はしたものの失敗だったという可能性も……」
「……確かにその可能性はありえますね。確か、黒く染まったカーソルを元に戻すには時間経過か、通常のプレイヤーに倒される必要がありますし……」
「戻してもらいたくて出てきたけども、意思疎通が出来なくて不気味に思われて相手にされなかった……?」
「その可能性は十分あるだろう」
「えぇ、私も同感です」
まだ推測の域からは全然出ないけども、もしそうだとするならば黒の統率種というものは相当なデメリットを内包しているね。……これはあれか。対人戦が好きではない人がプレイヤーとして認識するのを避ける為の仕様かも?
PKなら問答無用で襲ってくるかもしれないけど、1日1回なら死んでもデスペナはないし、意思疎通を出来なくする事で不快感の軽減をしてる……? あ、もしかして初期のBANクジラの酷かったらしい暴言とかが原因なのかもしれないね。
「……これは群集に持ち帰って、情報の精査をしてみます。互いの情報の補完で出てきた内容ではありますので、これについては分かり次第、情報をお伝えするという事でよろしいでしょうか?」
「あぁ、それで構わない。灰の群集の方でも、その辺りの目撃情報の提供を呼びかけておこう」
「なんだかんだで、情報交換って重要なんだな」
「……えぇ、それは同意ですね。とはいえ、なんでもとはいきませんが……」
「まぁな。だが、今回に関しては非常に有益だったぞ」
「そうですね。……どうやらサヤさん達の纏属進化も切れたようなので、そろそろ失礼しますね」
「あぁ、了解だ」
「ほいよっと」
ジェイさんの言うようにサヤ達の纏属進化の効果が切れていて、寛ぎモードに入っている。なんだか楽しげに談笑しているっぽいし、目的の『異常回復Ⅰ』も取れたのかな?
「アル、サヤ達はどんな感じだったんだ?」
「ん? まぁ斬雨さんへの集中攻撃をしたり、そこから反撃に移った斬雨さんの攻撃を囮に使って不意打ちとか、色々やってて大乱戦だったぞ」
「あー、やっぱりみんな色々と狙っていたんだな」
斬雨さんへの集中攻撃だけではないとは思っていたけども、やっぱりお互いに出し抜き合って乱戦になっていたんだね。……情報交換に集中してたからPT会話で聞こえていた声の内容は聞き流していたけど、それはそれで見てみたかったな。
「斬雨、情報交換と新情報の糸口が手に入りましたのでそろそろ戻りますよ」
「多少は聞こえてたから、分かってるって。……思わぬ収穫っぽいな?」
「えぇ、そうです。ですので、精査が必要なのは分かりますね?」
「ま、そうだろな。って事で俺とジェイは戻るけど、楽しかったぜ!」
「また機会があれば一緒にやろうかな!」
「そうともさー! 今度はもっと大人数でやろうー!」
「チーム戦も良いかもね?」
「お、そりゃいいな! ま、それは今度だな!」
「そうですね。では早く戻りますよ、斬雨」
「ジェイ、そう急かすなって!?」
<ジェイ様のPTとの連結を解除しました>
そうしてジェイさんと斬雨さんはPTの連結を解除して、草原エリアを去っていった。ただ情報を伝えるだけになるかと思っていたけども、青の群集の情報に黒の統率種に関係がありそうな情報があったのは良い誤算だね。
「さて、俺はさっきの情報をまとめて情報提供を呼びかけるつもりだが、ケイ達はどうする?」
「俺はまだやるつもりだが、ケイ達はそろそろ終わりか?」
「あー、もう11時も過ぎてるし、そうするか」
「私は特に無理なのです!」
「明日の昼間も今日と同じでスキルを鍛える事になるだろうし、無理に今はやらなくてもいいかな?」
「目的の『異常回復Ⅰ』も取れたしね」
「……それは俺が取れてねぇな。ま、明日でいいか」
そういえばアルは纏瘴を使ったけども、演出に使っただけで瘴気魔法は発動出来てなかったっけ。まぁ、瘴気魔法はタイミングを見計らって使えば取得自体は難しくもないから別に明日でも良いのだろう。
「よし、それじゃ今日はこれで解散! 明日、何をやるかは集まってからで! ま、ハーレさんが昼間いない分、やる事も限られるけどな」
「ご迷惑お掛けします!」
「ハーレは頑張ってるだけだから、その辺は気にしなくていいかな」
「そうだよ、ハーレ。色々行くのはみんなが揃ってからだからね」
「サヤ、ヨッシ! 明日も頑張ってくるのさー!」
「……事情は知らんが、まぁ頑張れよ」
「ベスタさんもありがとー!」
そういう事で今日はここまでだね。アルは俺らがログアウトした後も続けるみたいだけど、これはいつもの事である。ま、この辺は平日の夕方分の差の埋め合わせでもあるからね。
そうして、それぞれに挨拶をしてから今日は解散だ。……ログアウトについては、まぁ初期エリアの草原だし、群集拠点種からは少し離れているのでこのままここでいいか。
まだスクショの撮影は続いているけど…っていうかもう第2弾も過ぎて第3弾、下手すれば第4弾くらいになってそうではあるね。ま、今撮影されているスクショについては投票になった時の楽しみにしておこうかな。
◇ ◇ ◇
そうしてログアウトして、いつものいったんのいるログイン場面へとやってきた。えーと、今回の胴体の内容は『スクショの撮影が盛況で、嬉しい悲鳴!』となっている。うん、主催している運営としては盛り上がっているのは嬉しいんだろうね。
「いったん、スクショの承諾は来てるか?」
「うん、色々と来てるよ〜」
「お、そうなんだ?」
「はい、これ一覧ね〜」
いつものようにスクショの一覧を受け取って内容を確認してみれば、アルと桜花さんを主役としたスクショの撮影の光景を演出しているメイキングのスクショのが多数来ていた。あー、やっぱりこういうのはみんな撮りたくなるんだね。
メイキングのスクショだとコンテストは無理な可能性が高いという話をしていたけども、こうやってスクショが沢山来ていると納得ではあるね。……ふむ、ちょっと青の群集も混じってはいるけど、ほぼ灰の群集か。記念に良い雰囲気で撮れているスクショを貰って、後はいつも通りで良いか。
「いったん、これらのスクショをくれ。あと、処理はいつも通りで」
「はいはい〜。そのように処理しておくね〜」
「おう、よろしく。そんじゃ今日はこの辺で終わりにするよ」
「お疲れ様でした〜。またのログインをお待ちしております〜」
「ほいよ!」
そうしていったんに見送られながらログアウトをしていった。今週末はいくつか課題が出てたから、それを片付けてから寝ますかね。
さてと、明日は晴れの日だからちょっと手付かずになっているスキルの強化をしていこう。あと水魔法をLv7にするかどうかも決めてしまわないといけないね。ま、それは明日考えよう。
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